USA Modern Express vol.73 -《ルールス》が去り、春が来る-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

《夢の巣のルールス》が禁止カードに指定されてから2週間以上が経ち、オンラインのCSQやSCGのイベントなどが開催され禁止改定後の環境も明らかになってきました。

今回の連載では、禁止改訂後に初めて開催されたCSQとSCG CON Indianapolis – Team $25Kの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Modern Super Qualifier #12396363
新環境でも猛威を振るう《死の影》

2022年3月13日

  • 1位 Grixis Shadow
  • 2位 4C Control
  • 3位 Hammer Time
  • 4位 Amulet Titan
  • 5位 Izzet Ragavan
  • 6位 Tron
  • 7位 Storm
  • 8位 Burn

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禁止改定後初めてオンラインで開催されたCSQ。今大会はプレイオフに進出したすべてのデッキが異なるアーキタイプで、1位から4位までがGrixis Shadowだった前回のCSQとは大きく異なる結果となりました。

Grixis ShadowやHammer Timeなど旧環境でも活躍していたデッキは健在で、見た目ほど《夢の巣のルールス》が禁止になったことによる影響は大きくなかったことが分かります。しかし、マナ総量が3マナ以上のパーマネントが採用されるなど、各デッキ構築に変化が見られます。また、StormやTronといった懐かしい顔ぶれも見られるようになりました。

デッキ紹介

Grixis Shadow

Grixis Shadow

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禁止改定前の環境を牽引していたGrixis Shadowは、《夢の巣のルールス》を失ってもCSQで優勝できるほどの強さを持っていることが証明されました。基本的な構成は禁止改定前と変わらず、効率的なクロックを軽い優秀なハンデスやカウンターでバックアップしていきます。《表現の反復》のようなアドバンテージ獲得手段もあるので息切れしにくく、Temur Cascadeなどコンボ系のデッキと相性がいいデッキです。

予選を通過したAri Lax氏のリストは、《通りの悪霊》が解雇されているなど前回のリストから大きく変更されています。

禁止前のときのようにミッドレンジやテンポデッキとしても振舞える万能さはなくなったものの、《濁浪の執政》が採用できるようになるなど、「相棒」の条件から解き放たれたことでデッキ構築の自由度も増しています。

☆注目ポイント

濁浪の執政頑固な否認

《濁浪の執政》はクロックが速く、《致命的な一押し》《虹色の終焉》など環境の多くの除去に耐性があるため、環境最高クラスのフィニッシャーとして活躍します。また「獰猛」の条件を達成しやすくなったので、サイドに《頑固な否認》が採用されています。

歴戦の紅蓮術士

《夢の巣のルールス》の退場によってデッキ構築の制限がなくなったため、サイドボードにマナ総量が3マナ以上のカードが複数採用されています。中盤以降のアドバンテージ源として機能する《歴戦の紅蓮術士》は、余分に引いてしまった土地を有効牌に変換することができる優秀なクリーチャーです。トークンが並ぶため《ヴェールのリリアナ》など布告系の除去対策としても有用で、《コラガンの命令》で再利用する動きが強力です。

ヴェールのリリアナ

相手の《濁浪の執政》対策として《ヴェールのリリアナ》が採用されています。先ほどの《歴戦の紅蓮術士》とも相性が良く、《ヴェールのリリアナ》の[+1]能力で墓地に落としてトークンを生成することができます。

Hammer Time

Hammer Time

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Grixis Shadowと同様に、《夢の巣のルールス》が退場しても健在なHammer Time。ロングゲームでの大きな勝ち筋がなくなったので禁止の影響は大きかったものの、すでに《イラクサ嚢胞》《カルドラの完成体》《戦争と平和の剣》などを採用することで対応しています。

Hammer Timeには色の組合せがいくつかありますが、このデッキは《現実チップ》を採用した青白型となっています。新環境でも変わらず多角的な攻めができ、《ウルザの物語》をもっとも強く使えるデッキなため、今後もトップメタの一角として活躍することが予想されます。

☆注目ポイント

現実チップ

クリーチャーに「換装」させることで《未来予知》と同様の効果がある《現実チップ》は、中盤以降のアドバンテージ源として十分な性能を持っています。また、「換装」させる前はアーティファクトクリーチャーなので《バネ葉の太鼓》でマナを出すことが可能です。

イラクサ嚢胞カルドラの完成体戦争と平和の剣

3マナ以上のカードが採用できるようになったので、《イラクサ嚢胞》が新たな主力の装備品として定着しています。クリーチャーの殺傷力を上げる能力はもちろんのこと、生体武器なのでクリーチャーとしてカウントできるのもポイントです。

《カルドラの完成体》は素では重く、強化装備品は《イラクサ嚢胞》がすでにメインで採用されていますが、破壊不能+トランプルは強力であることに変わりないためサイドに忍ばせてあります。

《戦争と平和の剣》はマッチアップによっては有力な3マナ域の選択肢のひとつとなります。プロテクション(赤)(白)は現環境の多くの除去を無効化できるので、コントロールとのマッチアップでサイドインされます。

