はじめに
みなさんこんにちは。
先週末にアメリカで約2年ぶりにSCGの大型イベントSCG Invitationalが開催されました。ようやくテーブルトップのイベントが開催できるようになり日常を取り戻しつつあります。
さて、今回の連載ではSCG Invitationalと先週末に開催されたModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Invitational
フェアデッキが中心の環境
2021年10月31日
- 1位 Grixis Death’s Shadow
- 2位 Hammer Time
- 3位 Azorius Control
- 4位 Azorius Control
- 5位 Jund Saga
- 6位 4C Blink
- 7位 Jeskai Midrange
- 8位 Grixis Midrange
Corey Baumeister
トップ8のデッキリストはこちら
約2年ぶりの開催となったSCG Invitationalは、スイスラウンドをスタンダードとモダン、プレイオフはスタンダードで行われました。
上位入賞したプレイヤーの多くが選択したのはAzorius ControlやJund、4C Blinkなどフェアデッキが中心でした。
Azorius Controlはスイスラウンドで全勝者を2名出すなど高い勝率を出しています。
デッキ紹介
Azorius Control
Azorius Controlが最近結果を残し続けています。コントロールのエキスパートであるShaheen Soorani氏は、モダンのラウンドで全勝を果たしプレイオフ進出を決めました。
以前のAzorius Controlと大きく違うのは《虚空の杯》がメインに採用されていることです。《夢の巣のルールス》デッキやIzzet Monkey、各種「続唱」デッキなど低マナ域のスペルが中心なため、《虚空の杯》は多くのマッチアップで強力なコントロールカードとして機能します。
☆注目ポイント
現在では《ウルザの物語》の隆盛に対抗するため《広がりゆく海》がほとんどのリストに2-4枚採用されています。それに加えて《廃墟の地》も採用されていますが、《大魔導師の魔除け》など色拘束の強いスペルや《秘教の門》《虹色の終焉》との相性を考慮したのか2枚の採用になっています。
過去のリストでは複数枚採用されていた《謎めいた命令》や《精神を刻む者、ジェイス》は、選択肢の増えた現在では採用が見送られる傾向にありますが、ほとんどのリストでフル搭載されている《大魔導師の魔除け》の枚数を調整してまで採用されており、コントロールの名手であるSoorani氏のこだわりが分かります。
4C Blink
最近勝ち続けている《空を放浪するもの、ヨーリオン》によってETB能力持ちのパーマネントやプレインズウォーカーでアドバンテージを稼ぎだす4色のグッドスタッフデッキ。
今大会のようにAzorius ControlやJundといったフェアデッキが中心の環境では良い選択になります。コンボデッキのTemur CascadeやHammer Timeなどは《時を解す者、テフェリー》や《孤独》といったカードである程度まで渡り合えますが、それらに耐性のあるTronなどは苦手なマッチとなります。
4色なので《血染めの月》を使うデッキに注意が必要ですが、プレインズウォーカーとアドバンテージの取れるクリーチャーによる多角的な攻めが展開できるのがこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
Azorius Controlと同様に《広がりゆく海》が採用されていますが、このデッキでは《空を放浪するもの、ヨーリオン》によってドローを使いまわすことができます。また、コンボデッキとのマッチアップを意識していたようでメインから《ドビンの拒否権》が採られています。
《孤独》と《激情》のペアは序盤を凌ぎつつ中盤以降は除去を備えた勝ち手段として機能します。《儚い存在》を駆使することによってさらにアドバンテージを稼ぐことができ、《永遠の証人》+《儚い存在》のコンボによって圧倒的にアドバンテージ差を付けることができます。
クリーチャーだけでなく異なる対処法が必要な脅威を用意することも重要です。《時を解す者、テフェリー》はそれ単体でゲームに勝つことはありませんが、コントロールのカウンターを無力化したり「続唱」を封じたりと多くのマッチアップで活躍します。《レンと六番》は今やモダンを定義するカードの1枚としてさまざまなデッキに採用されています。このデッキでは奥義で《時間のねじれ》を使いまわして無限ターンを得ることもできます。
Hammer Time
Hammer Timeは現環境のトップメタの一角で、モダンの大きな大会の上位では必ずといっていいほど見られるデッキです。
装備品やアーティファクトクリーチャーを多用するこのデッキは、《ウルザの物語》の強さを最大限に活かすことができます。《シガルダの助け》+《巨像の鎚》のコンボと《ウルザの物語》が生み出す巨大な構築物トークンによる脅威を同時に対処するのは至難の業です。
《夢の巣のルールス》を「相棒」としているため持久力もあります。今回入賞したリストは、コントロール対策に《思考囲い》や白除去に耐性のある《悪意の騎士》ために黒をタッチしたバージョンになっています。
☆注目ポイント
《思考囲い》は最近環境で活躍するAzorius Controlに効果的なのは言うまでもありません。《虹色の終焉》や《孤独》など現環境の主要な除去は白に多く、《悪意の騎士》はAzorius Controlに対して信頼できるクロックになります。
デッキの構成上1マナのスペルを多用するので《虚空の杯》を対処する必要があります。『イニストラード:真夜中の狩り』から登場した《聖戦士の奇襲兵》は、《夢の巣のルールス》で再利用できる《解呪》として使えるクリーチャーで瞬速持ちなので奇襲性もあります。《虚空の杯》を採用したデッキや同型など多くのマッチアップで活躍が期待できます。
Modern Challenge #12351480
