はじめに
みなさんこんにちは。
来月には大規模なレガシーのテーブルトップイベントであるEternal Party 2022 in Tokyoが開催されるので楽しみですね。
さて、今回の連載ではLegacy ChallengeとLegacy Showcase Qualifierの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12407126
Izzet Delverが不在のプレイオフ
2022年4月9日
- 1位 Azorius Stoneblade
- 2位 Death and Taxes
- 3位 Jeskai Control
- 4位 ANT
- 5位 Salvager Combo
- 6位 Death and Taxes
- 7位 Jeskai Control
- 8位 Jeskai Control
トップ8のデッキリストはこちら
Izzet Delverが猛威を振るっていた数週間から一転して、今大会のプレイオフではIzzet Delverは不在という結果になりました。
その一方で台頭してきたのがJeskai Controlでした。最近結果を残しているJeskai Controlは、《一日のやり直し》コンボにフォーカスした形ではなく、カウンターと除去で相手の脅威を捌きつつプレインズウォーカーなどでコツコツアドバンテージを稼いでいく形になっています。
デッキ紹介
Azorius Stoneblade
今大会で優勝を収めたのは懐かしい形の《石鍛冶の神秘家》デッキでした。このリストは、どちらかというとDelverとStonebladeのハイブリットでテンポ寄りの構成になっています。
《虹色の終焉》と《剣を鍬に》の2種類の優秀な除去にアクセスができ、フェアデッキとのマッチアップを得意としますが、コンボデッキは除去や装備品など不要牌になるカードが多くなるため苦手なマッチアップになります。
☆注目ポイント
メインからフル搭載されている《もみ消し》は、Delver系が得意とする土地破壊とソフトカウンターで相手の動きを妨害しつつ、プレッシャーをかける戦略にフィットしており、最近は《もみ消し》を採用しているデッキが少ないので警戒されにくく活躍したことが予想されます。しかし、同時にこのデッキが結果を残したことで意識され始めると効果は薄くなります。
《真の名の宿敵》はすっかり見かけなくなりましたが、《虹色の終焉》など現環境は単体除去が中心でスイーパーが少ない環境なので対処されづらく、信頼性のあるフィニッシャーになります。装備品のチョイスですが、最近はクロックが速く一度出てしまえば除去されにくい《カルドラの完成体》が《殴打頭蓋》よりも優先的に採用されています。
サイドボードには、特定の戦略やマッチアップで効果的なカードが採用されています。コンボ対策としては、1ターンの間に複数の呪文を唱えるStormやElvesに有効な《エーテル宣誓会の法学者》や、《暗黒の深部》コンボを封じる《真髄の針》があげられます。
《安らかなる眠り》はDredgeやReanimatorなど墓地を使うデッキを意識しての採用ですが、最近は「昂揚」や「探査」を妨害する目的でも使われています。流行の8 Cast対策には、その初動すらも封じてしまう《戦争の報い、禍汰奇》と《無のロッド》。《無のロッド》はStorm系のマナアーティファクトの無力化にも役立ちます。
Jeskai Control
トップメタではないものの、現環境の青ベースのフェアデッキの中ではIzzet Delverの次に活躍しています。
プレイオフに3名入賞しており、それぞれリストに細かな違いは見られますが、共通しているのは《一日のやり直し》コンボにフォーカスした形と異なっていることです。除去とカウンターで脅威を処理し、プレインズウォーカーなどで継続的なアドバンテージを稼いでいく伝統的なドローゴーに近いスタイルになっています。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》など単体で強力なエンジンとなるカードが登場したため、Jeskai Controlのようにコツコツとアドバンテージを稼いで勝利を目指していくタイプのコントロールは淘汰されていました。しかし、多色コントロールよりもマナ基盤が安定しており、青いデッキの多い現環境に合った《紅蓮破》/《赤霊破》や《ウルザの物語》デッキ対策の《溶融》をそこまで負担なく使える利点が大きく、このデッキを選択する理由のひとつとなっています。
☆注目ポイント
フィニッシャーとして起用されている《サメ台風》は、《濁浪の執政》を含めたDelver系の脅威に対して時間を稼ぐことができるレガシーでも通用する逸材です。コストが重いとはいえ隙なく動けることがこのデッキでは重要で、ゲーム後半ではサメ・トークンが脅威となりプレインズウォーカーも牽制できます。
《激しい叱責》は《ウルザの物語》の構築物・トークンを一掃したり、Death and Taxesのクリーチャーを対策したりと優秀な妨害スペルとして機能します。
DelverやElvesなどを意識していたようで《至高の評決》がメインから採られており、コンボ対策には《否定の力》をメインから2枚採用と多くのマッチアップ、シチュエーションに対応できるように調整されています。
サイドの《セヴィンの再利用》ですが、このデッキは《僧院の導師》《覆いを割く者、ナーセット》《時を解す者、テフェリー》といったマナ総量が3以下の強力なカードを複数搭載しているので、強力なアドバンテージ源として特にコントロール同型とのマッチアップで活躍します。
