《船殻破り》の退場からひと月。統率者戦はどうなった?
21年7月の統率者戦ルールアップデートは衝撃的でした。《船殻破り》が禁止推奨リストに入ることになったのです。
ルールアップデート自体は「必要に応じて3カ月に1度」とアナウンスされています。新セットの発売にあわせて発表されることが多く、新しいメカニズムのカードが統率者戦で機能するか明示したり、機能するように細かなルールを変更するのが主な役割でした。
- 2021/07/13
- 21年7月 統率者戦 ルール改定について
「≪船殻破り≫の禁止」 - いってつ
この発表から1カ月。発表をうけたプレイヤーの反応や、デッキの変化をまとめます。
「《船殻破り》が禁止ってまじ!?」あの夜何が起きたか
7月の深夜の出来事でした。シャワーを浴びてそろそろ寝ようか……そんな時にニュースが飛び込んできたのです。「《船殻破り》が禁止ってまじ!?」
競技フォーマットと違い、統率者戦はアーキタイプ支配率や採用率を比べることがなかなかできませんが、《船殻破り》は多くの人に「強力なカード」だと認識されていました。
晴れる屋チャンネルでおなじみ、トロピ大塚も「【MTG】『統率者レジェンズ』注目カードTOP10!!」で最注目カードに選出していましたし、統率者戦プレイ動画シリーズ「晴れコマ!」でもたびたび活躍しました。
《創造の座、オムナス》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がスタンダードなどで禁止された際、「あーあ、やっぱりね」といった感じで、驚きというより落胆という反応が多い印象ですが、《船殻破り》の禁止にはみんなが驚いていました。
統率者戦向けのセットから統率者戦の禁止カードを出してしまったのです。
『モダンホライゾン』はスタンダードではとても収録できない強力なカードをモダンへ直接送り込むのが目的のセットでした。ところが《甦る死滅都市、ホガーク》がそのモダンで禁止されてしまったという悲しい過去があります。
《船殻破り》は新たな「悲しい歴史」を作ってしまいました。
統率者戦の禁止カードというと、よく話題になるのは《タッサの神託者》です。現状は禁止推奨リストには入っていませんが、これを禁止しているコミュニティがあったり、このカードが入っているかどうかで卓を分けるコミュニティもあるようです。
このカードは突然ゲームを終わらせる強力なカードですが、同時に「対戦相手を苦しめずに倒す」カードだから許されているのかもしれません。
《船殻破り》はレアで収録されていたカードであり、『統率者レジェンズ』の注目カードでありながら比較的手に入れやすく、カジュアルなテーブルであっても青いデッキが採用することが多かったのです。
わざわざサーチをするカードではないので登場しないゲームもあったでしょうが、「デッキが青いなら入れて損無し」とまで言われ、相当な数のデッキに採用されていました。《Wheel of Fortune》《Timetwister》がカジュアルなテーブルでプレイされることはそうそう無いでしょうが、《意外な授かり物》《一日のやり直し》はカジュアルなテーブルでもよく見かける「楽しいカード」です。《船殻破り/Hullbreacher》はそんな楽しいカードを食い物にしていました。
全員が手札をリフレッシュする「楽しいカード」を「絶望」に変えてしまうこのカードは統率者から楽しさを奪うとの判断をされました。楽しいカードを捻じ曲げてしまうということ、《タッサの神託者》コンボよりもはるかに長い時間その「絶望」を押し付けられるのはかなり厄介です。
筆者は《船殻破り》コンボをきめたこともきめられたこともありますが、《船殻破り》がなかなか勝負を決めることができず、決められた側は「ドロー……エンド」を繰り返す、かなり悲しい時間が過ぎていきます。ルール委員会のコメント「統率者戦にはびこってほしくないプレイパターン」というのも納得です。
「《船殻破り》の穴に誰を入れよう」
筆者は《船殻破り》を4枚(うちホイル1枚)持っていました。そのうち草の根大会の景品にでもしようと思っていたのですが……
くよくよしていても仕方がありません。ここからは《船殻破り》の禁止後にどんなことが起こったか見ていきます。
《船殻破り》から解放されたカード
ドロー呪文に伴う不安、ストレスが一気に軽減されました。
もともとこうした《Wheel of Fortune》系呪文は全員が手札が増えることが多く、打ち消されることは少なかったのですが、《船殻破り》の登場で非常に使いにくくなってしまいました。
赤のディスカードをともなうドローは《船殻破り》を当てられてしまうと悲惨なことに。
積極的にドローしていく統率者ものびのびと戦えるようになりました。こうした統率者はドローすることがコンボの手順に組み込まれているその「絶望」をことがあり、《船殻破り》が戦場に出ると身動きが取れなくなっていました。そのため、こうしたデッキは《船殻破り》を対処できる除去を増やさざるを得なかったのです。
《船殻破り》の後釜
《敵対工作員》
《船殻破り》が抜けて空いた枠にわかりやすく除去や打ち消し、アドバンテージ源が入ったデッキもあります。一方、《敵対工作員》と出会うことが増えてきました。
《敵対工作員》も『統率者レジェンズ』で登場したカード。対戦相手のサーチを奪います。
《Wheel of Fortune》など対戦相手にドローを強いるカードは多数存在するものの、サーチを強要するカードは少ないため、「対戦相手のサーチカードやフェッチランドに対応して出して、1度アドバンテージを奪って終わりになってしまう」として《船殻破り》と比べるとやや評価が低かったのです。
しかしいざ使ってみると、「サーチ不能」は「ドロー不能」と同じくらいのペースダウンとなるロックでした。多色デッキがフェッチランドを起動できなくなってしまうのは想像以上のロックです。
《死の国からの脱出》コンボを擁するデッキでは《直観》の採用がよく見られますが、これに《敵対工作員》が強烈な一撃を与えます。対戦相手のデッキから3枚もカードを奪ってしまうのです。
カード発表当初から《朝の歌のマラレン》《対称な対応》との強力なシナジーが注目されましたが、これなしでも十分な活躍が期待できます。
ほかのカードと枠を奪い合ってデッキから抜けることも少なくなかった 《敵対工作員》 ですが、ここへきて存在感を増しています。
青黒を含むデッキで、《船殻破り》の後を埋めています。
《概念泥棒》
「2色のカードなのでとりあえず見逃す」とコメントされていた《概念泥棒》ですが、《船殻破り》がいなくなって油断したところに飛び込んできてめちゃくちゃになるゲームも発生しています。
《船殻破り》と比べると価格面でも手に入りやすいカードなので、カジュアルなテーブルでも見かけることがあるでしょう。
まとめ
多くのプレイヤーが「禁止カードが出てしまった」ことを悲しみました。その一方で、《船殻破り》が去ったことで復興した戦術が多かったことも事実です。
筆者のようにカード資産の価値が落ちてしまって落ち込んだ方もいたことでしょう。「先週買って、まだ一度も使ってないのに……」という方も見かけました。禁止カードが出ることは悲劇ですが、筆者は統率者戦の環境はよくなったと感じています。さようなら、すべてのハルブリーチャー。
っていうかぼくの4枚のハルブリーチャー。
レガシーとヴィンテージで元気で暮らせ。
【イベント情報】トーナメントセンター東京にて、9月20日(月・祝)に大規模統率者イベント開催決定!
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) August 6, 2021
初心者の方でも超ガチな方でも、お一人でもグループでも、誰もが楽しめるイベントです!
詳細は後日発表となりますので、楽しみにお待ちください!
※社会情勢により延期・中止となる場合がございます pic.twitter.com/o4UGM0NCP7
いったい何が起こるのか。とってもワクワクしています。待て次報。