4色エレメンタルデッキガイド

Piotr Glogowski

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/08/13)

1.デッキリスト

モダンで頭角を現し始めたアーキタイプ、4色エレメンタル。《発現する浅瀬》《儚い存在》《創造の座、オムナス》、そして『モダンホライゾン2』の「想起」インカーネーションのシナジーを軸にしたデッキです。

発現する浅瀬儚い存在創造の座、オムナス孤独

私もここ最近エレメンタルがお気に入りのデッキとなっています。Magic Onlineで何度もプレイ・配信しており、リーグやチャレンジで満足のいくパフォーマンスを見せています。今日は私が使っているリストを詳細に見ていくことにしましょう。

エレメンタル

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エレメンタルは、もっと適切な表現があれば良いのですが、ひとつのミッドレンジデッキです。攻撃的な初動を決めるデッキではないので、ほとんどのマッチアップで受け身なゲームプランを展開します。

その一方で、非常に爆発力のある動きが可能です。リストを眺めただけではその爆発力を理解できないかもしれませんが、後ほどプレイングの項でよくある動きを解説していきます。まずはその前にデッキの内容をチェックしていきましょう。

《発現する浅瀬》

発現する浅瀬

《発現する浅瀬》は、『モダンホライゾン2』のインカーネーションたちとシナジーを有し、デッキのパワーカードたちを支える存在です。

フリースペルとして妨害できるのは強みですが、その代償としてカードを失います。そんなインカーネーションは《発現する浅瀬》《儚い存在》と組み合わせることで、評価が一変します。0マナで相手に介入しながら、カードアドバンテージを損しない、あるいはカードアドバンテージを得ることすらあるのです。

《儚い存在》

儚い存在

《儚い存在》は、1ターン目からインカーネーションの「想起」を可能にしたり、「明滅」させたりします。そうすることで、そのクリーチャーを盤面に残しながら、効果を3度誘発させられるのです。《発現する浅瀬》が戦場にいれば、合計3ドローになります。

《孤独》《激情》

孤独激情

《孤独》はデッキの色と合っているうえ、《発現する浅瀬》《儚い存在》の両者と相性が良いため、もっとも扱いやすいインカーネーションです。

《激情》はピッチコストを見つけるのに苦労しますが、小型のクリーチャー(あるいはプレインズウォーカー!)をまとめて対処し、《孤独》では手の届かない部分をサポートしてくれます。《激情》は通常のマナコストで唱えても十分に強いカードであり、二段攻撃で高速のクロックをかけます。

《緻密》

緻密

《緻密》《儚い存在》との相性があまり良くありません。「想起」+《儚い存在》でクリーチャー2体を打ち消すという動きができないためです。

打ち消し効果自体は除去と役割がほぼ同じです。それでも、《緻密》ビッグマナ戦略に対して有効 であり、優秀なサイドカードです。《原始のタイタン》《歩行バリスタ》《大いなる創造者、カーン》に対しては除去よりも打ち消しのほうが断然有効でしょう。

《忍耐》

忍耐

《忍耐》はほかのインカーネーションよりもマナが軽く、「明滅」させても美味しくないという異色のカードですが、それでも素晴らしいことに変わりありません。

あらゆる《ドラゴンの怒りの媒介者》デッキに対して握っておきたい1枚ですが、このマッチアップでは「想起」はさせません。言うまでもありませんが、リビングエンドやライブラリーアウトなどの墓地依存デッキには貴重な対策になります。

《悲嘆》

悲嘆

残念ながら、《創造の座、オムナス》の4色に合ったインカーネーションはどれも受動的な効果となっています。

原初の彼方概念の群れ稲妻の骨精霊

《悲嘆》はクリーチャー以外の脅威に対して能動的に対策できる稀有な存在ですが、《悲嘆》の要求する黒のピッチコストを確保するには、《魂の洞窟》《原初の彼方》を最大限採用しつつも、《概念の群れ》《稲妻の骨精霊》といった疑わしいカードをデッキに入れなくてはなりません。私はデッキとしてのまとまりを重視する人間ですので、残念ではありますが《悲嘆》は選択肢に入れられません。