《永久のドラゴン》は3点ダメージ火力が主な除去であるIzzet Delverにとって対処が困難であり、Izzet Delverが多い現環境ではメインから採用してもいいカードです。
Legacy Challenge #12407136
コンボデッキ多数
2022年4月10日
- 1位 Reanimator
- 2位 StifleNought
- 3位 Doomsday
- 4位 Azorius Stoneblade
- 5位 Izzet Delver
- 6位 ANT
- 7位 Azorius Control
- 8位 Painter
トップ8のデッキリストはこちら
土曜日に開催されたLegacy Challegneと同様に、Izzet Delverがプレイオフに1名と極めて興味深い結果となりました。
Delver系が数を減らし、Jeskai Controlなどが増加したことでコンボデッキも多数勝ち残っています。天敵のDelverが少しでも数を減らすと上位に多く残っていることから、いかにレガシーのコンボデッキが強力かが分かります。Delver系がコンボデッキの抑止力になっていると考えると、フォーマットのバランスを考えるのは見た目よりも難しそうです。
デッキ紹介
StifleNought
StifleNoughtは、《ファイレクシアン・ドレッドノート》のデメリットを《もみ消し》によって無効にするコンボを搭載したデッキで、過去にレガシーで活躍していたアーキタイプでしたが、除去や妨害の性能が上がったため衰退していきました。
『モダンホライゾン2』から《濁浪の執政》と、《ファイレクシアン・ドレッドノート》ともシナジーのある《激しい叱責》を獲得したことによって強化され、今大会で見事に準優勝を果たしました。
☆注目ポイント
《もみ消し》は相手のフェッチランドを消すだけでなく、このデッキの場合は《ファイレクシアン・ドレッドノート》のコンボパーツにもなっています。相手に警戒されていても使い道があるため、腐りずらいのがポイントです。クリーチャーの能力を一時的に失わせる効果を持つ《激しい叱責》も、《ファイレクシアン・ドレッドノート》のペナルティ能力を帳消しにする手段になります。
黒を足すメリットとしては、相手の《濁浪の執政》を0マナで処理できる《殺し》が使えることです。サイドの《敵対工作員》は、採用しているデッキが少ないため警戒されにくく面白いカードです。《倦怠の宝珠》はDeath and Taxesや《タッサの神託者》対策になるだけでなく、追加の《ファイレクシアン・ドレッドノート》のペナルティ能力を踏み倒す手段にもなります。
Legacy Showcase Qualifier
Delver多数
2022年4月17日
- 1位 Blue Zenith
- 2位 Reanimator
- 3位 Jeskai Midrange
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Selesnya Depths
先週末にMOで開催された招待制のイベントで、優勝者にはMOCS本戦の参加権が与えられます。Legacy Showcase Challengeの上位入賞者のみが参戦可能なイベントだったため、参加人数は少数ながらレベルの高いイベントになりました。
今大会では環境トップメタのIzzet Delverが優勝こそ逃したものの、プレイオフに半数残りトップ16以内にはなんと8名と高い勝率を維持していました(大会結果は公式にはアップされていなかったため、Joseph Dyer氏(@volrathxp)のツイートを参考にしました)。
デッキ紹介
Blue Zenith
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《壌土からの生命》などさまざまなアドバンテージエンジンを搭載したミッドレンジデッキ。ゲーム終盤に多大なアドバンテージをもたらす《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にするために80枚のカードをプレイしているので、ドロースペルやキャントリップを多めに採用することで安定性を維持しています。
デッキ名にもなっている《緑の太陽の頂点》は、デッキに一貫性を与えてくれるサーチスペルです。序盤はマナクリーチャーになり、ゲーム中後半は《飢餓の潮流、グリスト》《秋の騎士》《忍耐》《トレストの使者、レオヴォルド》《原始のタイタン》といった緑のクリーチャーカードを状況に応じてサーチしてこれるため、非常に対応力が高いデッキになっています。
除去、優秀なクリーチャーと一通り揃っているのでフェアデッキに対して有利なデッキで、今大会のようにIzzet Delverが多いメタでは最高の選択肢のひとつと言えます。
☆注目ポイント
《緑の太陽の頂点》で柔軟に戦うことができるのがこのデッキの魅力です。《トレストの使者、レオヴォルド》はコンボ、フェア問わずキャントリップが飛び交うレガシーでは多くの戦略を対策することができ、特に苦手なコンボデッキに対して有用なカードになります。
Reanimatorや《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、「昂揚」、「探査」などコンボからフェアまでレガシーではさまざまなデッキが墓地を利用するので、メインから墓地対策できる《忍耐》は活躍どころの多い優秀なカードです。3/4で到達持ちというスペックもIzzet Delverに強く、有用な勝ち手段のひとつになります。
