はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
今週末に発売される『イニストラード:真紅の契り』ですが、オンラインでは一足早くリリースされています。再録された《スレイベンの守護者、サリア》や対抗色スローランドなどはスタンダードを活性化してくれるに違いありません。特に《スレイベンの守護者、サリア》は対コントロール戦でカギを握るクリーチャーであり、メタゲームにも大きな影響を与えるはずです。
今回はRed Bull Untapped 2021 International Stop IVとStandard Challengeの結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
先週末には複数のオンライントーナメントが開催されましたが、2種類のクリーチャーの活躍が目立っていました。冒頭でもご紹介した《スレイベンの守護者、サリア》と、カニこと《船砕きの怪物》です。
まずは、モダンやレガシーでも活躍している《スレイベンの守護者、サリア》。非クリーチャー呪文に追加の1マナを要求するこの美女は、除去しない限り常に行動がワンテンポ遅れてしまいます。カードパワーは申し分なく、イゼットという仮想敵もいるため《スレイベンの守護者、サリア》は白系アグロに居場所を見つけています。
素晴らしいことにスタンダードには、《スレイベンの守護者、サリア》と相性の良いカードも揃っています。《パラディン・クラス》は対戦相手のインスタントトリックに負荷をかけるエンチャントですが、《スレイベンの守護者、サリア》と組み合わせれば行動不能へと追い込んでしまいます。この2枚を序盤に対処することは難しいため、安全に3マナ圏へとつなげることが可能となり、《精鋭呪文縛り》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》がゲームに蓋をしてくれます。
コントロール戦ばかりに注目しがちな《スレイベンの守護者、サリア》ですが、先制攻撃を持っているためクリーチャー戦でも引けを取りません。サイズで劣る場合には《光輝王の野心家》が助けとなってくれます。また、《スレイベンの守護者、サリア》から《傑士の神、レーデイン》と展開できれば、緑単アグロをかなり窮屈な状況へと追い込めます。
対照的に《船砕きの怪物》はコントロールにおける新しいフィニッシャーとなる存在。というのもすべての呪文に《非実体化》を付与する強力なコントロール能力を有しているためです。マナコストは7マナと重いものの瞬速と打ち消し耐性があり、どのマッチアップでも無駄になりません。あえて弱点をあげるならば、除去耐性がないことくらいでしょうか。
手札にインスタントがある限り相手の動きに対応できるため《考慮》などの軽いキャントリップと相性が良いカードであり、テンポ面でみれば除去1枚で戦場から2枚の脅威を取り除くことができます。《溺神の信奉者、リーア》もボードコントロールに長けていましたが、墓地にあるカードに依存せずスタック中の呪文にも対処できる分《船砕きの怪物》の方が優れています。あとはメタゲーム的にマナコストを許容できるかどうかといったところでしょう。
それでは大会結果をみていきましょう。
Red Bull Untapped 2021 International Stop IV
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Rafael Quinta Pozo | 白単アグロ |
準優勝 | Simon Arboleda Escobar | 白単アグロ |
トップ4 | Scott McNamara | イゼットターン |
トップ4 | Remi Fortier | イゼットターン |
トップ8 | Lukas Dusek | ディミーアコントロール |
トップ8 | Guardianthesecond | 白単アグロ |
トップ8 | Maciej Szmidt | 黒単ゾンビ |
トップ8 | lighdar | イゼットターン |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者979名で開催されたRed Bull Untapped 2021 International Stop IVはRafael Quinta Pozo選手の白単アグロが制しました。同大会の2日目は成績の近いプレイヤーを4つのグループに分けて競いますが、4グループ中3グループを白単アグロが制しており、ポテンシャルの高さは保障されています。
メタゲーム
デッキタイプ | 1日目 | 2日目 |
---|---|---|
白単アグロ | 203 | 19 |
緑単アグロ | 155 | 12 |
イゼットターン | 127 | 9 |
イゼットドラゴン | 83 | 4 |
ディミーアコントロール | 52 | 3 |
ラクドスヴァンパイア | 29 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 28 | 3 |
その他 | 302 | 13 |
合計 | 979 | 64 |
《スレイベンの守護者、サリア》を得た白単アグロが使用者数でトップに立っています。次点は緑単アグロであり、デッキパワーの高さは折り紙つきで対コントロールへ寄った白単アグロを狙っての選択となっています。環境一発目ということもあり、イゼットターンやドラゴンなど前環境をけん引してきたデッキが続いています。
トップ8デッキリストはこちら。
白単アグロ
環境でもっとも展開力に長けたデッキをあげるなら、それは白単アグロに間違いありません。特に1~2マナ域は優れたクリーチャーが多く、序盤からダメージレースで優位に立つことができます。この展開力こそがコントロールを苦しめる要因であり、単体除去で対処される限りはテンポ面で損をしにくい構築となっています。《スレイベンの守護者、サリア》がもっとも上手く生きるアーキタイプをみていきましょう。
