リアニメイトでMagic Online最高峰の舞台へ! ~《残虐の執政官》こそがソリューション~

Piotr Glogowski

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2021/12/23)

Magic Onlineの晴れ舞台へ

先週末、レガシーショーケース予選を優勝しました!

今回は、そのとき使用したリアニメイトについて解説していきましょう。

予選体系

まずはじめに、私が参加した大会についてごくごく簡単に説明させてください。興味がない人にとっては、Magic Onlineが展開しているマジックオンライン・チャンピオンシップ・ショーケース(MOCS)の体系がわかりづらいでしょうから。

※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用しました。

第一ステップは、リーグやプレリミナリーを戦い、予選ポイント(Qualifier Point、通称QP)を獲得することです。

そのQPを40点集めると、ショーケース・チャレンジに参加できます。このショーケース・チャレンジは各フォーマットごとにほぼ毎月開催され、トップ8に入賞するとそのフォーマットのショーケース予選へと駒を進めることになります。

私が今回参加したのはレガシーのショーケース予選でした。そして、ショーケース予選を優勝するとMOCSの出場資格を得られるのです。

※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用しました。

このMOCSは、(およそ)四半期ごとの最終到達点となる大会です。参加できるのはたったの8名であり、その8名が賞金総額7万ドルを懸けて戦います。

MOCS予選はいくつものステップがあり、何度もふるいにかけられることになります。そのため、ショーケース予選とMOCSは小規模なフィールドであり、マジックに情熱を傾けて卓越したスキルを培ってきたプレイヤーしか残れません。

私自身もショーケース予選は数えるほどしか経験がなく、1年前は惜しくもヴィンテージの決勝で敗退しました。間違いなく勝ちたい気持ちはありましたし、ぜひともMOCSに参加したかった。ショーケース予選までこぎつければ半分は達成していたようなものですから、そのチャンスをものにしたかったところでした。

フォーマット

皮肉な話ですが、そのMOCSの権利を獲得することになったのは(私の配信をよく観て下さっている方ならご存知のとおり)あまり好きではないフォーマット、レガシーでした。最悪のフォーマットだなんてよく呼んでいますが、もちろんそれはネタであり、好みは人それぞれだと思っています。ただ、レガシーをあまり好きになれないのには理由があるのです。

目くらまし意志の力渦まく知識思案

《目くらまし》《意志の力》《不毛の大地》。これらはどれも強力かつ、0マナで幅広く対応できる妨害です。そして《渦まく知識》《思案》は飛び抜けた強さのキャントリップです。《不毛の大地》は別にしても、ここに掲げた全てが青のカードとなっています。コンボデッキは1~2ターン目にコンボを決めてきますから、現実的に考えると勝ちたいなら青かコンボデッキを使うことになります。

ゲーム展開はというと、青のプレイヤーがキャントリップでライブラリーを掘り進め、どこかの時点で手札を捨てて《意志の力》で妨害するという展開になりがちです。エルフ、土地単、デス&タックスなども存在しますが、私の印象では青系デッキに対して55%の相性、コンボ相手には30%の相性であり、本格的な競技シーンでは勝ちづらいと考えています。

ここに”デルバー相性パラドックス“という現象が起きる理由があると私は睨んでいます。試しに周囲のプレイヤーに意見を聞いてみれば、自分のデッキがデルバーに対して有利だと思っている人たちばかりだとわかるはずです。しかし勝率や大会の結果が明るみに出ると、いつもトップにいるのはデルバーでしょう。

これこそが先ほど述べたレガシー環境の力関係だと思います。さらに、レガシーは自分だけでは気づきづらいテクニックがごまんとある複雑なフォーマットであるため、各種アーキタイプの熟練プレイヤーがデルバー初心者を咎め、デルバーとの相性が有利だという確信を加速させてしまうのです。

レガシーをコンボデッキが支配をしないようにしているのは《意志の力》《目くらまし》だと言われることがあります。確かにその可能性はあるでしょう。別に私は「あのカードを禁止にしろ」と言えるほどレガシーに熱心でもないですし知識もありません。ただ、レガシーを遊ぶ理由とされている部分に惹かれないのです。

