はじめに
みなさんこんにちは。
年末にはThe Last Sun 2021が開催されるなどモダンのイベントが充実していますね。
さて、今回の連載ではラスベガスで開催されたMTG Las Vegasと、先週末に開催された第18期モダン神挑戦者決定戦、Modern Challengeの結果を見ていきたいと思います。
MTG Las Vegas
2021年11月19-21日
- 1位 Rakdos Midrange
- 2位 Jeskai Creativity
- 3位 Infect
- 4位 Jund Saga
- 5位 Hardened Scales
- 6位 Amulet Titan
- 7位 Amulet Titan
- 8位 4C Control
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久々に開催された2日制の大規模なテーブルトップイベント。プレイオフには現在のモダンらしく多種多様なデッキが入賞していますが、過去のモダンと比較すると遅めな環境のようです。
『モダンホライゾン2』から登場した《虹色の終焉》《邪悪な熱気》《対抗呪文》といった軽い優秀な妨害スペルによってコントロールやミッドレンジが強化された結果、4C ControlやRakdos、Jund Sagaといったミッドレンジ寄りのデッキが台頭しました。
これらのデッキは環境のさまざまな戦略に対応することができるので、デッキの種類が多いモダンでは最適な選択肢となり得ます。そしてそれらのミッドレンジに強いAmulet Titanも結果を残していました。
デッキ紹介
Amulet Titan
環境を問わず《原始のタイタン》はモダンの脅威として常に警戒され続けています。
《ウルザの物語》によって強化されたデッキで、《原始のタイタン》以外の勝ち手段になると同時にキーカードである《精力の護符》のサーチ手段としても機能しています。
『モダンホライゾン2』がリリースされた直後の環境では上位でよく見られましたが、Izzet Ragavanなど《原始のタイタン》を1マナで除去できる《邪悪な熱気》を主要な除去とするデッキが登場したことによって数を減らしました。最近は4C Controlなど、ほかのフェアデッキをターゲットにした遅いミッドレンジが台頭してきたことで復権してきました。
☆注目ポイント
《ウルザの物語》によって《精力の護符》をサーチすることができるので、デッキの安定性が上がりました。また、《原始のタイタン》以外の勝ち手段としても機能するため、除去や妨害を多用するミッドレンジやコントロールとのマッチアップを有利に進めることができます。
タフネスが3ある《樹上の草食獣》は、現環境で横行している《敏捷なこそ泥、ラガバン》のブロッカーとなる優秀なクリーチャーです。到達も持っているので「昂揚」している《ドラゴンの怒りの媒介者》や《濁浪の執政》といった脅威もチャンプブロックで凌ぐことが可能で、《原始のタイタン》を出すまでの時間稼ぎに貢献します。
土地が中心のデッキであるため《血染めの月》は弱点の一つです。サイドに採用されている《辺境地の罠外し》や《活性の力》といった置物対策は欠かせません。
Rakdos Midrange
『モダンホライゾン2』リリース直後の環境から活躍している《夢の巣のルールス》入りのRakdos Midrange。
ハンデス、除去と一通りそろったミッドレンジ寄りのアグロデッキで、クリーチャーも《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《ダウスィーの虚空歩き》と強力です。MOの大会の上位でもよく見られるデッキとなっています。
基本的な構成に大きな変化は見られませんが、メタの変化や新セットの加入によって細部に調整の跡が見られます。
☆注目ポイント
《終止》は環境に多く存在する《濁浪の執政》や《タルモゴイフ》など、火力では対処が難しいクリーチャーを除去するためにメインから採用されるようになりました。除去の枠が《致命的な一押し》から《邪悪な熱気》へと変わり、対応できる範囲が広いため《稲妻》よりも優先的にメインから4枚採用されています。《コラガンの命令》は3マナと少し重くなりますが、ほぼ確実に1-2交換が可能で《虚空の杯》やHammer Timeの装備品などを対策できる優秀なスペルです。
『フォーゴトン・レルム探訪』から登場した《バグベアの居住地》は、マナ基盤にそれほど負担をかけずにデッキの脅威の密度を上げることに貢献しています。ほかのミシュラランドと同様にフラッド防止になり、このデッキには《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》といったマスト除去が多いため、相手の除去が枯渇した中盤以降のゲームでの有力なフィニッシャーとなります。
《戦慄の朗詠者、トーラック》は「プロテクション(白)」なので《孤独》や《虹色の終焉》といった除去に耐性がありますが、本体は貧弱なため主に「キッカー」でプレイすることになります。この除去耐性と「キッカー」のおかげでコントロールに対して特に活躍してくれます。
