決勝戦:堀 雅貴(土地単) vs. 布谷 彬(Doomsday)

晴れる屋メディアチーム

By Souta Nakagawa

さらば、ラガバン

敏捷なこそ泥、ラガバン

『モダンホライゾン2』で収録されたこのカードは、レガシー環境を一変させた。「疾駆」で攻撃を仕掛けた小猿に対応しきれずに敗北したデッキは数知れず。中にはこれ1枚に対応するためだけにサイドボードの変更を余儀なくされたデッキもある。

そんな猿の横暴に、つい先日終止符が打たれた。1月25日の禁止改訂で、ラガバンはレガシー環境から去っていったのだ。そして1週間が過ぎ、新たな環境の下で第11期関西帝王戦レガシーは開催された。

歴代最強と名高い2マナクリーチャーがいない世界に残ったのは、下記の2つのデッキだ。

土地単

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堀 雅貴が選択したのは「土地単」

“61 Lands”と銘打たれたこのデッキは、土地単の使い手で名を馳せる堀が選びに選び抜いたカードを詰め込んだ、洗練されたデッキである。ここまで勝ち上がってきた第4期関西帝王戦レガシーの覇者は、伊達ではない。

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対する布谷が使用するのは「DDFT」

「Doomsday Fetchland Tendrils」略してDDFT。《最後の審判》を用いたコンボデッキ。その使用難度はレガシーでもトップクラスだが、あらゆるパターンを頭に叩き込んだであろう布谷は、もはやこれを手足のように扱えるといっても過言ではない。

堀 雅貴(左) vs. 布谷 彬(右)

勝つのはかつての帝王か、それとも未来の帝王か。無数のカードとデッキ、コンボが存在するレガシーだからこそ許される超スピードの激闘、そして2人が見せる圧倒的なテクニックをご覧いただこう。

決勝

Game 1

堀、布谷ともにマリガンをせず、初手7枚でゲームが始まる。

先攻の堀は《樹木茂る山麓》から《Taiga》を戦場に出し、緑マナを捻出して《踏査》。さらに《演劇の舞台》を出す順調なスタートを見せる。一方で後攻の布谷は《霧深い雨林》を設置してターンを渡す。

演劇の舞台暗黒の深部

これに対し、堀の手札から出てきたのは《森》《暗黒の深部》。いつ、どんな状況であっても20/20+飛行+破壊不能を持った《マリット・レイジトークン》が戦場に降臨する、恐ろしい布陣だ。そう、とても恐ろしい布陣である──相手が布谷のDDFTでなければ、だが。

フェッチランドから《Underground Sea》を置き、《渦まく知識》を唱えてからターンをもらった布谷は《暗黒の儀式》を2枚用いてから、《目くらまし》を唱えてマナを出すべく土地を回収する。そして後続の土地を回収した彼が繰り出したのは、《最後の審判》

最後の審判

対応策のない堀の前で、布谷はライブラリーから5枚のカードを選び、残りのすべてをゲームから取り除く。この5枚こそが、彼を勝利に導く最強の『呪文書』だ。取り除かれたカードを確認する堀をよそに、《Underground Sea》から《渦まく知識》《ライオンの瞳のダイアモンド》と順に、布谷の手札から呪文が唱えられてゆく。

タッサの神託者

次いで《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動し、《通りの悪霊》でカードを引く。そして《留まらぬ発想》で残ったすべてのライブラリーを引き切り、《水蓮の花びら》《タッサの神託者》と繋いだ時、堀が投了した。

たった1ターンと5枚のライブラリー。それだけで勝利する。レガシー最速クラスのコンボデッキの凄まじさを見せつけた布谷が、初戦を制した。

堀 0-1 布谷

Game 2

モックス・ダイアモンド踏査

先手の堀が1マリガン、布谷は変わらずノーマリガンでゲームが始まる。堀の初動は1ゲーム目と変わらず軽快だ。《燃え柳の木立ち》《カラカス》を捨てて《モックス・ダイアモンド》から《踏査》を唱え、大量の土地カードを展開する準備を整える。

布谷も早速《通りの悪霊》を「サイクリング」し、さらに《思案》を唱える。ライブラリーの上から3枚──《蒸気の連鎖》《最後の審判》《渦まく知識》──を見た彼は少し悩んだ様子を見せたのち、シャッフルを選んだ。そして《水蓮の花びら》を置き、コンボに備える。

一見すると次のターンにでもコンボが始まりそうな、危険な状況だ。だが。返しのターンで《演劇の舞台》を設置した堀の手札から現出したのは、荒ぶる女神が眠る暗い海の底、《暗黒の深部》

暗黒の深部

もしも彼女が戦場に着地したなら、布谷のライフは一撃で灰燼に帰す。そうならないよう彼は《渦まく知識》を用いて必死に対抗策を探す。《定業》も使ってどうにか策を練るが、次のターンに君臨する邪神を止める手立ては布谷にはない。

《マリット・レイジトークン》を堀が降臨させると、布谷は投了した。

堀 1-1 布谷

Game 3

堀にとっても、布谷にとってもここが正念場。シャッフルする手を止め、心を研ぎ澄ませるかのように瞑想する堀。布谷がマリガンし、帝王を決める最後の戦いが始まった。

暗黒の儀式最後の審判

先手1ターン目で《沸騰する小湖》から《Underground Sea》を引っ張り出した布谷が、《暗黒の儀式》から早々に《最後の審判》を唱えたのだ!対応手段のない堀の前で、布谷は何度も思案を重ねながらカードを選んでゆく。《最後の審判》を唱えたから勝ちなのではない。ここから5枚のカードを選出し、堀が用意したであろうサイドボードの脅威を潜り抜けなければ、負けるのは危険な呪文に手を出した本人だ。

手札と相談し、布谷が選んだのは下記の5枚。

タッサの神託者通りの悪霊トーモッドの墓所
霧深い雨林島

これらのカードを新たなライブラリーとした布谷は、堀にターンを渡した。いまだ決着がついていないのなら、堀も諦めるはずがない。《吹きさらしの荒野》《Taiga》を持ってきた堀は、《踏査》から《爆発域》へと繋げる。一方で布谷は《霧深い雨林》を戦場に出してターンエンド。堀も《演劇の舞台》から《暗黒の深部》の定番コンボを設置してターンエンド。そして──最後のターン、審判の時がやってきた。

《トーモッドの墓所》を唱えた布谷は《霧深い雨林》を起動し、ライブラリーから《島》を戦場に出す。そして《定業》で引き込んだ《通りの悪霊》は、《魂の洞窟》から予定調和の《タッサの神託者》を布谷の戦場に登場させた!

忍耐トーモッドの墓所

堀は対応して《忍耐》を唱えるが、ここでいぶし銀の活躍を見せたのは《トーモッドの墓所》

これにより墓地をすべて追放されてしまうと、もはや堀の万策は尽きた。好敵手に拍手を送る堀の投了とともに、布谷の勝利が確定した。

レガシーの試合は一見すると、「こんなに簡単に勝敗が決まるなんてつまらない」と思ってしまう内容に見えるかもしれない。だが、そうではない。簡単に終わったように見える戦いの裏には、何十、何百と試行錯誤を繰り返したプレイヤーの努力と経験が存在する。実戦でありとあらゆるパターンを導き出し、頭の中で無数の「if」を重ね、やっとたった一つの『勝利』に繋げられるのだ。

第11期レガシー『帝王』、布谷 彬。デッキを磨き、技量を磨き続けて栄光を掴んだ彼に、惜しみない称賛を。

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