はじめに
みなさんこんにちは。
気になる禁止改訂は「相棒」、特に《夢の巣のルールス》によってデッキ構築の多様性などが懸念される声も散見されましたが、トータル面では環境の健全性を損なうほどではないと判断されたのか結果はノーチェンジでした。
さて、今回の連載ではModern Challengeと第19期モダン神挑戦者決定戦の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12380863
ルールスに抗うものたち
2022年1月31日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 Hammer Time
- 3位 Jund Saga
- 4位 Dredge
- 5位 Izzet Ragavan
- 6位 Oops All Spells
- 7位 Hammer Time
- 8位 Grixis Shadow
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今大会の上位は、禁止を免れた《夢の巣のルールス》を採用したデッキが中心となっています。
優勝を収めたのは、サイドに《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したJeskai Controlでした。スイスラウンドを全勝しての優勝です。
ほかには《激情》をメインから採用したIzzet RagavanやDredge、Oops all Spellsなどが勝ち残っていました。
デッキ紹介
Jeskai Control
Azoriusに赤をタッチしたコントロールデッキ。現環境のコントロールデッキは4C Blinkが主流なため、Jeskai Controlが大きな大会で結果を残したのは久々です。
4C Blinkはタップアウト寄りのコントロールに対し、Jeskai Controlは《対抗呪文》や《大魔導師の魔除け》といった優秀なインスタントやカウンターを多数搭載したドローゴー寄りの構成になっています。
カウンターやインスタントスペルだけでなく、強力な除去にアクセスできるのもJeskai Controlの特徴です。歴代でも最高クラスの除去である《虹色の終焉》は、現環境の多くのパーマネントを処理することができます。《孤独》によって《敏捷なこそ泥、ラガバン》など序盤の脅威にも対応できるので、ロングゲームに持ち込みやすくなったのもコントロールが上位でよく見られるようになった理由の一つです。
☆注目ポイント
《激しい叱責》は《ウルザの物語》の構築物・トークンを一掃したり、《敏捷なこそ泥、ラガバン》をただの2/1に変えたり、《原始のタイタン》 の能力を1ターン止めたりとマッチアップによってはマナコスト以上の仕事をします。
《火/氷》は比較的地味な印象のスペルですが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を始めとしたタフネス1のクリーチャーに対する有用な除去として機能し、《死の影》や《濁浪の執政》といった大型クリーチャーに対しても1ターンの猶予を得ることができます。コントロールミラーでも相手の土地を寝かすことで、《時を解す者、テフェリー》などを通しやすくしたりと活躍の機会が多いカードです。
今大会を制したZYURYOのイノベーションは、サイドの《敏捷なこそ泥、ラガバン》です。相手はサイド後に除去を減らしてくるので《敏捷なこそ泥、ラガバン》は追加の勝ち手段として、特にコントロールミラーやコンボデッキとのマッチアップで活躍します。1マナと軽いため大きな隙を作らずに展開することができるため、カウンターを多用するコントロールにとっても使いやすい勝ち手段になります。
《血染めの月》はこのデッキも特殊地形を多用しているので使いところが難しくなりますが、自分で使う場合は基本地形を中心にサーチするなど調整がしやすく、Amulet TitanやTronなど土地コンボとのマッチアップでは相手の被害のほうが大きくなります。
Hammer Time
モダンの大きな大会では必ず入賞しているHammer Time。白単色、ハンデスなどをタッチしたOrzhovなど異なるバージョンが見られますが、現環境のトップメタの一角であることは確実です。
クリーチャーに《巨像の鎚》を早い段階から装備させてゲームを決めるデッキなので、相手の除去を対策することは必須です。特に最近は《孤独》 など0マナでも除去が飛んでくるため押し通すことは難しくなります。Hammer Timeは《巨像の鎚》による瞬殺プラン以外でも《夢の巣のルールス》や《ウルザの物語》のおかげでロングゲームでも十分に渡り合うことができます。
しかし、Grixis Shadowのような軽い妨害スペルと速いクロックを持ち合わせたマッチアップでは苦戦を強いられます。これらのマッチアップでは《夢の巣のルールス》で墓地に落ちたクリーチャーや装備品を再利用する猶予がないことが多いため、仕掛ける前に相手の除去を事前に落としておくプランも重要になってきます。Orzhov バージョンはハンデスにアクセスできるようになり、除去を多用するコントロールやミッドレンジとの相性が改善されています。
☆注目ポイント
黒をタッチすることで相手の除去や妨害を対策できる《思考囲い》にアクセスできるようになりました。これによってコンボを保護しやすくなり、ほかのコンボデッキとのマッチアップでも妨害手段が増えたことで相性が改善されています。
黒をタッチするもう一つのメリットは、サイドに採用されている《闇の腹心》や《苦花》といったアドバンテージ源にアクセスできることです。もともと《夢の巣のルールス》と《ウルザの物語》の恩恵でロングゲームでも十分に渡り合える構成ですが、さらに粘り強くなりました。