《原始のタイタン》はこのデッキのフィニッシャーで、《死者の原野》をサーチしてゾンビ・トークンを大量に生み出すことでたいていのフェアデッキを圧倒することができます。青いデッキが多くなることを想定していたようで、《変容するケラトプス》もメインから採られています。
《緑の太陽の頂点》で《飢餓の潮流、グリスト》や《秋の騎士》をサーチできるため、置物に対しても対応しやすくなっています。《飢餓の潮流、グリスト》はトークンを生成できるので、単体除去が中心のデッキに対して対処されにくい脅威として機能しつつ、《濁浪の執政》を処理できる優秀なカードです。
サイドボードは現環境の主要なマッチアップのために綺麗にまとめられています。3枚採用された《花の絨毯》は、Izzet Delverとのマッチアップで安定したマナを提供してくれます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》や《緑の太陽の頂点》などがあるのでマナの使い道には困りません。
《疫病を仕組むもの》は《緑の太陽の頂点》でサーチはできないものの、ElvesやDeath and Taxesに効果てきめんなのはもちろん、Izzet Delverに対しても《ドラゴンの怒りの媒介者》と《秘密を掘り下げる者》が人間なので有効です。
Reanimator
Izzet Delverが同型対策にメインから複数の《紅蓮破》を搭載しているほど、現環境はIzzet Delverが支配しており、コンボデッキは一部を除いて淘汰されています。そんななか、最近活躍が著しいのがReanimatorです。
数あるレガシーのコンボデッキの中で最も速いデッキのひとつで、最速1ターン目から《グリセルブランド》を出すことができます。墓地対策がほとんどないメイン戦では、多くのマッチアップで無類の強さを見せます。
サイド後は相手にどれぐらい対策されているのかで勝率が分かれてきます。現在では《虚空の力線》を採用したデッキが少なく、《外科的摘出》や《忍耐》などが中心で、これらはハンデスで対策することができます。
トップメタのIzzet Delverも最近は同型を意識してメインの確定カウンターが《意志の力》のみになっており、《否定の力》の採用率は低めです。墓地対策もサイドに《外科的摘出》が2枚ほどと、Reanimatorが乗り越えなければいけないハードルはそこまで高くありません。
10枚のハンデスのおかげで妨害を退けやすく、青を使用しないので《紅蓮破》に引っかからないのも現在このデッキが結果を残し続けている理由です。
☆注目ポイント
最近活躍しているリストの多くは《別館の大長》が抜けて、《グリセルブランド》と《残虐の執政官》が主要なフィニッシャーになっています。《残虐の執政官》は《カラカス》でバウンスされず、たとえ対処されたとしても場に出た時点でかなりのアドバンテージを稼いでくれます。
基本的に赤黒ですが、サイドボードのカードのために緑と白がタッチされています。高速コンボでマナ加速も採用しているため、多色のマナ基盤にしても《不毛の大地》などの影響も受けにくく、サイドボードの選択肢が広がるメリットのほうが遥かに上です。
さて、このデッキにとっての最大の難関はサイド後のゲームです。サイド後は相手もさまざまな対策を用意しているので一筋縄ではいきません。《沈黙》や《ザンティッドの大群》はカウンターなどインスタントの妨害スペルを対策します。ハンデスを含めるとスペルベースの対策にはかなり耐性があります。
Reanimatorにとって問題となるのは《墓掘りの檻》などの置物で、それらを対策するために《摩耗/損耗》《耐え抜くもの、母聖樹》が採られています。特に《耐え抜くもの、母聖樹》は《カラカス》など厄介な特殊地形を処理することができ、カウンターもされないので便利です。
総括
Legacy Showcase Qualifierでは、優勝こそ逃したもののIzzet Delverが最大勢力であり、トップ8の半数を占めるという結果で幕を閉じました。トップ4に入賞していたJeskaiもDelverではなくコントロールデッキでしたが、《表現の反復》と《濁浪の執政》が採用された青ベースのフェアデッキでした。
前回は禁止カードの候補の1枚として《表現の反復》を取り挙げましたが、《濁浪の執政》も候補として挙げられています。歴代でも最高クラスのスペックでありながら自身のサイズを強化することができ、《稲妻》や《虹色の終焉》といった環境の主要な除去の多くに耐性を持っています。2回攻撃を通せばたいていゲームが終わるため、マッチアップの相性差をひっくり返すほどのインパクトがあるのです。
圧倒的なサイズと回避能力により放置できるターンが短く、コントロールデッキでも《剣を鍬に》などを引くことができずに負けるゲームを何度も見てきました。また多くのデッキがメインから複数の《忍耐》や《紅蓮破》を採用していることからも、《濁浪の執政》が各々のデッキ構築にも影響を与えていることが分かります。
公式でも必要であれば追加の調整を行うことを述べていたので、現状維持されるのかそれとも大きな変更があるのか要注目です。
USA Legacy Express vol.198は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!