はじめに
みなさんこんにちは。
『モダンホライゾン2』がリリースされてしばらく経ちますが、環境は変化し続けておりプレイしていて面白いフォーマットです。
さて、今回の連載ではModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12331035 8/21
Jund復権
2021年8月21日
- 1位 Jund
- 2位 Azorius Control
- 3位 Burn
- 4位 Dimir Mill
- 5位 Mardu Midrange
- 6位 Grixis Control
- 7位 Burn
- 8位 Belcher
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最近活躍していたElementalは早くも対応されて上位では少数になり、現在は《断片無き工作員》デッキ、《ウルザの物語》デッキ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキが中心の環境になっています。
今大会で見事に優勝を収めたのは、《ウルザの物語》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》など『モダンホライゾン2』の強力なカードを多数採用した新しい形のJundでした。
また、今大会でもマジック・プロツアー殿堂でコントロールのエキスパートであるGuillaume Wafo-Tapa氏が、PTQを通過したのと同様のAzorius Controlを持ち込み準優勝という好成績を残していました。
デッキ紹介
Jund
《タルモゴイフ》《稲妻》《思考囲い》といった歴代の強力なカードと《ウルザの物語》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》など『モダンホライゾン2』の強力なカードをひとまとめにして、《夢の巣のルールス》を「相棒」にした新しい形のJund。
Jundといっても《邪悪な熱気》など赤にも軽い優秀な除去が加わったため、黒いカードはハンデスと《夢の巣のルールス》、一部のサイドボードのカードのみと少数で、ほとんどGruulタッチ黒といった感じに仕上がっています。
現環境の定番の組み合わせである《ドラゴンの怒りの媒介者》と《邪悪な熱気》の「昂揚」パッケージと、《ミシュラのガラクタ》+《夢の巣のルールス》で継続的にアドバンテージを稼ぎやすく、環境の多くのフェアデッキとのマッチアップで互角以上に渡り合うことができます。
☆注目ポイント
《ミシュラのガラクタ》+《夢の巣のルールス》のパッケージを採用することで、《タルモゴイフ》のサイズアップに貢献しつつ「昂揚」の条件も満たしやすくなります。「昂揚」すると優秀な除去になる《邪悪な熱気》が登場したことによって除去を黒に頼る必要がなくなりました。しかし、《濁浪の執政》を対策する必要があるため、サイドに《終止》が採られています。飛行クリーチャー限定の布告除去である《巻き添え》も、《濁浪の執政》に対する有力な除去として機能します。
《ドラゴンの怒りの媒介者》は「諜報」によって「昂揚」の条件を達成させるとともに《タルモゴイフ》の強化にも貢献します。もともと除去やハンデス、フェッチランドを多用するデッキなので《タルモゴイフ》を強化するのは容易でしたが、《ミシュラのガラクタ》や《ウルザの物語》を採用しているため驚異的なスピードで成長します。
《ウルザの物語》のサーチ先としてさまざまなアーティファクトがメインから採用されています。《探検の地図》は追加の《ウルザの物語》を探し出し、《虚無の呪文爆弾》はメインから無理なく採用できる墓地対策としてLiving Endなど多くのデッキとのマッチアップで活躍します。プレインズウォーカー対策になる《真髄の針》や除去またはキャントリップになる《黄鉄の呪文爆弾》など状況に応じてサーチしていきます。
Modern Challenge #12331041 8/22
安定のIzzet
2021年8月22日
- 1位 Counter Monkey
- 2位 Azorius Control
- 3位 Temur Footfalls
- 4位 Burn
- 5位 Living End
- 6位 Yawgmoth
- 7位 Hammer Time
- 8位 Living End
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「続唱」デッキ、Burn、Azorius Controlなどさまざまなデッキが勝ち残っていました。
特に今大会で入賞していたBurnは従来までのものと大きく異なり、《ドラゴンの怒りの媒介者》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したクリーチャーが多めの形となっていました。
今大会で優勝を収めたのは、現環境の定番のデッキの一つであるCounter Monkeyでした。対策されている中での優勝でデッキの地力の高さが分かります。
デッキ紹介
Burn
