はじめに
みなさんこんにちは。
新セットの『ニューカペナの街角』がリリースされましたね。各種トライオームや話題の3マナプレインズウォーカー《敵対するもの、オブ・ニクシリス》、《献身のドルイド》コンボの新戦力として注目を集めていた《ジアーダの贈り物、ラクシオール》などモダンでも使えそうなカードが見られます。
さて、今回の連載では先週末に開催されたModern ChallengeとMMM Finals 2022 in Tokyoの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12414717
新環境でも《ヨーリオン》が活躍
2022年4月30日
- 1位 4C Elementals
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Temur Footfalls
- 4位 Izzet Ragavan
- 5位 Hammer Time
- 6位 4C Elementals
- 7位 Hammer Time
- 8位 Living End
トップ8のデッキリストはこちら
『ニューカペナの街角』実装後に初めて開催されたModern Challengeでしたが、プレイオフには一部を除いて新しいカードを搭載したデッキは見られず、Amulet Titan、Izzet Ragavan、Temur Cascade、Living End、Hammer Timeといった既存のデッキが中心でした。
今大会で優勝を収めたのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した4C Elementalsで、《アルゴスの庇護者、ティタニア》と《月の大魔術師》をメインから搭載しているのが特徴です。
デッキ紹介
4C Elementals
Elementalsといってもエレメンタルの部族に特化しているデッキとは異なります。4C Omnathに《発現する浅瀬》を搭載し、さらに《エラダムリーの呼び声》によって各クリーチャーを状況に応じてサーチしてくるシルバーバレット戦略を搭載したバージョンに仕上がっています。
《月の大魔術師》など特定の戦略に刺さるクリーチャーがメインから採用されているため、多色コントロールが苦戦を強いられていた土地コンボとの相性が緩和されています。
☆注目ポイント
《エラダムリーの呼び声》は主に《孤独》をサーチする手段として使われていますが、このデッキでは《発現する浅瀬》をサーチして積極的にアドバンテージを稼いでいく使い方もできます。《アルゴスの庇護者、ティタニア》や《儚い存在》と組み合わせることで、多大なアドバンテージを稼ぐことが可能です。このようにカードアドバンテージエンジンやサーチ手段が豊富なため、80枚デッキでありながら動きが安定しています。
《エラダムリーの呼び声》を含めると《月の大魔術師》が実質5枚体制なため、TronやAmulet Titanともメインからでも十分に渡り合えるようになっています。《ニッサの誓い》は必要な土地を探し出すほかに、《魂の洞窟》からでもプレインズウォーカーをプレイできるようにしてくれます。
メイン、サイドと合わせてフル搭載されている《忍耐》は、現環境で幅を利かせているLiving Endとのマッチアップで特に役に立ちます。《翻弄する魔道士》は《エラダムリーの呼び声》によってサーチできるコンボ対策で、Living End、Belcherなど特定のキーカードに依存したコンボデッキとのマッチアップで活躍します。禁止改定後の環境ではGrixis Shadowは減少傾向にありますが、《夏の帳》はIzzet Ragavanなどカウンターを多用するデッキとのマッチアップで使えます。
Living End
Living Endは環境を問わず結果を残し続けているデッキです。もう一つの「続唱」デッキであるTemur Cascadeは、コンボが決まった後もサイ・トークンが除去されるため勝ち確定とまではいきませんが、Living Endは相手の場のクリーチャーを一掃しつつ墓地に落ちた「サイクリング」クリーチャーをリアニメイトするので単体除去の効果が薄く、コンボが決まれば相手によってはほぼ勝ちの状態にまで持っていくことができます。
墓地対策が弱点となりますが、「サイクリング」によるドローのおかげでデッキの動きが安定しており、ハンデスとカウンターによる妨害も搭載されているため対策が薄い相手に対しては圧倒的な強さを見せます。
このデッキを使用するにあたって注意したいのは、墓地対策だけでなく「続唱」スペルを無効化する《時を解す者、テフェリー》や《虚空の杯》の2種類のカードです。『神河:輝ける世界』から登場した《巨大な空亀》や伝説の土地サイクルなど「魂力」能力持ちのカードのおかげで、「続唱」デッキ特有の構築の制限を感じさせないほど各種パーマネント対策が充実しています。
☆注目ポイント
メインから採用されている《緻密》は、相手の《忍耐》や《時を解す者、テフェリー》を対策する手段になります。ピッチでプレイすることができるためコンボを保護する手段として使いやすく、特に最近は同型対策としてメインから《忍耐》を採用したリストも散見されるので重要なカードとなります。
