はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
今週末に発売される『神河:輝ける世界』ですが、オンラインでは一足早くリリースされています。早くも新カードが活躍しているとの情報を受け、急いで大会結果を見てきました。構築戦のカギを握るのはどのカードでしょうか。
今回はStandard Challenge #12387457の大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
先週末に新環境一発目のオンライン大会がMO上で行われましたが、1枚のスピリットへ注目が集まりました。公開後すぐに話題に上がっていた《暁冠の日向》です。
《暁冠の日向》はサイズの優れた《アウグスティン四世大判事》と思いきや、特徴であるコスト軽減/ 増加ともに強化されています。ポイントとなるのはプレイする呪文の「対象」の数であり、自分の呪文ならば「対象」1つにつき1マナ軽減、相手の呪文ならば1マナ増加します。つまり、自分が唱える《削剥》や《否認》は1マナになる反面、相手がプレイするものは3マナとなるのです。
《暁冠の日向》を得たことでジェスカイカラーのデッキは転換期を迎えています。着地した瞬間から戦況を大きく変えるクリーチャーが登場したことで攻防の切り替えは今まで以上にスムーズに、そして強引に行えるようになります。
この背景にはメタゲームも関係しています。『神河:輝ける世界』前に環境をけん引していたオルゾフミッドレンジは単体除去を採用していますが、採用率の高い《消失の詩句》では《暁冠の日向》を対処できません。格闘系の除去では火力を割り込まれないように展開と除去を同タイミングで行う必要があります。しかしテンポ面筆頭であった《吹雪の乱闘》ですら3マナになってしまいます。
単一除去以外に目を向けるも打ち消し呪文は《ゼロ除算》を失ったことで減少傾向にあり、全体除去はやや悠長です。総じて《暁冠の日向》が定着しやすく、除去されにくいメタゲームが形成されていたのです。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
Standard Challenge #12387457
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | O_danielakos | イゼットドラゴン |
準優勝 | Edel | 赤単アグロ |
トップ4 | billsive | ジェスカイオパス |
トップ4 | KingHairy | アゾリウスコントロール |
トップ8 | _Shatun_ | ジェスカイオパス |
トップ8 | McWinSauce | ジェスカイオパス |
トップ8 | Lennny | イゼットドラゴン |
トップ8 | Gul_Dukat | 緑単アグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
環境最初のStandard Challengeを制したのはイゼットドラゴン。環境初期に強いアグロデッキを意識しつつも、均整の取れた構築となっています。1マナ域からずらりと並んだ火力と打ち消し呪文は序盤のリードを許さず、更地のまま中盤戦へと移行していきます。
ドローソースを挟み手札が充実してくればフィニッシャーの時間。イゼット系ではお馴染みの《黄金架のドラゴン》に加えて《船砕きの怪物》が採用されています。前者は飛行のためプレインズウォーカーに対して強く、後者はミッドレンジ~コントロールで特に活躍します。宝物トークンで余剰マナを用意してしまえば、隙を作らず安全に《船砕きの怪物》を着地させることができますね。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ジェスカイオパス | 11 | 6 |
イゼットドラゴン | 5 | 3 |
オルゾフミッドレンジ | 4 | 1 |
赤単アグロ | 3 | 2 |
グルールアグロ | 2 | 1 |
その他 | 7 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
『神河:輝ける世界』リリース前は環境の中心であったオルゾフミッドレンジですが、ここにきて苦しい立ち位置となりました。新アーキタイプであるジェスカイオパスに対しキークリーチャーである《暁冠の日向》が対処しにくく、固めたボードも《マグマ・オパス》のいい的になってしまいます。《暁冠の日向》を基点にビッグスペルを連打してくるジェスカイオパスの登場は、オルゾフ一強時代に終わりを告げてしまったのです。
テンポ火力と攻守を入れ替える《黄金架のドラゴン》が特徴的なイゼットドラゴンも増加傾向にあります。オルゾフは《蜘蛛の女王、ロルス》など対空防御に優れていますが、《燃えがら地獄》や《家の焼き払い》を採用することでドラゴンが走りやすい戦場を構築できるようになっています。