意志の力創造の座、オムナス

インカーネーションの「想起」には、その色に応じたカードをピッチコストに充てる必要があります。レガシープレイヤーたちは《意志の力》の採用に当たって最低限の青の呪文の枚数を意識しますが、直観的にはインカーネーションの採用にも同じルールが適用されるだろうと思うかもしれません。しかし、その基準はレガシーというフォーマットで《意志の力》を通常のマナコストで唱えるのが難しい点を踏まえたものになっています。

ピッチコストの確保という点では《創造の座、オムナス》が重要な役割を担います。優秀なエレメンタルであると同時に、4色のカードでもあるのです。

とはいえ、どのインカーネーションも通常のマナコストで唱えることは現実的ですし、むしろそうしたいと思うことさえあります。ですから、初手に《激情》のピッチコストが70%の確率しかなくても良いと思っていますし、その数値を引き上げるために気の進まない弱めのカードを採用したいとも思いません。

そのほかのエレメンタルは?

雷族の呼び覚まし夕暮れヒバリ乱動の座、オムナス煙束ね

このデッキはほかにも異なる組み方が考えられます。『モダンホライゾン2』以前のエレメンタルと言えば、5色のマナベースに《雷族の呼び覚まし》《稲妻の骨精霊》のコンボを組み込んだような、モダンでは非常にマイナーなデッキでした。では、それらと比べて私のエレメンタルデッキはどの点で優れているのでしょうか?

数週間をかけ、私はエレメンタルデッキをさまざまな構築で試行錯誤しましたが、どれもパッとしませんでした。分岐点となったのは、デッキの枠を埋めるために弱いエレメンタルを採用しなくても良いと気づいたことでした。

復活の声不確定な船乗り

《孤独》のピッチコストに充てられるのは《不確定な船乗り》だけではなく、《時を解す者、テフェリー》も同じです。このデッキの《発現する浅瀬》部分は強かったものの、《復活の声》をたくさん引いても何にもなりません。《復活の声》《不確定な船乗り》《発現する浅瀬》を守れますし、デッキが回っているときは悪くないカードですが、この2枚ばかりを引いたときに問題が生じます。そういった手札を勝利に結びつけるのは困難なのです。

そのため、《復活の声》などを廃したのが大きなブレイクスルーとなりました。《炎族の先触れ》を除けば、明確に「弱い」カードはデッキにありません。《発現する浅瀬》の効果を満足に運用するためにデッキをエレメンタルばかりで埋める必要はなかったのです。

時を解す者、テフェリー

《時を解す者、テフェリー》を採用したのは大きな進展だったと思います。単体で見ても強いカードですが、このデッキならシナジーもあるのです。その常在型能力により邪魔されずに《発現する浅瀬》の能力を誘発でき、《儚い存在》も使いやすくなります。

《楽園の拡散》があれば《時を解す者、テフェリー》は2ターン目に着地でき、そうなれば「続唱」デッキを沈黙させたり、《白日の下に》を封じたり、相手のパーマネントをバウンスしながら《発現する浅瀬》を探してドローできたりします。デッキ内のクリーチャーはどれも戦場に出たときに能力を誘発させますから、自分のクリーチャーをバウンスすることもよくありますね。

楽園の拡散虹色の終焉

エレメンタルのように重たいマナカーブのデッキでは、《楽園の拡散》《虹色の終焉》強力な1ターン目のアクションであり、ありがたい存在です。できるだけ1ターン目に動きやすくするように《虹色の終焉》を4枚にすることも検討していますが、デッキが除去まみれになってしまう点だけが気がかりです。

マナベース

敗因の大半がマナスクリューだったので、現在は土地24枚の構成です。カードアドバンテージの獲得に長けたデッキであるとはいえ、3枚目の土地にたどり着かなくては話になりません。ですから、《楽園の拡散》を含め、マナソースを28枚採っているのは妥当ではないでしょうか。

レンと六番

最初は土地22枚だけでしたが、23枚に増やしたうえで《レンと六番》を追加のマナソースとして計算した構成をしばらく使っていました。しかし、《レンと六番》のパフォーマンスは芳しくなく、徐々にその数を減らしていきます。

