■はじめに
どうも。カードラッシュ所属プロ、高橋 優太です。
現在僕は晴れる屋さんの「神決定戦」でヴィンテージ神のタイトルを有しており、僕自身の配信でも毎週ヴィンテージを楽しんでいます。
今週末には1年ぶりとなる「第17期ヴィンテージ神挑戦者決定戦」が開催されます。今回は、イベント休止期間が長かった影響でリアルマジックから少し離れてしまった方でも、この記事を読めば最新の環境が分かるように、ヴィンテージを解説していきます。
■ヴィンテージとは
マジックには長い歴史の中で、強すぎて禁止になってしまったカードが存在します。しかし、その禁止になるほどの強力なカードも「制限カード」として各1枚ずつなら使えて、ド派手なカードパワーを楽しめるフォーマット。それがヴィンテージ!
マジックプレイヤーならば誰しも知っているであろう、あの「パワー9」も1枚だけなら使用できます。1マナでカードを3枚引く《Ancestral Recall》、2マナで追加ターンを得る《Time Walk》、0マナからマナ加速する《Mox》シリーズ、そしてマジックの象徴ともいえる、3マナを生み出す《Black Lotus》!(そのほか禁止制限カードリスト)
カードを3枚引く効果は《集中》のように4マナかかりますし、追加ターンを得る効果は《アールンドの天啓》のように6~7マナかかります。マジック黎明期だからこそ存在した、マナコストに見合っていないカードの強さをヴィンテージでは存分に発揮できます!
■2021年でもっともヴィンテージに影響を与えたカードは?
間違いなく《ウルザの物語》です。
ヴィンテージは《Mox》《Black Lotus》が使えるので、構築物・トークンのサイズが上がりやすく、5/5以上になって攻撃してきます。また、ヴィンテージは打ち消し呪文が多用される傾向にあるので、打ち消されないフィニッシャーである《ウルザの物語》は、土地としてやっていいことの範囲を超えています。さらに、Ⅲ章の効果で《Mox》《Black Lotus》《太陽の指輪》《魔力の墓所》をサーチできるのでマナが増えるというまさに至れり尽くせりなカード。
正直強過ぎると感じており、早く制限カードに指定して欲しいと感じるほどのバランスブレイカーです。
■ヴィンテージ主要デッキ紹介
青単サーガ
《教議会の座席》や《Mox》を最大限活用して「親和(アーティファクト)」によってコストを軽減し、《物読み》《思考の監視者》でアドバンテージを獲得していくデッキです。《最高工匠卿、ウルザ》は巨大な構築物・トークンを出しつつ、アーティファクトをタップしてマナ加速したり、起動型能力でアドバンテージに繋げていきます。
アーティファクトが最大限入ったデッキなので、《トレイリアのアカデミー》は莫大なマナを生み出します。また制限カードなので、それをアンタップする役割で《水辺の学舎、水面院》まで採用。《湖に潜む者、エムリー》は「親和(アーティファクト)」と言っていい能力で1ターン目に出やすく、ブン回りを補助してくれます。こちらも伝説なので《水辺の学舎、水面院》でアンタップ可能です。
《Time Vault》は通常のアンタップステップにアンタップしませんが、タップすることで追加ターンを得られるアーティファクト。《ウルザの物語》のⅢ章能力により《多用途の鍵》をサーチできるため、《Time Vault》は以前よりも強くなりました。2枚でお手軽に無限ターンコンボが決まります!
ヴィンテージお馴染みの《修繕》から《ボーラスの城塞》も搭載。0マナのカードがたくさん入ったデッキなので、《ボーラスの城塞》がどんどんライブラリーを掘り進めてくれます。《師範の占い独楽》が見つかれば、《師範の占い独楽》自身の能力でライブラリートップに戻るため、ライフ1点で1枚引く工程を続けられます。
グリクシス《死の国からの脱出》
ヴィンテージでの《死の国からの脱出》は強力!軽い呪文が多いため墓地が貯まりやすく、パワー9を再利用できれば圧倒的なアドバンテージを得ることができます。
《死の国からの脱出》と《思考停止》はコンボです。動きとしては、まず《思考停止》で「ストーム」×3の枚数自分のライブラリーを削ることで《死の国からの脱出》の燃料を増やします。途中で《Black Lotus》が墓地に落ちたら、「脱出」で《Black Lotus》を唱えて3マナ増やしてから《思考停止》→再度《Black Lotus》のループが発生します。これを繰り返していき、最終的には相手に大量の「ストーム」カウントになった《思考停止》と《Ancestral Recall》を撃ち込んでライブラリーアウトで勝利します。
このデッキは《Black Lotus》がコンボパーツなので探す必要がありますが、ここでも《ウルザの物語》が大活躍します。コンボ補助はもちろん、単純にトークンが強い!
《思考停止》は単体で引いたときに弱いカードなので枚数が抑えられており、代わりにサーチ系の呪文が採用されています。ヴィンテージの黒といえばこの2種類で、コンボのお供です。
コンボ一辺倒というわけではなく、クリーチャーでもプレッシャーをかけていきます。ヴィンテージにおける《敏捷なこそ泥、ラガバン》は除去が少ないため攻撃が通りやすく、パワー9を奪えたら最高です。宝物・トークンで構築物・トークンも強化してくれます。《再鍛の刃、ラエリア》はアドバンテージ源かつフィニッシャーで、《死の国からの脱出》が墓地を複数回追放するので一気にサイズアップできます。
スゥルタイミッドレンジ
ほかのデッキはコンボ要素を持つものがほとんどですが、相手と除去やクリーチャーの交換をするフェアデッキも存在します。それがこのスゥルタイです!