コントロール戦の要である《スレイベンの守護者、サリア》はこのデッキにぴったりとフィットしています。メインボードの大半をクリーチャーにすることで、影響を受けずに展開を可能としているのです。《粗暴な聖戦士》や《傑士の神、レーデイン》がいれば呪文を採用せずに戦場や手札へ干渉できるようになりますね。
《パラディン・クラス》からの《スレイベンの守護者、サリア》はイゼット系に対する必殺の動きであり、インスタントでの干渉手段をほとんど封じてしまいます。安全に《輝かしい聖戦士、エーデリン》や《傑士の神、レーデイン》を着地させるだけではなく、《不詳の安息地》も攻撃へと向かわせやすくなりますね。
《有望な信徒》は1マナ域ながらタフネスが2あり、《棘平原の危険》で対処されません。定着しやすく初動として使いやすいクリーチャーとなります。さらに「訓練」を持っているため中盤以降サイズアップが見込めます。《光輝王の野心家》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》はその指導官として、一役買ってくれそうです。
打点ばかりに目が行きがちですが、+1/+1カウンターが貯まったなら盤面に並ぶエンチャントやアーティファクトへの干渉手段となります。起動コストは3マナとややマナを必要としますが、《聖戦士の奇襲兵》と違い本体を残しながら対処できる分メインボードで採用しやすいカードになります。《スカイクレイブの大鎚》や《エシカの戦車》があるマッチでは積極的に育てていきましょう。
サイドボードでは《勇敢な姿勢》に注目です。元々は『運命再編』で登場したカードですが、除去と保護を一体化したカードであり、除去能力のついた《蛇皮のヴェール》というとイメージしやすいかもしれません。特に緑単アグロに対しては《エシカの戦車》や《レンと七番》のトークンを除去しつつ、格闘除去から戦線を守る万能カードであり、ミッドレンジやコントロールに強いカードとなります。
Standard Challenge #12355719
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | SoulStrong | イゼットコントロール |
準優勝 | bolov0 | 白単アグロ |
トップ4 | Cabezadebolo | ジャンドミッドレンジ |
トップ4 | Gul_Dukat | イゼットコントロール |
トップ8 | O_danielakos | ティムールミッドレンジ |
トップ8 | LucasG1ggs | 緑単アグロ |
トップ8 | sneakymisato | イゼットコントロール |
トップ8 | against_ | 緑単アグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12355719を制したのは新鋭イゼットコントロールでした。前日に開催されたStandard Challenge #12355709で白緑の両アグロが増加していたことで、コントロール側も構築しやすくなったかたちです。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
イゼットターン | 7 | 3 |
白単アグロ | 6 | 3 |
イゼットコントロール | 5 | 3 |
緑単アグロ | 5 | 2 |
ティムールミッドレンジ | 3 | 0 |
その他 | 6 | 5 |
合計 | 32 | 16 |
上位はターンとコントロールのイゼット系2種に、白緑の両アグロ。アップデートベースでの模索が続いています。
トップ8デッキリストはこちら。
イゼットコントロール
イゼット系はミッドレンジ戦略を想定して、《溺神の信奉者、リーア》の採用がありましたが、それはあくまでも《アールンドの天啓》ありきの構築であり、アグロマッチの改善に過ぎませんでした。しかし、今回ご紹介するイゼットコントロールはベースこそイゼットターンではあるものの、《船砕きの怪物》を軸に構築されたまったく新しいデッキとなっています。コンボパッケージが《船砕きの怪物》へと置き換わったことでスロットに余裕が生まれ、対クリーチャー性能が各段に増しています。
デッキの顔である《船砕きの怪物》は《アールンドの天啓》に代わるフィニッシャーであり、生きている限りゲームを掌握する支配者となります。デッキ内の大半をインスタントにすることで、相手の行動すべてを対処して自由にさせません。
低マナ域の呪文はもちろんのこと、《予想外の授かり物》はこのデッキの潤滑油ともいえるカード。《船砕きの怪物》の着地を早めてくれるだけではなく、定着後は手札とマナ双方確保してくれるため隙を生みにくくなるのです。序盤に墓地へ落としたカードも《溺神の信奉者、リーア》で再利用できるため、無駄になることはありません。
イゼットターンにおいて、《アールンドの天啓》と《予想外の授かり物》の両方の採用はマナベースをかなり圧迫していました。このデッキも同様であり、アンタップ条件の緩い《嵐削りの海岸》はまさに求めていた土地だったのです。
《凍沸の交錯》と違って土地が欲しいときにタップインということもありません。マナベースがタイトなイゼットにあっては嬉しい強化となります。
コントロールの目下の敵は《スレイベンの守護者、サリア》となるため、デッキの随所から意識していることがうかがえます。メインボードでは《棘平原の危険》4枚と《燃えがら地獄》が採用され、サイドボードにも追加の火力があるのです。
《炎恵みの稲妻》は《マグマのしぶき》のリメイク版であり、白単アグロに対する追加火力となっています。死亡時の誘発型能力や「降霊」、《スカイクレイブの影》も元から絶つことができるため、メタゲームによってはメインボードの採用候補となります。
おわりに
今回は結果を残した白単アグロとイゼットコントロールをご紹介しました。カードの選択肢が増えたことで特定のマッチアップが強化され、引き続き環境の中心となりそうですね。今週末には『イニストラード:真紅の契り』環境初陣戦が控えています。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。
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