Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/10/1)
試行錯誤を楽しむコントロールデッキ
みなさん、ごきげんよう。
発展の真っ只中にあるスタンダード。今日は、そのなかでもポテンシャルの高いデッキであるイゼットドラゴンを見ていくことにしよう。
内容に入る前に、この記事の構成について言及しておきたい。まずイゼットドラゴンの一般的な構築方法を2つ紹介し、その後にデッキに入り得るカードの選択肢を検証する。
なぜこういった構成にしたのかと言えば、コントロールデッキでは個人の感覚が重要だと思っているからだ。ネットでコントロールのデッキリストを拾ってくると、作り手の意図が不明瞭なカードがあったりする。そうなれば、デッキの本領を引き出してやることはできない。
しかし、そういったカードを自分が慣れ親しんだカードと入れ替えれば、そのデッキは(少なくともあなたにとって)フルパワーを出せるものになるだろう。仮にそのお気に入りのカードが微妙なパフォーマンスに終わったとしても、機能しないとわかれば結果的に機能するものを知ることができる。ミスから学びを得るなら、自分で痛い目にあったほうが楽しいし、成長も早いと私は思う。
2つの構築方法
《黄金架のドラゴン》型
もっとも人気が高いのが《黄金架のドラゴン》と《アールンドの天啓》を軸にした構成だ。
コントロール型
2つ目のアプローチは、もっとコントロールに寄せた形だ。《砂漠滅ぼし、イムリス》をフィニッシャーに据えている。
採用候補
クリーチャー
《黄金架のドラゴン》
《黄金架のドラゴン》はもう説明するまでもないだろう。《レンと七番》というライバルこそ現れたが、《アールンドの天啓》や《マグマ・オパス》へとマナ加速してくれる素晴らしい飛行クロックだ。
《くすぶる卵》
現環境ではパワー3のクリーチャーが多いため、《くすぶる卵》の立ち位置は良い。アグロが除去をあまり採っていないこともあいまって、盤面に残りやすくなっている。載せるカウンターの数は、マナ総量ではなく支払ったマナの点数を参照するので気をつけよう。
《砂漠滅ぼし、イムリス》
現代の《龍王オジュタイ》は見た目に違わぬ強さを持っている。タフネス5+「護法(4)」は現環境で頼もしいスタッツであり、パワーが5あるため《ドラゴンの火》で5/5のツリーフォークトークンを焼くことができる。
《ガラゼス・プリズマリ》
個人的に思い入れのあるカードだが、今の環境には合っていないと言わざるを得ない。3/4というサイズでは物足りなさ過ぎる。
《星山脈の業火》
ミラーマッチにおける最高のフィニッシャーだ。打ち消されず、タフネスが6あるため、相手は2枚以上のカードを消費しないと除去できない。ディミーアコントロールは綺麗に対処する手段を若干数持っているが、イゼットドラゴンはサイド後にクリーチャーの枚数が増えるため、相手は相当数の除去を積んでおかなくてはならない。
《心悪しき隠遁者》
これもまた対コントロール用の選択肢だ。《マナ漏出》効果も「降霊」も超強力であり、2ターン目から相手にプレッシャーをかけられる。こいつ自身に除去を差し向けられたとしても、「降霊」によって有利なトレードになる。《心悪しき隠遁者》はセレズニアに対しても、後手ではそうでもないが、先手なら有効だ。
《怪しげな密航者》
対コントロール用として最初に試したのが《怪しげな密航者》だったが、ミッドレンジに対してのほうが有効なカードだと気づいた(特に先手)。
自分のターンに何もプレイせずに夜にし、除去は相手のアップキープに撃つようにする(《ムラーサの根食獣》は例外)。そうすれば、4ターン目からブロックされないドローエンジンが誕生する。運よく相手の動きが鈍ければ、3ターン目に変身することもあり得るだろう。
いまのところ先手では強いと実感しているが、後手でもサイドインするほどかは検証する必要がある。それから、夜が明けるのはアクティブプレイヤーが2つ以上の呪文を唱えていたときだけだから気をつけよう。
除去
《霜噛み》
マナベースを雪で覆ってもデッキに悪影響はない(サイドボードから《傑士の神、レーデイン》が飛び出してくることはある)。ただ、火力呪文のダメージが2点と3点では今のスタンダードでは大きな違いがある。3点ならすべての変身前の狼男、《茨橋の追跡者》、「敵対者」を倒せる。
1マナ除去のライバルとしては《火遊び》がある。コントロールに対して無価値ではないが、《ショック》をコントロールに対して使いたいとは思わないだろう。
《ドラゴンの火》
