◆はじめに
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
前回の記事では、モダンのイベントに合わせてモダン環境について解説させていただきました。私もMMM Finals 2022 in Tokyoに参加し、その際には愛機であるアミュレットタイタン…ではなく、リビングエンドを使用しました。残念ながら結果は奮わなかったものの、リビングエンドを使用したことに後悔はありませんし、デッキそのものにも満足しています。
今回は私が練習の過程で得た知見の共有という意味も込めて、リビングエンドのデッキガイドになります。また、リビングエンド対策についても解説していますので、リビングエンドを使う予定がないという方も最後まで読んでいただけると幸いです。
◆リビングエンドとは?
「リビングエンド」とはその名が冠する通り、《死せる生》をキーカードに据えた墓地コンボデッキです。クリーチャーを「サイクリング」や「想起」などで墓地へ送り込み、それらを《死せる生》で一気に戦場に戻して圧倒します。《死せる生》は全体除去と展開を兼ねており、リビングエンドにおいては唱えられればほぼ勝ちというとんでもないカードです。
圧倒的な速度と展開力で、メイン戦においてはほとんどのデッキが対応できず、非常に高い勝率を叩き出せます。しかし、墓地対策には滅法弱いという弱点も抱えています。墓地対策は《大祖始の遺産》や《トーモッドの墓所》のように無色かつ軽量なものが多いため、結果としてあらゆるマッチアップでサイド後に相性が逆転してしまいます。
とはいえ、《悲嘆》《否定の力》による0マナのバックアップで対策カードを弾いた上で、3ターン目に10点以上のクロックを戦場に並べるような”ブンまわり”で押し切るパターンもあります。また、《虚空の杯》のような墓地に触らない対策にはサイクリングで対策の対策を探しに行けるため、いつかは辿り着けるという強みもあります。このブンまわりと対応力こそリビングエンドの強さの秘訣です。
◆サンプルリスト
◆採用カード:メインボード
基本のマナベース
すべて青絡みの土地に統一しています。リビングエンドはデッキの性質上、頻繁に土地1枚でキープします。すべてのサイクリングが青絡みで統一されている以上、その1枚の土地から青マナが出ない場合は自動的にマリガンになってしまいます。
通常、採用されている《森》はそれ単体ではキープできない土地であるため、メイン戦においてはフェッチランドのオプション以外の役割を持ちません。対バーンのようにライフが重要になるマッチアップ以外では不要と判断し、メインには不採用としました。
《天上都市、大田原》
あらゆる対策パーマネントを乗り越えるバウンス能力に加えて、土地として置いた場合はなんとアンタップイン。強すぎます!今回はサイクリングにスペースを渡しているため1枚としていますが、2枚目も視野です。
「サイクリング」カード
固定サイクリング枠です。この16枚については触れないでおきましょう。
《断片無き工作員》《暴力的な突発》
固定続唱枠です。この8枚についても触れないでおきましょう。
《否定の力》
固定呪文枠です。この4枚についても以下略。3枚に減らすパターンもありえますが、マネーパイルなどの環境上位デッキが《対抗呪文》《時を解す者、テフェリー》をメインから採用していることから、それらを乗り越えるためにしっかり4枚採用することをオススメします。
《風呼びのエイヴン》
追加のサイクリング枠です。通常は《森》や《厚かましい借り手》《巨大な空亀》などが採用されますが、それらをすべて廃して追加のサイクリングに当てました。今回紹介するリストは「3~4ターンまでに確実にサイクリングを行う+続唱呪文を唱える」ことを強く意識しており、それに寄与するサイクリングがもっとも重要と判断し、それ以外のオプションはすべて廃しています。
《波起こし》