クラーク族の鉄工所甦る死滅都市、ホガーク真実を覆すもの

もっとも、私はアイアンワークス(KCI)を愛し、モダンのホガークをとことん楽しみ、パイオニアのディミーアインバーターの死を嘆いた人間ですから話半分に聞いてもらって構いません。ただ、私はコンボデッキが環境を定義しているフォーマットが好きなのです。好きなデッキがことごとく禁止されているところを見る限り、私がズレているのかもしれませんが。

研究

私はレガシーの経験が多くありません。以前に土地単や赤単プリズンを使っていたことがありますが、一度も使ったことがないデッキがほとんどです。しかし、赤単プリズンを使ってひとつ教訓として得たのは、確立されているリストを絶対的なものだと思わないことです。

新しいカードは次々とリリースされるにもかかわらず、昔からある常識が改めて疑問に思われることはあまりありません。ですから、デッキリストを見たときに「何か違和感があるな、時代に合ってないな」と思うカードがあるのなら、そのカードの活躍ぶりに目を向け、積極的に新たなアイディアを試してみるべきです。

聖遺の騎士

ひとつ例を挙げるなら、《聖遺の騎士》がそれに当たります。現代でもどうして《聖遺の騎士》を使っているのでしょうか?確かにサーチできる土地は強いですが、3マナも払う価値があるのでしょうか?

ショーケース・チャレンジ

ショーケース・チャレンジは、リーグで5-0していたリアニメイトをコピーして参戦。勝てる可能性は低いだろうと思いながらも、トップ8に入賞しました。

リアニメイト

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ショーケース予選に向けた調整

ショーケース・チャレンジを通過すると、ショーケース予選までの1週間を使って自分が本番で使用しそうなデッキを幅広く試し、レガシー環境への理解度を標準レベルまで高めていきました。経験が浅いということは、多くを吸収できるということでもあります。

イゼットデルバー

秘密を掘り下げる者敏捷なこそ泥、ラガバン

イゼットデルバー(最近はイゼットラガバンと言ったほうがいいのでしょうか?)は平凡な結果しか出せませんでした。「どのデッキもデルバーに有利」という言説に先ほど疑問を呈しましたが、実際にデルバーを意識した構成に立ち向かうのは容易ではありませんでした。ヘイトカードを耐え抜いたり、テンポに繊細なゲーム展開でわずかな有利をつかみ取るのは決して簡単ではなく、そこに挑戦してみようという気にはなれませんでした。

ブルーゼニス

自然の怒りのタイタン、ウーロ

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を軸にしたブルーゼニスは自分のスタイルに合っているものでした。しかしながら、その構築方法は無数にあり、強い構成を作り上げるのは難しそうでした。

ゲームは恐ろしいほど長期戦になることに加え、私はキャントリップの扱いに不慣れであり、そのキャントリップで状況を打開するカードがどれほどの確率で見つかるのか即座に検討をつけられません。そのため、時間切れで負けてしまったり、手札はいっぱいあるのに負けてしまうことが頻発しました。このデッキが自分にとって最善の道だとは到底思えませんでした。

土地単

暗黒の深部踏査

土地単もデルバーに有利だと言われていますが、実際に戦ってみると初手次第であり、呪文を打ち消されないでくれと願いながら戦っていました。1ターン目の《踏査》《意志の力》《目くらまし》で消されてしまうと、その時点で勝敗が決まるような感覚がありました。それだけでなく、コンボデッキに対しては勝率0%と言っても良いほどの相性であり、土地単は早々に見切りをつけました。

ドゥームズデイ

最後の審判

ドゥームズデイはデッキパワーに手ごたえを感じました。青を使いながらも、速攻で勝てる可能性があるデッキです。《最後の審判》で5枚を選ぶには相応の思考力と慣れが必要でしたが、デッキの立ち位置が良いのであれば気にしないつもりでした。ところが、チャットメンバーによればドゥームズデイは《目くらまし》デッキに弱いとのこと。そこから「デルバーに有利」だと思ってしまうバイアスを差し引いて考えれば、おそらく全く勝てないのだろうということを意味していました。