流刑への道冥途灯りの行進翻弄する魔道士時を解す者、テフェリー

《濁浪の執政》用にサイドの除去には《流刑への道》が選択されています。《冥途灯りの行進》《ウルザの物語》をわずか1マナで処理できる優秀な除去スペルで、ミラーマッチで特に活躍します。

青をタッチすることで《翻弄する魔道士》《時を解す者、テフェリー》が使えるようになりました。《翻弄する魔道士》はコンボとのマッチアップで、《時を解す者、テフェリー》はTemur Cascadeなど「続唱」デッキやコントロールとのマッチアップでサイドインされます。

SCG CON Indianapolis – Team $25K
新環境の王者

2022年3月19日

  • 1位 4C Control
  • 2位 Hammer Time
  • 3位 Burn
  • 4位 Thopter Combo
  • 5位 4C Elemental
  • 6位 4C Control
  • 7位 Burn
  • 8位 Izzet Ragavan

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アメリカのインディアナポリスで開催されたSCG Conのメインイベントは、パイオニア・モダン・レガシーのチーム構築でした。

モダンの新環境の本命は、《夢の巣のルールス》亡き今、現環境最高の「相棒」である《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用した多色コントロールでした。

テーブルトップのイベントではフェアデッキが選択される傾向にありますが、チーム戦でもそれは変わらず《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した多色コントロールやIzzet Ragavan、Burnなどが人気でした。

デッキ紹介

4C Control

4C Control

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最強の「相棒」であった《夢の巣のルールス》が禁止になったことで、多くのプレイヤーが新たに注目したのは多色コントロールでした。《夢の巣のルールス》と並んで環境最高の「相棒」として活躍していた《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用したデッキで、旧環境でもトップメタの一角であり続けました。

今大会で優勝を収めたのは、《永遠の証人》《儚い存在》を採用したBlinkバージョンでした。《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したバージョンは、コントロールやIzzet Ragavanに強くなりますが、マッチアップによってパフォーマンスにばらつきがある《敏捷なこそ泥、ラガバン》よりも、《永遠の証人》《儚い存在》を採用したBlinkスタイルのほうが相手にあまり依存せず戦えます。

継続的にアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、間違いなく環境最高のコントロールデッキです。

☆注目ポイント

耐え抜くもの、母聖樹レンと六番

《耐え抜くもの、母聖樹》は、《レンと六番》を採用したこのデッキでは非常にフレキシブルな対策カードとして機能します。《耐え抜くもの、母聖樹》を使いまわすことができるので、Hammer TimeやTron、Amulet Titanなどいろいろなマッチアップで高い効果を発揮します。

氷牙のコアトル広がりゆく海

《氷牙のコアトル》はインスタントスピードで出てくるため、キャントリップつきのブロッカーとして活躍します。接死がついてしまえば《タルモゴイフ》《濁浪の執政》とも相討ちが取れます。《広がりゆく海》は、《ウルザの物語》やこのデッキが苦手とするTronとのマッチアップで、キャントリップしつつ相手を妨害することができます。

孤独激情

このデッキはクリーチャーデッキに強く、特にHammer TimeやIzzet Ragananのように1-2体の強力なフィニッシャーで勝負するタイプのデッキに対して相性が良いです。理由としては、《孤独》《激情》という2種類のピッチでプレイできるクリーチャーにアクセスできることが挙げられます。

《孤独》《巨像の鎚》で強化されたクリーチャーや《濁浪の執政》を除去することができ、《儚い存在》で「明滅」させて使いまわすことで相手の場を壊滅させることができます。《激情》はGolgari Yawgmothなど小型のクリーチャーを複数並べてくるデッキとのマッチアップで強さを発揮します。

夏の帳霊気の疾風

Grixis Shadowを意識していたようで、サイドにはハンデス、カウンター対策に《夏の帳》が4枚採られています。このデッキにとって相性が悪いAmulet Titan用には、《霊気の疾風》が用意されています。カウンターではないので、《魂の洞窟》から出てきた《原始のタイタン》を対処することが可能です。

Modern Challenge #12399171
古典的なコントロールが新環境のモダンを制する

2022年3月20日

  • 1位 Azorius Control
  • 2位 Temur Cascade
  • 3位 Izzet Ragavan
  • 4位 Golgari Yawgmoth
  • 5位 Living End
  • 6位 Dredge
  • 7位 Amulet Titan
  • 8位 Titan Shift

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日曜日に開催されたModern Challengeは、Temur Cascade、Living End、Golgari Yawgmoth、Izzet ragavanなど《夢の巣のルールス》の禁止の影響を受けなかったデッキが中心に勝ち残っていました。

Amulet TitanやTitan Shiftといった土地コンボも強く、それらに対抗するために《血染めの月》をメインから採用したIzzet RagavanやTemur Cascadeが結果を残しています。また、Grixis ShadowやHammer Time、4C Controlといった旧環境で幅を利かせていたデッキは、今大会の上位では少数でした。