実質サイクリング枠です。コストは重いですがサイズも効果も強力です。これ1枚で2枚掘れるため、サイド後はサイドカードを探す役割もあります。コストの重さから複数引くと使いづらいデメリットもありますが、それ以上にメリットが大きいと思っており、個人的には4枚を推奨します。
《悲嘆》
リビングエンドにおける最強クリーチャーです。《悲嘆》の存在がリビングエンドの強さを支えています。マナを支払わずに前方確認が可能かつ、《死せる生》で戦場に戻ってきた際にも追撃の手札破壊で逆転の芽を摘みます。《意思切る者》とセットで相手を詰ます動きが理想です。
《死せる生》
リビングエンドのキーカードです。3枚か4枚かは悩ましいところですが、個人的には4枚目を取ったほうが良いと考えています。《悲嘆》のピッチコストに当てられることから1-2枚引いてしまうこと自体のデメリットは小さいですし、逆に打ち消しの入った相手には《死せる生》の弾数が重要になるため、3枚と4枚の差は大きいです。
相手の終了ステップに《暴力的な突発》から仕掛けて、それを打ち消された返しの自分のターンに《断片無き工作員》でさらに仕掛けるという展開は頻出します。青くない相手とのマッチアップではサイド後に減らせばよく、メイン戦は自身のデッキを強く使うことを意識しての4枚を推します。
◆採用カード:サイドボード
《死亡/退場》
1マナだけど4マナ(?)の除去です。《ダウスィーの虚空歩き》や《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》のようなヘイトクリーチャー用の除去として採用しています。一応、バーンやイゼット果敢のような直接ライフを詰めるデッキに対して序盤の攻勢を抑える役割としても有効です。
《神秘の論争》
3マナだけど1マナ(?)の打ち消しで、続唱デッキのサイドのお供です。青いデッキ全般に対して攻めのバックアップとして気軽にサイドインします。
《忍耐》
墓地対策で、主にミラーマッチ用です。ピッチコストになる緑のカードが少ないため、意外と使い勝手は悪いです。
《緻密》
《忍耐》対策です。0マナには0マナで対抗します。ほかにも墓地対策されたときに《秘法の管理者》とともに通常プレイで殴りきる場合(通称リミテッドモード)でも活躍します。
《基盤砕き》
《虚空の杯》や《虚空の力線》といった置き物破壊用です。《鋳塊かじり》とは範囲を取るか軽さを取るかで比較になります。《鋳塊かじり》は《大祖始の遺産》などの墓地対策を割りながら、そのターン中に《死せる生》で仕掛ける際にその軽さが活きます。《基盤砕き》は若干重いものの、《安らかなる眠り》や《虚空の力線》といったエンチャントの墓地対策にも対抗できます。
今回、紹介するリストは《基盤砕き》に寄せています。これは、対策されるサイド後はゲームが長引きやすいため、1マナという軽さよりも範囲の広さを取ったほうが良いと判断したためです。
《耐え抜くもの、母聖樹》
カジュアルに使える置き物対策です。相手が対策の置き物を使ってこない場合は土地として置けるため、腐りづらくリスクが小さいです。メインでは対策の対策が必要がない・緑マナ単色は初動の土地としてカウントできないため、サイド後は強いですがメイン戦では不要と判断してサイドに置いています。
《森》
《血染めの月》《月の大魔術師》対策です。ほかにも痛くない土地としてバーンにサイドインします。これも《耐え抜くもの、母聖樹》と同様の理由でサイドに置いています。
◆不採用カード
《厚かましい借り手》
2マナ以下のカードを採用できないため、「当事者」カードとリビングエンドのデッキ構造は相性が良いですが、このカード自体の相性はイマイチです。基本的には《死せる生》を絡めた大量展開を狙うため、カスケードクラッシュとは異なり、雑に殴りきる展開はほとんど起きません。
そのため、本当にただの2マナのバウンスとしての運用になりがちです。2マナのバウンスがプレイアブルかどうかですが、流石にそれだけでは…と思い、不採用としました。サイド後の対策カードとの戦いには強いため、そういった面を強く意識するのであれば採用も視野に入ります。
《巨大な空亀》