《レンと六番》《激情》のピッチコストにもなりながら、マナベースを支えてくれるから含めるべきだろうと当初は考えていました。しかし実践となると、マナベースのバランスを整えるのが極めて難しいことがわかります。《魂の洞窟》《楽園の拡散》、そして2ターン目《レンと六番》から3ターン目《時を解す者、テフェリー》という動きを同時に考えなくてはならないのです。

魂の洞窟

《レンと六番》を抜くとなれば、赤いカードは全てエレメンタルになるため、《魂の洞窟》だけで赤マナ要求をカバーできるようになり、《魂の洞窟》さえ引ければほかの3色だけを考えれば良いようになります。

こういった事情全てを踏まえると、《レンと六番》はこのデッキでは使わないことをおすすめします《魂の洞窟》を使わないという判断をするなら別かもしれませんが、この土地は《対抗呪文》を使う相手に当たるとありがたさがよくわかりますよ。

ラウグリンのトライオームケトリアのトライオーム

1ターン目は何の呪文も唱えないことも少なくないため、《ラウグリンのトライオーム》は悪くないカードです。《楽園の拡散》デッキであれば必ず「森」を戦場に置くことになりますが、《ラウグリンのトライオーム》不足している色を出せるようにしてくれます。

《ケトリアのトライオーム》はやや評価が下がります。特に《楽園の拡散》とのチグハグ感があり、タップインランドと1マナのマナ加速は相反するものです。一緒に引きたくないですよね。どちらかと言えばトライオーム2枚よりも0枚にしたい寄りなので、《ケトリアのトライオーム》はおすすめしません。《レンと六番》を使う構成にするのであれば、「サイクリング」のメリットを活かせるのでトライオーム2枚構成はあり得るでしょう。

楽園の拡散

《楽園の拡散》の色の指定ですが、白か青を選ぶことが多いです。2ターン目の《時を解す者、テフェリー》に必要なマナを揃えることが大切であり、そのためにはショックランドにエンチャントすることもあり得ます。ただし、もともと「森」が出せる色マナを指定してしまうと、《創造の座、オムナス》のコストが払えない可能性があるので気をつけましょう。

ショックランドにエンチャントしなくてはならない場面も比較的多いですが、《廃墟の地》が環境にそう多くないので、気にすることはありません。

蒸気孔

エレメンタルを除き、赤のカードを採用しなければ迷いなく《蒸気孔》を外せます。青の1マナ域がいない関係で、《蒸気孔》はショックランドのなかでももっとも必要性のない1枚です。

《島》なしの構成も何度も試しましたが、《島》の枠は変更可能であり、24枚目の土地だと考えてもらって構いません。代わりに4枚目の《魂の洞窟》を入れても良いでしょう。《島》《血染めの月》への耐性が多少上がります。

血染めの月

今話題に出た《血染めの月》は厄介ではありますが、《楽園の拡散》がその対抗策になりますし、白・青・緑が1つずつあれば戦えるデッキです。必ずしも《血染めの月》を倒せる手札ばかりとは限りませんが、その存在を無視することもあります。たとえば、強いデッキが異なる角度から攻めようと《血染めの月》をサイドインしてくるときは《基盤砕き》を入れようとは思いません。

基盤砕き

もっとも、《炎族の先触れ》から《基盤砕き》をサーチする動きは、ポンザのように《血染めの月》に特化して対策してくるようなデッキには効果的です。

2.プレイング

発現する浅瀬

《発現する浅瀬》の効果でめくれた土地は置かないという選択も採れます。アンタップイン土地が欲しいときや、《創造の座、オムナス》の効果のためにフェッチランドが欲しい場合は手札に加えることができます。フェッチランドをタップインさせるよりもアンタップインできるように手札に持っておくほうが便利なので、この動きは割とよくやりますね。

《発現する浅瀬》が戦場にいる状態で《創造の座、オムナス》をプレイする場合、必ず《創造の座、オムナス》のドロー効果を先に解決し、その後に《発現する浅瀬》の誘発を解決させます。そうすることで、より多くの情報をもとに、めくれた土地をセットするのかどうか判断できるのです。

