はじめに
みなさんこんにちは。
2021年も残りわずかとなりましたが、みなさんマジックを楽しんでいますか?今年のモダンは大規模な禁止改訂と『モダンホライゾン2』の登場によって環境が激変しました。現在環境にはさまざまなアーキタイプが見られ、特定のアーキタイプが支配的なこともなくゲーム性も安定しています。
さて、今回の連載ではModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12361891
安定の《死の影》
2021年12月4日
- 1位 Grixis Shadow
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Azorius Control
- 4位 Jund Saga
- 5位 4C Blink
- 6位 Hammer Time
- 7位 Humans
- 8位 Azorius Control
トップ8のデッキリストはこちら
今大会を制したのは、最近頻繁に上位で見られるGrixis Shadowでした。準優勝したのはAmulet Titanで、MTG Las Vegasでもプレイオフに残っています。
また、《飢餓の潮流、グリスト》入りのHumansが結果を残していました。Humansは一時期は上位から姿を消していましたが、ここにきて復権の兆しを見せています。
デッキ紹介
Humans
最近復権の兆しを見せているHumans。
『モダンホライゾン2』からも《飢餓の潮流、グリスト》や《帝国の徴募兵》といった新戦力が加入して強化されています。
《虹色の終焉》など除去の性能が上がり、《レンと六番》を搭載したコントロールやミッドレンジが散見される中でも、Humansはまだまだモダンで活躍できるアーキタイプということが証明されました。
☆注目ポイント
《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーとしてカウントされるので、《帝国の徴募兵》によってサーチ可能です。《霊気の薬瓶》や《古代の聖塔》からもプレイできるプレインズウォーカーで、除去としてもフィニッシャーとしても機能します。
《帝国の徴募兵》というサーチ手段を獲得したことによって、マッチアップや状況に応じてさまざまなクリーチャーをサーチできるようになりました。サイド後はコンボデッキやコントロール用に《ガドック・ティーグ》、除去になる《拘留代理人》、Hammer TimeやAffinityに効果的な《戦争の報い、禍汰奇》、多色の相手に《月の大魔術師》、墓地対策の《ヴェクの聖別者》など対応力が上がっています。
『イニストラード:真夜中の狩り』から加入した《輝かしい聖戦士、エーデリン》は、人間・トークンを生成するため《教区の勇者》や《サリアの副官》と相性が良く、タフネスも4なので《稲妻》など3点火力にも耐性があります。このデッキの爆発力の向上に一役買っているカードです。
サイドの《虚空の杯》は、各種「続唱」やHammer Time、Burnなど0-1マナスペルを多用するデッキに対してサイドインされます。こちらには《霊気の薬瓶》や《魂の洞窟》があるので、一方的に相手側の行動を著しく制限させることができます。
Modern Challenge #12361897
《死の影》が連覇
2021年12月5日
- 1位 Grixis Shadow
- 2位 Dimir Mill
- 3位 Jund Saga
- 4位 Counter Monkey
- 5位 Bant Spirits
- 6位 Azorius Control
- 7位 Grixis Shadow
- 8位 Jeskai Humans
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Grixis Shadowを使用していたSoulStrongが、なんと土曜日のModern Challengeに引き続いて今大会を制するという快挙を成し遂げました。
デッキ紹介
Grixis Shadow
Grixis Shadowは、Corey Baumeister氏がSCG Invitationalで優勝を収めて以来、モダンの大会の上位で頻繁に見られるようになりました。ここ最近のModern Challengeでは、複数のプレイヤーをプレイオフに輩出し、2大会連続で優勝するなど勢いがあるデッキです。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《死の影》といったクロックを軽い妨害スペルでバックアップしながら戦う戦略は、環境のさまざまなデッキと互角以上に渡り合うことができます。特にHammer Time、Temur Cascade、多色コントロールなど、コンボデッキや遅いデッキに対して強いデッキなため現環境ではいい立ち位置にあります。
