はじめに
みなさんこんにちは。
待ちに待った『神河:輝ける世界』がリリースされましたね。モダンでも使えるカードがいくつか見られますが、みなさんの好きなカードはありましたか?
今回の連載では『神河:輝ける世界』リリース直前に開催されたSCG主催のテーブルトップのイベントと、先週末に開催されたModern Showcase ChallengeModern Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG CON Philadelphia Modern 10K #1
2022年2月12日
- 1位 4C Control
- 2位 Living End
- 3位 Burn
- 4位 Izzet Ragavan
- 5位 Izzet Ragavan
- 6位 Temur Cascade
- 7位 Jund
- 8位 Grixis Shadow
トップ16のデッキリストはこちら
久々に開催されたSCGのテーブルトップイベントは参加者400人と大盛況でした。
『神河:輝ける世界』リリース前のイベントでしたが、多色コントロール、「続唱」デッキ、Izzet Ragavan、Grixis Shadow、Burnなどモダンらしく多種多様なデッキが結果を残していました。
デッキ紹介
4C Control
今大会を優勝したのは、《レンと六番》や《創造の座、オムナス》といった各色から強力なカードを集めた環境屈指のデッキパワーを持つ多色コントロールでした。各種土地や《孤独》《レンと六番》《敏捷なこそ泥、ラガバン》など、高額なカードが大量に含まれているため“Money Pile”とも呼ばれています。
《氷牙のコアトル》や《豊かな成長》といったETB能力持ちのパーマネントは《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性が良く、除去やカウンターによって時間を稼いでアドバンテージ差をつけていきます。
アドバンテージを稼ぐ手段が豊富なのでロングゲームに強く、ほかのミッドレンジやコントロールに対して無類の強さを見せます。ただその分遅いデッキなため、土地コンボやBelcherなどコンボは苦手なマッチとなります。また、勝つのに時間がかかるので使い慣れていないと引き分けを誘発しやすくなります。
☆注目ポイント
よくあるリストでは《永遠の証人》や《儚い存在》が採用されていましたが、最近は単体でのカードパワーを優先して《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《対抗呪文》《表現の反復》といったカードに差し替えられています。
アドバンテージ獲得手段の枠にも調整が加えられており、《精神を刻む者、ジェイス》の代わりに《記憶の氾濫》が採用されています。
《精神を刻む者、ジェイス》はアドバンテージ差を広げつつそのままゲームに勝つことができますが、《稲妻》や《邪悪な熱気》を採用した赤いデッキが幅を利かせていることもあり、守り切ることが難しくなってきています。《記憶の氾濫》は「フラッシュバック」もありインスタントなので、カウンターを使うデッキとのマッチアップで特に強さを発揮します。
サイドの《夏の帳》はハンデスを多用するGrixis Shadowとのマッチアップなどで活躍します。《ヴェクの聖別者》は相手の《敏捷なこそ泥、ラガバン》などを止めつつ《ドラゴンの怒りの媒介者》の「昂揚」を妨害したり、《夢の巣のルールス》で再利用されることを防いだりと現環境ではもっとも有能な墓地対策のひとつです。
コンボデッキ対策も欠かせないため《否定の力》や置物対策の《活性の力》もサイドに忍ばせてあります。4C Controlはデッキパワーも高く、各種《夢の巣のルールス》デッキに強い構成なので『神河:輝ける世界』加入後の環境でも活躍が期待できます。
SCG CON Philadelphia Modern 10K #2
多色が強い環境
2022年2月12日
- 1位 5C 《不屈の独創力》
- 2位 4C Control
- 3位 Eldrazti Tron
- 4位 Hardened Scales
- 5位 Jund
- 6位 Izzet Ragavan
- 7位 Grixis Shadow
- 8位 Izzet Ragavan
トップ8のデッキリストはこちら
久々のテーブルトップのイベントで人気フォーマットのモダンということもあり、SCG CON Philadelphia Modern 10K #1 がわずか数日で予約で埋まってしまったため、急遽第2回が開催されることが決定されました。