3点ダメージだけでも悪くないが、このデッキならドラゴンクリーチャーで火力を引き上げられる。《黄金架のドラゴン》なら変身した狼男、《エシカの戦車》、《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》、《黄金架のドラゴン》を除去できる。《砂漠滅ぼし、イムリス》であれば《レンと七番》のツリーフォークトークンまで射程圏内だ。
戦場にいるドラゴンを自動的に参照してくれるわけではないので、オフラインでもオンラインでもちゃんと宣言するようにしよう。
《バーニング・ハンズ》
いまポテンシャルの高いカードだ。緑単やグルールのクリーチャーなら全て倒せるし、6/6以下のツリーフォークトークンも対処できる。相手が安全を取って[+1]から入ってきたら《レンと七番》本体すら焼ける([+1]から起動するのは基本的におすすめしない)。私なら《バーニング・ハンズ》は4枚サイドボードに採る。
《ドラゴンの介入》
比較的マナコストが軽い全体除去なので、デッキ構築に当たって覚えておきたい1枚。ただ、青赤というカラーはクリーチャーを1体1体除去していく色であるし、《ドラゴンの介入》は盤石な全体除去ではない。《プリズマリの命令》や《マグマ・オパス》を事前に使えれば4ターン目に安定した運用ができるだろうが、採用しているリストはほとんどないようだ。
《家の焼き払い》や《霜と火の戦い》も同様であり、5マナは重く、《エシカの戦車》は結局盤面に残ってしまう。
《燃えがら地獄》
《燃えがら地獄》は軽く、「キッカー」による柔軟性があり、ウィニー系のデッキに対して有効な除去。ただ、ウィニー系がどれほど環境にいるのかが問題だ。
《髑髏砕きの一撃》《棘平原の危険》
このデッキにタップイン土地は入れたくないし、《棘平原の危険》は1点ダメージで火力が低すぎる。採用するとすれば、メインデッキから《くすぶる卵》をフル投入しているときだろう。そうすれば《棘平原の危険》は使いやすくなるはずだ。
《髑髏砕きの一撃》は立場が向上したカードである。8マナ注ぎ込めば12点を分割で飛ばし、ツリーフォークトークン+1体を一掃できる。
打ち消し
《襲来の予測》《軽蔑的な一撃》《否認》
記事執筆時点では明らかにアグロが隆盛しており、打ち消し呪文の立ち位置は良くない。しかし、メタゲームは今も変化しており、打ち消しの採用を肯定するような《レンと七番》や《スカルドの決戦》が登場している。ここで考えてもらいたいのは、そもそも何を打ち消したいのかということだ。
もっとも打ち消したい呪文は、《レンと七番》《スカルドの決戦》、ドラゴンクリーチャー(《イマースタームの捕食者》《黄金架のドラゴン》《砂漠滅ぼし、イムリス》)だ。
そのほかには、《多元宇宙の警告》《記憶の氾濫》などのアドバンテージがとれるドロー呪文、《群れの希望、アーリン》。それから《エシカの戦車》だ(《プリズマリの命令》がなければ《エシカの戦車》は「もっとも打ち消したい呪文」のカテゴリーに入っていただろう)。
《襲来の予測》は《深夜の災い魔、トヴォラー》や《無謀な嵐探し》などの3マナ域を先手時に打ち消すのに便利だが、3ターン目に《襲来の予測》を構えるのであれば、どんなアクションに対しても打ち消しを使うハメになるだろう。対アグロで後手になれば《襲来の予測》はひどく弱くなる。
理想的な展開は、クリーチャーを除去呪文でさばき、フィニッシャー級の呪文に打ち消しを充てることだろう。そう考えると、3マナの打ち消しでなくても事足りるし、2マナの打ち消しなら《否認》よりも《軽蔑的な一撃》のほうが受けが広いように思う。というわけで、現時点での私の選択は《軽蔑的な一撃》だ。もっとも、今後選択が変わる可能性はある。
ドロー
《考慮》
《考慮》を採用していないリストもあるが、それは無理もない。カードアドバンテージを得られないからだ。
それでも、私は《考慮》を評価している。占術ではなく実質的に「諜報」をしているため、「フラッシュバック」を持つ《記憶の氾濫》、「降霊」を持つ《心悪しき隠遁者》を墓地に落せるシナジーがある。《デミリッチ》を採用するならそれとの相性も良いだろう。
《表現の反復》で追放しても、1マナである《考慮》は無駄なく使いやすい。《くすぶる卵》の良きパートナーでもあり、変身後に1マナで能力を誘発させたり、カウンターを7つ載せる手段ともなる。
この手のキャントリップを使うときは、すぐに唱えなくても良いと理解しておこう。ゲームが長引けば、自分がいま何を求めているのかハッキリとわかるようになる。
《表現の反復》
2マナで手札に加えるカードを選びながら2枚もドローできるのは破格だが、ソーサリーゆえにある問題が浮かび上がる。《表現の反復》は何ターン目にプレイすべきだろう?