明らかにデッキパワーで劣る、呪いプリズンや8キャストも試しましたが、これらのデッキを使うもっともらしい理由は見つけられませんでした。

ショーケース・チャレンジを通過したときリアニメイトはとても楽しかったですし、自ら積極的にしかけられるデッキであること、青を含まないデッキに対してめっぽう強いこと、そして青を含むデッキにも渡り合えることから残る時間とエネルギーをリアニメイトの調整と研究に使うことにしました。

デッキ選択

リアニメイト

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ショーケース予選に登録したデッキです。安定性があり、同じ役割のカードが複数種類あり、手札破壊で充分に相手に介入でき、1~2ターン目に勝てる可能性がある。これ以上何を求めるというのでしょう?

残虐の執政官

このデッキのメインプランは早々に《グリセルブランド》をリアニメイトすることですが、ショーケース・チャレンジを戦っているうちにピン挿しだった《残虐の執政官》こそが真の状況打開カードだと考えるようになりました。

《グリセルブランド》だけではリアニメイト対象の数が足りず、《グリセルブランド》単体では勝ち切れないこともあります。そのため、一般的なリストでは《納墓》で墓地に送るカードをほかにも複数種採用し、問題となる場面を打開できるように組まれています。しかし、《残虐の執政官》を1~2体リアニメイトして打開できない状況に私は巡り合ったことがありません

カラカスイス卿の迷路濁浪の執政剣を鍬に

《カラカス》?伝説じゃないのでバウンスできません。《イス卿の迷路》?攻撃時の誘発効果でじわじわ勝ちますね。8/8の《濁浪の執政》《マリット・レイジトークン》?生け贄に捧げてもらいましょう。《剣を鍬に》?良いですよ、私が2枚分得してますけど。コンボ?手札がなくちゃ決まらないでしょう。

《納墓》で墓地に送るのが主に《グリセルブランド》であることに変わりはないですが、《残虐の執政官》は除去されなければ単騎であっという間に勝てます。さらに、黒のカードであることから《暴露》のコストにも充てられるおまけつきです。私はすぐにパフォーマンスが安定しないリアニメイト対象をばっさりカットし、《残虐の執政官》を4枚に入れ替えましたが、この変更を見直すことは一度もありませんでした。

別館の大長

《別館の大長》は定番カードのようですが、個人的にはあまり好きになれません。フェアデッキに対してリアニメイトしても勝てることは悲しいほどに少ない印象ですし、黒のカードでもありません。そこで《別館の大長》はミラーマッチ、ドゥームズデイ、スパイなどの超高速コンボ対策としてサイドボードへと移すことにしました。《別館の大長》はほかに良い選択肢がなかった時代の名残のように思います。

外科的摘出忍耐

つづいて、私は乗り越えなくてはならない墓地対策をどう対処するか考え始めました。レガシーでは墓地対策をパーマネントに頼ることはほとんどありません。青のデッキは《外科的摘出》が基本になっていますし、緑のデッキはデルバー対策として最高だという考えから《忍耐》を多めに採用しています。

これらのカードが基本的な墓地対策になっているのはもっともだと思います。どちらも多様なマッチアップでの用途があり、リアニメイト側が1ターン目から《グリセルブランド》を出してくることを考えると《墓掘りの檻》は手札破壊されるうえ、間に合わない(!)可能性があるからです。

《外科的摘出》《忍耐》が人気の墓地対策であるならば、手札破壊が最高の解答となるでしょう。それらの墓地対策を処理できるほか、打ち消し呪文にも対応できるからです。

思考囲い暴露悲嘆

一般的なリストでは《思考囲い》の枚数が驚くほど少ないですが、(自分を対象に《思考囲い》を打てば)フィニッシャーを墓地に送ることができますし、相手の妨害もこなせます。私は《思考囲い》が4枚欲しいと考えましたが、この変更にはとても納得がいっています。もしこのリストにひとつ変更を加えるとすれば、メインデッキの《別館の大長》のところに2枚目の《悲嘆》を入れるでしょう

《暴露》《悲嘆》を比べると、《暴露》のほうを優先させています。《悲嘆》はピッチスペルとして使った後にリアニメイトできますが、それ以上に《暴露》自分を対象にとりたい場面のほうが多いと感じたためです。

