はじめに
みなさんこんにちは。
テーブルトップも復活してきて5月にはレガシーとモダンの大規模なイベントである『Eternal Party 2022』『MMM Finals 2022』が開催されます。
さて、今回の連載では第19期レガシー神決定戦とLegacy Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
第19期レガシー神挑戦者決定戦
テーブルトップでもDelverがトップ
2022年3月26日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Izzet Delver
- 3位 ANT
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Tin Fin
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Elves
- 8位 8 Cast
ウラベ リョウスケ
トップ8のデッキリストはこちら
《敏捷なこそ泥、ラガバン》は禁止になりましたが、依然としてDelverがトップメタに位置しています。
ほかには高速コンボのTin FinやANT、『神河:輝ける世界』からの新カードによって強化されたElves、《河童の砲手》というフィニッシャーを獲得して大幅に強化された8 Castが結果を残していました。
デッキ紹介
Izzet Delver
MOでもトップメタのIzzet Delverですが、テーブルトップでは《狂乱の呪詛》が使えるのでもともと相性が良かったコンボに対してさらに有利になり、やや不利なマッチアップであったコントロールとの相性が緩和されています。
最近のリストに採用されているカウンターは、メインに《意志の力》と《目くらまし》が必要最低限で、サイド後に《否定の力》など追加のカウンターが投入されます。また、ミラーマッチを想定してメインから《紅蓮破》を採用しているリストが主流になっています。
☆注目ポイント
最近のDelverのリストには、序盤から安定して青赤2色のマナを捻出するために《Volcanic Island》のほかに追加で《蒸気孔》が採られています。今大会で優勝したウラベ リョウスケ選手のリストには、基本地形の《山》が採用されており、ミラーマッチなどの《不毛の大地》に若干耐性が付いています。
《山》はデッキの中でもっとも弱いカードであり、《神秘の聖域》を採用できなくなるのがネックとなりますが、ミラーマッチは《不毛の大地》で土地を破壊し合ってお互いを事故らせるゲームになることがあるため、安定して赤マナ源の確保ができることは重要です。
サイドに採用されている《狂乱の呪詛》は現在MOでは実装されていないカードで、MOを中心にプレイされている方にはなじみの薄いカードなので紹介したいと思います。エンチャントされたプレイヤーがクリーチャー以外のスペルをプレイするたび、6面ダイスを振って出た面のダメージを与えるというユニークな能力を持ったオーラです。
主にコンボやコントロール、軽いスペルを多用するミラーマッチでサイドインされます。特にミラーマッチのサイド後は、《濁浪の執政》に対して《紅蓮破》が合計4枚以上投入されるため、青くない勝ち手段があるほうが安定します。
Elves
今回見事に神の座の防衛に成功した高野 成樹選手は使い慣れたElvesを選択していました。イベントの配信のインタビューによれば、トップメタのIzzet Delverが勝ち上がってくると予想したことからこのデッキを選択したとのことです。
『神河:輝ける世界』から《耐え抜くもの、母聖樹》を得たことによって、厄介な置物や土地を対処できるようになりさらに強化されています。
☆注目ポイント
《耐え抜くもの、母聖樹》によって《墓掘りの檻》《三なる宝球》《Glacial Chasm》など厄介な置物や土地をメインから対処することができるようになりました。土地や置物を処理できるようになったことは大きく、複数のマッチアップとの相性が改善されているようです。
《耐え抜くもの、母聖樹》をフル搭載したことによって、《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》が抜けて《ドライアドの東屋》も1枚のみの採用となり、合わせて《森》の枚数が減ったため《クウィリーオン・レインジャー》も不採用となっています。
よく見られる構成として《忍耐》や《突然の衰微》《暗殺者の戦利品》といった除去を投入してミッドレンジコンボのようにシフトしていくリストもありますが、高野選手のリストは基本的にコンボを成立させることを優先した構成で、Delverへの妨害要素は必要最低限にまで絞られています。
サイドの《飢餓の潮流、グリスト》は《緑の太陽の頂点》でサーチすることができ、《濁浪の執政》対策にもなる優秀なカードです。墓地のカードを追放する《漁る軟泥》は、「探査」や「昂揚」対策に有効でIzzet Delverにとって除去しにくい脅威となります。どちらも相手のプランを妨害しつつ勝ち手段にもなる選択肢です。
ReanimatorやANTといったコンボデッキが苦手なので、《思考囲い》《虚空の力線》《精神壊しの罠》など対策カードが多めに積まれています。
Legacy Showcase Challenge #12404207
Delverの強さ変わらず
2022年4月3日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Lands
- 3位 Izzet Delver
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Naya Depths
- 8位 Ruby Storm
トップ8のデッキリストはこちら
先週末にMOで開催されたLegacy Showcase Challengeは、参加者200名超えの大規模なイベントでスイスラウンドは9ラウンドと長丁場でした。