同じく《発現する浅瀬》が戦場にいる状態でインカーネーションを「想起」する場合、先に土地を置いておくか、白マナを構えておくという選択肢を頭に入れておきましょう。《発現する浅瀬》《儚い存在》をドローするかもしれないからです。

儚い存在

《創造の座、オムナス》《発現する浅瀬》《儚い存在》の3種が揃うと、「ストーム」のようなターンが巻き起こります。特に《発現する浅瀬》が2体並んでいれば、《創造の座、オムナス》の「上陸」能力を3つとも誘発させることは難しくありません。

《儚い存在》《創造の座、オムナス》を「明滅」すれば「上陸」能力を再び1から誘発させられます。その「上陸」能力を最大限まで誘発させるには、2つ目あるいは3つ目の「上陸」が誘発した時点で《儚い存在》を唱え、《発現する浅瀬》の効果をスタックに残しておけばさらに誘発できる可能性が生まれます。

2つ目の「上陸」効果によるマナを使えば、手札に余っていた《創造の座、オムナス》を唱えることでも「上陸」カウントを再びリセット可能です。都合よくカードが揃っていれば理論上は20点ダメージも夢ではありませんが、かなりレアケースですね。

孤児護り、カヒーラ

《孤児護り、カヒーラ》はピッチコストになるのが大きな強みです。クリーチャーという側面も無意味ではなく、クロックを1ターン早めることもあります。《創造の座、オムナス》のマナで《孤児護り、カヒーラ》を手札に回収してプレイする、というのはよくやる動きです。

ドローをする前にどの色マナを残すか選択を迫られることがあります。基本的には《儚い存在》を念頭に白マナを残しましょう。次に重要なのは赤マナであり、これは《炎族の先触れ》用です。もっとも優先度が低いのは《楽園の拡散》用の緑マナになります。

時を解す者、テフェリー

《儚い存在》を能動的に使うべきか、それとも除去から守る呪文として使うのか。そのバランス感覚は少々難しいですね。当然ですが、《時を解す者、テフェリー》がいればそんなに悩むことはありません。《時を解す者、テフェリー》がいないという前提であれば、私は《儚い存在》を保守的に使う傾向にあります。長期戦となるマッチアップで相手が除去を多く持っている場合は、構えている余裕があるようなら《発現する浅瀬》を守るためだけに使います。

手札には《儚い存在》《時を解す者、テフェリー》《発現する浅瀬》があり、マナは3マナある状況。こういうときはほぼ間違いなく《時を解す者、テフェリー》から出し《発現する浅瀬》を守るプランを選びます。

孤独

《激情》or《孤独》+《儚い存在》という組み合わせはいかにも強そうでワクワクしますが、妨害を挟んでくる相手には弱めの手札です。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》を使うデッキは様子を見ながら脅威を展開し、除去を構えてくるのが基本です。そのため、《孤独》でクリーチャーを3体追放することはあまりありません。あとになって《時を解す者、テフェリー》による守りを用意できれば、妨害される不安なくこの動きを狙っていけます。

もし相手が脅威を並べてくるとしても、何度か攻撃は甘んじて受け入れ、《時を解す者、テフェリー》《発現する浅瀬》の展開を優先し、それからコンボに向かいましょう。

炎族の先触れ

《炎族の先触れ》は基本的にカードディスアドバンテージになります。1ターン目にプレイすることはおすすめしません。このデッキのマナカーブを見ればわかりますが、1ターン目に《炎族の先触れ》を検討するような状況なら、たいていは2ターン目でも問題ないでしょう。展開を遅らせることで、より多くの情報をもとに判断を下せるようになります。

ゲーム序盤であれば、よくサーチするのは《発現する浅瀬》です。欲しいものが明確ではない、あるいは欲しいものが全くないというときは手札に握っておきましょう《炎族の先触れ》は次のドローステップを呪文で固定してしまうため、手札に土地が2枚しかないときはプレイしてはなりません。《激情》を引いたときにピッチコストに充てる選択肢が生まれますから、手札に温存しておくのは変なことではないですよ。