長い間リストに大きな変更が加えられることが少なかったBurnでしたが、ここにきて大きな変更が加えられることになりました。
《ドラゴンの怒りの媒介者》と《敏捷なこそ泥、ラガバン》が新戦力として加わったのです。《ミシュラのガラクタ》+《夢の巣のルールス》のパッケージも搭載されているため、《大歓楽の幻霊》の枚数がわずか1枚まで減量されています。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」によってドローの質を上げることができるのでより動きが安定するようになりました。Burnは「諜報」を発動させる機会も多く、マナフラッドによって最後の数点を削り切れずに負けるといったシチュエーションも減らすことができます。Counter MonkeyやJund、Rakdosといったデッキと同様に《敏捷なこそ泥、ラガバン》は継続的にアドバンテージを稼ぎだします。「疾駆」による奇襲性も持ち合わせているのでライフを攻めるこのデッキにも合ったクリーチャーです。
《夢の巣のルールス》によってクリーチャーを再利用することができるので、中盤以降のゲームでもプレッシャーを与え続けることができます。《ミシュラのガラクタ》はダメージ源にならないため一見するとこのデッキのコンセプトに合っていない印象ですが、《夢の巣のルールス》によって再利用することでカードアドバンテージを得ることができ、0マナで「果敢」や「諜報」発動させることができるのでデッキのスロットを割く価値はあります。
Hammer Timeなど装備品や各種《ウルザの物語》デッキを意識しているようで、サイドには《粉々》が4枚採用されています。
Modern Challenge #12333333 8/28
目まぐるしく変化する環境
2021年8月28日
- 1位 4C Velomachus
- 2位 Jund
- 3位 Temur Footfalls
- 4位 Hammer Time
- 5位 Azorius Control
- 6位 Jund
- 7位 4C Footfalls
- 8位 Dimir Mill
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《断片無き工作員》デッキと《ドラゴンの怒りの媒介者》+《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキ、《ウルザの物語》デッキが中心の環境に対応したAzorius Controlが環境に加わりました。
Azorius Controlは「続唱」デッキや《ドラゴンの怒りの媒介者》+《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキに刺さる《虚空の杯》をメインから採用した形が結果を残し続けています。
今大会で優勝を収めたのは、最近MOのモダンのイベントで結果を残し続けているGuillaume Wafo-Tapa氏でした。彼が今大会で使用していたデッキはいつもの青白ではなくなんと4C Velomachusでした。
デッキ紹介
4C Velomachus
《不屈の独創力》をキーカードにしたコンボデッキで、《堅固な証拠》や《ドワーフの鉱山》といったカードによって生成したトークンを《ヴェロマカス・ロアホールド》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》に変えて勝負を決めます。
《時を解す者、テフェリー》や《レンと六番》といったプレインズウォーカー、《虹色の終焉》《火/氷》といった除去が採用されているなど、コンボデッキというよりはコンボを搭載したコントロールデッキになっています。双子コンボのようにコントロールとして振舞いつつ、相手が隙を見せたらコンボで勝負を決めるタイプの戦略です。
☆注目ポイント
《ドワーフの鉱山》は土地タイプが山なのでフェッチランドからサーチしてくることができます。《先駆ける者、ナヒリ》は[+2]能力によってキーカードを探すことに貢献しつつ、手札に来てしまった《引き裂かれし永劫、エムラクール》をライブラリーに戻すことができます。また、奥義により《引き裂かれし永劫、エムラクール》をコンボ以外で出す手段にもなります。
《プリズマリの命令》は最近よく見られるようになったスペルで、ルーターモードによってコンボパーツを探しつつ《不屈の独創力》の種になる宝物・トークンを生成することができます。アーティファクトである宝物トークンは、ドワーフ・トークンやカニ・トークンと異なりクリーチャー除去によって妨害されないのでコンボが決めやすくなります。
Modern Challenge #12333356 8/29
モダンホライゾン2によって進化し続けるアーキタイプ
2021年8月29日
- 1位 Golgari Yawgmoth
- 2位 Hammer Time
- 3位 Counter Monkey
- 4位 Counter Monkey
- 5位 Counter Monkey
- 6位 Temur Footfalls
- 7位 Dimir Mill
- 8位 Tron