静寂信仰無き物あさり虹色の終焉

サイドボードに話を移すと、《虚空の力線》戦略である《実物提示教育》はショーケース・チャレンジのときに微妙な活躍だったため、1マナ軽い《静寂》に変更しました。この変更で青マナの必要性がなくなったため、《入念な研究》から《信仰無き物あさり》に変更してルーティング呪文枠を多少強化できました。

《虹色の終焉》を採用しているリストをあまりみかけませんが、さまざまな形で飛び出してくるパーマネント型の対策カードをことごとくさばける素晴らしい呪文だと感じています。ほかの選択肢として《暗黒破》《恭しき沈黙》《悪ふざけ》などがありますが、いまのところ試したことがなかったり、深く検討したことがありません。

実はショーケース予選で使ったデッキは少し間違って登録したものでした。本当なら《虐殺》《セラの使者》のところに追加の《虹色の終焉》《フェアリーの忌み者》を入れたかったのです。1回戦でサイドボーディングしているときにようやく気づいたのですが、大した問題ではありませんでした。

大会

大会の様子はTwitchで配信しました。いつもなら絶対にしないのですが、今回は10分ディレイをかける(10分前の映像を流す)形で配信しました。対戦相手に配信をのぞき見されるのが嫌だったわけではありません。自分のためにそうしました。

ゲームと配信でマルチタスクになり、意識をあちこちに移動させていると目に見えて自分のパフォーマンスが落ちるという自覚がどんどん強くなってきています。私は気が散ると手なりでプレイし、カードをクリックし、その数秒後にとんでもないプレイミスをしていることに気づくことが多々あるのです。

今回は勝つことを目的にしている以上、この問題を自ら回避したいと考えました。リアルタイムではない映像を配信で流すのは視聴者にとっては味気ないものでしょう。しかし、今回は自分の勝機を優先させました。

勝った今だからこそ生存バイアスや正当化が入り込んでいるでしょうが、プレイングは適切で、ドローも良く、時間を使って考え抜いたプレイを選べたと思います。幸いにもリアニメイトは高速デッキであり、時間切れを気にする必要もなかったことがひとつの成功要因でしょう。

8マッチを戦い、青のデッキに7回、エルフに1回当たり、パーマネント型の対策カードに遭遇することはあまりありませんでした。デッキ構築が的確で環境の立ち位置が良かったのかと問われれば、確かにそう思うこともありましたが、確証は得られません。

勝利に勝利を重ね、決勝にたどり着くと、決勝の相手はHareruya Prosのハビエル・ドミンゲス/JavierDominguez!

その最終ゲーム、《不毛の大地》をフェッチランドに対して起動されるとリアニメイト呪文が《目くらまし》に引っかかってしまうという致命的かつ珍しい展開を失念しており、まんまとその展開をなぞってしまった……のですが、ハビエルもその展開を見落としていたようで《残虐の執政官》が場に出てしまうというあっけない結末でした。正しいプレイは何よりも先にフェッチランドから土地をサーチすることだったでしょう。もう同じミスは絶対にしません!

最高の時

優勝できて最高の気分です。今回は優勝を目指して大会に臨みましたが、不慣れなフォーマットでその夢をかなえるのは現実的ではないと思っていました。MOCSの権利を得ただけでなく、しばらく組織化プレイに放置されていた最高のフォーマットで戦えるのですから、これほど楽しみなことはありません!

2月26日、Magicの公式Twitchチャンネルでお会いしましょう!MOCSをモダンとヴィンテージキューブで戦います!

ピオトル・グロゴゥスキ (Twitter / Twitch / Youtube)

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Piotr Glogowski マジック・オンライン上でkanisterとしてその名を轟かせ、Twitchの配信者としても人気を博す若きポーランドの雄。 2017-2018シーズンにはその才能を一気に開花させ、プロツアー『イクサラン』でトップ8を入賞すると続くワールド・マジック・カップ2017でも準優勝を記録。 その後もコンスタントに結果を残し、プラチナ・レベル・プロとしてHareruya Prosに加入した。 Piotr Glogowskiの記事はこちら