☆注目ポイント
《死の影》デッキとされていますが、従来のように《通りの悪霊》や《ティムールの激闘》といった《死の影》戦略に寄せた戦略から、《夢の巣のルールス》や《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった強力なカードによるミッドレンジに《死の影》を加えた構成になっています。
メインから採用されている《激しい叱責》は、各種《ウルザの物語》デッキやAmulet Titanの《原始のタイタン》《耕作する巨躯》など、いろいろなデッキを妨害できます。それだけではなく、《死の影》を一時的に13/13にしたり、《死の飢えのタイタン、クロクサ》を生き残らせたりすることが可能です。
《コラガンの命令》はHammer Timeを始めとしたさまざまなマッチアップでアドバンテージが取れる優秀なスペルです。《虚空の杯》など厄介な置物に対する回答になるので、最低でもメインから1枚採用したいスペルです。サイドにも追加で2枚採用されているため、Hammer Timeはかなり有利なマッチになります。
サイドには《魂標ランタン》と《虚無の呪文爆弾》の2種類の墓地対策が採用されています。《魂標ランタン》は相手の墓地に落ちた重要なカードを先に追放することができるので、ReanimatorやDredgeなど墓地を使うコンボに対して有効です。《虚無の呪文爆弾》はキャントリップしつつ相手の墓地を追放できるので、Jund SagaやCounter Monkeyなどリソースが重要なマッチアップで使えます。
《終止》は主に《濁浪の執政》用ですが、「再生できない」というテキストもHammer Timeが除去対策として採用している《溶接の壺》を突破できるので大きな意味を持ちます。
Modern Showcase Challenge #12363599
令和のオールスター
2021年12月11日
- 1位 4C Blink
- 2位 Counter Monkey
- 3位 Golgari Yawgmoth
- 4位 Jund Saga
- 5位 Hammer Time
- 6位 Hammer Time
- 7位 Boros Prowess
- 8位 Hardened Scales
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今シーズンを締めくくるModern Showcase Challengeを制したのは、《レンと六番》や《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》、各種インカーネーションなど令和以降に登場した強力なカードを寄せ集めた4C Blinkでした。
Counter MonkeyやHammer Time、Jund Sagaといった定番のデッキが順当に勝ち残る中、プレイオフ進出を果たしたBoros Prowessは《血染めの月》をメインから搭載した高速アグロで、多色ミッドレンジなど遅いデッキが散見される現環境では良チョイスだったと言えます。
デッキ紹介
Boros Prowess
Burnと似て非なるのがBoros Prowessです。火力と速いクロックでプレッシャーをかける動きはBurnと共通するものがありますが、このデッキは「果敢」持ちのクリーチャーとのシナジーを重視しています。軽量の火力スペルによる爆発力は、遅いデッキに対して体制が整う前に決着をつけることができます。
《血染めの月》を採用しているため、《夢の巣のルールス》ではなく《獲物貫き、オボシュ》が「相棒」として選ばれており、フラッド受け兼フィニッシャーとして活躍してくれます。
☆注目ポイント
《溶岩の投げ矢》や《激情》によって低タフネスクリーチャーを捌きやすいので、各種《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキに対して相性が良いです。白をタッチすることで《虹色の終焉》が使えるようになりました。これにより、赤単色では触りづらい《タルモゴイフ》や《虚空の杯》など厄介なカードの対処も容易になっています。
《舞台照らし》や《勝負服纏い、チャンドラ》といったアドバンテージを稼ぐ手段も搭載されているため、ロングゲームでも渡り合うことができます。《勝負服纏い、チャンドラ》の1つめの[+1]能力は、1マナが多いこのデッキにフィットしており、《舞台照らし》の「絢爛」も簡単に達成することができます。忠誠値がすぐ4になるので《稲妻》の射程圏外になるのもポイントです。
Golgari Yawgmoth
Heliod ComboやBirthing Podなどモダンにはさまざまなクリーチャーコンボが存在してきました。現環境でも緑ベースのクリーチャーコンボデッキが活躍しています。Golgari Yawgmothもそのひとつです。
