はじめに
みなさんこんにちは。
モダンは構築フォーマットの中でも一番人気のフォーマットで、『モダンホライゾン2』がリリースされて環境が変化し盛り上がりを見せています。
今回の連載では、Modern Showcase Challengeと先週末に開催されたModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Challenge #12312057
環境最強の猿ラガバン
2021年7月3日
- 1位 Counter Monkey
- 2位 Cascade Crash
- 3位 Living End
- 4位 Izzet Prowess
- 5位 Counter Monkey
- 6位 Hammer Time
- 7位 Counter Monkey
- 8位 Scapeshift
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参加者が400名を超え、スイスラウンド10ラウンドという長丁場のイベントでした。
今大会で結果を残したのはCounter Monkeyでした。《敏捷なこそ泥、ラガバン》など軽いクリーチャーをカウンターでバックアップしていくデッキで、『モダンホライゾン2』が実装された直後の環境からリーグなどで結果を残していました。レガシーでも活躍しているクリーチャーと《表現の反復》など強力なスペルも使えるため、モダンでもトップメタの一角として活躍できる強さがあります。
ほかには、MOCSでも結果を残していたCascade Crashや《ウルザの物語》によって大幅に強化されたHammer Time、定番のアグロデッキであるIzzet Prowessなどが見られました。
デッキ紹介
Counter Monkey
《敏捷なこそ泥、ラガバン》を始めとしたレガシー級のクリーチャーを効率的なスペルでバックアップしながら戦うデッキです。Izzet Prowessと異なり、このデッキは《対抗呪文》を使うなどより青に寄せています。
カウンターにマナが必要なのでレガシーに比べてクロックを守りづらくなっているため、《濁浪の執政》のフル搭載に加えて《戦慄衆の秘儀術師》も採用されているなど、ロングゲームでも渡り合えるように調整されています。
☆注目ポイント
《濁浪の執政》は非常に強力なクリーチャーで、Prowessなどに対してはサイズで大きく勝り、《致命的な一押し》や《虹色の終焉》といった現環境の主要な除去に対して耐性があります。最近は《流刑への道》なども減少傾向にあるので、対処されにくいフィニッシャーになります。
《思考掃き》など墓地を肥やす手段が豊富にあるので2マナ8/8飛行で出てくることも多く、速やかにゲームを終わらせることができます。
《ミシュラのガラクタ》のおかげで「昂揚」を達成させることが容易で、多くの場合《邪悪な熱気》は確定除去として機能します。6点火力はあの《原始のタイタン》を処理することが可能です。また、《稲妻》のほかに《戦慄衆の秘儀術師》で使いまわせる除去が増えたのもポイントです。
《死せる生》や《衝撃の足音》などを対策するために、サイドに《虚空の杯》が採られています。X=0で置いておくことで0マナの「待機」スペルを封じることができるのです。
Amulet Titanなど《ウルザの物語》対策として《血染めの月》も多めに採られています。《霊気の疾風》と《緻密》はカウンターではないので、《魂の洞窟》からプレイされた《原始のタイタン》にも有効です。
デッキ全体を見渡してみると、採用されているクリーチャーは《戦慄衆の秘儀術師》を除いてすべて『モダンホライゾン2』から登場したもので、《邪悪な熱気》や《表現の反復》など最近のカードパワーの高さが再確認できます。
Modern Challenge #12316091
猿とサイが暴れまわる環境
2021年7月10日
- 1位 Temur Footfalls
- 2位 Counter Monkey
- 3位 Hammer Time
- 4位 Rakdos Aggro
- 5位 Izzet Prowess
- 6位 Living End
- 7位 Dimir Mill
- 8位 Rakdos Aggro
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Counter Monkeyと同様に、効率的な除去である《邪悪な熱気》や脅威である《ドラゴンの怒りの媒介者》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》を用いたRakdos Aggroも安定した成績を残し続けています。ほかには、MOCSでも結果を残していたTemur Footfallsもアグロデッキの対抗馬として活躍しています。
デッキ紹介
Rakdos Aggro
《敏捷なこそ泥、ラガバン》はIzzetだけでなくさまざまなデッキで採用されています。相手にとっては真っ先に除去したいクリーチャーなので、墓地から再利用できる《夢の巣のルールス》を使ったデッキとも相性が良いクリーチャーです。
《思考囲い》や《コジレックの審問》といった1マナのハンデスや、《邪悪な熱気》や《稲妻》などの軽い除去を駆使して《敏捷なこそ泥、ラガバン》の道を切り開いていきます。
ハンデスを採用しているためコンボデッキと相性が良いデッキで、現環境で最高の《思考囲い》デッキだといえます。
☆注目ポイント
《ダウスィーの虚空歩き》は墓地対策しつつ相手のライフを攻められる強力なクリーチャーです。追放したカードをただでプレイする能力はハンデスと相性が抜群で、相手の勝ち手段を逆に利用することができます。
《戦慄の朗詠者、トーラック》は「キッカー」でプレイすることで、なんとあの《トーラックへの賛歌》と同様の効果を持ちます。プロテクション(白)なので《虹色の終焉》などに耐性があり、ハンデスを多用するこのデッキでは強化もしやすくなります。
《コラガンの命令》は1:2交換のアドバンテージを得られるスペルで、特に現環境トップメタの一角であるHammer Timeとのマッチアップで強さを発揮します。また、《ダウスィーの虚空歩き》や《戦慄の朗詠者、トーラック》など強力な能力を持つクリーチャーを再利用する動きは強力です。
最近『神河物語』の伝説の土地サイクルの人気が出てきています。《敏捷なこそ泥、ラガバン》《死の飢えのタイタン、クロクサ》《戦慄の朗詠者、トーラック》といった伝説のクリーチャーを主力とするRakdos Aggroは、《血に染まりし城砦、真火》と《死の溜まる地、死蔵》を活用しやすくダメージも通りやすくなります。
