決勝戦:中本 貴裕(ハンマータイム) vs. 窪田 けい(ハンマータイム)
晴れる屋メディアチーム
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By Souta Nakagawa
シンプルに訳すると「速さの必要性」。
モダン環境において、コントロールを除けばいつでも速さが求められる。アグロ系のデッキやコンボデッキのみならず、ミッドレンジですら的確かつ迅速に相手のライフを0にする速度が必要なのだ。
もちろん、速さだけでは勝てない。立ちはだかる障害を乗り越えるパワーも必要だ。つまり、現環境のモダンを乗り切るには、圧倒的なパワーとスピードが求められるのだ。そんな強いデッキが、都合の良いデッキが存在するのか──答えはイエス。
今回の第12期関西帝王戦モダンの決勝戦に残った中本 貴裕と窪田 けい、両者が選択したデッキこそがその回答、すなわち「ハンマータイム」だ。
プロフィールではどちらも「ハンマータイムに苦戦した」と語っていたが、まさか最後まで苦しい戦いを強いられるとは思ってもいなかっただろう。だが、いかなる物事にも苦境を乗り越えた先に栄光がある。激動のモダン環境を制し、TC大阪モダン環境の頂点『帝王』の称号を得るのはどちらか。
「相棒」の《夢の巣のルールス》を互いに公開した後、窪田はマリガン、中本はキープしてゲーム開始。
窪田が《秘密の中庭》を置いてターンを渡すと、中本は《神無き祭殿》をタップインしてから《羽ばたき飛行機械》を召喚。どちらも緩やかなスタートだ。ところが、2ターン目から早速双方に敵を仕留めるための下準備がみられた。
窪田が《ウルザの物語》から《巧妙な鍛冶》を唱えると、ライブラリーから《羽ばたき飛行機械》をサーチしてそのままキャスト。鍛冶屋の上に+1/+1カウンターを乗せてサイズアップ。対する中本は少し悩んだのち、同じく《ウルザの物語》を設置して、捻出したマナで《バネ葉の太鼓》→《石鍛冶の神秘家》を戦場に出し、《巨像の鎚》を手札に加えた。
ハンマータイムの名の由来となった凶悪な装備品が見えたとなると、自身の手札に《巨像の鎚》が来ていない窪田に与えられた猶予は少ない。《平地》から《シガルダの助け》、さらに《頭蓋囲い》を唱えた窪田は、追加の+1/+1カウンターを得た《巧妙な鍛冶》に《頭蓋囲い》を装備。先制攻撃を叩き込み、中本のライフを15に削る。
だが、こうなれば中本も黙ってはいない。《バネ葉の太鼓》と土地をタップして彼が唱えたのはハンマータイムのエンジン役、《純鋼の聖騎士》!《巨像の鎚》を戦場に出せば、《純鋼の聖騎士》の効果でドローできる。しかも《墨蛾の生息地》を設置した中本は、さらに《巨像の鎚》をもう1枚出して追加の1ドロー!一撃で窪田を倒す準備を整えながら、手札まで補充してみせた!
中本はそのままそれぞれのハンマーを《羽ばたき飛行機械》、《純鋼の聖騎士》に装備して、窪田にターンを渡す。後がなくなった窪田は《ウルザの物語》の第Ⅲ章で《巨像の鎚》をライブラリーから探し出し、戦場に出した。そしてそれを《巧妙な鍛冶》に装備させてから追加の《羽ばたき飛行機械》を唱えると、17/15まで肥大化した、鍛冶というよりはもはや怪物と化したクリーチャーで攻撃したのだ!
そのまま攻撃を通せばもちろん即死を免れない中本は、《羽ばたき飛行機械》でブロック。無事に戦力を一つ削いだ窪田は、《純鋼の聖騎士》を召喚して、もう1体の《羽ばたき飛行機械》に《巨像の鎚》と《頭蓋囲い》を付け替えて次の攻撃に備える。ところが、窪田にもう「次のターン」は存在しなかった。
返しのターン、お馴染みとなった《ウルザの物語》第Ⅲ章で《影槍》を戦場に出してドローした中本は、《純鋼の聖騎士》に《影槍》ともう一つの《巨像の鎚》を装備。そして彼の手札から飛び出してきたのは──なんと3枚目の《巨像の鎚》!当然のごとく《純鋼の聖騎士》に装備されたそれだけに飽き足らず、手札から《頭蓋囲い》まで着地!