絡みつく花面晶体

《炎族の先触れ》で土地がサーチできるように《絡みつく花面晶体》を採用することも考えられますが、個人的には微妙かなと思います。《絡みつく花面晶体》は両面とも使いづらく、カードとしてとても弱いように思えるのです。もしこの動きでアンタップインがサーチできるなら、良いアイディアだと思うんですけどね。

《発現する浅瀬》がいるときに《炎族の先触れ》を出せば、《炎族の先触れ》の効果を先に解決することでサーチしたエレメンタルが直接手札に加えられるようになります。反対に、サーチするエレメンタルをこのターン使わないつもりなら《発現する浅瀬》の効果を先に解決させましょう。ドローしたカードを見てからサーチ先を考えられます。

《発現する浅瀬》が2体いるときは、《発現する浅瀬》《炎族の先触れ》《発現する浅瀬》の順にスタックを積むのが基本です。先ほど《炎族の先触れ》を手札に温存しようという話をしましたが、《発現する浅瀬》を自然と引いたときにその判断が報われるわけですね。誘発効果をスタックに積むときは必ず慎重に考えるようにしてください

敏捷なこそ泥、ラガバン

《炎族の先触れ》でいますぐ欲しいエレメンタルを手札に加えられるのは、《発現する浅瀬》だけの特権ではありません。典型的なのは、《炎族の先触れ》をプレイ、《激情》をサーチ、《時を解す者、テフェリー》《炎族の先触れ》をバウンス、《炎族の先触れ》をピッチコストに《激情》を「想起」という流れですね。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》と対面すると、突如として《炎族の先触れ》の1/1というサイズが大きな意味を持ってきますので、こういうときはプレイしてしまいましょう。ただ、相手に《炎族の先触れ》に除去を使う判断をされると、サーチしたカードを奪われるという裏目があります。

激情

《孤独》《激情》はその能力で対象を選ばないこともできるので、いつでも単なるクリーチャーとして使うことが可能です。特に《激情》はこの選択肢を取ることが多いですね。

《孤独》は自分のクリーチャーを追放してライフ回復することができます。必要であれば、ほかのインカーネーションが「想起」で生け贄に捧げられる前に追放することもあり得ます。主にバーン相手に有効な戦略です。

忍耐

相手の墓地が十分に溜まっていれば、《忍耐》《タッサの神託者》による勝利を頓挫させることができます。《時を解す者、テフェリー》による防御があれば、アドグレイスなどは手札の《忍耐》を乗り越えて勝つのはかなり難しいはずです。

湖での水難

《湖での水難》を使用する相手には《忍耐》の効果対象を自分にすることもあり得るので覚えておいてください。どちらのプレイヤーを対象にとるか微妙なときもありますから、その都度で判断していきましょう。

ライブラリーアウトに対する《忍耐》の使い方ですが、戦場に出たときの能力の上に「想起」をスタックに積みます。そうすることで《忍耐》が墓地へ行き、その後に《忍耐》も含めてライブラリーに帰っていきます。スタックの積み方を逆にしてしまうと、ライブラリー内の《忍耐》の枚数が1枚減るばかりか、《外科的摘出》の対象としてこれ以上ないものが墓地に残り続けることになります。

死せる生

リビングエンド戦でよく使う戦法ですが、相手の《死せる生》で復活させられるように、クリーチャーを墓地に送るためだけに「想起」させることがあります。また、相手が「想起」させた《悲嘆》《緻密》に対して《孤独》を使い、相手のインカーネーションが墓地に行く前に追放してしまうプレイも考えられます。

マリガンに関した話ですが、土地と呪文のバランスが取れた手札は通常キープします。《発現する浅瀬》があるのが理想的ですが、それを探すために手札の枚数を減らしたくはありません。《創造の座、オムナス》《時を解す者、テフェリー》のドロー効果で《発現する浅瀬》ないしは《炎族の先触れ》をいずれ引けるでしょう。