《闇の腹心》は実質毎ターン2ドローになり消耗戦に強くなるため、Burnなどライフを速攻で詰めてくるマッチアップ以外では積極的にサイドインしたいカードです。装備品の対象となるトークンを生み出し続ける《苦花》も、除去を多用するコントロールやミッドレンジとのマッチアップで脅威となります。
Dredge
Dredgeはモダンでは人気のアーキタイプで環境を問わず常に一定数見られます。その強さゆえに一度は解禁された《ゴルガリの墓トロール》が再び禁止になってしまったほどでした。デッキ名の通り《ゴルガリの凶漢》や《臭い草のインプ》といった「発掘」持ちのカードで墓地を肥やしていき、《ナルコメーバ》《アゴナスの雄牛》《秘蔵の縫合体》といったクリーチャーでビートダウンしつつ《這い寄る恐怖》や《燃焼》で相手のライフを削っていきます。
《ゴルガリの墓トロール》や《信仰無き物あさり》が禁止後も結果を残せていることからも「発掘」というメカニズムの強さが分かります。禁止カードによって失われたパーツもありますが、《アゴナスの雄牛》や《身震いする発見》といった比較的最近のセットからの収穫もありました。
☆注目ポイント
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』から登場した《身震いする発見》は、《安堵の再会》とともにこのデッキのドローを進めつつ墓地を肥やす手段になります。
《身震いする発見》と《安堵の再会》いう2種類のルーター系ドロースペルのおかげで、安定して3-4ターン目には《アゴナスの雄牛》を「脱出」させることができます。
《銀打ちのグール》は《這い寄る恐怖》とシナジーがあり、「発掘」の捲れ方によっては《秘蔵の縫合体》も出て相手のライフにプレッシャーをかけることができます。『イニストラード:真夜中の狩り』から登場した《異世界の凝視》のおかげで、1ターン目から《ゴルガリの凶漢》や《臭い草のインプ》といったカードを落として「発掘」を始めやすくなり安定性がさらに増しました。
第19期モダン神挑戦者決定戦
ルールスが大暴れ
2022年2月6日
- 1位 Grixis Shadow
- 2位 Rakdos Ragavan
- 3位 Boros Burn
- 4位 Temur Cascade
- 5位 Grixis Shadow
- 6位 Temur Cascade
- 7位 Living End
- 8位 Dimir Mill
ジェレミー・デザーニ
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日本国内でもモダンの大規模なイベントである第19期モダン神挑戦者決定戦が開催されました。
今大会は禁止を免れた《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたデッキが多数上位入賞し、優勝デッキも《夢の巣のルールス》を用いたGrixis Shadowでした。《ドラゴンの怒りの媒介者》+《敏捷なこそ泥、ラガバン》に加えて《表現の反復》を使えることもあり、Grixis Shadowは数多い《夢の巣のルールス》デッキの中でも頭一つ抜けている印象です。
「相棒」を採用していないデッキは、Temur CascadeやLiving Endといった「続唱」デッキが結果を残していました。
デッキ紹介
Grixis Shadow
Hammer Timeと並んで現在のトップメタに位置するGrixis Shadow。Grixis Shasowとカテゴライズされてはいるものの、《夢の巣のルールス》を「相棒」にするために《通りの悪霊》などは不採用となっています。
ほかのモダンのデッキと同様にショックランド+フェッチランドによって能動的にライフを減らす手段があり、《思考囲い》もあるので《死の影》を採用するのに特別なデッキの構成にする必要性は薄く、ゲームを進める中で自然と《死の影》をプレイすることができます。
《夢の巣のルールス》デッキの中でもっとも人気のあるデッキですが、わずかなミスが敗北につながりやすく繊細なプレイングが要求されるデッキでもあります。また、Grixisカラーの弱点の一つとしてエンチャントやプロテクションを持つ《ヴェクの聖別者》などに触る手段が限定されます。
☆注目ポイント
《ミシュラのガラクタ》や《激しい叱責》に加えて《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」があるため、このデッキは「昂揚」の条件を満たすのが容易です。比較的早いターンで《邪悪な熱気》を強く使うことができます。
《湖での水難》は除去としてもカウンターとしても機能するフレキシブルなスペルで、モダンの多くのデッキはフェッチランドなど常に墓地に数枚のカードが落ちていることが多いため腐りにくいです。ただIzzet Ragavanなど、《濁浪の執政》を使うデッキとのマッチアップでは「探査」で墓地のカードを減らされるので注意が必要です。
このデッキの《激しい叱責》は、《死の影》を一時的に13/13にするというコンボ的な使い方が可能です。
ほかにも、相手のエンド時に出すことで自分のターン終了ステップまで墓地に落ちないことを利用して《死の飢えのタイタン、クロクサ》を墓地に送らずに場に残すといった使い方もできます。問題となる《ヴェクの聖別者》のようなプロテクション持ちのクリーチャーも、能力を消すことによって除去できるようになります。
Modern Challenge #12383929
現環境最高の除去を搭載したコントロール
2022年2月5日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 Thopter Control
