はじめに
みなさんこんにちは。
日本国内ではようやくテーブルトップのイベントが復活しましたね。アメリカでも今月末にはSCG Invitationalが、来月にはChannelFireball主催の大規模なモダンのイベントが開催されることもあり、モダンは現在もっとも熱いフォーマットの一つです。
さて、今回の連載では先週末にMagic Online(以下、MO)で開催されたChampionship Qualifiers(以下、CSQ)の結果を見ていきたいと思います。
Modern Premier #12347337
現環境のメタゲームに合わせたコントロールが勝利
2021年10月15日
- 1位 Azorius Control
- 2位 4C Ephemerate
- 3位 Burn
- 4位 Burn
- 5位 Hammer Time
- 6位 Hammer Time
- 7位 Boros Ephemerate
- 8位 Jund Saga
トップ8のデッキリストはこちら
先週末にMOでモダンCSQが複数開催されました。Modern Challengeに比べ参加人数も多く、勝率を優先したデッキが選択される傾向にあります。
競技志向の高いイベントでしたが、プレイオフはモダンらしくBurnやHammer Time、Jund Sagaといった定番のほかにも、4C EphemerateやBoros Ephemerateといったデッキも結果を残していました。今大会で優勝を収めたのはメインから《虚空の杯》を採用したAzorius Controlでした。
『モダンホライゾン2』リリース後混沌としていたモダン環境ですが、最近は研究が進んでメタもある程度まで固まってきた感があり、コントロールも活躍しやすい環境になってきました。
デッキ紹介
Azorius Control
最近よく見られるようになってきたAzorius Control。『モダンホライゾン2』から念願の《対抗呪文》が再録され、いよいよコントロールの時代が来るかと期待されましたが、《ウルザの物語》のようにコントロールにとって対処が難しいカードが登場したため当時は苦戦を強いられていました。
《精神を刻む者、ジェイス》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》といったプレインズウォーカーも1マナの《邪悪な熱気》で簡単に対処されるようになり、「続唱」デッキや各種《ウルザの物語》《夢の巣のルールス》デッキはコントロール以上にロングゲームを得意とするため、従来までの「カウンターと除去で脅威を捌きながらプレインズウォーカーでコントロールする」という戦略が通用しづらくなったのです。
そこで注目されたのが《虚空の杯》です。デッキ全体が軽い《夢の巣のルールス》デッキや「待機」スペルを封じる非常に強力なカードで、これをメインから採用したAzorius ControlがModern Challengeなどで結果を出し始めました。
☆注目ポイント
BurnやHammer Time、Jund Sagaなど《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたデッキや、Temur FootfallsやLiving Endといった「続唱」デッキが現環境の中心なため、《虚空の杯》をX=0-1で設置することで多くのデッキが機能不全に陥ります。これにより、相手の序盤の動きをシャットアウトして青白の得意なロングゲームに持ち込む戦略を取りやすくなりました。
特に「続唱」デッキに対して《虚空の杯》を1ターン目に設置できた場合は、相手に《虚空の杯》を先に対処することを強いることができるのでかなり時間を稼ぐことができます。
相手の分け方に左右される《嘘か真か》よりも、必要なカードを2枚確実に手に入れることができる《記憶の氾濫》が優先されています。「フラッシュバック」も付いているのでカウンターやハンデスにも強く、長期戦になりがちな同型やJund Sagaとのマッチアップでは重要なアドバンテージ源になります。
最近では《広がりゆく海》がメインから採用されるようになりました。トロンランドやミシュラランド、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》といった特殊地形はもちろんのこと、《ウルザの物語》に対する解答にもなります。サイドには《黄昏の享楽》が3枚と多めに採用されており、Burnを意識していたことが分かります。
4C Ephemerate
モダンでは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたさまざまなバリエーションのミッドレンジが見られます。今大会で準優勝と好成績を残した4C Ephemerateは、各種インカーネーションや《永遠の証人》《創造の座、オムナス》といったクリーチャーのETB能力を《儚い存在》で使いまわすことでアドバンテージを稼ぐことに特化したミッドレンジです。
クリーチャーでの展開以外でも、4枚ずつメインから採用された《時を解す者、テフェリー》と《レンと六番》という2種類のプレインズウォーカーによって多角的な攻めが展開できるところが特徴です。
《表現の反復》も採用されているのでアドバンテージを獲得する手段には困ることが少なく、ほかのコントロールやミッドレンジに強い構成となっています。《虹色の終焉》や《稲妻》と除去も優秀で、《豊かな成長》や《楽園の拡散》といったマナサポートによって80枚デッキですが動きも安定しています。
☆注目ポイント
メインから採用されたクリーチャーすべてがETB能力持ちなので、《儚い存在》は優秀なアドバンテージ源として機能します。特に《永遠の証人》との相性が抜群で、《儚い存在》を「反復」させて《永遠の証人》を「明滅」させることによって《儚い存在》を回収することができます。
《時を解す者、テフェリー》はコントロールや「続唱」デッキ対策で、[-3]能力で自軍のクリーチャーをバウンスすることでクリーチャーの能力を再利用することが可能です。
《レンと六番》は毎ターンフェッチランドを墓地から回収することでマナ基盤を安定させてくれます。また、現環境には《ドラゴンの怒りの媒介者》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》などタフネス1のクリーチャーが多く存在するので、それらに対する効果的な除去としても機能します。
《孤独》や《虹色の終焉》に加えて《忍耐》もメインから採用されているので、さまざまな状況に対応することができます。サイドにフルに採用されている《黒曜石の焦がし口》は、TronやAmulet Titan、《ウルザの物語》を採用したデッキなど多くのマッチアップで活躍します。
Modern Premier #12347339
サイの群れがモダン環境を踏み鳴らす
2021年10月17日
- 1位 Temur Footfalls
- 2位 4C Ephemerate
- 3位 4C Ephemerate
- 4位 Azorius Control
- 5位 Scapeshift
- 6位 Counter Monkey
- 7位 Jund Saga
- 8位 Temur Footfalls
トップ8のデッキリストはこちら
日曜日にMOで開催されたCSQ。金曜日に開催されたCSQでも準優勝していた4C Ephemerateは、今大会でも準優勝、そして3位入賞と安定した成績を残していました。
優勝したのはTemur Footfallsで、ほかにはAzorius ControlやJund Saga、Counter Monkeyといったフェアデッキが中心でした。
デッキ紹介
Temur Footfalls
Temur Footfallsは『モダンホライゾン2』がリリースされて以来、常にメタの上位に留まり続けているデッキです。デッキの基本的な動きは、《断片無き工作員》や《暴力的な突発》といった「続唱」スペルから《衝撃の足音》を「待機」せずにプレイしてビートダウンを狙っていきます。
デッキの構成上1-2マナのスペルを採用することができないという制限がありますが、《否定の力》などのピッチスペルや分割スペルの《火/氷》、「出来事」クリーチャーの《厚かましい借り手》などでカバーしていきます。
デッキパワーが高くモダンのデッキの中ではプレイングも比較的簡単なので、これからモダンを始めようと考えている方にもオススメできるデッキです。
☆注目ポイント
メインからフル搭載されている《厚かましい借り手》は、このデッキの天敵である《虚空の杯》をどかす手段にもなり、自身もパワー3飛行とクロックとしても優秀です。
《歴戦の紅蓮術士》は最近採用されるようになったカードで、メインではマッチアップによって不要牌になる《否定の力》や各種除去を有効碑に変換することができます。また、《虚空の杯》で「続唱」を封じられた際も、「続唱」スペルをほかのカードに変換しつつトークンを展開できるなど攻めの幅が広がりました。
少し前まで《砕骨の巨人》が採用されていましたが、《ドラゴンの怒りの媒介者》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》、Hammer Timeなど速いアグロデッキに対処するために1マナの除去として使える《死亡/退場》が優先されています。