ヴィンテージは墓地を参照するカードが多く、メインに入れられる墓地対策兼マナ加速として《死儀礼のシャーマン》は最高です。個人的にはラガバンより《死儀礼のシャーマン》のほうが少し強いです。《タルモゴイフ》はサイズが良いという理由で10数年活躍し続けていますね。《Bazaar of Baghdad》系デッキに4/5サイズが頼もしいです。
《王冠泥棒、オーコ》はどんなクリーチャーやアーティファクトも「鹿」に変える汎用性の高い除去であり、マジック史上もっとも単体性能が高いプレインズウォーカーです。また、色が良く《意志の力》と《活性の力》両方のコストにもなってくれます。《活性の力》は《ウルザの物語》デッキが全盛の今ならメインに複数枚採用していい強さです。2対2交換なのでアドバンテージで損せず、4マナでもプレイしやすいです。
ヴィンテージはアーティファクトが主体であったり、コンボ要素を持つデッキがとても多いので、クリーチャーの選択も相手を妨害できるものが優先されます。《溜め込み屋のアウフ》は《ウルザの物語》系のデッキのマナを根本から否定しますし、墓地デッキには《死儀礼のシャーマン》と《忍耐》で墓地対策。《トレストの使者、レオヴォルド》はコンボデッキの複数ドローや《Bazaar of Baghdad》のドローを防いでくれます。
最後の審判
ライブラリーを好きな5枚にできる《最後の審判》を活用したコンボデッキです。5枚に減らすことで《タッサの神託者》の勝利条件をすぐに満たせるので、残りは相手への妨害やドロー呪文にすれば準備万端。《最後の審判》を経由しない場合でも、《Demonic Consultation》でデッキにないカードを指定すればライブラリーを0枚にできるので、これでも《タッサの神託者》の勝利条件を満たせます。
《最後の審判》が通ったら《噴出》→《Black Lotus》→《タッサの神託者》の順番で積んで、もし手札に《通りの悪霊》があって場に2枚島があるなら、マナがなくともそのターン中に勝つことができます。残りの2枚は妨害用に《意志の力》や《狼狽の嵐》を入れておけばいいでしょう。
《最後の審判》デッキの強さは《Ancestral Recall》《Black Lotus》といったリソースを大幅に増やすカードを2周することができて、制限カードをフルに活用できるところです。勝つために必要なカードの枚数が少ない点も魅力で、1ターン目に《暗黒の儀式》から《最後の審判》でほぼ勝利に近い状況になります。ヴィンテージ最速のコンボデッキです。
完全に好みの話なんですが、マナコストが(黒)(黒)(黒)のカードにはロマンを感じます。1ターン目に《ネクロポーテンス》で大量ドローして《意志の力》を構える動きも非常に強力。ただ、ライフを減らしすぎると《意志の力》や《最後の審判》が撃てなくなるので注意!ストーム系コンボデッキが好きな方におすすめのデッキです。
ドレッジ
「カードを2枚引き3枚捨てる」能力を持つ《Bazaar of Baghdad》に最大限特化したデッキです。《Bazaar of Baghdad》がないと回らないので、これが初手に来るまでマリガンします。さらに、確率を上げるために《血清の粉末》も4枚フル採用されています。
デッキの基本的な動きは、《Bazaar of Baghdad》を起動して《ゴルガリの墓トロール》などの「発掘」持ちのカードで墓地を肥やしていきます。カードを3枚捨てるので、《虚ろな者》を引ければ0マナで展開可能です。《虚ろな者》は墓地対策に強いのがポイント。
「発掘」する過程で《イチョリッド》《ナルコメーバ》が墓地に落ちて、これらが戻ってくることにより《秘蔵の縫合体》が誘発。これにより0マナでクリーチャーが盤面に並んでいきます。
並んだクリーチャーを生け贄えに《陰謀団式療法》で相手を妨害しつつ、《黄泉からの橋》でゾンビ・トークンを生成。『モダンホライゾン2』から加入した《悲嘆》は、《陰謀団式療法》のカード指名を当てる手助けになりますし、「想起」なので《黄泉からの橋》でゾンビ・トークンも生まれます。まさにドレッジのために生まれて来たようなクリーチャーです。
ドレッジはブン回ったときは相手に何もさせずに勝つ理不尽な強さを持ちます。特に墓地対策されないメイン戦はもっとも勝率が高いデッキだと思います。しかし、その分サイド後は墓地対策を乗り越えて勝つ必要があります。
《虚空の力線》や《墓掘りの檻》といったエンチャントやアーティファクトの墓地対策が飛んでくるので、《活性の力》4枚は必須と言えます。《よろめく殻》は《悲嘆》《活性の力》のコストになるナイスガイ。
ゴロススタックス
アーティファクト呪文用の3マナを生み出す《Mishra’s Workshop》。ここから《抵抗の宝球》で呪文のコストを増やしたり、高速で《不屈の巡礼者、ゴロス》を出していくデッキです。
かつては《Mishra’s Workshop》 vs. 《Bazaar of Baghdad》 vs. 青デッキという構図でしたが、『モダンホライゾン』の影響でそれも大きく変化しました。
《ウルザの物語》の流行にともない《活性の力》が増加して、その影響により現在は《Mishra’s Workshop》は下火になってきています。ゴロススタックス自体も《ウルザの物語》を強く使えるデッキではあるのですが、デッキが無色マナに限られているせいで、相手からの対策に対応しにくいのが下火になった理由だと考えられます。
■おわりに
現在の主要なヴィンテージデッキをまとめました。来週には晴れる屋さんでヴィンテージ神決定戦が行われます。僕もタイトルホルダーとして迎え撃つつもりですので、強者からの挑戦、大歓迎です!
それでは。