はじめに
みなさんこんにちは。
テーブルトップの大会が開催されるようになり、日本国内でも5月にMMM Finals 2022 in Tokyoが開催されます。
さて、今回の連載ではMagic Online(以下、MO)で開催されたSCQ、Showcase Qualifier、SCG Con Dallasの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Super Qualifier #12404205
新環境のトップメタ
2022年4月2日
- 1位 Temur Cascade
- 2位 Jeskai Murktide
- 3位 Living End
- 4位 Tron
- 5位 4C Control
- 6位 Izzet Ragavan
- 7位 Amulet Titan
- 8位 Grixis Shadow
トップ8のデッキリストはこちら
《夢の巣のルールス》が禁止カードに指定されて1か月以上が経ち、大きな大会もいくつか開催されて環境も煮詰まってきた感があります。
《夢の巣のルールス》禁止後の環境は、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した多色コントロール、Temur Cascade、Living Endといった「続唱」を使ったコンボデッキ、Izzet Ragavanといったデッキがトップで、その次点でHammer Time、Grixis Shadow、Tron、Amulet Titanなどが中心です。特に新しいデッキは少なく《夢の巣のルールス》禁止によるダメージがなかった既存のデッキが上位でよく見られます。
デッキ紹介
Jeskai Murktide
今回予選を通過したJeskai Murktideは、Izzet Ragavanに白をタッチしてコントロール寄りの構成にシフトしたバージョンでした。
基本的にはIzzet Ragavanがベースで、《ドラゴンの怒りの媒介者》が抜けてプレインズウォーカーや《瞬唱の魔道士》をメインから採用することで効率性よりもデッキパワーの向上を優先しています。《ドラゴンの怒りの媒介者》が不採用な理由については、Jędrek Szmyd氏本人が自身のツイッター上で説明されていました。
白をタッチすることで《虹色の終焉》《冥途灯りの行進》《時を解す者、テフェリー》にアクセスできるようになったため、《濁浪の執政》《虚空の杯》《死の影》《ヴェクの聖別者》などIzzetのときには対処が難しかったカードにも対応しやすくなっています。
☆注目ポイント
白をタッチする最大のメリットはなんと言っても《時を解す者、テフェリー》が使えるようになったことです。常在型能力は現環境のトップメタの一角である「続唱」デッキとのマッチアップで有効で、ほかにも相手のカウンターを無力化したり、《濁浪の執政》などの脅威をバウンスすることができるのでコントロールやミラーマッチでも活躍します。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》の宝物・トークンを利用することで最速で2ターン目にプレイすることが可能で、「続唱」デッキやコントロールとのマッチアップではそれだけでもかなり有利にゲームを進めることができます。
カードパワーが向上するにつれて採用しているデッキは減少傾向にありますが、まだまだ使える《瞬唱の魔道士》。《虹色の終焉》や《冥途灯りの行進》といった除去を再利用することができ、マナが出る中盤以降は《大魔導師の魔除け》を「フラッシュバック」してアドバンテージを稼ぐこともできます。
《月の大魔術師》は特殊地形を多用するデッキに有効なサイドカードです。最近では《耐え抜くもの、母聖樹》の影響で《血染めの月》よりも《月の大魔術師》が優先される傾向にあります。主にサイドインする相手であるTron、Amulet Titan、Living Endはクリーチャー除去より置物対策のほうが多いため、一度場に出てしまえば対処されにくいのがポイントです。
Modern Showcase Qualifier
コントロールが強い環境
2022年4月9日
- 1位 4C Control
- 2位 Jeskai Control
- 3位 4C Elementals
- 4位 4C Control
- 5位 5C Elementals
- 6位 Temur Cascade
- 7位 Amulet Titan
- 8位 Izzet ragavan
先週末にMOで開催されたMOCSの予選大会。
今シーズンのModern Showcase Challengeでトップ8に入賞したプレイヤーと直前予選を勝ち抜いたプレイヤーのみ参戦できる招待制のイベントで、優勝者にはMOCS本戦の参加権が与えられます。
招待制のイベントだけあり参加数は少ないものの、非常にレベルの高いイベントです(公式のサイトには今大会の結果がアップされていなかったので、大会のデータを集めている@bamzing_mtgのツイートを参照にしました)。
デッキ紹介
4 Control
今大会を制したのは現環境のトップメタの一角である4C Controlでした。《夢の巣のルールス》が退場したため最高の「相棒」の名を欲しいままにしている《空を放浪するもの、ヨーリオン》を搭載した多色コントロールデッキで、旧環境から変わらず環境最高クラスのデッキです。
Jeskai Murktideのところでも説明しましたが、「続唱」デッキやカウンターを多用するIzzet Ragavanがトップメタの現環境では《時を解す者、テフェリー》は非常に強いカードになります。それに加えて効率的な除去にカードアドバンテージ源の《表現の反復》、《孤独》や《激情》といったピッチでプレイできる除去を搭載しているため特にクリーチャーデッキに強いデッキとなります。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》が禁止になりライバルだったGrixis Shadowが弱体化したのに加えて、『神河:輝ける世界』から収穫もあり安定した成績を残し続けています。《冥途灯りの行進》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》対策として機能する除去で、ほかにも《衝撃の足音》や《ウルザの物語》をわずか1マナで除去することができます。
Izzet Ragavanや「続唱」デッキなどが台頭したことに加えて土地コンボも見られるようになってきたため、最近は《永遠の証人》を《儚い存在》で「明滅」させてアドバンテージを稼ぐより、《敏捷なこそ泥、ラガバン》で能動的に動ける構成のほうが主流になっています。