X=0で置かれた《虚空の杯》はこのデッキにとっては非常に厄介なものでしたが、《天上都市、大田原》などメインから無理なく入る「魂力」カードのおかげで以前と比べると対処しやすくなりました。
サイドボードに墓地対策の《虚空の力線》が採用されていることからも、同型を意識していたことが分かります。《忍耐》と異なり、《緻密》やカウンター、ハンデスで対処することは不可能で、エンチャントを割るだけでも相手にかなりのリソースを使わせることができるため、同型を意識するならオススメのサイドカードです。
《神聖の力線》はハンデスやBurn対策になるほか、《忍耐》などプレイヤーを対象に取るタイプの墓地対策もカバーすることができます。
Modern Challenge #12414723
安定の多色ミッドレンジ
2022年5月1日
- 1位 4C Blink
- 2位 4C Elementals
- 3位 Rakdos Midrange
- 4位 Yawgmoth Combo
- 5位 Living end
- 6位 《Calibrated Blast》 Combo
- 7位 Yawgmoth Combo
- 8位 Tron
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土曜日に開催されたModern Challengeと同様に、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した多色デッキが結果を残していました。デッキパワーの高さに加えて豊富な除去により、Hammer Timeなどクリーチャーで勝つタイプのデッキに強いことも安定した結果を残し続けている理由の一つです。
最近ではYawgmoth Comboも結果を残しています。このデッキはコンボによる勝ち手段があり、サーチスペルのおかげで安定した動きが可能です。また、「不死」クリーチャーなどブロッカーが多く、各種《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキに強い戦略になっています。
そのほか、比較的レアなデッキである《計算された爆発》コンボも入賞していました。
デッキ紹介
Yawgmoth Combo
Yawgmoth Comboは《夢の巣のルールス》禁止後の環境で有力なデッキとして注目を集めていました。《夢の巣のルールス》の退場によって墓地に対するマークが緩くなり、「不死」クリーチャーが対策されにくくなることと、禁止改定による影響を受けなかったIzzet Ragavanが流行ったことが主な理由でした。
クリーチャーを使ったコンボデッキなので、除去が多くマナクリーチャーを除去できる《レンと六番》を搭載した多色コントロールは苦手なマッチアップとなります。今大会でも多色コントロールが優勝していたことから、最近の立ち位置はやや厳しいものとなっています。
しかし、フェアなゲームプランを実行しつつコンボフィニッシュを狙ったりと多角的に攻めれるのがこのデッキの面白いところなので、クリーチャーベースのミッドレンジコンボが好きな方にオススメです。
☆注目ポイント
コンボだけでなく《飢餓の潮流、グリスト》を活用したミッドレンジ戦略も強力です。《濁浪の執政》など環境の多くの脅威を処理することができ、生成したトークンを《スランの医師、ヨーグモス》でドローに変換することでコンボパーツを引き当てやすくなります。緑のクリーチャーカードであることを利用して、《召喚の調べ》や《異界の進化》といったカードでサーチできるのも見逃せない点です。
《召喚の調べ》と《異界の進化》は、このデッキのキーとなるスペルです。メインから採用されている《忍耐》をサーチできるため、ミッドレンジが苦手とするLiving Endなど墓地を使うデッキに対しても互角以上に渡り合うことができます。
サイドには《安らかなる眠り》や《虚空の力線》などの墓地対策の対策として、《活性の力》や《辺境地の罠外し》といったカードが採られています。《血の芸術家》用にサイドインされることがある《神聖の力線》やHammer Timeにも効果的です。
《屍呆症》は、Living Endなど特定のキーカードに頼ったコンボデッキとのマッチアップで活躍します。相手にトークンを与えてしまうデメリットも、「不死」クリーチャーや《根の壁》などブロッカーとなるクリーチャーを多く搭載したこのデッキにとっては大きな問題ではありません。
《Calibrated Blast》 Combo
最近のモダンは《否定の力》や《孤独》など妨害スペルが強く、直線的なコンボデッキは減少傾向にありますが、そんな中でも過去のモダンを彷彿とさせるコンボデッキを上位で見かけることがあります。
今大会で見事にプレイオフ進出を果たした《Calibrated Blast》 Comboは、対戦相手が予想だにしない角度から瞬殺できるコンボデッキです。
デッキの動きはいたってシンプルで、《計算された爆発》または《混沌の辛苦》から「続唱」によって《計算された爆発》をプレイして《土着のワーム》《引き裂かれし永劫、エムラクール》《終末の影》《ドラコの末裔》を捲って12-15点ダメージを与え、《計算された爆発》を「フラッシュバック」するか《ラムナプの遺跡》などで残りのライフを削って勝利します。直線的なコンボデッキらしく特定のカードに依存したデッキなため、積極的にマリガンをすることが重要になります。