2回目も初回と同様に多色デッキが決勝まで勝ち残る強さを見せました。Izzet Ragavanは今大会でも安定した成績を残しており、Grixis Shadowと並んで最高の《敏捷なこそ泥、ラガバン》+《ドラゴンの怒りの媒介者》デッキと見て間違いなさそうです。
デッキ紹介
5C 《不屈の独創力》
多色コントロールはモダンでも人気のあるデッキで、現環境で幅を利かせている《夢の巣のルールス》に対抗できる戦略です。しかし、コントロールという性質上どうしても勝つのに時間がかかってしまうのが難点で、クロックも遅いため土地コンボなどを苦手とします。
《不屈の独創力》はかつてモダンの環境を定義していた《欠片の双子》コンボに似た戦略で、除去やカウンターによってゲームをコントロールしつつ相手の隙を見てゲームを決めることができるため、速やかにゲームを終わらせることができます。コンボプランのほかにもプレインズウォーカーによるコントロールプランもあるので対策されにくいのがこのデッキの特徴です。
《不屈の独創力》戦略は、フィニッシャー以外のクリーチャーやアーティファクトを採用できないこと以外にデッキを歪める必要がなく、構築の自由度が高いのもポイントです。
☆注目ポイント
コンボパーツでありトークン生成手段である《ドワーフの鉱山》と《堅固な証拠》は単体ではインパクトに欠けますが、最低限ブロッカーとしても運用可能です。特に《堅固な証拠》は0/3トークンを生成できるので、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を止めることができます。
《火/氷》は環境に多い《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《エスパーの歩哨》を除去することができ、相手がカウンター用に残しておいた土地を寝かすことで自分のターンにキースペルを通しやすくなります。
《プリズマリの命令》はコンボパーツを探しつつ《不屈の独創力》の種となる宝物・トークンを生成する便利なスペルです。クリーチャー除去としても機能し、アーティファクト除去もHammer Timeとのマッチアップで活躍します。
このリストのメインのフィニッシャーは《引き裂かれし永劫、エムラクール》ではなく、《残虐の執政官》が選択されています。《引き裂かれし永劫、エムラクール》と異なり瞬殺とまではいきませんが、場に出れば大きなアドバンテージ差をつけることができます。マナコストもゲーム後半には素で出すことも可能です。
相手のカウンターを無力化する《時を解す者、テフェリー》は、このデッキにとってもっとも重要なカードです。[+1]能力で相手のエンド時に《不屈の独創力》をプレイすることができるので、安全にコンボを決めることができます。
《不屈の独創力》コンボを対策してくる相手に対して、追加の勝ち手段兼アドバンテージ源として機能するのが《精神を刻む者、ジェイス》です。[+0]能力によって手札に来てしまった《残虐の執政官》をライブラリーに戻しつつ有効牌を補充することができます。
Modern Showcase Challenge #12389816
輝ける世界への突入
2022年2月19日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Living End
- 3位 Living End
- 4位 Grixis Shadow
- 5位 Grixis Shadow
- 6位 Jund Food
- 7位 Amulet Titan
- 8位 Hammer Time
トップ8のデッキリストはこちら
先週末に開催されたModern Showcase Challenge。今大会で上位入賞した多くのデッキが『神河:輝ける世界』からの新カードを採用していました。
入賞したデッキはAmulet TitanやLiving End、Hammer Timeなどが中心で、新セットの恩恵は特に受けていなかったものの前環境から強かったGrixis Shadowは、今大会でもしっかりと結果を残していました。
優勝を収めたのは新カードの《現実チップ》を搭載した青白のHammer Timeでした。8位入賞のHammer Timeも《現実チップ》を採用した青白バージョンであったことからも要注目のデッキです。
デッキ紹介
Hammer Time