今大会の上位はDelverがプレイオフの半数以上を占めました。禁止改定後の環境もIzzet Delverの支配力は変わらず、DelverかDelverに強いデッキという極端な結果が続いています。
デッキ紹介
Lands
LandsはDelverやコントロールなど青いフェアデッキに強いデッキということもあり、このデッキを愛用するエキスパートが熱心に研究を続けているため常に大会上位で見かけます。
最近《根囲い》と《紆余曲折》を搭載した新しいスタイルのLandsが台頭してきました。《根囲い》とそれと似た効果を持つ《紆余曲折》を軸にしている構成から8 Mulchとも呼ばれています。これらで土地を大量に加え、追加の土地をプレイできる《マナ結合》と《踏査》により凄まじい速さでマナ加速することができます。
☆注目ポイント
《根囲い》と《紆余曲折》によって安定して土地カードを確保することができ、毎ターン《マナ結合》によって土地を並べることができます。《死者の原野》《暗黒の深部》《演劇の舞台》といったキーとなる土地を集めやすいので、早い段階からゾンビ・トークンを並べたり《マリット・レイジトークン》で圧倒することができます。もちろんLandsのメインエンジンである《壌土からの生命》も健在なので、それらの土地を再利用することも可能です。
このリストの最大の特徴は《ウルザの物語》パッケージが不採用なところで、勝ち手段は《死者の原野》と《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボにフォーカスされているところです。《壌土からの生命》や《罰する火》エンジンを軸にした従来のLandsと異なり、墓地対策にも耐性があります。
1ターンに複数の《不毛の大地》をプレイして相手のマナを縛ることで《The Tabernacle at Pendrell Vale》はスイーパーのように機能します。また、サイドに追加でもう1枚採用されています。
8 CastやANTなどマナアーティファクトを多用するデッキとのマッチアップ用に、サイドには《溜め込み屋のアウフ》が4枚採用されており対策が徹底しています。《濁浪の執政》による事故死を防ぐために《紅蓮破》と《赤霊破》は必須となります。DelverだけでなくDoomsdayなどの青ベースのコンボや8 Castの《河童の砲手》をカウンターしたりと複数のマッチアップで使えます。
Naya Depths
Landsと同様に大きな大会で結果を残し続けているNaya Depths。《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボのほかにも火力では対処されにくい《聖遺の騎士》や、《剣を鍬に》と《虹色の終焉》といった白い優秀な除去にアクセスできるところがこのバージョンの特徴で、現環境のトップメタのIzzet Delverに強い構成になっています。
☆注目ポイント
《エルフの開墾者》と《聖遺の騎士》はコンボパーツの土地をサーチできる重要なクリーチャーです。コンボ以外でも《エルフの開墾者》は《トロウケアの敷石》を生け贄にすることでカードアドバンテージとマナアドバンテージの両方を稼ぐことができます。
相手が《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボを対策してきたとしてもこの2種類のクリーチャーでビートダウンすることが可能で、たいていの場合火力除去の射程圏外になるのでIzzet Delverとのマッチアップで有力な勝ち手段になります。
最近Landsでも見かけるようになった《市長の塔》は、クリーチャーから装備品を外したり、自軍のクリーチャーにプロテクション(アーティファクト)を付けて構築物・トークンをブロックしたり、8 Castとのマッチアップではソプター・トークンをすり抜けて《マリット・レイジトークン》の攻撃を通したりとさまざまなマッチで活躍します。
Nayaバージョンにするメリットは、《濁浪の執政》や《河童の砲手》を対策できる《紅蓮破》と《赤霊破》を採用できることです。マナ基盤に若干の調整を加えるだけでIzzet Delverとのマッチアップが安定し、Doomsdayなど青ベースのコンボデッキとの相性も緩和されるため、現環境ではNayaバージョンがベストな選択肢になりそうです。
総括
『神河:輝ける世界』からの新カードによってElvesやLands、8 CastといったDelver以外のデッキが強化されましたが、各イベントの結果からDelverの牙城を崩すには至らなかったようです。《敏捷なこそ泥、ラガバン》禁止後もIzzet Delverは環境を支配し続けており、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を禁止にしただけでは不十分だったのではないかという意見も散見されています。
どのカードが適切な選択かはさまざまな意見がありますが、個人的には《表現の反復》が現時点で一番禁止になりそうなカードになると考えています。
《宝船の巡航》《時を越えた探索》などほかの色を足すことなく手軽にアドバンテージを稼ぐ手段にアクセスできた時代のDelverは、例外なく環境を支配していました。《表現の反復》によって軽いスペルやカウンターを手に入れることで墓地が肥えやすく、同様に問題視されている《濁浪の執政》をプレイしやすく守りやすくもなっています。脅威を対処されてもリソースが尽きることなく、本来なら不利なはずのコントロールとのマッチアップでも総力戦で負けにくくなっているのです。
公式でも必要であれば追加の調整を行うことを述べていたので、今後の動向にも要注目です。USA Legacy Express vol. 197は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!