環境の始まりは単色アグロからと言いますが、《暁冠の日向》がボードコントロールを軸にしたコンボでもあるため頭を抑えられてしまった感じです。しかしながら赤単アグロはしっかりと、そして久しぶりに存在感を示したといえるでしょう。新加入のカードが多くデッキ全体がパワーアップしており、さらに流行のジェスカイオパスが3色かつ全体的に重めであること、この点を突いた速い展開の構築となっています。
トップ8デッキリストはこちら。
ジェスカイオパス
『神河:輝ける世界』とともに産声を上げたジェスカイオパス。今回はトップ4に入賞したbillsive選手の構築をみていきます。デッキの構造としてはイゼットターンに近く、火力と打ち消し呪文で相手の戦力を対処していき《表現の反復》などで差をつけていきます。4ターン目、もしくはマナに余裕ができたタイミングで《暁冠の日向》着地させて、コントロールを確立します。
デッキの主軸となる《暁冠の日向》と《マグマ・オパス》のコンボです。《アールンドの天啓》+《感電の反復》ほど圧倒的ではないものの、土地をタップすることでインスタントでの干渉手段に乏しいデッキやクリーチャーベースのデッキには絶大な効果を発揮します。
《暁冠の日向》状況下での《マグマ・オパス》はダメージの対象を4つ、それとは別にタップ対象を2つ取ることでわずか2マナでプレイできるようになります。マナコストという概念をぶち壊したこのコンボは横並びで押してくるアグロデッキには効果抜群。何といっても自ら《マグマ・オパス》のコスト軽減に協力してくれているのですから。2マナで攻撃をさばきつつ4/4トークンとカード2枚を引かれては巻き返すのは困難を極めます。
《暁冠の日向》はひとたび戦場に出ればすぐさま効果を発揮するため、相手のタップアウトを見計らって安全に着地させるか、《マグマ・オパス》用のマナを確保しつつプレイしたいところです。
いくら強力なコンボだったとしてもいきなり狙っては上手く決まりません。物事には順序、下準備が欠かせないのです。このジェスカイオパスならば余剰マナの捻出でしょう。《暁冠の日向》着地後にすぐに《マグマ・オパス》へ繋げる、もしくは《暁冠の日向》を除去から守るためにも複数の宝物トークン生成カードが採用されています。
《予想外の授かり物》はイゼットターンでも活躍したカードであり、インスタントでルーティングしつつ宝物トークンを2つも生成してくれる規格外のカード。このカードがあれば5ターン目に《暁冠の日向》を着地させつつ3マナで《マグマ・オパス》をプレイ可能となります。
《プリズマリの命令》はもっともマナカーブに即したマナ加速であり、3ターン目にプレイすることで4ターン目の《暁冠の日向》を守るためのマナを用意してくれます。また、アーティファクトクリーチャーを多数採用した赤単アグロが増加傾向にあり、それに対するメタカードとしての評価も上がっています。「換装」したところへ《粉砕》モードをお見舞いし、ボード上で2対1交換を狙えます。
デッキの大半を除去とドローが占めていますが、保護呪文として使える《勇敢な姿勢》も採用されています。保護能力があるとはいえ、《暁冠の日向》の定着が勝敗に大きく影響する戦略だけに必要枠となります。追放除去である《消失の詩句》の対象にならないこともあり、《勇敢な姿勢》はほとんどの除去に対するカウンターとして機能するのです。
赤単アグロ
ローテーション後にはめっきりと姿を見なくなっていた赤単ですが、遂に復活の日がやってきました。《鍛冶で鍛えられしアナックス》のようなボードに圧力をかけ続けるカードや、《朱地洞の族長、トーブラン》や《エンバレスの宝剣》に変わるフィニッシュカードは見つかったのでしょうか。Edel選手のデッキをご紹介します。
最序盤からボードでプレッシャーをかけていく戦略に変わりはなく、1マナ域から綺麗な展開を目指します。《兎電池》と《蜥蜴丸》、《大峨頭の兜》は序盤のダメージレースを有利に立ち回らせてくれますが、その真価は「換装」にあります。
「換装」することで非クリーチャーパーマネントとなるため、クリーチャー除去を受けません。全体除去がある相手に対しては前もって「換装」しておくことで、素早い立て直しが可能となります。特に《兎電池》は速攻を付与するため、中盤以降は「換装」してクリーチャー除去をもらわないようにする必要があります。
《大峨頭の兜》は自身か「換装」したクリーチャーをカード3枚へと変換してくれるリソース面に特化したカードであり、「換装」コストは3マナとやや重いものの効果を考えればお釣りが来るほどです。対コントロール戦では隙をみて確実にダメージを通してカードアドバンテージへと変換しておきましょう。