Infect
昔から存在するアーキタイプで、「感染」クリーチャーを呪文で強化して相手に「毒」カウンターを蓄積させ、ゲームに勝利するアグロコンボデッキです。『モダンホライゾン2』から《下賤の教主》が登場したことによって《貴族の教主》と合わせて8枚の「賛美」クリーチャー体制を取ることができるようになり、より動きが安定するようになりました。
今までSimicカラーが主流でしたが、《下賤の教主》のおかげで黒のタッチが容易になり《ファイレクシアの十字軍》が採用されています。
Amulet Titanなど除去が薄く速度に難がある土地コンボに強いデッキなので、土地コンボが復権してきている現環境では有力な選択肢となり得ます。
☆注目ポイント
《ファイレクシアの十字軍》は「プロテクション(赤)(白)」なので《稲妻》《邪悪な熱気》《虹色の終焉》《孤独》といった現環境の主要な除去の多くに耐性があるのが特徴です。相手によってはこのクリーチャーに《強大化》や《古きクローサの力》といった強化スペルをプレイするだけで勝てます。
《虚空の杯》や《ウルザの物語》、Hammer Timeの装備品などを対策する必要があるため、サイドには《水晶壊し》や《活性の力》といった置物対策が多数採られています。《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》といったクリーチャーに対するブロッカーとして機能しつつ、墓地対策としても有力な《忍耐》もフルに採用されています。
第18期モダン神挑戦者決定戦
環境を代表するミッドレンジが優勝
2021年11月27-28日
- 1位 Jund Saga
- 2位 Gruul Moon
- 3位 Izzet Storm
- 4位 Izzet Ragavan
- 5位 Burn
- 6位 4C Control
- 7位 Rakdos Midrange
- 8位 Temur Cascade
小野田 顕児
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先週末に開催されたモダン神挑戦者決定戦のプレイオフは、多様性のあるモダンらしくさまざまなアーキタイプが見られました。
今大会で優勝を収めて神への挑戦権を手にしたのは、Jund Sagaを選択した小野田 顕児選手でした。
デッキ紹介
Jund Saga
「相棒」の《夢の巣のルールス》と最近登場した強力なカードが中心にまとまった新世代のJund。《ドラゴンの怒りの媒介者》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》といったクロックをハンデスでバックアップしていく戦略は、多くのデッキに対して有効です。
優秀なクロック、除去、ハンデスと一通りそろっており、毎ターン土地を回収しフィニッシャーにもなる《レンと六番》のおかげでデッキの動きが安定しているので、長丁場のイベントでオススメのデッキの一つです。
☆注目ポイント
多色のこのデッキにとって《敏捷なこそ泥、ラガバン》の提供する宝物・トークンはより重要となります。《ドラゴンの怒りの媒介者》はドローの質を上げつつ、空から相手のライフを攻めます。《ミシュラのガラクタ》と《ウルザの物語》といった0マナのアーティファクト、エンチャントカードのおかげで「昂揚」や《タルモゴイフ》のサイズアップも容易です。
《邪悪な熱気》は現環境でもっとも優秀な除去で、《致命的な一押し》に代わってJundのメインの除去として採用されています。Jundにとって対処が難しい各種プレインズウォーカーや《原始のタイタン》を簡単に除去することができるため、現環境で赤いミッドレンジが幅を利かせている理由のひとつです。
《ウルザの物語》のおかげで《虚無の呪文爆弾》など墓地対策をメインから無理なく採用できるようになりました。ミラーマッチやIzzet Ragavanなど、墓地を活用するフェアデッキに特に有効な墓地対策になります。同じ墓地対策の《ダウスィーの虚空歩き》は色拘束は強いものの、墓地を使ったさまざまなデッキとのマッチアップで活躍します。
このデッキにとって苦手なマッチアップである「続唱」デッキ対策に《虚空の杯》がサイドに採られています。サイ・トークンを一掃できる《仕組まれた爆薬》も有用なサイドカードの1枚です。
Modern Challenge #12359639
土地コンボが制する
2021年11月27日
- 1位 Amulet Titan
- 2位 Hammer Time
- 3位 Izzet Ragavan
- 4位 Grixis Shadow
- 5位 4C Blink
- 6位 Hammer Time
- 7位 Hammer Time
- 8位 Lantern Control
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土曜日に開催されたModern Challengeで優勝を収めたのは土地コンボのAmulet Titanでした。