このデッキの動きはまず《スランの医師、ヨーグモス》と「不死」クリーチャーを2体並べます。《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動して「不死」クリーチャーの1体を生け贄えにして、もう1体の「不死」クリーチャーに-1/-1カウンターを置く動作を繰り返すことで、ライフと引き換えに大量のカードをドローすることができます。最終的に《ゲラルフの伝書使》や《血の芸術家》によって相手のライフを削り勝利します。
「不死」クリーチャーを突破することは容易ではなく、《虹色の終焉》など追放系以外の除去では効率的に処理することが困難なため、Grixisなどに強くコントロールやミッドレンジに対してもプレッシャーとなります。
☆注目ポイント
《異界の進化》や《召喚の調べ》のおかげでデッキの動きが安定しています。コンボパーツ以外に《忍耐》《漁る軟泥》《月の大魔術師》など、特定のマッチアップに刺さるクリーチャーを状況に応じてサーチしてくるシルバーバレット戦略も取れるようになっています。
コンボだけでなく「不死」クリーチャーや《飢餓の潮流、グリスト》によってアドバンテージを稼ぐことで、Golgari Midrangeとしても振舞えるところがこのデッキの特徴です。《飢餓の潮流、グリスト》は《異界の進化》や《召喚の調べ》でサーチすることができ、コンボ以外の追加の勝ち手段としても機能する優秀なプレインズウォーカーです。
サイドに忍ばせてある《辺境地の罠外し》は、『イニストラード:真夜中の狩り』から登場した《帰化》持ちのクリーチャーです。《安らかなる眠り》や《墓掘りの檻》《ウルザの物語》など、現環境に存在する厄介な置物を対処する手段になります。クリーチャーなので《召喚の調べ》でサーチすることができ、非常に使いやすくなっています。
Grixis Control
惜しくもプレイオフには進出は成らなかったものの、ストリーマーでモダンのエキスパートであるTSPJendrekが7-2という好成績を残していました。彼が使用していたGrixis Controlを見ていきたいと思います。
スペルの構成がCounter Monkeyと似ていますが、Counter Monkeyは《濁浪の執政》でゲームを決める一方で、こちらは《コラガンの命令》+《瞬唱の魔道士》のカードアドバンテージによって長期戦を制する戦略になっています。
Tronなど土地コンボを除いた多くのデッキと互角以上に渡り合えるデッキで、特に《コラガンの命令》を始めとして効率的な除去や妨害スペルを多数搭載しているため、現環境のトップメタの一角であるHammer Timeに強い構成です。
☆注目ポイント
軽いスペルを多用するので《瞬唱の魔道士》は重要なアドバンテージ源となります。特に《コラガンの命令》との組み合わせが強力で、《夢の巣のルールス》で再利用することもできます。瞬速なので相手の《敏捷なこそ泥、ラガバン》と交換する手段にもなるフレキシブルさが強みで、このデッキで最も重要なカードの1枚と言えます。
《湖での水難》はハンデスや軽い除去が多いこのデッキにフィットしたスペルで、効率的な除去/カウンターとして機能します。《考慮》はドローの質を向上させつつスペルを墓地に落とすことができるので、《瞬唱の魔道士》や《夢の巣のルールス》の選択肢も広がり「昂揚」の条件も満たしやすくなります。
メインから採用されている《塵へのしがみつき》は、DredgeやLiving Endといったデッキに対しての効果は薄いですが、《死の飢えのタイタン、クロクサ》などピンポイントで墓地を利用する相手に有効です。ライフゲインもBurnに対しての時間稼ぎになります。
サイドにはコントロールやコンボデッキとのマッチアップ用に《対抗呪文》や、《ウルザの物語》対策に《激しい叱責》《高山の月》といったカードも見られます。《高山の月》は相性が悪いTronとのマッチアップでも使えるので、おすすめのサイドボードカードになります。
総括
2021年は大規模な禁止改訂と、強力なカードを多数収録した『モダンホライゾン2』の登場によって、モダンの環境に大きな変化が見られた年でした。
現在モダンは常にメタゲームが変化しており、プレイしていて楽しいフォーマットです。毎週メタゲームに合わせて調整し、的確なデッキ選択、サイドボードのカード選択をすることがより重要になりました。テーブルトップも復活してイベントも充実しているので来年はさらに盛り上がることが期待できます。
以上、USA Modern Express vol.68でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!そしてみなさん良いお年を!