決勝戦:大原 優一(緑単信心) vs. 本田 敦郎(ナヤウィノータ)

晴れる屋メディアチーム

《ルールス》なき後のパイオニア環境

夢の巣のルールス

3月8日。

さまざまな環境を定義していた《夢の巣のルールス》がパイオニアでも禁止された。《夢の巣のルールス》を採用しなくなったことで、デッキに使用するカードの幅が大きく広がり、これまで2マナ以下の使用を余儀なくされていたデッキの強化もあれば、アドバンテージ源を失ったデッキもあった。

なかでも目立った活躍を見せたデッキが「赤単」だ。《ゴブリンの鎖回し》《砕骨の巨人》《勝負服纏い、チャンドラ》などの強力な3マナ域のカードが使えるようになったことで一躍上位に躍り出たデッキである。

事実、今回のトップ8のうち、半数は赤単を用いていた。しかし、帝王を決める座に就いたのは、赤単ではなかった。

参加者、総勢68名。並みいる強豪との戦いを勝ち残ったのは、この2人だ。

ナヤウィノータ

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本田 敦郎

本田 敦郎

本田 敦郎が使用するのは「ナヤウィノータ」

《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力をフル活用し、場に出たときの能力を持つクリーチャーを呼び出して相手を蹂躙するデッキだ。不安定な面もあるが、早ければ5ターン目に決着をつけられるその速度とパワーは、これまで禁止されてきたコンボデッキに匹敵する。

緑単信心

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大原 優一

大原 優一

大原 優一が使用するのは「緑信心」。マナクリーチャーや《ニクスの祭殿、ニクソス》でマナを増やし、《老樹林のトロール》《長老ガーガロス》で攻め立てるデッキ。戦術はシンプルだがクリーチャーの質は非常に高く、ぬるい防御はたちまち獣の群れが踏み砕いてしまう。

かつてスタンダード、モダンと2つの冠を手中に収めた本田。新たな帝王の栄光を目指す大原。ルールスなき後のパイオニア環境を制するのは、果たしてどちらか。

大原 優一(左) vs. 本田 敦郎(右)

決勝戦

Game 1

大原がマリガンし、ゲームの幕が上がる。先攻の本田は《枝重なる小道》からの《エルフの神秘家》、大原は《ハイドラの巣》から《ラノワールのエルフ》を戦場に出し、双方が幸先の良いスタートを切る。

次のターン、本田は《石重なる小道》を設置して《裕福な亭主》を出した。宝物・トークンによってマナ加速ができ、継続的なライフゲインが狙える優良クリーチャーだ。攻撃の準備に専念する本田に対し、大原はアクティブな姿勢を見せる。

老樹林のトロールエシカの戦車

《森》とマナクリーチャーから捻出した3マナを使って、早くも《老樹林のトロール》を繰り出した。強力なクリーチャーだが、今回は大きな壁が立ちはだかった。返すターンで、本田が唱えた《エシカの戦車》がそれだ。猫・トークンで戦力を増やし、さらに《裕福な亭主》でライフを22に増やした本田はターンを渡す。

ひとまず大原は《ギャレンブリグ城》を設置し、追加の《老樹林のトロール》《ラノワールのエルフ》を戦場に出す。これで、次ターンには6マナ帯に手が届く。本田にとっては、自身の場をさらに盤石にする好機でもある。もう1体の《裕福な亭主》→アンタップインで《寺院の庭》《鏡割りの寓話》と連続で動き、ゴブリン・トークンも戦場に出した。《寺院の庭》で減ったライフも、もとの22点に戻る。

次のターン、このまま放置してなるものかとばかりに大原もプレッシャーをかける。《アーク弓のレインジャー、ビビアン》を唱えて2体の《老樹林のトロール》を強化した。ところが、本田は強化されたトロールに対する対策を持っていた。

粗暴な聖戦士

《鏡割りの寓話》の第Ⅱ章で手札を整理し、《ラノワールのエルフ》を出してライフを24に伸ばした本田が唱えたのは《粗暴な聖戦士》

これにより《老樹林のトロール》1体を追放した本田は、マナクリーチャーと《粗暴な聖戦士》を乗せた《エシカの戦車》と猫・トークン2体、ゴブリン・トークン、《裕福な亭主》2体で一斉に《アーク弓のレインジャー、ビビアン》に攻撃を仕掛けたのだ!

もちろん《裕福な亭主》のライフゲインと戦車のコピー能力、ゴブリンの宝物生成能力が誘発し、ゴブリン・トークンが増え、本田のライフは28となる。《老樹林のトロール》のブロックで《エシカの戦車》が破壊されるも、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》は討ち取られた。

一転して苦しい状況に追い込まれた大原は《群れ率いの人狼》を出すが、次のターン、《鏡割りの寓話》を変身させた本田が繰り出したのは、このデッキの大本命《軍団のまとめ役、ウィノータ》

軍団のまとめ役、ウィノータトヴォラーの猟匠

直後の攻撃で《トヴォラーの猟匠》がめくれたのを見た大原は、苦笑しつつ投了した。

大原 0-1 本田

Game 2

運命の2ゲーム目は、再び大原のマリガンで始まった。今回も1ゲーム目と同じように大原が《ラノワールのエルフ》、本田が《エルフの神秘家》を戦場に出す。

老樹林のトロール鏡割りの寓話

2ターン目も大原は追加で設置した《森》《ラノワールのエルフ》《老樹林のトロール》を出すが、本田は1ゲーム目とは違い、《聖なる鋳造所》をアンタップインして、《鏡割りの寓話》を唱えてゴブリン・トークンを戦場に送り出した。