Izzet Ragavanが数を減らし、4C Controlなどタップアウトミッドレンジやコントロールの数が増えたため今有利な立ち位置のデッキです。
デッキ紹介
4C Blink
MOの強豪プレイヤーであるDo0mSwitchは、モダンではIzzet Ragavanなど青いフェアデッキを得意とするプレイヤーです。今大会では4C Blinkで入賞していました。
4C Blinkは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたデッキで、場に出たときの能力を持つパーマネントやプレインズウォーカーを多数搭載したタップアウトミッドレンジです。
ミッドレンジの中でもカードパワーに重点を置いており、Azorius ControlやJundといったほかのミッドレンジやコントロールに有利なデッキになります。しかし、遅いデッキでクリーチャー除去以外の妨害要素に貧しいため、今大会を制したAmulet Titanなどは不利なマッチとなります。
☆注目ポイント
フェッチランドを利用することでフリースペルのように機能する《創造の座、オムナス》は、毎ターン土地を回収できる《レンと六番》との相性が抜群でデッキに爆発力をもたらします。
《永遠の証人》の能力を《儚い存在》で使いまわす動きが強力で、《時間のねじれ》を回収して複数の追加ターンを得ることができれば勝利は目前です。また、《孤独》や《激情》のおかげでIzzet RagavanやHammer Timeといったクリーチャーデッキに対しては無類の強さを見せます。各種プレインズウォーカー、《表現の反復》といったアドバンテージを稼ぐ手段も豊富なのでコントロールに対しても有利です。
環境の多くのデッキが《ウルザの物語》を採用しているため、《広がりゆく海》は必須となります。ほかのデッキに対してもミシュラランドや色マナを制限させることができるので、無駄になることはほとんどありません。《空を放浪するもの、ヨーリオン》でブリンクする対象としても有用です。
Modern Challenge #12359645
《死の影》が上位に多数
2021年11月28日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Dredge
- 3位 Grixis Shadow
- 4位 Grixis Shadow
- 5位 Grixis Shadow
- 6位 Jund Saga
- 7位 Izzet Ragavan
- 8位 Humans
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前の週まではBelcherなどコンボデッキや多色コントロールが上位で多数見られましたが、コンボデッキに対抗するかのように今大会ではGrixis Shadowが上位に多数残りました。
ほかには《飢餓の潮流、グリスト》を採用したHumansやDredgeが久々に入賞していたのが印象的でした。優勝したのはHammer Timeで、環境を問わず常に結果を残し続けています。
デッキ紹介
Grixis Shadow
優勝こそ逃したものの多数の入賞者を出したGrixis Shadow。
一時期は環境から姿を消していましたが、SCG Invitational優勝者のCorey Baumeister氏はこのデッキにいくつかの調整を加えて復権させることに成功しました。
軽い妨害スペルが多いためHammer TimeやTemur Cascadeなどのコンボ系デッキに強く、カウンターやハンデスも使えるのでコントロールや多色ミッドレンジなど遅いデッキとのマッチアップも互角以上に渡り合えます。ショックランドなど土地からのダメージが多いデッキなので、Burnなど速攻でライフを攻めてくる戦略は苦手なマッチとなります。
☆注目ポイント
メインから3枚採用されている《激しい叱責》は、《ウルザの物語》の構築物・トークンに対するアンサーになるだけでなく、一時的に《死の影》を13/13にしたり、《死の飢えのタイタン、クロクサ》ともシナジーがあります。ほかにもETB能力クリーチャーを多用する4C Blinkや、最近また見られるようになってきたAmulet Titanなどさまざまなマッチアップで有用です。
サイドには相性の悪いBurnとのマッチアップ用に《集団的蛮行》が採用されています。ほかには、《呪文貫き》が《狼狽の嵐》よりも優先して採られています。これは多くのマッチアップで使えるだけでなく、プレインズウォーカーや《血染めの月》といった脅威にも対応できるためだと思われます。
総括
『モダンホライゾン2』がリリースされて約半年が経ちましたが、現在でもモダンは毎週異なるデッキが結果を残しています。
長い間社会情勢の変化によってテーブルトップのイベントが開催されていませんでしたが、それでも衰退せずに人気を維持しており、テーブルトップの復活をきっかけにさらに盛り上がることが予想されます。
以上、USA Modern Express vol.67でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!