Temur Footfalls対策としてサイドには《虚空の杯》や《虚空の鏡》が見られます。《虚空の鏡》を使う際は、《ミシュラのガラクタ》や《ダウスィーの虚空歩き》の能力からプレイするスペルもカウンターされてしまうので注意が必要です。また、《ウルザの物語》デッキ対策として《高山の月》やアーティファクト対策の《破壊放題》も多めに採用されているなど徹底しています。
Living End
最近は「続唱」というとTemur Footfallsのほうがポピュラーですが、FootfallはミッドレンジでLiving Endは古くから環境に存在する墓地コンボです。
デッキの基本的な動きは従来と変化はなく、「サイクリング」持ちのカードでドローを進めていき「続唱」スペルから《死せる生》をプレイして墓地に落としたクリーチャーカードをリアニメイトします。
Footfallでも採用されている《断片無き工作員》を始めとして、『モダンホライゾン2』からの新戦力にも恵まれて大幅に強化されています。
☆注目ポイント
ピッチスペルの《悲嘆》と《緻密》の登場により、「続唱」の邪魔をしない妨害要素が増えたおかげでコンボが決まりやすくなりました。「想起」でプレイして墓地に落ちても《死せる生》でリアニメイトすることが可能で、能力を再利用できます。
《断片無き工作員》は最高の「続唱」スペルです。青いカードが増えることで緊急時には《緻密》や《否定の力》をピッチでプレイしやすくなります。ライブラリー操作を行える《波起こし》は、墓地を肥やしつつ「続唱」スペルを探すことができます。
サイドは墓地対策の置物や《死せる生》を妨害してくる《虚空の杯》など置物を対策するために、《基盤砕き》や《厚かましい借り手》などにスペースが多めに割かれています。
Modern Challenge #12316097
《ウルザの物語》が本領を発揮する
2021年7月11日
- 1位 Hammer Time
- 2位 4C Velomachus
- 3位 Hammer Time
- 4位 Hammer Time
- 5位 Azorius Urza
- 6位 Counter Monkey
- 7位 Scapeshift
- 8位 Hammer Time
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環境屈指の壊れカードとして警戒されていた《ウルザの物語》でしたが、Counter MonkeyやRakdos Aggroといった《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキが幅を利かせており最近は控えめでした。
しかし、今大会では《敏捷なこそ泥、ラガバン》はプレイオフには少数で、《ウルザの物語》によって大幅に強化されたHammer Timeがプレイオフに半数を占め、優勝もHammer Timeでした。ほかにもAzorius Urzaも入賞しているなどここにきて《ウルザの物語》が本領を発揮し始めたようです。
デッキ紹介
Hammer Time
アーティファクトを多用するクリーチャーデッキでは特に強力なデッキです。キーカードのサーチ手段としても有用な《ウルザの物語》や相手に除去を打たれてもアドバンテージが稼げる《エスパーの歩哨》、フレキシブルな除去スペルの《虹色の終焉》など収穫が多く、今大会では見事に優勝を収めました。プレイオフの半数がHammer Timeと高い勝率を見せ、Counter Monkeyを抑えて現環境のトップメタに上り詰めました。
《巨像の鎚》をサーチすることでゲームを速やかに終わらせることができ、《ウルザの物語》と《夢の巣のルールス》の提供するカードアドバンテージのおかげでロングゲームでも渡り合えるなど、環境の優れたアーキタイプの条件を満たしています。
☆注目ポイント
《ウルザの物語》は《巨像の鎚》を直接サーチすることができ、土地なのでカウンターされる心配もありません。1ターン目に《ウルザの物語》をプレイすることができれば、3ターン目には必ず《巨像の鎚》を手に入れることができます。《石鍛冶の神秘家》と《鋼打ちの贈り物》の追加のサーチ手段が増えたことでより安定した動きが期待できるようになりました。
Ⅱ章のトークン生成能力は、肝心な装備品や強化スペルの対象となるクリーチャーが足りないというデッキの弱点を克服することに貢献しています。また、アーティファクトを多用するため構築物トークンのサイズも大きくなり、装備品を対策された際の追加の勝ち手段として機能します。
キルターンの速いこのデッキに対して余分なマナを用意することは難しく、《エスパーの歩哨》は相手の除去に対して高い確率でアドバンテージを得ることができます。『フォーゴトン・レルム探訪』からの新カードも早速使われています。《巧妙な鍛冶》は、アーティファクトを多用するこのデッキでは性能の良いキャントリップのように機能します。
サイドの《虹色の終焉》は非常にフレキシブルな除去スペルで、《石のような静寂》や《虚空の杯》を含めたさまざまなカードを処理することができます。
《ヴェクの聖別者》は最近よく見られるようになったRakdos Aggroとのマッチアップで活躍するクリーチャーです。プロテクション(赤)(黒)というスペックに加えて墓地対策としても機能するので、Rakdosの《夢の巣のルールス》を無力化することができます。主な除去が赤で墓地対策能力も「昂揚」を邪魔するのに貢献するのでIzzet系に対しても使えます。
総括
モダンのメタゲームは絶えず周り続けておりさまざまなデッキが活躍していますが、《ウルザの物語》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したデッキが頭一つ抜けている印象です。
環境が特定のカードや戦略によって歪められていると懸念される声もある一方で、『モダンホライゾン2』登場後の環境は全体的なカードパワーの向上によっていろいろなデッキの底上げがなされ、プレイしていて楽しい環境になったという意見も見られます。新しいカードに触れる楽しみがあるという意味でも『モダンホライゾン2』後の新しいモダンに触れてみることをおすすめします。
USA Modern Express vol.60は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!