ニクスの祭殿、ニクソス

だが、今回の大原は先ほどよりアクティブに動き始める。《ニクスの祭殿、ニクソス》を置いてから《ニッサの誓い》《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》を手札に加え、《ニクスの祭殿、ニクソス》からマナを出すと《群れ率いの人狼》《エルフの神秘家》が現れた。さらに《老樹林のトロール》の攻撃で本田のライフを14に削り、積極的な攻めの姿勢を見せる。

一方、本田は動じることなく自分の動きを進める手順を着実に進めてゆくようだ。《鏡割りの寓話》の第Ⅱ章で手札から2枚の《トヴォラーの猟匠》を捨ててドローし、ゴブリン・トークンで攻撃。

帰還した王、ケンリス巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス

ゴブリンはブロックで討ち取られたが、代わりに得た宝物・トークンと土地から捻出したマナで本田が唱えたのは《帰還した王、ケンリス》。放っておけばじわじわとアドバンテージ差を稼がれる厄介なクリーチャーが着地したが、パワーで殴り勝つ緑信心のデッキコンセプト、大原の攻めの姿勢は変わらない。《ニクスの祭殿、ニクソス》から生み出した8マナのうち6マナを消費し、大原が出したのは、新ファイレクシアの凶悪な法務官《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》

即座に《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》で仕掛けた攻撃はブロックされず、本田のライフは8。しかも、《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》の能力で《鏡割りの寓話》は変身できない。窮地に追い込まれたかのように見えた本田だったが、彼もお返しとばかりに切り札である《軍団のまとめ役、ウィノータ》を戦場に出す。そして《エルフの神秘家》の攻撃に応じて現れたのは、1ゲーム目でも大活躍した《粗暴な聖戦士》

軍団のまとめ役、ウィノータ粗暴な聖戦士

《エルフの神秘家》《群れ率いの人狼》《粗暴な聖戦士》《老樹林のトロール》にブロックされてしまうが破壊不能なので場に留まり、《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》は追放された。これでまた、次のターンには《鏡割りの寓話》が変身する。

長老ガーガロス

切り札を追放されてしまった大原だが、それでも一向に攻撃の手を緩めない。再び《ニクスの祭殿、ニクソス》で大量のマナを出すと、今度は《長老ガーガロス》を戦場に出し、追加の《森》と合わせた3マナで《群れ率いの人狼》を5/3に強化し、攻撃する!

この一撃でついにライフが3点となった本田は、《鏡割りの寓話》を変身させてから、少し考える様子を見せた。しかし、すぐに解答を導き出したのか、《エルフの神秘家》を戦場に出し、あっさりとターンを渡す。

鏡割りの寓話粗暴な聖戦士

大原としてはここでライフを削り切りたいが、攻撃に入る前に動いたのは本田だった。《帰還した王、ケンリス》の能力で《キキジキの鏡像》に速攻を付与した彼は、《粗暴な聖戦士》をコピーして《長老ガーガロス》を追放した。

計算をやや狂わされた大原だが、攻撃を止める理由にはならない。5/3に強化された《群れ率いの人狼》《エルフの神秘家》で攻撃するも、前者は《粗暴な聖戦士》のコピー、後者は《帰還した王、ケンリス》にブロックされ、集団戦術の1ドローのみの成果に留まる。その後、《ニクスの祭殿、ニクソス》を張り替えて生み出したマナで大原が2体目の《長老ガーガロス》を唱える。本田も《帰還した王、ケンリス》の効果でライフを8に回復し、戦況はどう転ぶかわからない状態にもつれこんでゆく。

ここで本田が《エシカの戦車》とタップインの《踏み鳴らされる地》を出し、攻撃に転じなかったのを見て、大原は2体の《長老ガーガロス》《群れ率いの人狼》でアタックした。3体の効果で3ドローした大原に対し、本田は猫・トークン2体で《群れ率いの人狼》をブロックして、《粗暴な聖戦士》のコピーで《長老ガーガロス》を追放するが、もう1体とトランプルの超過ダメージによってライフを1まで追いつめられる。さらに《ギャレンブリグ城》《エルフの神秘家》を出し、大原は反撃に備える。

だが次のターン──圧倒的なライフ差を一気に詰めたのは本田だった。まずは《ラノワールのエルフ》を着地させ、《キキジキの鏡像》《粗暴な聖戦士》をコピーして《長老ガーガロス》を追放する。そして《エシカの戦車》をクリーチャー化してエルフ達とともに攻撃し、再び《粗暴な聖戦士》のコピーを生成する!しかも《軍団のまとめ役、ウィノータ》の効果で出てきたのは、《精鋭呪文縛り》と追加の《粗暴な聖戦士》

精鋭呪文縛り粗暴な聖戦士

これによって《長老ガーガロス》だけでなく、手札と戦場の《老樹林のトロール》まで追放された大原のライフはたちまち9点まで削られてしまう。大原のターンが回ってくれば《長老ガーガロス》は1体返ってくるが、攻撃を仕掛けても能力を2回起動した《帰還した王、ケンリス》に返り討ちに遭う。苦肉の策で《炎樹族の使者》《群れ率いの人狼》を出すが、二度目の猛攻に耐えられる壁とは言い難い。

何度目になるか分からない《粗暴な聖戦士》のコピーで《群れ率いの人狼》を追放した本田が一斉攻撃を仕掛けると、ここで大原が投了した。

大原 0-2 本田


そして、人間と獣群の大軍を率いた本田が、新たなるパイオニアの帝王となったのだった。

第4期パイオニア関西帝王 本田 敦郎

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