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優勝こそ逃したもののCounter Monkeyがプレイオフに3名と安定した成績を残していました。
TronやDimir Millといったコントロールに強いデッキも勝ち残っています。
今大会で優勝を収めたのは、「不死」クリーチャーと《スランの医師、ヨーグモス》による無限コンボによってゲームに勝利するGolgari Yawgmothでした。
デッキ紹介
Golgari Yawgmoth
《スランの医師、ヨーグモス》をキーカードにしたアグロコンボデッキ。
デッキの動きは《スランの医師、ヨーグモス》と2体の「不死」クリーチャーを並べます。《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動して「不死」クリーチャーの1体をサクリファイスしてもう1体の「不死」クリーチャーに-1/-1カウンターを置きます。この一連の動作を繰り返すことで、ライフを減らす代わりに大量のカードを引くことができるのです。
「不死」クリーチャーが《ゲラルフの伝書使》の場合は同時に相手のライフを削ることもできます。《スランの医師、ヨーグモス》+「不死」持ちクリーチャー2体に《ズーラポートの殺し屋》が並んでいた場合は無限ループになり、そのまま相手のライフをドレインすることができます。
《召喚の調べ》や《異界の進化》といったサーチスペルが使えるためデッキの動きが安定しています。「不死」クリーチャーは追放系の除去以外に耐性があり、相手は複数回除去を使うことになるため除去を多用するミッドレンジに強い構成です。ほかの多くのデッキと同様に『モダンホライゾン2』の恩恵を受けています。
☆注目ポイント
追加コストとしてクリーチャーをサクリファイスする必要がある《異界の進化》は「不死」クリーチャーと相性がいいサーチスペルです。《召喚の調べ》など色拘束の強いカードが多いこのデッキにとって《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》は大きな収穫となりました。《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》とともにこのデッキのマナ基盤の安定性を支えます。
《下賤の教主》はこのデッキにとって念願の緑マナと黒マナが出せるマナクリーチャーです。《貴族の教主》同様に「賛美」持ちなので《極楽鳥》よりも優先されています。
《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーとしての特性も持っているため、《召喚の調べ》などサーチスペルでサーチしてくることができます。トークンを生成する[+1]能力は《スランの医師、ヨーグモス》のサクリファイスや「召集」要員の確保に役に立ちます。[-2]能力も「不死」持ちのクリーチャーと相性が良く、コンボに頼ることなくミッドレンジとしても振舞いやすくなります。
Modern Challenge #12335533 9/4
Living End強し
2021年9月4日
- 1位 Living End
- 2位 Hammer Time
- 3位 Blue Moon
- 4位 Burn
- 5位 Jund
- 6位 4C Velomachus
- 7位 Dimir Mill
- 8位 Temur Footfalls
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環境は今大会で優勝を果たしたのはLiving Endでした。スイスラウンドを無敗でそのまま優勝という驚異的なパフォーマンスを見せました。
デッキ紹介
Dimir Mill
Dimir Millというアーキタイプ自体はコントロールメタとして環境に長い間存在しますが、最近は新戦力にも恵まれてModern Challengeの上位でもよく見られるアーキタイプの一つになりました。
『エルドレインの王権』から登場した《湖での水難》、『ゼンディカーの夜明け』から追加の《面晶体のカニ》である《遺跡ガニ》を獲得したことで安定性が向上し、さらに『モダンホライゾン2』からも《正気破砕》が登場してより強化されました。
最近は除去に加えアドバンテージ源の《彼方の映像》や《夢の巣のルールス》も健在なため、コントロールのように振舞いつつ相手をライブラリーアウトさせて勝利を狙うのが主な戦略となります。
☆注目ポイント
Temur Footfallsの《衝撃の足音》やHammer Timeの《巨像の鎚》など、モダンのトップメタデッキの中には特定のカードに依存した戦略が散見されるので、メインから採用されている《外科的摘出》は脅威となります。
《正気破砕》は3マナで14枚も「切削」する強力なライブラリー破壊スペルですが、それだけでなく2マナでサイクリングしても4枚「切削」することができるのでマナが足りないときや除去やほかのカードが必要なときも使えます。