《厚かましい借り手》と近い役割を持ちますが、自身が墓地に送られる都合上、《厚かましい借り手》よりもデッキ構造に合っています。しかし、置き物は戻せないことに加えて、クリーチャーは《死せる生》で流せることから、《巨大な空亀》で時間を稼ぐよりもしっかりサイクリングして続唱呪文を探し、適切なタイミングで《死せる生》を唱えることを意識したほうがよいと判断しました。そのため、この枠はすべて追加のサイクリングとし、《巨大な空亀》は不採用としました。
《虚空の力線》《神聖の力線》
サイド後は《否定の力》や《緻密》《悲嘆》といったバックアップに手札を使う展開が多く、《虚空の力線》などを求めてハードマリガンするのは好ましくないです。
また、サイド後は相手を対策したところで、相手からの対策(墓地対策、続唱対策)を乗り越える必要もあるので、《虚空の力線》などで試合を遅らせてもそれだけでは勝てません。加えて、道中のサイクリングで引く可能性も高く、それを素で唱えることは難しいことから、リビングエンドと力線の相性は悪いです。そのため、今回は不採用としています。
《活性の力》
緑のカードが少なく、ピッチで切るのが難しいため不採用としました。素で唱えられる構造であれば悪くはないですが、リビングエンドは土地が少なく、4マナのカードを適正ターンで唱えることが難しいです。また、続唱対策の《虚空の鏡》に対してピッチで唱えられない点も気になります。総じてメリットよりもデメリットが目立つため、今回は採用を見送りました。
しかし、アーティファクト破壊を《基盤砕き》に寄せすぎると緑マナがないときに《血染めの月》を割れないデメリットもあるため、この辺りは何を意識するか次第になると思います。ハンマータイムのようにアーティファクトを利用しつつ速度が重要なマッチアップでは重宝するため、メタゲーム次第で採用するかどうかを決めるのがよいでしょう。
◆プレイ指針
本項ではプレイ指針について解説します。リビングエンドは「①墓地にクリーチャーを貯める」「②続唱呪文を唱える」という2ステップでデッキが構成されています。それ以外の行動はほとんどありません。なので、それらを適切に行えるかどうかを意識します。
どのサイクリングから捨てる?
青単色の1マナが最優先です。基本的には《縞カワヘビ》《風呼びのエイヴン》がもっとも優先順位が高いです。《秘法の管理者》は素でプレイすることも多く、またほかのサイクリングクリーチャーに比べるとサイズも小さいので、前述のクリーチャーよりは優先順位は低くなります。
《意思切る者》《通りの悪霊》などの黒絡みのサイクリングは《悲嘆》のコストに使う可能性があるので、より優先順位は低くなります。特に《通りの悪霊》はマナを払わずにサイクリング可能なため、基本的には一番最後にサイクリングしましょう。
《波起こし》は基本的に後ろにずらしたほうが良いです。サイクリングではなく2枚から選べるため、不確定な通常サイクリングを行った後に足りないカードを探す使い方が理想です。しかし、2マナということもあってほかのサイクリングとのくっつきが悪いため、重なった場合や2ターン目などは優先して掃いたほうがよいでしょう。
▼まとめると?
(《波起こし》>)《縞カワヘビ》>《風呼びのエイヴン》>《秘法の管理者》>《意思切る者》>《通りの悪霊》(>《波起こし》)
(※《波起こし》は状況次第です)
いつサイクリングする?
いくつか例外がありますが、基本的には相手ターンの終了ステップで問題ありません。
サイド後の先手など、《悲嘆》で《大祖始の遺産》のような初手に置ける対策カードを抜ける可能性があるため、《悲嘆》or「《悲嘆》のコストを引いた際に《悲嘆》を唱えられる場合」は自分のメイン・フェイズでサイクリングします。
4マナ以上あるタイミングで、《断片無き工作員》が引けたら仕掛けることが確定している場合もメイン・フェイズにサイクリングします。また、相手の《虚空の杯》などに対して《否定の力》or「《否定の力》のコストを引いた際に《否定の力》を唱えられる場合」は相手の行動に対応してサイクリングします。
《悲嘆》はいつ唱える?
メイン戦とサイド後で若干考え方が異なります。メイン戦は初手に唱えず、相手に合わせて2ターン目以降に切るパターンが多いです。アゾリウスコントロールやマネーパイルのような《時を解す者、テフェリー》を使うデッキには《時を解す者、テフェリー》が唱えられる直前のターン、イゼットラガバンのような構えるデッキは仕掛けるターンまで温存するのがよいでしょう。
サイド後は先手なら初手で唱えたいです。《大祖始の遺産》《魂標ランタン》のような軽い墓地対策を抜けるチャンスです。後手の場合は、メイン戦と同じようなタイミングを意識します。もちろん、相手が初手にタップインやフェッチランドだけを置いてエンドしてきた場合は、切って先手と同じようなイメージで対策カードを抜きに行くのがよいです。
また、《安らかなる眠り》《虚空の鏡》《乱動する渦》のような2マナの対策カードが採用されている可能性が高い相手には後手1ターン目で唱えましょう。この辺りは相手のデッキの理解度が求められるため、流行りのデッキの構成をチェックしておきましょう。
「続唱」呪文を唱えるタイミングは?
主に以下の4パターンです。
(1)自分ターンのメイン・フェイズ
(2)相手ターンのアップキープ・ステップ
(3)相手ターンのドロー・ステップ
(4)相手ターンの終了ステップ
《断片無き工作員》の場合はクリーチャーなので選択肢はありません。(1)自分ターンのメイン・フェイズだけです。しかし、《暴力的な突発》はインスタントなので、任意のタイミングで仕掛けることが可能です。とはいえ、相手がタップアウトの場合は《暴力的な突発》であっても(1)自分ターンのメイン・フェイズで仕掛けるのがよいでしょう。
もっとも多いのが(2)相手ターンのアップキープ・ステップです。相手ターンであれば《否定の力》でのバックアップが可能なので、《悲嘆》で相手の手札を確認して打ち消しなどのバックアップが1枚以下なら相手ターンのアップキープ・ステップに仕掛けるのがベストです。相手ターンのドロー・ステップでは打ち消し呪文を引かれてしまう可能性があるので、仕掛けることが確定しているのであればアップキープに《暴力的な突発》を唱えましょう。
(3)は打ち消しを含まないデッキに対して有効です。ドロー後に《悲嘆》で手札破壊を行えるため、すべてを把握した上で最大の脅威を取り除くことができます。(4)は打ち消しを含む相手に対して、こちらから仕掛ける予定はなかったが、相手がメイン・フェイズ中に動いてタップアウトした場合に仕掛けます。
ほかにも《死せる生》がデッキに残り1枚のときに自分ターンのアップキープ・ステップ(ドロー前)に唱えるパターンもなどもありえますが、基本的には上記の4パターンを意識するとよいでしょう。
フェッチランドの色は?
《霧深い雨林》《沸騰する小湖》で持ってくる土地は手札の続唱呪文に合わせて考えます。《断片無き工作員》の場合、《島》《天上都市、大田原》と引いても唱えられるように《繁殖池》から持ってきましょう。《暴力的な突発》の場合、赤マナが必要になるので《蒸気孔》を持ってきましょう。手札で赤/青/緑のすべてがそろっている場合は痛くない《島》にします。
◆マリガン判断
本項ではマリガン判断について解説します。キープ/マリガンは以下の3点を満たすかどうかで判断します。
1. 土地:1枚~3枚
土地は基本的に4枚目以降は不要なので、3枚以下が理想です。逆に4枚以上の場合はマリガンを検討します。土地はサイクリングの過程で引き込めるため、サイクリングカードが十分にあるのであれば土地が1枚でもキープします。例外として、《通りの悪霊》が3枚以上あるのであれば、土地が0枚でもキープしてもよいでしょう。
2. 「続唱」呪文:0~2枚
続唱呪文である《断片無き工作員》《暴力的な突発》はサイクリングの過程でいずれは引き込めるため、初手に必ずしも必要というわけではありません。むしろ重なりすぎたほうが動きが悪くなるため、3枚以上の場合はマリガンを検討します。
3. 「サイクリング」:2枚~
ここがもっとも重要になります。サイクリングからの土地やサイクリングは受かりますが、続唱や土地からサイクリングは受かりません。サイクリングが1枚以下の手札は問答無用でマリガンしましょう。
以下、サンプルとしていくつかのCaseでマリガン判断を考えます。これらはすべてメイン戦を前提としています。サイド後は相手に合わせて対策の対策の有無などと組み合わせて考えてください。
Case 1
キープします。土地が2枚、続唱が1枚、サイクリングが3枚で《悲嘆》もあるという理想的な初手です。相手の妨害さえなければ楽に3ターンで勝利できるでしょう。
Case 2
キープします。続唱呪文がないですが、残りの手札はすべてサイクリングカードであるため、十分にキープ基準を満たしているでしょう。サイクリングから続唱呪文は探せるため、サイクリングが多めの手札はキープ寄りで考えます。
Case 3
マリガンします。《悲嘆》とそのコストがあり、サイクリングも1枚あるのでキープしたくなる気持ちは分かります。しかし、この手札では続唱クリーチャーを1枚引くだけでは《死せる生》を唱えても大した戦場になりません。そのため、実質受け入れは追加のサイクリングクリーチャーのみと、意外と受け入れはせまいです。追加の土地はすべてハズレということも加味すると、マリガンしたほうが良いでしょう。
Case 4
キープします。土地が1枚しかありませんが、2ターン目までに3枚のカードをサイクリングできるため、十分に土地を探せます。続唱呪文も引いており、勝利期待値は非常に高いです。土地からサイクリングは受かりませんが、サイクリングから土地は受かります。魔法の言葉です。サイクリングを信じましょう。
Case 5
マリガンします。[Case 4]と近い手札ではありますが、2ターン目までにサイクリングできるカードが1枚のみのため、土地かサイクリングのどちらかが止まる可能性が高いです。1マナ以下のサイクリングが2枚以上あれば考慮に値しますが、土地が1枚以下かつサイクリングも1枚以下の場合はマリガンしたほうが良いでしょう。
◆サイド方針
本項ではサイド方針について解説します。モダンには膨大なアーキタイプが存在するため、アーキタイプ毎にサイドボーディングを紹介するのではなく、サイドアウトの方針について解説します。
サイドインするカードは見た目の通りの役割で、「◆採用カード解説」で解説した通りです。例外としてリビングエンドのミラーマッチに関しては具体的なIn/Outとプランについて解説します。
サイドアウトするカードについて
《死せる生》
打ち消しを含まないマッチアップでは《悲嘆》を素早く唱える必要もなく、何度も《死せる生》で仕掛けることもないので減らします。
《断片無き工作員》
リビングエンドはカスケードクラッシュと異なり、続唱呪文を複数回唱えることが少ないため、続唱呪文自体が重なるのはどちらかというとデメリットです。