個人的には4ターン目ではないかと思っている。めくった3枚のなかに土地がなくても、2マナの呪文なら唱えられるタイミングだからだ。《黄金架のドラゴン》のマナブーストがあればさらに使いやすくなるが、ソーサリータイミングのドロー呪文をコントロールデッキが必要とするものなのか、私はまだ懐疑的だ。
《多元宇宙の警告》と《記憶の氾濫》の比較
《多元宇宙の警告》
○:《記憶の氾濫》よりも《多元宇宙の警告》を優先させる大きな理由は、マナの支払を分割できること。特に先手2ターン目は何もすることがないことが多く、これは確かな強みである。
○:「予顕」は2マナという軽さで手札を隠すことができ、《砂漠滅ぼし、イムリス》のドロー枚数を増やしやすくなる。
×:「予顕」から唱えると《くすぶる卵》はカウンターが2つしか載らない。
×:占術2は「ライブラリー上から4枚を確認する」と似た印象を受けるかもしれないが、実際には大きな差がある。
《記憶の氾濫》
○:《多元宇宙の警告》よりもライブラリーを深く掘ってからカードを選べる。
○:《プリズマリの命令》で捨てても、後々「フラッシュバック」でアドバンテージを得られる。
○:《ガラゼス・プリズマリ》や《黄金架のドラゴン》のマナブーストで「フラッシュバック」を使いやすくすれば最高のカードになる。
「予顕」をとるか、《記憶の氾濫》のいくつかの小さなメリットをとるか。私はしばらく《多元宇宙の警告》の船に乗っていたが、今は《記憶の氾濫》に天秤が傾いている。
その他の汎用呪文
《プリズマリの命令》
どのモードも素晴らしい。《エシカの戦車》が多い環境であり、メインデッキに入れても全く不自然ではない。《エシカの戦車》を抜きにしても、《粉砕》モードは《スカイクレイブの大鎚》、手がかりトークン、宝物トークンを破壊できる。
宝物トークンモードは《砂漠滅ぼし、イムリス》や《黄金架のドラゴン》を4ターン目に出せるようにする。先手でこの動きができれば、相手は相当辛いはずだ。《ショック》モードは4つの選択肢のなかでは一番弱い。盤面に放置できないクリーチャーは2点では焼けないからだ。
《マグマ・オパス》
《マグマ・オパス》は《黄金架のドラゴン》型の構成に合うカードだ。その効果はすさまじいが、8マナの呪文を安定して唱えられるようにするなら宝物トークンを生成できる手段をいくつか用意しておくべきだろう。
フィニッシャー級の呪文を宝物トークンに変換してしまうことに違和感があるかもしれないが、その選択肢があるからこそこのカードは強い。3ターン目に《ガラゼス・プリズマリ》、4ターン目に《黄金架のドラゴン》を出せるし、急ぐ必要がないならその派手な効果に相手は怯えることになる。
4枚フル投入する構成もあるようだが、それはやりすぎな印象を受ける。2枚がいい塩梅だろう。
《アールンドの天啓》
私の使い方が間違っているのかもしれない。スゥルタイ根本原理の《アールンドの天啓》は、《出現の根本原理》からゲームエンドになるような呪文と同時に唱えられるからこそ異常に強いカードになっていた。
《砂漠滅ぼし、イムリス》や《黄金架のドラゴン》が盤面に出ている状態なら《Time Walk》は最高だろう。だが、その盤面ならすでにゲームは軌道に乗っているだろうし、盤面が空の状態なら望むのは2体の鳥トークンだろうか(たしかに鳥トークン2体はしばらくの防衛線にはなる)。
「予顕」していなければ《くすぶる卵》を一発で変身させられるが、6~7ターン目までゲームが進んでいれば変身に苦労することはないだろう。今の環境にはハイインパクトのカードが少ない。《アールンドの天啓》よりも良い選択肢がないから、このカードはこれだけ採用されているのだろう。近いうちにこの枠に《星山脈の業火》を試してみようと思っている。
土地
《ストーム・ジャイアントの聖堂》
おすすめの枚数は2枚だ。マナフラッド受けとして最高であり、宝物トークンがたくさんあれば一層使いやすくなる。
《バグベアの居住地》《不詳の安息地》
ときおり採用されているが、私はおすすめしない。マナベースへの負荷はそんなに大きくないが、アタッカーに回すならもっと適役がいる。
《廃墟の地》
《廃墟の地》は見た目以上に強い。《ストーム・ジャイアントの聖堂》《ハイドラの巣》が厄介だからだ。《冠雪の山》をサーチしながら《霜噛み》を唱えるなど、氷雪マナベースにヒビを入れることもない。
以上がイゼットドラゴンに採用する候補となるカードである。可能性を摸索し、構築し、ドラゴンで攻撃する快感を味わってみよう!
ここまで読んでくれてありがとう。では、オンラインで会おう。
ドミトリー・ブタコフ(Twitter)