『フォーゴトン・レルム探訪』から登場した《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》は「切削」したカードを追放できるため、対策としてサイドボードに採用されている《引き裂かれし永劫、エムラクール》などに引っかからないのも大きく、このデッキの強化に貢献しています。現環境では《夢の巣のルールス》を「相棒」としたデッキが多数存在するため必然的にマナ総量が軽いデッキが多く、一度に大量のカードを「切削」することができます。
Modern Challenge #12335539 9/5
環境を牽引するIzzet
2021年9月5日
- 1位 Counter Monkey
- 2位 Hammer Time
- 3位 Jund
- 4位 Esper Mill
- 5位 Counter Monkey
- 6位 Domain
- 7位 Azorius Blink
- 8位 Grixis Control
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Counter Monkey、Hammer Time、Jundといったデッキが順当に結果を残していました。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》とETB能力持ちのクリーチャーによってアドバンテージを稼ぐAzorius Blink 、《ドラゴンの怒りの媒介者》+《敏捷なこそ泥、ラガバン》の定番のコンビから《野生のナカティル》といった新旧入り乱れたDomain Zoo、《氷の中の存在》入りのGrixis Controlなどモダンらしくいろいろなデッキが見られました。
デッキ紹介
Counter Monkey
一時期は上位から数を減らしていたCounter Monkeyですが、Tronなど相性の良いマッチアップが復権してきたことによって再び上位で見られるようになりました。
《濁浪の執政》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》といったレガシーでも第一線で活躍している強力なクリーチャーが使えるのに加えて、《表現の反復》など優秀なスペルにも恵まれているためデッキとしての強さは環境最高レベルです。
『モダンホライゾン2』リリース直後の環境のリストと比べるとメインの《大魔導師の魔除け》やサイドの《精神を刻む者、ジェイス》など青がより濃くなっています。メイン、サイドともにカウンターを厚く採ることでTemur Footfalls、Living End、Tronなど環境のさまざまなマッチアップで有利が取れるように調整されています。
☆注目ポイント
《瞬唱の魔道士》や《厚かましい借り手》といったクリーチャーは不採用で、メインは《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《濁浪の執政》の3種類に絞られています。実質3マナ域としてカウントする《瞬唱の魔道士》は、すでにメインから2枚の《大魔導師の魔除け》を採用しているこのリストでは少し重くなるため採用を見送られたと思われます。
Hammer TimeやTemur Footfallsの《衝撃の足音》など多くのマッチアップで使える《仕組まれた爆薬》がメインから採用されています。《仕組まれた爆薬》は《タルモゴイフ》や《虚空の杯》に対する回答にもなるので、サイドにも追加で2枚採用されています。Living Endのように墓地を使うデッキが活躍している環境では、《魂標ランタン》など墓地対策は欠かせません。
《高山の月》と《血染めの月》は土地コンボ対策ですが、この2種類のカードのどちらが優れているかは環境にもより、さまざまなデッキが存在する現環境では判断が難しいところです。《高山の月》はコストも軽いため非常に使いやすく、《ウルザの物語》やトロンランド対策に有用です。《血染めの月》はGrixisなど多色デッキに対しても刺さりますが、多数引きたいカードではないため1枚のみの採用になっています。
《終止》や《至高の評決》など《濁浪の執政》に対する回答も増加傾向にあり、脅威の種類を分散させるために《精神を刻む者、ジェイス》が採用されています。Azorius、Grixisなど多くのフェアデッキとのマッチアップで活躍します。
《激しい叱責》は主にElementalsやHammer Timeとのマッチアップでサイドインされます。能力持ちのクリーチャー対策として有用で、《ウルザの物語》から生成された構築物・トークンも一掃することができます。さらに、ETB能力を持つクリーチャーを多用するデッキ対策として《倦怠の宝珠》も採用されています。
総括
《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ウルザの物語》といった強力なカードによって環境のバランスが壊されるのではないかと懸念されていましたが、『モダンホライゾン2』加入後のモダンは旧環境では人気がなかったデッキも多数復権してきており、多様性の観点から見れば良環境だと思います。
以上、USA Modern Express vol. 62でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!