相性が悪いマッチアップであれば、《楽園の拡散》から3マナ域へジャンプできる手札を見つけられるように、少々厳しめにマリガンします。

3.サイドボーディング

基本的にエレメンタルはクリーチャーを軸に攻めるデッキを得意としています。《発現する浅瀬》を除去できない相手なら、さらに相性は良くなります。

ひとつ例を挙げると、白単ハンマーは夢のようなマッチアップです。《発現する浅瀬》は生き残り、全種のインカーネーションが活躍しますからね。ラガバンデッキや「果敢」デッキとの相性は白単ハンマーほど良くないですが、《発現する浅瀬》が除去されるとしても《創造の座、オムナス》《火炎舌のカヴー》のようなクリーチャーたちがいずれ長期戦を制してくれます。

《孤独》《激情》が強くないマッチアップは、相性が悪いマッチアップです。昨今のモダンのデッキはクリーチャー軸になっているものがほとんどですが、エルドラージや通常のトロンは懸念されるマッチアップになります。

倦怠の宝珠トカートリの儀仗兵Dress Down

エレメンタルに対するヘイトカードも存在します。《倦怠の宝珠》《トカートリの儀仗兵》は全てのクリーチャー効果を無効にするカード。《激しい叱責》もグリクシスカラーのデッキで採用されることがありますが、こちらは効果が一時的なものです。

《虹色の終焉》《時を解す者、テフェリー》があるので、こういったヘイトカードに対して無力ではありません。また、その用途の狭さから現実的に採用できる枚数には限界があります。とはいえ、警戒するに越したことはありません。

《倦怠の宝珠》があると「想起」クリーチャーが死亡しないので覚えておきましょう。《激情》を0マナで唱え、ダメージレースをしかけられます。もっとも、成功しやすいプランではないんですけどね。

否定の力神秘の論争

《否定の力》をサイドに4枚採っています。クリーチャー除去がダメなら、《否認》効果が強いだろうという理屈です。別の打ち消し呪文に変更することも考えられますが、《発現する浅瀬》+《創造の座、オムナス》の爆発力と相性が良いのは《否定の力》でしょう。

ソフトカウンターはどんなものであれ、サイドに入れたくないと断言できます。エレメンタルは非常に長いゲームを戦うので、《神秘の論争》などの類の打ち消しはとても腐りやすいのです。

《否定の力》をサイドインするときに気をつけて欲しいのですが、サイド前よりも早い段階から青マナを2つ用意する必要性が高くなります。《繁殖池》をサーチする機会が断然増えてきますね。

緻密

《緻密》をサイドインする機会はそう多くありません。評価が定まっていない1枚ではありますが、冒頭で書いたように、ビッグマナ戦略に対して試しています。

仕組まれた爆薬

《仕組まれた爆薬》は強力かつ汎用性の高いカード。白単ハンマーに対して有効な1枚です。仮に白単ハンマーしか意識しないのであれば、おそらく《解呪》系のものを増やすでしょう。今回《仕組まれた爆薬》を選択しているのは、サイ続唱に対しても使えるからです。

熟考漂いアルゴスの庇護者、ティタニア目覚ましヒバリ

サイドボードにある追加の《熟考漂い》も高く評価しているカードです。リソースが重要なマッチアップで信頼を置いています。サイドインするときは《否定の力》と一緒に入れることが多く、青という色が意味を持ちます。

消耗戦を意識するなら、ほかの選択肢として《アルゴスの庇護者、ティタニア》《目覚ましヒバリ》がありますが、《熟考漂い》より信頼できるものでありませんね。

活性の力摩耗+損耗

《活性の力》《摩耗/損耗》はどちらもコストパフォーマンスに優れた《解呪》呪文です。《摩耗/損耗》はピッチコストとして使いやすいメリットがありますが、両者に大きな違いはないので、どちらを選んでもおかしくありません。

忍耐ガイアの祝福

エレメンタルはかなり受け身なデッキであり、ライブラリーアウトとの相性は悪いです。《忍耐》がその改善に役立ちますが、その枚数を増やすと《外科的摘出》に弱くなってしまいます。《ガイアの祝福》は同じくサイド後の相性を改善する別軸の対抗策です。ただ、ほかのマッチアップで使い道がないことは確かですね。