除去、置物対策、キーカードを探す手段にもなるなどフレキシブルなスペルとして採用されていた《プリズマリの命令》でしたが、最近はその枠に《謎めいた命令》が採用されるようになりました。どちらも《虚空の杯》対策になりますが、カウンターである《謎めいた命令》はTronや《原始のタイタン》など土地コンボとのマッチアップで有用です。
Counter Monkey
『モダンホライゾン2』がリリースされて以来結果を残し続けているCounter Monkey。《孤独》など環境の多くのデッキが《濁浪の執政》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった脅威を対策する手段を採用しているため、以前ほど上位で見られることはなくなったもののまだまだ健在で人気もあるデッキです。
メタに合わせて調整が加えられ、環境初期のリストからも変化が見られます。
☆注目ポイント
環境初期のリストと比べるとカウンターの枚数、種類が増加されています。現在のリストは《大魔導師の魔除け》《対抗呪文》《呪文貫き》(リストによっては《否定の力》)が採られています。
《大魔導師の魔除け》の強みは相手のクリーチャーを奪うことができる点で、アグロデッキとのマッチアップで活躍します。特にこのデッキにとってやや不利なマッチとなるHammer Timeとのマッチアップでは、《巨像の鎚》を装備した0-1マナクリーチャーを奪うことで勝ち手段として利用することができるのです。《呪文貫き》は1マナなので《敏捷なこそ泥、ラガバン》が生成した宝物トークンから隙なく唱えることができ、クロックを相手の除去から守りやすくなります。
メインのクリーチャーは《ドラゴンの怒りの媒介者》《濁浪の執政》《敏捷なこそ泥、ラガバン》の3種類でほぼ固定となっています。リストによっては《厚かましい借り手》がメインから入っていますが、今回のリストではHammer Timeに効果的で、さらに《虚空の杯》や《衝撃の足音》などを流せる《仕組まれた爆薬》がメインから採用されています。
最近は《精神を刻む者、ジェイス》をサイドボードに1-2枚採用するリストが主流になっています。Azorius Controlなどクリーチャー除去を多用するデッキに対しては、アドバンテージ源を確保することが重要となります。そのため、クリーチャー除去や《安らかなる眠り》《虚空の杯》といった対策カードの影響を受けない《精神を刻む者、ジェイス》は、コントロールとのマッチアップで切り札となるのです。クリーチャーによってプレッシャーをかけて《至高の評決》などでマナを使わせたあとに《精神を刻む者、ジェイス》をプレイするのが理想的な展開の一つになります。
Jund Saga
《夢の巣のルールス》を「相棒」として採用し、《ウルザの物語》《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった『モダンホライゾン2』の強力なカードを多数採用した新しい形のJundです。
2021年に登場した強力なクリーチャーに古参の《タルモゴイフ》を加え、ハンデスや軽い除去でバックアップしていくアグレッシブなJundに《ウルザの物語》パッケージを加えることで、より多角的な攻めが展開できるようになりました。
☆注目ポイント
《ウルザの物語》はアーティファクトに特化していないデッキでも十分に強力なカードです。それに加えて土地とエンチャントの2つのカードタイプを持つため、《タルモゴイフ》や《ドラゴンの怒りの媒介者》《邪悪な熱気》とのシナジーがあり、《レンと六番》によって再利用することでさらにアドバンテージを稼ぐこともできます。
除去は効率性を重視して《稲妻》《邪悪な熱気》《致命的な一押し》といった1マナ域でまとめられていますが、《虚空の杯》の増加を加味し、メインから置物にも触れるように《突然の衰微》と《コラガンの命令》が採用されています。Azorius Controlとのマッチアップを考慮するとカウンターされない《突然の衰微》が優先されます。
サイドの追加の除去枠には、メインの除去では処理が難しい《濁浪の執政》用に《終末》よりも色拘束の薄い《破滅の刃》が採用されています。《虚空の杯》や《虚空の鏡》など「続唱」デッキ対策も多めに採られており、《虚空の鏡》はこのデッキが苦手とするTron対策にもなります。
総括
『モダンホライゾン2』がリリースされてからしばらく経ち、環境の研究が進んだ現在でも、モダンは多種多様なデッキが活躍する面白い環境であり続けています。
《夢の巣のルールス》を採用したデッキが多すぎると懸念される声も散見されますが、毎回優勝しているということもなく全体的にバランスの取れた良環境だと思います。今後はテーブルトップの大会も頻繁に開催されるので楽しみですね。
以上、USA Modern Express vol. 64でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!