Hammer Timeは長い期間モダン環境のトップメタの一角ですが、メタに合わせて変化を続けているデッキでもあります。前環境では苦手なコンボデッキを対策するために、ハンデスにアクセスできる黒をタッチしたバージョンが広く使われるようになりました。
最近は《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》や《呪文貫き》といったコンボ対策カードに加えて、『神河:輝ける世界』から登場した《現実チップ》によってタッチ青バージョンが主流になりつつあります。
☆注目ポイント
新戦力の《現実チップ》は「換装」することで《未来予知》と似た能力を得ることができるので、《ウルザの物語》や《夢の巣のルールス》と並んで有力なアドバンテージ源となります。装備品なので《石鍛冶の神秘家》でサーチでき、スペースを圧迫することなく色拘束も緩いため使いやすいカードです。
サイドに採用されている《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》と《呪文貫き》は、このデッキにとって苦手なマッチアップとなるLiving Endなど「続唱」系のコンボデッキを対策する手段になります。また、《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は《孤独》などピッチスペル対策としても機能します。
Amulet Titan
プレビュー段階から話題になっていた《耐え抜くもの、母聖樹》を獲得したため、『神河:輝ける世界』によって強化されたデッキとして挙げられていたAmulet Titan。
《ウルザの物語》を得たことによって《精力の護符》にアクセスしやすくなり、安定性が増したことで強化され上位でよく見られるデッキになりましたが、《血染めの月》などアンチ特殊地形に弱いことは変わらず、結果は残していたものの勝ち切れていない印象でした。《耐え抜くもの、母聖樹》という弱点をカバーする手段を手に入れたことで、今後も良く見られるデッキになることは確実です。
☆注目ポイント
《耐え抜くもの、母聖樹》の「魂力」能力はモダンの環境において大きな意味を持ちます。なんといっても《血染めの月》をメインから対策できるようになったことは大きく、スペルではないのでカウンターされる心配もありません。
土地なのでデッキのスペースを圧迫することもなく、アンタップインの緑マナソースとしても優秀で、バウンスランドで手札に戻すことによって「魂力」を使うことも可能です。
《耕作する巨躯》も最近加入した追加のフィニッシャーです。《孤独》や《邪悪な熱気》といった効率的な除去が増えたため、《原始のタイタン》を着地させるだけではゲームに勝つことが難しくなりました。そこでお呼びがかかったのが緑のクリーチャーらしいこの巨大な植物ビーストでした。重いのが難点ではありますが、土地を並べることが得意なこのデッキでは《精力の護符》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とともにゲームを決めてくれます。
Hammer Timeやコントロールとのマッチアップで強さを発揮し、《血染めの月》を置かれても影響のない《大いなる創造者、カーン》を採用したバージョンが流行りましたが、現環境ではGrixis ShadowやIzzet Ragavanといった速いクロックを展開してくるデッキに対抗する必要があります。そのため、サイドボードのスペースを圧迫する《大いなる創造者、カーン》より、最近は伝統的な型が復権しています。
ボーナストピック:トーナメントレポート
Congratulations to your Top 8 of the first Modern 10K at #SCGCON Philly! #MTG
— SCG CON (@SCGCON) February 13, 2022
Jordan Berenhaus
Marshall Arthurs
Ivan Espinosa
Avery Ferguson
Kenta Hiroki
Lenny Li
Franklin Hobler pic.twitter.com/DQVu0KD2wH
先ほど取りあげたSCG CON Philadelphia Modern 10K #1は筆者も参加し、トップ8に入賞することができました。オンラインではプレイしていたもののテーブルトップの大きなイベントの参加は2年ぶりだったので、きちんとプレイすることができるのか不安でしたが、結果を残すことができて良かったです。