対策が増えて戦長期になりがちなサイド後は、素早く続唱で仕掛けるというよりは、事前に露払いした上でバックアップと合わせて《死せる生》を通す戦い方が多くなります。そのため、長期戦になりがちなアゾリウスコントロールなどとのマッチアップでは《断片無き工作員》は2枚ほど減らしたほうがよいでしょう。
《通りの悪霊》
バーンや果敢など、ライフを詰めてくる相手には減らします。
《風呼びのエイヴン》
一番弱いサイクリングなので、サイドインしたいカードはあるが抜きたいカードがない場合はこれを抜くのがオススメです。それでも枚数が合わない場合は《波起こし》《縞カワヘビ》《通りの悪霊》から少しずつ減らしましょう。
《否定の力》
打ち消したい対象が少ない・打ち消し合戦にならない・手札破壊を行ってくる相手には弱いので減らします。
《沸騰する小湖》
《耐え抜くもの、母聖樹》を入れる際には土地枚数を調整する意味で減らします。青カウントが減る点は気になるかもしれませんが、サイド後は対策カードを乗り越える必要があり、速攻で仕掛ける展開は少なくなるため、多少土地が詰まっても許容できます。
リビングエンドのミラーマッチについて
リビングエンドを敬遠する理由の1つとして「ミラーマッチが良く分からない」という声をよく耳にします。いつ仕掛ければいいのか・そもそも仕掛けることが正しいのかなどのゲームプランの立て方がイマイチ分からないという方に向けて、私の行っているIn/Outと考え方を紹介します。これが必ずしも正しい!というわけではないですが、考え方の1つとして参考にしてください。
vs. ミラーマッチ
(※サイドインする置き物破壊は《虚空の力線》用。入っていないと確信できる場合は不要です。《基盤砕き》を入れない場合は《否定の力》を1枚だけ抜きます。同様に《耐え抜くもの、母聖樹》を入れない場合は《沸騰する小湖》は抜きません)
まず大前提として相手より先に《死せる生》を唱えないようにします。お互いに《死せる生》を前提とした構成になっているため、《死せる生》は唱えた側が損をします。そもそも《死せる生》を強く使おうとすると相手の墓地をリセットする《忍耐》まで必要になるため、相手の《悲嘆》の妨害を受けた上でそれらをそろえるのは非常に要求値が高く、非現実的です。
そのため、自分からは仕掛けないように立ち回ります。相手に付き合う形でサイクリングだけ行って墓地を貯めるのみに留めます。相手から《死せる生》を唱えられる可能性はあるため、それを返す用に《死せる生》は少し残し、インスタントタイミングで返せない《断片無き工作員》はすべてサイドアウトします。
基本的には《秘法の管理者》《緻密》によるリミテッドモードを狙います。なので、《秘法の管理者》は絶対にサイクリングしません。素出ししましょう。また、リミテッドモードを完遂するために相手の《秘法の管理者》《緻密》を打ち消せる《神秘の論争》もサイドインします。
ゲーム展開はお互いにリミテッドモードを狙う第1段階、それに耐えられなくなった側が《死せる生》による展開を狙う第2段階、それを再び《死せる生》で返す第3段階と進み、途中からはこの第2段階と第3段階を行き来するようになります。このとき、お互いの墓地と戦場が交互に入れ替わるため、墓地と戦場のバランスが重要になります。墓地だけが強く、戦場が弱い場合はこれが反対になった一瞬で押し込まれてしまいます。
なので、ある程度の墓地を貯めた後は無駄にサイクリングはせず、手札に貯め込むことも必要になります。《死せる生》で戦場がリセットされた直後、こちらがそれを切り返す《死せる生》を唱えるタイミングで一気にサイクリングして墓地を肥やす、というプレイが重要になります。
戦場と墓地と手札のバランスを管理しながら戦うため、複雑なゲーム模様にはなります。土地が止まっても即死ということも少なく、ゲームは長引きがちですが、決着がつくときは一瞬です。
ミラーマッチの戦い方が分からない・自信がないという方は、上記の考え方を参考に再度挑戦してみてください。
◆TIPS
本項ではリビングエンドを扱うにあたってのTIPSについて紹介します。
《死せる生》関連
続唱の前に墓地のクリーチャーを増やすためにサイクリングしてしまうと、サイクリングで《死せる生》を引いてしまう可能性があります。《死せる生》が2枚以上残っているなら《悲嘆》のコスト用という意味でも悪くないですが、残り1枚になると続唱呪文が不発になる可能性があるため、絶対に引くわけにはいきません。