優勝を収めたのはAzorius Controlで、Izzet RagavanやTemur Cascadeといったデッキが多い環境ではいい立ち位置にあるデッキと言えます。

デッキ紹介

Azorius Control

Azorius Control

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新環境でも一貫してコントロールを使い続けているWafo Tapa氏は、自身が得意とするAzorius Controlで見事に優勝を収めました。

《夢の巣のルールス》が禁止になったことで環境が変化したため、《虚空の杯》をメインから採用したスタイルから《選択》《瞬唱の魔道士》を採用したクラシックなスタイルに、現代の強力なカードを取り入れた形に変化しています。

『神河:輝ける世界』から有用な土地と除去、そして強力なプレインズウォーカーを獲得しました。コントロールデッキにとって非常に厄介だった《夢の巣のルールス》の退場に加えて、新戦力を獲得して強化されたAzorius Controlは、新環境でも有力な戦略のひとつとなります。

☆注目ポイント

冥途灯りの行進虹色の終焉孤独

《冥途灯りの行進》《虹色の終焉》と並んで白の有力な除去として定着しています。それぞれ用途が異なるスペルで対象になるものも異なるため、《冥途灯りの行進》《虹色の終焉》《孤独》3種類の除去をすべて3枚ずつ採用することでバランスを取っています。

《冥途灯りの行進》はプレインズウォーカーを対象に取れないのが難点ですが、《虹色の終焉》と異なり《濁浪の執政》《ウルザの物語》も処理することができ、インスタントなので《敏捷なこそ泥、ラガバン》も対処しやすくなりました。

放浪皇

瞬速を持つ《放浪皇》は、コントロールがもっとも欲しかったタイプのカードです。隙を作ることなくトークンを生成する能力は、攻めだけでなく自身を守る面でも優秀です。[-2]で相手の攻撃を凌ぎつつライフも得ることができるので、このデッキが得意なロングゲームに持ち込みやすくなります。

虚空の杯即時却下

《虚空の杯》はメインからは外れたものの、モダンは比較的デッキのマナコストが低く、Living EndやTemur Cascadeなどの「続唱」デッキもいるので活躍する機会は多く存在します。《即時却下》は4マナと重くあまり見かけないカードですが、誘発型能力にも対応できるのでTronとのマッチアップで特に使えます。打ち消されないスペルにも有効なので、《魂の洞窟》からプレイされた《原始のタイタン》も対処できます。

Temur Cascade

Temur Cascade

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禁止改定の影響がなく新環境の有力なデッキとして注目を集めていたTemur Cascade。3ターン目の《衝撃の足音》はクロックも速く、対処するのはマッチアップにかかわらず困難を極めます。

ほかのデッキと同様に、『神河:輝ける世界』から登場した伝説の土地サイクルを獲得したことによって強化されています。

苦手なマッチアップだったGrixis Shadowが弱体化したのもあり、現在いい立ち位置にあるデッキのひとつです。

☆注目ポイント

血染めの月

現環境には4C ControlやAmulet Titanなど特殊地形に依存したデッキが多く、メインの《血染めの月》は劇的に刺さります。《耐え抜くもの、母聖樹》で触れない《月の大魔術師》も最近は見られるようになってきましたが、4C Controlなどクリーチャー除去を多用するデッキの存在を考慮すると、メインから採用する場合は《血染めの月》のほうが良さそうです。

耐え抜くもの、母聖樹天上都市、大田原

《耐え抜くもの、母聖樹》のおかげで、《虚空の杯》《仕組まれた爆薬》といったカードを対処しやすくなっています。「続唱」デッキは《時を解す者、テフェリー》に弱いのがネックでしたが、《天上都市、大田原》の登場により相手のターンにバウンスして仕掛けることができるようになりました。

活性の力目覚めた猛火、チャンドラ

サイドには苦手なコントロール用に《目覚めた猛火、チャンドラ》が採用されています。6マナと重くなりますが、Azorius Control相手には強力なフィニッシャーとなります。

サイドに4枚採用されている《活性の力》は、Hammer TimeやAmulet Titanなど《ウルザの物語》を使うデッキに対してサイドインされます。《血染めの月》でも《ウルザの物語》を対処できますが、《耐え抜くもの、母聖樹》の影響で信頼性が落ちているため別の対処法を用意していくことは重要です。

総括

《夢の巣のルールス》が禁止になったことでデッキ構築の幅が広がりましたが、見た目ほど環境に大きな変化は見られず、Hammer TimeやGrixis Shadowは新環境になっても健在です。

禁止改定による影響がなかった4C Controlや「続唱」デッキ、Izzet Ragavanは予想通り人気があり、各イベントでも結果を残しています。『神河:輝ける世界』は特に伝説の土地サイクルが与えた影響が大きく、4C ControlやAmulet Titanは《耐え抜くもの、母聖樹》を獲得したことによって《血染めの月》にも耐性がつきました。

USA Modern Express vol.73は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら