Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/3/30)
はじめに
やぁ、みんな!ハビエル・ドミンゲスだ。
《濁浪の執政》は登場してすぐにレガシーでもモダンでもフォーマットの顔になり、史上最強クラスのクリーチャーであることを証明してみせた。たった2マナで唱えられる大型のクロックでありながら、そのほかの「探査」カードと違って複数枚引いたときのシナジーがあり、一発の攻撃で決着がつくことも少なくない。
《表現の反復》も同じだ。発売から数週間足らずで、モダン・レガシー・スタンダードのあらゆるところで見かけるようになった。そうなって然るべきカードパワーがある。
各フォーマットで頻繁に見かけるこの2枚であっても、ヴィンテージではそこまでの採用率は高くなかった。 ヴィンテージはデッキ構築が独特だし、カードパワーもずば抜けて高いから、そうなってしまうのも理解できる。
だけど、もう違う。今日はイゼットマークタイドを紹介しよう。
デッキリスト
これが3月19日のVintage Challengeを優勝したときのデッキリストだ。
カード選択
ヴィンテージでは使う色を決めた時点で、必然的に採用が決まるカードが多い。《Ancestral Recall》や《Time Walk》がその一例だ。そういう誰が見てもわかるカードはここでは言及しない。
このデッキは4枚の《表現の反復》と3枚の《濁浪の執政》の力を最大限に引き出すことを意識して構築した。一部のカードは、このコンセプトにしたがって採用している。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》 3枚
《敏捷なこそ泥、ラガバン》はヴィンテージでも優秀な脅威だ。《表現の反復》との相性が良く、相手のデッキから《Ancestral Recall》などをめくったときは最高だ。
イゼットの大きな弱点のひとつはモックスを2枚しか使えないことであるため、このデッキの《敏捷なこそ泥、ラガバン》はマナ加速に大きな意味がある。潜在的なカードアドバンテージよりも宝物トークンが目当てであることも少なくないんだ。4枚採用するという可能性もあるだろう。
《ダク・フェイデン》 1枚
個人的に《ダク・フェイデン》はあまり好きじゃないが、このデッキなら1枠を使うに値すると思う。《ウルザの物語》のようなカードがないため、このデッキは勝ち筋となるものが比較的少ない。《ダク・フェイデン》はそういった役割を埋めることがある。《Ancestral Recall》や《時を越えた探索》などがあるなら、手札入れ替え効果はカードアドバンテージと大差はない。
《精神を刻む者、ジェイス》でなく《ダク・フェイデン》なのは、《ウルザの物語》デッキに対して便利だからだ。また、ほかのデッキに比べてイゼットマークタイドはロングゲームになったときにライブラリーを深くまで掘り進められるため、《覆いを割く者、ナーセット》と《ダク・フェイデン》によるハンデスコンボをわずかながら決めやすい。
《狼狽の嵐》 4枚
他方、個人的に気に入っているのが《狼狽の嵐》だ。環境でもっとも強いのは《修繕》デッキ(ティンカー)であり、《修繕》というカードに対してもっとも有効なのが《狼狽の嵐》なんだ。環境に存在するそのほかの強力カードも対処でき、青のカードであることから《意志の力》のピッチコストに充てられるので完全に腐ることもない。
《目くらまし》 0枚、《噴出》 1枚
《目くらまし》は強力なカードであり、普段ならヴィンテージのデッキに入れたくなる。だけど、《表現の反復》をフル投入した構成と噛み合わせが悪い。《狼狽の嵐》が4枚あれば環境の高速デッキに対応できるだろう。《目くらまし》はこのデッキに入れたくない。
《否定の力》のような守備的なカードではなく《噴出》に枠を使ったのは、《逆説的な結果》を使うデッキよりも遅めのティンカーと戦うことを想定していたからだ。だけど、どちらの方向性でも決して間違いではない。
《思考掃き》>《定業》
モダンのイゼットデッキは《思考掃き》を捨て、もっと強いキャントリップを選ぶようになった。その強いキャントリップよりも《定業》はさらに強い。だとしたら《思考掃き》を使う理由はなんだろう?
第一の理由は速度だ。マナを伸ばす一般的なデッキに比べ、このデッキはマナ加速が少ない。だから、そのマナ差を少しでも埋めなくてはいけない状況も多々ある。《思考掃き》は《濁浪の執政》を一足先に唱えさせてくれる。サイズこそ大きくならないかもしれないが、占術2をして展開が1ターン遅れるよりは良い。
第二の理由は、ゲームの決定打となる《宝船の巡航》《時を越えた探索》のタッグを含む、5枚の「探査」呪文を採用していることだ。ヴィンテージは《意志の力》やマナ否定カードがゲームの在り方を決めているため、互いのプレイヤーは少ないリソースのなかで戦うことを強いられやすい。だからこそ、1マナで《宝船の巡航》を一度通せれば圧倒的に有利になれる。
そして軽視できない第三の理由がドゥームズデイだ。ドゥームズデイはヴィンテージのコンボデッキのなかで最強であり、ティンカーに次いで2番目に強いアーキタイプだ。ゲーム序盤に唱える暇のなかった《思考掃き》は《最後の審判》への対策カードとして使えることがある。
《不毛の大地》 4枚
《不毛の大地》に類するカードを5枚(《不毛の大地》4枚+《露天鉱床》)より少なくするのは間違いだと思いたくなるほど、ヴィンテージの《ウルザの物語》は強い。《Bazaar of Baghdad》も《ウルザの物語》も入っていないデッキに対して数枚サイドアウトするのはアリだ。
《稲妻》 2枚
普通はヴィンテージのメインデッキに《稲妻》を入れたくない。ティンカーに対して腐りやすいし、ドレッジに対しても特別強いわけでもないからだ。それでも今の環境で《稲妻》をメインデッキに入れても良いと思えるのは、《死儀礼のシャーマン》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった《稲妻》で除去できるクリーチャーが環境にいることもあるが、ドゥームズデイ戦で使い道があるからだ。
ドゥームズデイ戦は《溶岩の撃ち込み》でも悪くない!イゼットマークタイドに限らず、《稲妻》を含む赤系デッキを使ってきた経験からそう言える。
《意志の力》《精神的つまづき》《ギタクシア派の調査》、それからフェッチランド。ライフを減らすカードがこれだけあるのに、ドゥームズデイは《通りの悪霊》《ネクロポーテンス》《吸血の教示者》まで使っている。だから、せっかくデッキ名を冠しているソーサリー呪文を解決したのに、ドゥームズデイのプレイヤーのライフが少ないなんてことはよくある。《敏捷なこそ泥、ラガバン》で攻撃していればなおさらだ。
《稲妻》はドゥームズデイへの明確な対策カードではないが、ゲームに影響することが多く、このマッチアップでは生きた1枚だと思わされる。本当に腐ってしまうのはクリーチャーのないティンカーだけであり、そういったデッキはもともとメインデッキが意識しているアーキタイプだ。
《魔力流出》
《ウルザの物語》がいる世界で《魔力流出》なしで大会に向かうことは考えられない。《ウルザの物語》の採用を咎められるし、《不毛の大地》によるマナ否定戦略との相性も良い。ティンカーにも有効であり、《Mishra’s Workshop》デッキに対しては「(2)(青):あなたはゲームに勝利する」というカードになることが多い。
《無のロッド》
《無のロッド》はマナを縛ることはできても《ウルザの物語》のトークン自体には触れないため、《魔力流出》の劣化版だと捉えていた。だけど、ドゥームズデイに対して非常に強い1枚だった。
ドゥームズデイはアーティファクトが3枚しかないが、《不毛の大地》による妨害を乗り越えてコンボを決めるには基本的に《Black Lotus》を介さなくてはいけないんだ。ドゥームズデイのメタゲームシェア率が下がるようであれば、《無のロッド》を進んでカットするだろう。
《計略縛り》
《計略縛り》は、Magic OnlineプレイヤーであるalbertoSDのリストから着想を得た。ドゥームズデイに対して有効でありながら、ほかのマッチアップでも使えるカードを入れようという狙いだ。《Bazaar of Baghdad》デッキに対してサイドインしたこともあるし、機会は少なくてもゴブリンのようなデッキにも使える。ドゥームズデイだけを考えるなら《書庫の罠》のほうが良いだろうけど、用途が広くて困ることはない。
マッチアップごとの戦い方
いつものことだけど、ヴィンテージのサイドボーディングは直観的にわかりやすい。腐るか、非常に有効かの両極端であるものが多いからだ。
ティンカー
ティンカーは意識的に対策しているアーキタイプだ。だけど、ティンカーは強いデッキであり、素のデッキパワーに負けてしまうこともある。
対 ティンカー
ドゥームズデイ
フェアデッキ対コンボデッキの昔ながらの戦いであり、相手にコンボを決めさせないようにゲームを展開させていく。基本的には、キャントリップには打ち消し合戦をしかけず、大型の呪文に焦点を絞ったほうが良い。そうすれば、このマッチアップのキーカードである《狼狽の嵐》を強く使える。
対 ドゥームズデイ
フェアデッキ
フェアなマジック。特別アドバイスすることはないが、一般的なフェアデッキに比べてイゼットマークタイドは《王冠泥棒、オーコ》に強い。《濁浪の執政》は+1/+1カウンターが置かれた状態で出るため、鹿にする効果に耐性があるからだ。それから、イゼットマークタイドは《タルモゴイフ》を楽に処理する手段がないから《意志の力》を充てる価値が充分にあることは覚えておこう。
対 フェアデッキ
バザールデッキ
《死儀礼のシャーマン》入りのフェアデッキとは違い、イゼットマークタイドは《Bazaar of Baghdad》デッキに不利だ。相手のデッキエンジンを破壊する手段がほぼ《不毛の大地》しかなく、《Bazaar of Baghdad》を一度起動されるとおおむねゲームが終わる。1ゲーム目は悲惨だ。
サイド後は対策カードを引きさえすれば良いが、言うは易く行うは難し、だ。《計略縛り》の枠を《貪欲な罠》のような追加の墓地対策にすれば相性を改善できる。《虚空の力線》をもっと採用できたら良いのになぁ!
ホガーク
対 ホガーク
ドレッジ
対 ドレッジ
アグロショップ
アーティファクトへの対策がやや少ないが、それは墓地利用デッキのときと違ってイゼットマークタイドのゲームプランが通用するからだ。《濁浪の執政》は除去されないうえ、《抵抗の宝球》の効果を乗り越えていける。
対 アグロショップ
ここまで読んでくれてありがとう!テーブルで会おう!