ターシャズ・ヒディアス・ラフター引き裂かれし永劫、エムラクール

《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》が収録されましたが、《引き裂かれし永劫、エムラクール》などのエルドラージタイタンよりも《ガイアの祝福》のほうが優先されます。エルドラージは《孤児護り、カヒーラ》の「相棒」条件に反してしまいますし、《ガイアの祝福》《忍耐》のピッチコストになります。さらに《ガイアの祝福》は唱えてライブラリーに戻すことが可能です。

大爆発の魔道士

ほかのサイド候補には《大爆発の魔道士》があります。色拘束が厳しいので今は《緻密》を使っていますが、《大爆発の魔道士》の存在は常に頭の片隅にあります。特に1枚目の《大爆発の魔道士》《炎族の先触れ》でサーチできるようになるため価値が高いですね。さらなる土地対策として《高山の月》《減衰球》も選択肢です。

続唱デッキへの警戒を強めるなら《虚空の杯》がありますが、(X)=1で置くのは現実的ではなく、用途が限定的過ぎるでしょう。

4.サイドボードガイド

白単ハンマー

対 白単ハンマー

Out

忍耐
熟考漂い
楽園の拡散
時を解す者、テフェリー

In

仕組まれた爆薬 仕組まれた爆薬
基盤砕き
摩耗+損耗

負け筋は《発現する浅瀬》を引けないか、それが《流刑への道》されるかです。白単ハンマーはとどめの本体火力を持っていませんから、ライフを大きく削られても構わないので、《孤独》《儚い存在》を使ったり《発現する浅瀬》の効果を誘発させたりと、最大限の使い方をしていきましょう。

イゼット執政

対 イゼット執政

Out

炎族の先触れ 炎族の先触れ 炎族の先触れ

In

忍耐 忍耐
熟考漂い

《炎族の先触れ》をサイドアウトしていますが、中程度の自信しかありません。《敏捷なこそ泥、ラガバン》をブロックできるものの、除去されればサーチしたエレメンタルも追放されてしまう裏目があります。しかし、通常ゲームは長引き、トップデッキ勝負になりやすいです。

相手が《対抗呪文》をサイド後も残しているようであれば、《魂の洞窟》を引けていない限り、《炎族の先触れ》でサーチしたものも打ち消されてしまうでしょう。《思考掃き》でライブラリーから落とされてしまう可能性もあります。

《血染めの月》の存在を念頭に、序盤から基本土地をサーチしましょう。

サイ続唱

対 サイ続唱

Out

虹色の終焉 虹色の終焉
忍耐
熟考漂い

In

否定の力 否定の力
仕組まれた爆薬 仕組まれた爆薬

裏目のないように散らしたサイドボーディングにしてあります。《虹色の終焉》は巻き返すときに役立つこともあれば、サイトークン1体と1:1交換してしまう残念な面もあります。《否定の力》も手札に来すぎると困りますが、《衝撃の足音》《血染めの月》を打ち消せるので数枚は入れています。

ラクドス/グリクシスルールス

対 ラクドス/グリクシスルールス

Out

楽園の拡散 楽園の拡散 楽園の拡散 楽園の拡散
炎族の先触れ

In

忍耐 忍耐
仕組まれた爆薬 仕組まれた爆薬
熟考漂い

マナフラッドすると、大量の手札破壊を前にあっさり負けてしまいますから、ここでは《楽園の拡散》をサイドアウトしています。

戦慄の朗詠者、トーラック

《仕組まれた爆薬》は特に《戦慄の朗詠者、トーラック》を意識したサイドインです。《戦慄の朗詠者、トーラック》を採用していない構成もありますが、白以外の除去は《激情》しかなく、すぐに《激情》では落とせないサイズに成長してしまいます。そこで除去を追加しようというわけですね。

ライブラリーアウト

対 ライブラリーアウト

Out

炎族の先触れ 炎族の先触れ 炎族の先触れ
孤独 孤独 孤独
儚い存在 儚い存在

In

否定の力 否定の力 否定の力 否定の力
忍耐 忍耐
熟考漂い
ガイアの祝福

ライブラリーアウト相手にデッキ枚数を60以上にするサイドボーディングは個人的に好きではありません。多少ライブラリーアウトしにくくなるメリットのほうが大きいとは思えないのです。《時を解す者、テフェリー》は予想に反して強力な1枚であり、序盤から盤面に維持できればゲーム運びがぐんと楽になります。

