決勝戦:藤平 康平(グリクシスティンカー) vs. 廣井 元基(8 Cast)
晴れる屋メディアチーム
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前回の第3期関西帝王戦ヴィンテージから、およそ1年半。
長いようであっという間の月日の中で、ヴィンテージ環境は大きな様変わりを見せた。多くのデッキに革新をもたらした《ウルザの物語》。「相棒」ルールと強力な効果で、それらが改訂されるまで環境を席巻した《夢の巣のルールス》。直近であれば、環境級のカードをいくつももたらした『神河:輝ける世界』。さまざまな変化はあったが、いずれもエキサイティングなヴィンテージ環境をさらに白熱させたのは言うまでもない。
そして、2022年3月19日。マジックでも最強クラスのカードがしのぎを削る、そのヴィンテージの帝王を決める戦い――『第4期関西帝王戦ヴィンテージ』が開催された。数多の魔術師による激闘の末、王座を奪い合う2人が残った。
廣井 元基が使用するのは「8 Cast」。
レガシーでも一躍人気者となったこのデッキは、ヴィンテージでも無類の強さを発揮する。目を見張る速さでアーティファクトを並べ、《物読み》や《思考の監視者》でドローし、瞬く間に戦況を覆せないほど有利にしてしまうのだ。
対する藤平 康平が使用するのは「グリクシスティンカー」。
「ボルトキー」に近い構成だが、より選択肢に幅を持たせて汎用性を増したデッキだ。《Time Vault》と《多用途の鍵》による無限ターンコンボを、《修繕》などヴィンテージ特有の強烈なパワーカードでサポートしつつ、迅速に勝負を決める。
これからお見せするのは、ほかのフォーマットでは見られない豪快な戦いだ。このカバレージで、ヴィンテージ未体験のプレイヤーも、どっぷり肩まで浸かっているプレイヤーも、共に『帝王』を決める戦いを楽しんでもらえれば幸いである。
先手はスイスラウンド1位の廣井から。
廣井は《溢れかえる岸辺》から《Tundra》を戦場に出すと、《師範の占い独楽》を唱えてターンエンド。藤平も《Mox Jet》、《汚染された三角州》から《師範の占い独楽》を着地させ、独楽同士のにらみ合いが始まる。
次のターン、廣井が出したのは、ヴィンテージ環境を一新させた《ウルザの物語》。さらに廣井は《オパールのモックス》、《魂標ランタン》を連続で唱え、墓地のフェッチランドを追放する。順調に構築物・トークンを強化する盤面が整いつつある。
一方、相手のエンドフェイズにフェッチを起動して《Volcanic Islands》を戦場に持ってきた藤平は、《師範の占い独楽》の能力を起動。盤面と手札を何度か見比べたのち、ターンを得た彼も《ウルザの物語》を戦場に出す。そして《多用途の鍵》も唱えて、こちらも勝利への手筈を順調に整える。
だが、先に仕掛けたのは廣井だった。「独楽を回して」デッキトップを操作し、引き込んだ《ギタクシア派の調査》を唱えた廣井。彼は藤平の手札が《意志の力》《商人の巻物》《狼狽の嵐》《表現の反復》であると確認すると、1マナで《太陽の指輪》を着地させてから、《物読み》を唱えた。藤平がこれを通すと、2ドローしてさらに《ミシュラのガラクタ》をキャスト。
次第にアーティファクトが廣井の盤面に増えていく中、藤平は再び独楽を回す。手にした3枚を悩んだ末に戻し、《師範の占い独楽》の効果で手札に引き込んだ。ただ、それ以上のアクションは見せず、《Underground Sea》を設置してターンエンド。
すると廣井はこれを好機と見たのか、《ウルザの物語》の能力を用いて構築物・トークンを戦場へ送り込む。さらに自分のターンでトークンをもう1体増やすと、英雄譚の第Ⅲ章を使って《真髄の針》を出し、相手の《ウルザの物語》の起動型能力を封じる。
そして大量のアーティファクトをそろえた廣井は、追い打ちの《物読み》を唱えるが、これに対して《狼狽の嵐》を唱えて不発に終わらせた。これで追加ドローは防げたが、藤平を待っていたのは《Mox Sapphire》を足してパワーを9まで引き延ばした構築物・トークンによる強烈な一撃!ライフをあっという間に10まで削られた藤平は、勝利策を探し始める。
《ウルザの物語》第Ⅲ章で《Black Lotus》を出し、《表現の反復》、《師範の占い独楽》、《悪魔の教示者》、フェッチランドによるシャッフル、さらには《Ancestral Recall》まで使った藤平だったが、有効な手段が見つからず、ここで投了した。
藤平 0-1 廣井
先のゲームを落とした藤平。廣井とは和気あいあいとした調子で話しながらシャッフルを進めるが、勝ちを譲るつもりはないだろう。
先手を取ったのはマリガンを選んだ藤平。《Volcanic Island》から《敏捷なこそ泥、ラガバン》を唱えて、にらみを利かせる。対してノーマリガンの廣井は《Mox Sapphire》と《ウルザの物語》を並べて、ゲームを有利に進めようとする。そこで藤平が《敏捷なこそ泥、ラガバン》で攻撃。廣井のライフを18に減らして、めくれたデッキトップはなんと《Mox Ruby》!
こんな驚きの出来事が起こるのも、ヴィンテージならではの楽しみだ。《Mox Ruby》を手に入れた藤平は、第2メインフェイズに《ウルザの物語》から《太陽の指輪》を戦場に出す。廣井が返しのターンで《島》を置いただけに留まると、藤平はもう一度《敏捷なこそ泥、ラガバン》で攻撃を仕掛けるが、これは構築物・トークンに遮られた。しかし、またも藤平が《敏捷なこそ泥、ラガバン》を唱えなおす。
廣井のターンに双方が《ウルザの物語》で構築物・トークンを着地させると、廣井は《真髄の針》で《ウルザの物語》を指定。《教議会の座席》を置いて、ターンを渡す。藤平は《ウルザの物語》で《師範の占い独楽》を持ってきて、《ギタクシア派の調査》で廣井の手札をチェックする。中身は《神秘の論争》が2枚、《狼狽の嵐》、《覆いを割く者、ナーセット》、《物読み》、《教議会の座席》。何をしても阻害されかねない手札だ。
ひとまず1ドローした藤平は、《師範の占い独楽》でデッキの上から3枚をチェックしたのち、構築物・トークンで攻撃。廣井のライフを13に削ってから《師範の占い独楽》でドローし、再度《ウルザの物語》を置いてターンエンド。
さて、ライフに差をつけられた廣井だが――ここから怒涛の猛反撃を見せる。まずは《教議会の座席》→《太陽の指輪》と順に設置し、《物読み》を唱える。藤平がマナを払って使った《意志の力》を《神秘の論争》で打ち消して2ドローした廣井が手札から繰り出したのは、マジック黎明期の凶悪なターン追加呪文、パワー9の《Time Walk》!
構築物・トークンの攻撃で藤平のライフを14に削って追加のターンを得た廣井は、《覆いを割く者、ナーセット》を呼び出し、能力で《物読み》を手札に加えて、そのまま唱える。さらにダメ押しと言わんばかりに《思考の監視者》を唱えて、またも2ドロー。おまけに《ウルザの物語》、《オパールのモックス》を出した廣井の戦場の《構築物トークン》のパワーは8。攻撃はさすがに《敏捷なこそ泥、ラガバン》にブロックされたが、2ターンで凄まじい盤面を作り上げた。
ようやく戻ってきたターンで、藤平は《師範の占い独楽》を戦場に出す。慣れた手つきでデッキトップを操作した彼が、《汚染された三角州》を置いてターンを終えると、廣井はまたも強烈な呪文を叩きつける。
《覆いを割く者、ナーセット》の忠誠度能力で廣井が手に入れたのは、これもパワー9の《Ancestral Recall》!無事に通った呪文で3ドローした廣井は《ミシュラのガラクタ》、《物読み》と連続で唱え、《トレイリアのアカデミー》を設置。そして藤平に引導を渡すべく、《ハーキルの召還術》を撃ち込んだ!しかも《師範の占い独楽》でのデッキ操作に対応して《船殻破り》を戦場に出し、藤平の抵抗を許さないまま、すべてのアーティファクトを盤面から手札に戻したのだ!
構築物・トークンと《思考の監視者》の攻撃で、藤平のライフは残りわずか。廣井はこのまま一気に押し込み、勝利をもぎ取る算段だ。それでも諦めない藤平は《ウルザの物語》で《多用途の鍵》を持ってきて、手札に戻されたアーティファクトを再設置する。しかし、《師範の占い独楽》は《精神的つまづき》、《Time Vault》は《意志の力》で打ち消された。
とうとう万策尽きた藤平はここで投了し、廣井の勝利で関西帝王戦は幕を下ろした。
藤平 0-2 廣井
ヴィンテージ。それは遠い夢の世界などではない。ましてやマジックを極めた者だけに許される世界でもない。もっともエキサイティングでダイナミックな世界はいつでも――新たな帝王、廣井 元基への挑戦者を待っているのだ。