多色デッキですが、《豊かな成長》《敏捷なこそ泥、ラガバン》の恩恵によって《血染めの月》1枚で負けにくく、《耐え抜くもの、母聖樹》を得たことでより対処しやすくなりました。Grixis Shadowなどハンデスを多用するデッキは減少傾向にありますが、現環境にはIzzet RagavanやAzorius Controlなどカウンターを多用するデッキが散見されるため、《夏の帳》もサイドに引き続き採用されています。
SCG CON Dallas- Modern $30K
禁止改定後も健在のHammer Time
2022年4月10日
- 1位 Hammer Time
- 2位 4C Elementals
- 3位 Temur Cascade
- 4位 Jund
- 5位 Temur Cascade
- 6位 Hammer Time
- 7位 Azorius Control
- 8位 4C Control
トップ16のデッキリストはこちら
先週末はアメリカのDallasでSCG主催の大規模なモダンのテーブルトップイベントが開催されました。
グランプリを彷彿とさせる2日制の競技イベントで賞金総額も$30000と豪華。今大会では上位12名がプレイオフに進出でき、スイスラウンド上位4名はプレイオフの初戦に不戦勝が与えられるという形式で行われました。
デッキ紹介
Hammer Time
《夢の巣のルールス》が禁止になったことで弱体化を強いられたHammer Timeですが、Temur Cascadeなどに速度で勝負をすることができ、回れば相手を選ばずに勝つことができる爆発力は健在です。
《夢の巣のルールス》の退場によって《イラクサ嚢胞》などマナ総量が3マナ以上の装備品を採用するなど、中盤以降のロングゲームにも対応できるように工夫がされています。
最近は《現実チップ》やサイドのカードのために青をタッチしたバージョンが主流になっています。サイドの青いカードのおかげでコンボデッキとの相性が緩和されています。
☆注目ポイント
《ルーンの与え手》は自軍クリーチャーを《稲妻》など除去から守ります。自身を守ることはできないものの、相手にとってはマスト除去になるため結果的に後続のクリーチャーが生き残りやすくなります。
《イラクサ嚢胞》はアーティファクトだけでなくエンチャントもカウントするため、場にある《シガルダの助け》や《ウルザの物語》によっても強化されます。中盤以降は単体ではインパクトに薄い《メムナイト》や《羽ばたき飛行機械》も強力なクロックになるので相手にとっては脅威となります。
サイドボードのカードは特にコンボデッキとのマッチアップを想定して選択されているようです。さまざまなデッキで採用されている《時を解す者、テフェリー》は、「続唱」デッキやコントロールデッキなど環境の多くのデッキとのマッチアップで強さを発揮します。常在能力のおかげで相手の除去を気にせずに装備品を付けてビートダウンすることができます。
《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は最近見られるようになってきたカードです。ピッチスペルから「続唱」スペルまで封じることができるため、「続唱」デッキに対して有効なカードになります。
Temur Cascade
MOのPTQで優勝、Showcase Qualifierにもプレイオフに勝ち残るなど、新環境でも結果を残し続けているTemur Cascade。今大会でも初日全勝者を出し、プレイオフにも進出するなど環境トップメタの一角に恥じない強さを見せました。
「続唱」デッキが増加した理由として、《夢の巣のルールス》が禁止になったことで最速で3ターン目(「続唱」スペルがプレイされる前に)に決着をつけることができたHammer Timeや、ハンデスとカウンターを使うGrixis Shadowが弱体化したことと、それらのデッキが数を減らしたことによって環境から《虚空の杯》を採用したデッキが減少したことが挙げられます。
禁止改定によるメタの変化に加えて、《耐え抜くもの、母聖樹》と《天上都市、大田原》を得たことも大きく、厄介な置物を処理しやすくなりました。
3ターン目には《断片無き工作員》から《衝撃の足音》によって合計パワー10相当のクロックを用意することができ、《暴力的な突発》で相手のターン中にも仕掛けることが可能です。
☆注目ポイント
Brittany Davis選手のリストはメインから《大魔導師の魔除け》が入っていたりと、一般的なリストと異なりよりミッドレンジ寄りの構成になっています。カウンターが多めに積まれているのでコントロールにも強く、フェアな勝負でも十分に渡り合うことができます。
《大魔導師の魔除け》はカウンター以外でも、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《死の影》、Hammer Timeの構築物・トークンや《エスパーの歩哨》などを奪うことで時間を稼ぐことが可能です。
「続唱」の邪魔をすることがないように、分割スペルや「出来事」クリーチャーが採用されています。その中でも《火/氷》は必要な3枚目の土地を引く手助けをしつつ、カウンターを構えている相手の土地をタップすることができる有用なスペルです。
サイドボードにフル搭載されている《神秘の論争》は、《時を解す者、テフェリー》《濁浪の執政》など環境の脅威に対して有効で多くのマッチアップで使えます。
Living EndやDredgeなど墓地を使ったデッキに対してはもちろんのこと、《濁浪の執政》の「探査」を妨害するためにも使える《忍耐》がしっかり4枚採られています。もっとも苦手なマッチアップであるHammer Timeに対しては、《活性の力》4枚で対抗します。
総括
《夢の巣のルールス》禁止後のモダンはIzzet Ragavanの人気があり、MO、テーブルトップのイベントで高い勝率を出しています。
ほかには、Temur Cascade、Living Endといった「続唱」を使ったデッキと、4C Controlも上位でよく見られるデッキです。また、トップメタではなくなったもののHammer TimeもSCGのイベントで優勝するなど、使用デッキの練度と毎週メタに合わせた調整が結果に繋がりやすい環境のようです。
以上、USA Modern Express vol. 74でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!