ここに三刀流もびっくりのハンマー3本に槍1本とヘルメット1つ──パワー39、タフネス33、トランプルと絆魂を持つ、エルドラージすら裸足で逃げ出す怪物(モンスター)が爆誕した。こんな化け物に攻撃されてはひとたまりもなく、窪田はここで投了した。
中本 1-0 窪田
今度は互いに1回ずつマリガンし、窪田が先攻でゲームが始まる。
窪田が《秘密の中庭》を出すと、中本は同じ《秘密の中庭》から《バネ葉の太鼓》を設置。1ゲーム目と内容は変わらないが、今度はゲームの雰囲気が違った。窪田は《無声開拓地》から《メムナイト》、《シガルダの助け》と下準備を進め、中本は《ウルザの物語》から《巧妙な鍛冶》、《影槍》と戦場に出し、こちらも攻撃の手筈を整える。
だが、その必要はなかった──窪田がこのターンで、ゲームを終わらせたからだ。手札の《巨像の鎚》2枚を《メムナイト》に装備して攻撃。ただそれだけ。
シンプルすぎる一撃だが、中本に防ぐ手立てはない。20点の強烈な殴打は、先のゲームが嘘のように窪田を勝利へ導いた。
中本 1-1 窪田
速攻で決着がつこうとも、泥試合になろうとも、これが最後のゲームになる。窪田がマリガンをして雌雄を決する勝負が始まった。《ウルザの物語》から《バネ葉の太鼓》《羽ばたき飛行機械》、《エスパーの歩哨》を展開する中本。《秘密の中庭》から《メムナイト》を出すだけに留まった窪田。どちらも秘めた策を想起させる動きだ。
次のターン、《秘密の中庭》を置いてターンを渡した中本に対し、先に動いたのは窪田だった。《平地》を置いてしばらく悩んだ彼は、《石鍛冶の神秘家》を唱えて《巨像の鎚》を手札に持ってくる。手札によっては、次のターンにハンマーを持ったクリーチャーが中本に襲い掛かってくるだろう。
これに対し、中本は《ウルザの物語》の第Ⅱ章で構築物・トークンを戦場に出す。そして自ターンに再び構築物・トークンを出してから、第Ⅲ章で《バネ葉の太鼓》を戦場に持ってきた。
次いで《湿地の干潟》で《平地》を戦場に出すと、構築物・トークンで窪田に攻撃。装備品がなくとも7/7の打点は強烈で、窪田のライフが13に減る。その後も《石鍛冶の神秘家》を唱えて《影槍》を手札に加えた中本は、ライフレースで相手を突き放そうとする。
そうはさせまいとばかりに、窪田は《ポータブル・ホール》を唱えた。これにより《構築物・トークン》は穴に落とされてしまう。そして《バネ葉の太鼓》から《シガルダの助け》を盤面に着地させ、ハンマーをすぐに使える手はずを整える。
次のターンに《巨像の鎚》が出てくるとわかっているならば、やはり早急な決着が求められる。そう思ったのか、中本は即座に攻勢に打って出た。彼も《シガルダの助け》を唱えると、1体の《羽ばたき飛行機械》を除いて攻撃を仕掛けたのだ!
窪田は構築物・トークンを《メムナイト》でブロックするが、瞬速を持って中本の手から唱えられたのは《影槍》と《巨像の鎚》!それぞれ構築物・トークンと《羽ばたき飛行機械》に装備され、窪田のライフを削り取りにかかる!
しかし窪田も負けじと《巨像の鎚》を唱えて、《メムナイト》に装備。どうにか構築物・トークンの攻撃は防ぐが、ほかの猛攻は抑えきれず、窪田のライフは1点まで削られてしまっただけでなく中本のライフが27まで回復する。
かすり傷でも敗北に直結する窪田は《純鋼の聖騎士》を戦場に出し、《巨像の鎚》を装備させてどうにか凌ごうとするも、中本が《羽ばたき飛行機械》に《影槍》を装備するととうとう窪田に対策の手段はなく、彼が投了して決着がついた。
そしてミラーマッチを制した中本が新たな帝王──モダン環境の頂点に立ったのであった。
中本 2-1 窪田
『第12期関西帝王戦モダン』優勝は中本 貴裕!おめでとう!!