- 3位 Belcher
- 4位 Oops All Spells
- 5位 Hammer Time
- 6位 Jund Saga
- 7位 Hammer Time
- 8位 Grixis Shadow
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第19期モダン神挑戦者決定戦と同様に、《夢の巣のルールス》を採用したデッキがトップ8の半数を占めるなど、安定した結果を残していました。
Thopter Control
《最高工匠卿、ウルザ》を軸にしたミッドレンジ。かつてはモダンの環境で猛威を振るったデッキでしたが、《オパールのモックス》や《アーカムの天測儀》が禁止カードに指定されて環境から衰退を余儀なくされました。
『モダンホライゾン2』から収穫があり、《孤独》は《死の影》や《濁浪の執政》を含めたクリーチャーを処理できるため、現環境で幅を利かせているGrixis Shadowなどに強いデッキになります。《飛行機械の鋳造所》+《弱者の剣》のコンボが搭載されていることも、このデッキがクリーチャーデッキに強い理由の一つです。
《ウルザの物語》や《石鍛冶の神秘家》といったアーティファクトや装備品を状況に応じてサーチするツールボックス的な要素もあり、《石鍛冶の神秘家》《スレイベンの検査官》などETB能力持ちのパーマネントが多数採用されているため、「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性が良く長期戦に強い戦略になります。
☆注目ポイント
《石鍛冶の神秘家》は《カルドラの完成体》や《イラクサ嚢胞》のほかにも、コンボパーツである《弱者の剣》をサーチする手段にもなりコンボが決まりやすくなります。また《巧妙な鍛冶》や《ウルザの物語》など、アーティファクトサーチ+アドバンテージ獲得手段が豊富なのがこのデッキの特徴です。
《最高工匠卿、ウルザ》は《飛行機械の鋳造所》+《弱者の剣》コンボと組み合わせることで無限トークン、無限ライフを得ることもできるようになります。
《ポータブル・ホール》は《孤独》と並んでこのデッキの主要な除去で、アーティファクトなので《金属の叱責》のコストダウンや構築物・トークンのサイズアップに貢献したり、《最高工匠卿、ウルザ》の能力によってマナを出すこともできるなど付加価値をもたらします。
Modern Challenge #12383935
《大地割り》がチャレンジを制する
2022年2月6日
- 1位 Land Destruction
- 2位 Hammer Time
- 3位 Dimir Mill
- 4位 4C Omnath
- 5位 Mono Red
- 6位 Belcher
- 7位 Land Destruction
- 8位 Jeskai Control
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日曜日に開催されたチャレンジではさらにメタの動きが見られました。
Grixis Shadowは今大会ではついにプレイオフから姿を消して、Jeskai Controlや4C Omnathといった《孤独》を採用したデッキが勝ち残っていました。
今大会で優勝を収めたのは、なんと《大地割り》をフル搭載した土地破壊デッキでした。同様のデッキが7位にも入賞していたことからも要注目のデッキです。
Land Destruction
今まで特に注目をされていなかったコモンカードをフル搭載したデッキが、優勝を収めたということで話題になっていました。《大地割り》はすべてのプレイヤーにパーマネントをサクリファイスをさせる1マナのソーサリーで、たいていの場合土地をサクリファイスすることになるのでアドバンテージを失いますが、1マナの土地破壊のように機能するため遅いコントロールやミッドレンジ、土地コンボとのマッチアップで強さを発揮します。
現環境では定番のアドバンテージ源として定着している《ウルザの物語》と《夢の巣のルールス》も搭載されているため、従来の土地破壊デッキと異なりある程度ゲームが長引いても対応できる構成になっています。
☆注目ポイント
《大地割り》や《爆裂/破綻》は単体ではアドバンテージと引き換えに相手の土地を縛るスペルになりますが、《トロウケアの敷石》と組み合わせることによってデメリットをカバーすることができます。
土地破壊によってマナを制限された状態では追加のマナを支払うことは難しく、《マナの税収》は確定カウンターのように機能します。《エスパーの歩哨》でアドバンテージを取ることも容易で、コントロールのようにマナを必要とする遅いデッキとのマッチアップで特に強さを発揮します。
宝物・トークンを出す《敏捷なこそ泥、ラガバン》は、《大地割り》とも相性が良いのもポイントです。《ヴォルダーレンの美食家》も地味ながらトークンを生成するので、《大地割り》と相性が良いクリーチャーになります。
総括
禁止を免れた《夢の巣のルールス》ですが、低マナ域のパーマネントが主力のモダンでは「相棒」にする条件がそれほど厳しくなく、アグロからコントロールなどさまざまなアーキタイプに採用できることでデッキ構築の多様性を狭めていることを懸念する意見も散見されています。
しかし、Izzet RagavanやLiving End、Temur Cascade、Amulet Titanなど「相棒」非採用のデッキも強力なものが多く、定期的に好成績を残しているなど現環境のモダンは選択肢が豊富です。
以上USA Modern Express vol.70でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!