モダン環境に染まる血染めの月
2021年10月30日
- 1位 Izzet Monkey
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Izzet Monkey
- 4位 Dimir Mill
- 5位 Izzet Monkey
- 6位 Grixis Death’s Shadow
- 7位 4C Blink
- 8位 Golgari Yowgmoth
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4C Blinkが今大会前週に行われた複数の大会で入賞するなど圧倒的な強さを見せましたが、今週末には早くもメタに動きが見えました。
Izzet Monkeyは特殊地形に頼ったコントロールやミッドレンジに対応して、サイドに複数の《血染めの月》を搭載して再び上位に舞い戻ってきました。
ほかにはAmulet TitanやDimir Millといった軸をずらしたデッキも多く見られます。デッキの構成上特殊地形に頼らざるを得ない4C Blinkは、《血染めの月》を採用したデッキや土地コンボの散見した今大会では先週までのように勝ち切るのは難しかったようです。
デッキ紹介
Izzet Monkey
最近は《虚空の杯》など置物を対策できる《虹色の終焉》をタッチしたバージョンも見られるようになりましたが、今大会を制したのは純正のIzzetバージョンでした。
デッキとしては完成されているため基本的な構成に大きな変化は見られないものの、『イニストラード:真夜中の狩り』から登場した《考慮》 が加えられているなど細部のカードチョイスに調整の跡が見られます。
☆注目ポイント
《考慮》は「昂揚」達成の手助けになり《濁浪の執政》の「探査」をしやすくなります。また「諜報」持ちの《ドラゴンの怒りの媒介者》と一緒に使うことでよりドローの質を高めることが可能です。《虚空の杯》やHammer Timeの装備品などを対策するために、《仕組まれた爆薬》と《厚かましい借り手》がそれぞれ1枚ずつメインから採用されています。
サイドに採用されている《血染めの月》は多くのデッキに対して決定打となるカードになります。最近ではAzorius Controlも《大魔導師の魔除け》を安定してプレイするために特殊地形を多く採用しているので、想像より効果的に働きます。
また《敏捷なこそ泥、ラガバン》との組み合わせが強力で、攻撃を通すことができれば2ターン目に《血染めの月》を置いて相手の行動を著しく制限することができます。
サイドに2枚採用された《精神を刻む者、ジェイス》は、除去や《安らかなる眠り》《虚空の杯》といった対策カードの影響を受けないフィニッシャー兼アドバンテージ源としてサイドインされます。
Modern Challenge #12351484
コンボデッキの復権
2021年10月31日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Belcher
- 3位 4C Blink
- 4位 Hammer Time
- 5位 Burn
- 6位 Izzet Monkey
- 7位 Temur Footfalls
- 8位 Amulet Titan
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Hammer TimeやBurnといった直線的な戦略が多数入賞した日曜日のModern Challenge。Belcherなどコンボデッキも見られ、タップアウトミッドレンジの4C Blinkに強いデッキの活躍が目立ちます。
デッキ紹介
Belcher
レガシーでも活躍しているOops All Spellsと同様に、モダンのBelcherも『ゼンディカーの夜明け』から登場した呪文と土地の両面カードを利用して、《ゴブリンの放火砲》によって確実にゲームに勝てるように構築されています。
相手の体制が整う前にゲームを決めたいのでマナ加速は必須です。モダンにも《捨て身の儀式》や《発熱の儀式》、《アイレンクラッグの妙技》といった儀式スペルが存在します。特に《アイレンクラッグの妙技》は《ゴブリンの放火砲》をプレイして起動するのに必要な7マナを提供してくれます。
最近結果を残し続けている4C Blinkなどタップアウトミッドレンジなどに強いデッキになります。特定のキーカードに頼る戦略なので、コントロールデッキ相手には《バーラ・ゲドの復活》でキーカードを回収して相手のカウンターを枯渇させたり、《否定の契約》やサイドにフル搭載されている《夏の帳》などで無理やりコンボを通していくことになります。
☆注目ポイント
このデッキには両面カードがふんだんに詰めこまれています。《髑髏砕きの一撃》は土地でありながら除去にもなる非常に強力なカード。同じく除去である《棘平原の危険》は、《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》など環境で猛威を振るうクリーチャーを簡単に処理できます。
キーカードの《ゴブリンの放火砲》を引き込む手段として用いられているのが《小道の再交差》です。このデッキには土地が入っていないので、ライブラリーを好きな順番に並べることが可能なのです。ほかには、手札を入れ替えることのできる《ヴァラクートの覚醒》で探すことができます。
特殊地形だらけのデッキですが、ほとんど赤マナしか必要としないので《血染めの月》をフル搭載することができます。やろうと思えば各種マナを生み出す呪文を使って2ターン目に置くことも可能です。
総括
現在のモダンはトップメタのデッキは存在しますが、上位入賞しているデッキは毎週異なり、さまざまなデッキが活躍する群雄割拠な環境です。
今月はアメリカでもテーブルトップの大規模なイベントがあるのでモダンファンの方はお見逃しなく。
以上、USA Modern Express vol.65でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!