面晶体のカニ遺跡ガニ

2種のカニは除去対象ですが、除去を残す絶対的な枚数を言うことはできません。《炎族の先触れ》をサイドアウトするため《激情》は「想起」しづらくなっていますが、通常のマナコストで唱えたときのクロックの大きさに価値があります。

外科的摘出

手札の《忍耐》は、墓地の《忍耐》と同時に《外科的摘出》されかねません。緑のピッチコストがあれば別ですが、できるだけ《忍耐》のマナは構えておくようにしましょう。

白日スケープシフト

対 白日スケープシフト

Out

孤独 孤独 孤独
虹色の終焉 虹色の終焉 虹色の終焉
忍耐

In

否定の力 否定の力 否定の力 否定の力
緻密 緻密
熟考漂い

《不屈の独創力》型に対しては、ほぼ同じサイドボーディングになりますが《緻密》の枚数を減らして《孤独》を多めに残します。

リビングエンド

対 リビングエンド

Out

激情 激情 激情 激情
虹色の終焉 虹色の終焉 虹色の終焉

In

忍耐 忍耐
緻密 緻密
否定の力 否定の力
熟考漂い

《忍耐》がキーカードですが、相手にも《悲嘆》《緻密》という対抗策があります。相手の《悲嘆》に対応して《忍耐》を出した場合、さらに対応して《暴力的な突発》を唱えて盤面を広げられてしまうおそれがあります。

そのため、どこかのターン終了時に《忍耐》を「瞬速」で着地させて墓地を一掃できるタイミングあったら、そこを狙っていきましょう。小規模~中規模程度の《死せる生》であれば楽々と対応できます。こちらの「想起」クリーチャーが活躍するマッチアップですね。

緑単トロン

対 緑単トロン

Out

孤独 孤独 孤独
激情 激情
忍耐
虹色の終焉

In

否定の力 否定の力 否定の力 否定の力
緻密 緻密
熟考漂い

《倦怠の宝珠》などの置物に対する《解呪》系呪文としては、《探検の地図》も破壊できる可能性がある《虹色の終焉》がベストであるように思います。《時を解す者、テフェリー》は効果的な相手ではないものの、青のカードとして残しています。

勝つには高速の展開ができる手札を引き込み、《発現する浅瀬》を展開し、相手の脅威を全て打ち消すしかありません。《楽園の拡散》を求めてマリガンしましょう。

エルドラージトロン

対 エルドラージトロン

Out

激情 激情 激情 激情
虹色の終焉 虹色の終焉 虹色の終焉
忍耐
儚い存在

In

否定の力 否定の力 否定の力 否定の力
緻密 緻密
熟考漂い 基盤砕き
摩耗+損耗

エルドラージトロンの脅威となるカードは、ウルザランド、《歩行バリスタ》《大いなる創造者、カーン》です。《儚い存在》は1マナでありながらゲーム中盤以降に唱えるものであるため、《虚空の杯》に引っかかりやすいカードです。そのため、もう1枚追加でサイドアウトして《虹色の終焉》を1枚残す可能性はありそうですね。


今回のデッキガイドがみなさんのお役に立てば幸いです。これまでの経験から言えば、エレメンタルはモダンのTier1であり続ける力を持っていると確信していますし、有利なマッチアップもたくさんあります。きっとこれからもエレメンタルをプレイ・配信し続けていくと思いますよ。

ピオトル・グロゴゥスキ(Twitter / Twitch Youtube)

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Piotr Glogowski マジック・オンライン上でkanisterとしてその名を轟かせ、Twitchの配信者としても人気を博す若きポーランドの雄。 2017-2018シーズンにはその才能を一気に開花させ、プロツアー『イクサラン』でトップ8を入賞すると続くワールド・マジック・カップ2017でも準優勝を記録。 その後もコンスタントに結果を残し、プラチナ・レベル・プロとしてHareruya Prosに加入した。 Piotr Glogowskiの記事はこちら