☆注目ポイント
「フラッシュバック」スペルの《計算された爆発》と「回顧」スペルの《混沌の辛苦》は、どちらも墓地から再利用可能なので直線的なコンボデッキでありながらハンデスやカウンターにも耐性があります。また、『ニューカペナの街角』から《終末の影》を獲得したことで15マナの当たりが増えました。
「続唱」から《計算された爆発》を確定でプレイする必要があるため、デッキ構築に制限がかかっており安定性に難があるのがこのデッキの弱点です。しかし、各種「魂力」持ちの土地のおかげで、「続唱」を邪魔することなく置物対策などにアクセスすることができるようになりました。トークンを生成する《反逆のるつぼ、霜剣山》は、相手の残りのライフを削ることに貢献します。
ほかの「続唱」デッキと同様に《罪/罰》などの分割カードを活用することによって、「続唱」の邪魔をすることなく相手に干渉する手段を確保しています。ハンデスやカウンター対策も《ネファリアのアカデミー》や《すべてを護るもの、母聖樹》といったユーティリティー土地を上手く使っています。
MMM Finals 2022 in Tokyo
墓地を使ったコンボがミッドレンジとコントロールの海を泳ぎ切る
2022年5月3日
- 1位 Crab Vine
- 2位 Azorius Control
- 3位 4C Control
- 4位 4C Control
- 5位 Hammer Time
- 6位 4C Control
- 7位 Hammer Time
- 8位 Izzet Ragavan
福井 翔太
Twitter:@MtgBigmagic
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アメリカでは今年に入ってからSCGのイベントなどテーブルトップのイベントが各地で盛り上がっていますが、日本国内でもテーブルトップの大規模なイベントであるMMM Finals 2022 in Tokyoが開催されました。
プレイオフにはMOやSCGなどのイベントと同様に多色ミッドレンジが多く勝ち残っており、その次点でHammer TimeやIzzet Ragavanなどが中心だったようです。
今大会で見事に優勝を収めたのは、墓地を使ったアグレッシブな戦略であるCrab Vineでした。
デッキ紹介
Crab Vine
優勝はCrab Vineを使用した福井 翔太選手でした。プレイオフで現環境のトップメタの一角である4C Controlに2度勝利していたことからも、ミッドレンジが強い環境では良い選択肢の一つであることが分かります。
Crab VineはDredgeのバリエーションで、《面晶体のカニ》や《縫い師への供給者》で《恐血鬼》《復讐蔦》《秘蔵の縫合体》《ナルコメーバ》といったクリーチャーを墓地に落としてから復活させ、早い段階からプレッシャーをかけていきます。墓地にカードを落とす手段に依存しますが、Dredgeとは異なり「発掘」カードに依存せず、《恐血鬼》や《復讐蔦》といった脅威によってよりアグレッシブに攻めることができます。
多色コントロールなどフェアデッキが中心の環境では、デッキ構成が同型とのマッチアップ用にチューンアップされていくため、《虚空の力線》のような特定のデッキに効果的なカードがサイドボードから減少する傾向にあります。サイドボードの墓地対策が薄くなることで、Crab Vineなど墓地を使ったデッキが台頭していくことになります。
☆注目ポイント
クリーチャーが墓地から復活してくるこのデッキでは、墓地の《秘蔵の縫合体》を戦場に戻すことも容易です。《ナルコメーバ》以外に《墓所這い》を墓地からプレイすることでも、《秘蔵の縫合体》の能力を誘発させることができます。《縫い師への供給者》や《秘蔵の縫合体》がゾンビクリーチャーということもあり、《墓所這い》も墓地からプレイしやすくなっています。
《面晶体のカニ》+フェッチランドによって墓地を肥やしていき、その後《縫い師への供給者》や《墓所這い》といったクリーチャーをプレイして複数の《復讐蔦》を墓地から復活させ、相手にプレッシャーをかけていくのが理想の動きになります。
サイドボードには《虚空の力線》がフル搭載されています。そして、相手の《虚空の力線》や《安らかなる眠り》といった墓地対策を処理するために《基盤砕き》もしっかりと採用されています。そのほかはハンデスや除去など中心ですが、墓地に依存しない追加の勝ち手段兼除去としても機能する《飢餓の潮流、グリスト》も見られます。
総括
『ニューカペナの街角』がリリースされてそれほど時間が経っていないこともあり、先週末に開催されたイベントで結果を残していたデッキの多くは、新しいトライオームなど一部を除いた新カード以外は不採用でした。
筆者の『ニューカペナの街角』で好きなカードは《染みついた耽溺》です。Esper ControlやGrixis、Reanimator系のデッキで使えそうな軽量ドロースペルで、カードを捨てる効果も多くの場合メリットになります。
以上、USA Modern Express vol. 75でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!