1マナ域を埋める《熊野と渇苛斬の対峙》はクリーチャー化する英雄譚であり、3マナ域相当の効果を持っています。マナカーブ通りにプレイできれば3ターン目のダメージソースを確保しつつ、2ターン目のクリーチャーを強化できる破格の性能となります。II章までは非クリーチャーであるため全体除去の煽りも食らわず、置いてあるだけでプレッシャーとなります。全体除去を撃たれるであろうターンを見越して事前に設置しておきます。
赤単が待ち望んでいたフィニッシャーがやってきました。《轟く雷獣》は攻撃に合わせてクリーチャーを強化でき、さらにほかのクリーチャーが「改善」されているならその数だけ直接ダメージを与えられるようになります。一度の攻撃で最低でも4点、ほかにクリーチャーがいれば5点以上と歴代の4マナ域と比較してもかなり攻撃的なデザインといえます。「換装」持ちや《熊野と渇苛斬の対峙》のように+1/+1カウンターを配置するカードが複数あるため、このデッキでは見た目以上に本体火力として使えるのです。
緑単アグロ
《不詳の安息地》を失い消えゆく運命にあるかと思われた緑単アグロですが、『神河:輝ける世界』で強化され復活しています。ダメ押しとなる追加のカードは見つかったのでしょうか。Gul_Dukat選手の構築に目を向けてみましょう。
定番と思われた《レンジャー・クラス》に変わって採用されているのは期待の新機体《勢団の銀行破り》です。《勢団の銀行破り》は2マナながらパワー4の破格の機体ですが、搭乗コストが3と重くやや使いにくい印象を受けます。
しかし、スタッツの優れた緑ならば心配はいりません。《群れ率いの人狼》や《老樹林のトロール》など各マナ域にパワー3のクリーチャーがおり、搭乗するクリーチャーに困りません。しかもこのデッキでは確実に搭乗できるように《茨橋の追跡者》まで採用する徹底ぶり。本体は無色であるため《消失の詩句》を受けず、テンポロスしにくいのも魅力といえますね。
また、盤面が膠着すればかつての《精神迷わせの秘本》のごとくカードアドバンテージ源へと早変わり。都合3枚のカードとトークンをもたらしてくれます。《レンジャー・クラス》とどちらが優れているかはさておき、安定してカードを供給してくれるのは間違いありません。
緑単アグロの5マナ域は少数ながら激戦区であり、これまでは《レンと七番》や《不自然な成長》がその座を争ってきましたが、そこへ新たな1枚が投入されています。《古霊招来》は単色のみで使用可能な色拘束の強いカードである代わりに、わずか5マナで4/5のクリーチャー2体を生成してくれます。
1枚で複数体展開できるためリセット後の立て直しやアグロ同士のダメージレースでは活躍が期待できます。対処しようにも単体除去ではアドバンテージ面で劣り、サイズで並ぶクリーチャーはほとんどいません。
うっかり忘れがちなカウンター3種ですが、これこそがほかの5マナ域との差であるといえます。対オルゾフ戦では単体でトランプルを持つのが《老樹林のトロール》のみだったため、一度《蜘蛛の女王、ロルス》や《婚礼の発表》で防壁を構築されてしまうと突破が困難でした。しかし、《古霊招来》ならばトランプルカウンターを配置することで戦線をこじ開け、膠着を打破できます。
イゼットならば到達カウンターを配置することで《黄金架のドラゴン》を牽制し、マナ差をつけられないように攻撃に待ったをかけてくれます。5マナと重いものの対戦相手によって役割が変わる珍しいカードであるといえますね。
オルゾフミッドレンジ
使用者こそ多いものの、今一歩戦績を伸ばせなかったオルゾフミッドレンジ。クリーチャーとプレインズウォーカーを絡めて戦線を構築し、相手に合わせて緩急をつけた展開が可能なまさにミッドレンジを体現したアーキタイプです。除去呪文も多く、ボードコントロールに長けたデッキではありますが、極端にゲームレンジが違うデッキやコンボを苦手としています。ジェスカイオパスはまさにその典型であり、ミラーマッチを意識しデッキがやや重くなりすぎたのも相まって思ったほど活躍できませんでした。今後は構築の改善が必要になりそうです。
新カードの《放浪皇》はインスタントタイミングでプレイできる珍しいプレインズウォーカーであり、このデッキでは貴重な相手のターンに展開できる脅威となります。しかも攻撃面だけではなく防御面も優れており、ほかの単体除去と比べても遜色ありません。《エシカの戦車》や《老樹林のトロール》を対処するにも適しており、ほかのプレインズウォーカーが安全に着地できるボードを事前に作り上げてくれるのです。
おわりに
今回は新カードを採用したデッキを中心にご紹介しました。環境がリセットされたことで、多くのカードに可能性が生まれています。次回以降はどんなデッキが登場してくれるのか楽しみですね。
今週末には『神河:輝ける世界』環境初陣戦が控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。
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