オンラインもいいですが、やはり対戦相手との対話がありラウンドの合間に友人との交流が持てるテーブルトップのイベントは別物ですね。こういった社会情勢ですが、安全にイベントを運営していただいたSCGのスタッフには感謝です。
Izzet Ragavan
今大会で使用したのはIzzet Ragavanでした。ほかの選択肢としてはAzorius ControlやGrixis Shadowなどもありましたが、久しぶりのテーブルトップの長丁場のイベントでコントロールは厳しいと感じ、Grixis Shadowも強いデッキですが対策も厳しく、Burnなど赤いデッキが多そうでミラーマッチも自信がなかったため断念しました。
Izzet Ragavanの強みはなんといっても《虹色の終焉》など現環境で広く使われている除去に耐性があり、サイズでも勝る《濁浪の執政》が使えることです。またマナ基盤的に《血染めの月》を無理なく運用でき、Grixis Shadowや4C Controlなど現環境のトップメタのデッキは、特殊地形に依存したデッキが多いことから有力な選択肢のひとつだと思いました。
今大会で当たったマッチアップは以下になります。
ラウンド | デッキ | 対戦結果 |
---|---|---|
ラウンド1 | Grixis Shadow | 2-0 |
ラウンド2 | Jeskai Control | 2-0 |
ラウンド3 | Hammer Time | 2-1 |
ラウンド4 | Red Eldrazi | 1-2 |
ラウンド5 | Esper Mill | 2-1 |
ラウンド6 | 5C 《不屈の独創力》 | 2-1 |
ラウンド7 | Izzet Ragavan | 2-1 |
ラウンド8 | Grixis Shadow | 2-0 |
ラウンド9 | 4C Control | 2-1 |
準々決勝 | Living End | 1-2 |
☆注目ポイント
メインから採用された《血染めの月》は、Grixis Shadowや4C Controlとのマッチアップで1ゲーム目の勝利に大きく貢献しました。サイド後は相手も警戒するようになるので、メイン戦のときほど刺さりにくく相手のプレイング次第ではサイドアウトすることもありました。
スイスラウンド最終戦の4C Controlとのマッチアップでは、1ゲーム目に《血染めの月》によってゲームが決まったので相手も警戒して基本土地を中心にサーチするようになり、《血染めの月》はあまり活躍しませんでした。そのため、3ゲーム目ではサイドアウトしていた《稲妻》2枚と差し替えた結果、最後の一押しに貢献してくれました。
メインの《激情》はHammer Timeやミラーマッチで活躍しました。今回は当たりませんでしたが、Golgari Yawgmothとのマッチアップでも活躍するカードなので、環境次第ではメインから採用してもいいでしょう。
サイドボードはHammer Timeやほかのアグロデッキとのマッチアップを想定して《仕組まれた爆薬》を多めに用意しました。《激しい叱責》も各種《ウルザの物語》デッキやAmulet Titanに有効なカードです。新環境ではAmulet Titanが増加傾向にあるので、今後も《激しい叱責》は採用し続けることになりそうです。
苦手とするコントロールとのマッチアップ用に追加のカウンターや《精神を刻む者、ジェイス》を採用しています。特に《神秘の論争》は、《表現の反復》や《濁浪の執政》をカウンターできるのでミラーマッチでも使えます。土地コンボのAmulet Titanとの相性も悪くなく、新環境でもIzzet Ragavanは活躍し続けることが予想されます。
しかし、《天上都市、大田原》など《濁浪の執政》を対策する手段が増加されているため注意が必要です。《耐え抜くもの、母聖樹》もあるため《血染めの月》の信頼性も落ちています。そのため、《耐え抜くもの、母聖樹》で割られない《月の大魔術師》を混ぜていくのもいいかもしれません。
総括
『神河:輝ける世界』はモダンの環境にも影響を与えるほどのセットでした。モダンの健全性は保たれているようで、依然として多くの種類のデッキを大会の上位で見ることができます。
毎週新たな戦略が大きな大会で結果を残しているので、好きなデッキを使うのに適した環境だと思います。
USA Modern Express vol.71は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!