猿の惑星
『モダンホライゾン2』発売以降レガシーは一つのデッキに、いや、一匹の動物に支配されている。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》は1マナ2/1という貧弱なボディーとは裏腹に、攻撃さえ通ればテンポとカード両面でアドバンテージを稼ぐことができる。ときには奪ったカードにより相手の戦略自体が瓦解してしまうこともあり、コントロールやコンボからすれば無視できない存在だろう。やはり、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対抗するために自分自身もイゼットデルバーを使用するしかないのだろうか?
本記事ではそのフォーマットのひとつである、レガシーのメタゲームブレイクダウンをお届けしよう。
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
イゼットデルバー | 35 | 33.9 |
Lands | 7 | 6.8 |
バントコントロール | 6 | 5.8 |
エコー親和 | 6 | 5.8 |
デス&タックス | 5 | 4.9 |
ペインター系 | 4 | 3.9 |
《実物提示教育》 | 4 | 3.9 |
アルーレン | 4 | 3.9 |
ジェスカイデルバー | 3 | 2.9 |
カウンターモンキー | 3 | 2.9 |
ストーム系 | 3 | 2.9 |
その他 | 23 | 22.4 |
合計 | 103 | 100% |
ふたを開けてみれば、やはり《敏捷なこそ泥、ラガバン》の強さを証明するかのような一強環境が示されている。イゼットデルバーは会場の約3割を占め、次点のLandsを圧倒的に引き離していたのだ。
しかし、真に注目していただきたいのは、イゼットデルバーを追うデッキたちだ。参加者たちはメタゲームがイゼットデルバーへ偏ることを見越して、デッキを選択していたのだ。メタゲームが一つのデッキに過度に偏るならば、それを逆手にとって有利な構成を持ち込んでしまえばいい、というわけだ。
イゼットデルバー
前述のとおり、環境最強をほしいままにするイゼットデルバーは小型の素早いダメージクロックを打ち消しと火力によりサポートしていく。ドロー呪文もふんだんにあり、安定した動きが何よりの魅力になっている。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》ばかりに目を奪われがちだが、もっとも強化された理由はドロー能力にほかないだろう。アンコモンの《表現の反復》は軽い構成のイゼットデルバーと相性がよく、ほとんどの場合カード2枚分になる。繰り返しになるが、わずか2マナでカード2枚分と破格の費用対効果といえる。選択者は、メタられるのは承知の上で、それでもなお揺るぐことのない自信を持ち環境最強デッキを持ってきているのだ。
Lands
トップのイゼットデルバーを追いかけるのはLandsだ。デッキの大半が土地であるこのデッキは攻防のすべてを土地に依存しており、さまざまな土地を使って相手をコントロールしていく。コンボには弱いものの干渉手段の限られる土地を戦略のベースとしているため、フェアデッキ、つまりはイゼットデルバーには強いアーキタイプとなっている。
《イス卿の迷路》はイゼットデルバーの攻撃に待ったをかけ、《リシャーダの港》と《不毛の大地》でマナを縛り動きを止めていく。いくら軽い構成であったとしても、マナなしでは流石のイゼットデルバーも身動きが取れなくなってしまう。あとは真綿で首を締めるように、ゆっくりと《罰する火》や《死者の原野》でライフを削っていくだけだ。
バントコントロール
コントロールからはバントカラーをベースに、《表現の反復》をタッチしたデッキが人気となっている。ここには《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にした80枚のものは含んでおらず、純粋な60枚をベースにしたコントロールとなっている。
バントコントロールの根幹にあるのは、複数交換を狙えるカードだ。キャントリップ効果を持つパーマネントが多く採用されており、単純な1対1交換を繰り返していくだけで自然とリソースに差が生まれていく。中でも《氷牙のコアトル》はカード引きつつ、《ドラゴンの怒りの媒介者》や《濁浪の執政》など飛行のクリーチャーとも相打てる逸材だ。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も控えており、ゲームが長引けば自然と有利になっていく。ショートレンジでのゲームを挑んでくる相手に対して、除去呪文でゲームをスローダウンさせられるかどうかが焦点となりそうだ。
エコー親和
Eternal Party 2020の優勝も記憶に新しいエコー親和が同率4位にランクインしている。海外では8castとも呼ばれるこのアーキタイプはデッキの大半をアーティファクトが占めており、「親和」を生かした複数のドローソースを持っている。一方的に低コストのアーティファクトを展開して《ライオンの瞳のダイアモンド》から《永劫のこだま》へと繋がれば、圧倒的なリソース差を生み出すことができるのだ。
命題は対空防御だが、生きた《物読み》である《思考の監視者》とフィニッシャーである《練達飛行機械職人、サイ》がその役を担っている。特に《練達飛行機械職人、サイ》はタフネスが高いため除去されにくく、時間がたてばたつほどトークンが並んでいくことになる。打ち消し呪文をかいくぐり、着地できるかどうかがポイントとなりそうだ。
おわりに
今回紹介した以外にも《スレイベンの守護者、サリア》などの妨害クリーチャーで相手の動きを縛りつつビートダウンするデス&タックスや、メインボードから《紅蓮破》を多数搭載したペインターなども散見された。いずれもイゼットデルバーを意識したデッキで間違いないだろう。
包囲網が敷かれたうえで、決勝ラウンドにはどれほどの《敏捷なこそ泥、ラガバン》が残るのか、明日はぜひともその点に注目していただきたい。