続唱することが確定している場合、先に続唱呪文から《死せる生》を唱えておき、《死せる生》がスタック上に乗っているタイミングでサイクリングを行うのがよいでしょう。そうすればサイクリングで《死せる生》を引くことがないため安全です。
《断片無き工作員》《暴力的な突発》関連
続唱呪文から捲れた《死せる生》は必ずしも唱える必要はありません。頭数を増やすためだけに《断片無き工作員》を唱えたり、戦闘ダメージを上げるためだけに《暴力的な突発》を唱えることも可能です。
《秘法の管理者》関連
占術はサイクリング以外にも手札破壊などでも誘発します。リミテッドモードで殴っているときは欲しいカードが限られるため、この占術は非常に重要になります。「インクの染み」と揶揄されることもありますが、誘発は忘れずしっかり解決しましょう。
《緻密》関連
対象がなくても空打ち可能です。あまり意味がないように思えますが、0マナで自身を墓地に送り込めるので、《死せる生》を唱えることが確定している場合は一考の余地があります。
色のないカードを唱える
今回、紹介したリストは黒マナが出る土地を採用していないため、基本的に黒のカードをプレイできません。しかし、相手に《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を置かれた場合はそれらがプレイ可能になります。特に《悲嘆》の通常プレイはかなり強力なので、できる・できないは大きな差になります。頻発する事象ではないですが、相手が置いてきたときには見逃さないようにしましょう。
似たような例で《蒸気孔》《尖塔断の運河》しかないときに、相手の場に《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》が置かれていれば《暴力的な突発》が唱えられます。これも滅多に起きないとは思いますが、覚えていれば1000回に1回の勝ちが拾えるかもしれません。
◆リビングエンド対策
本項ではリビングエンド対策について紹介します。リビングエンドを使用する予定がない方にとっても、どのようにしてリビングエンドを攻略するかのヒントになれば幸いです。
《虚空の力線》
墓地対策その1。ゲーム開始時から設置され、こちらだけ全追放でしかも0マナ。《虚空の力線》を想定し始めると全デッキに対して《基盤砕き》をサイドインしなければならないため、基本的には無視します。その状態で出てくると大体詰みます。要するにめちゃくちゃキツイです。
《安らかなる眠り》
墓地対策その2。お互いの墓地が全追放なので、一応《死せる生》を全体除去として使うことはできます。が、《安らかなる眠り》を使うようなデッキはコントロールデッキが多いので、あまり関係ないことが多いです。要するにかなりキツイです。
《大祖始の遺産》《トーモッドの墓所》《魂標ランタン》《虚無の呪文爆弾》
墓地対策その3。単発の墓地対策なので、強引に突破が可能な点で[その1]や[その2]に比べるとだいぶんましです。が、結局は1回目の《死せる生》のときにこれらを使ってもらえるレベルで墓地を貯めて、かつ使ってもらった後に再び墓地を貯める必要があるため、乗り越えなければいけないハードルは高いです。つまり、まあまあキツイです。
一応、《暴力的な突発》であれば「《基盤砕き》で墓地対策を対象に取る」→「墓地対策を起動される」→「スタックで《暴力的な突発》からの《死せる生》」と墓地対策の上から仕掛けられるパターンも存在します。覚えておきましょう。
《ダウスィーの虚空歩き》
墓地対策その4。単なる墓地対策に留まらず、こちらのカードを再利用してきます。《波起こし》のようなデカブツになるだけならまだよいのですが、《死せる生》を使いまわされるのが最悪です。こちらのクリーチャーが永遠に定着しなくなるため、それだけで詰みかねません。
《ダウスィーの虚空歩き》を使う側は召喚酔いが解けても攻撃させずに常に立たせておき、相手の《死せる生》に対応して起動できる状態にしておきましょう。
《時の支配者、テフェリー》
続唱対策その1。最強です。普通に使っても強力なパーマネントですが、続唱対策としても最強クラスの強さです。対処できなければほぼ負けです。リビングエンド側も血眼になって《悲嘆》《否定の力》《神秘の論争》で対応してきます。
《虚空の杯》《虚空の鏡》
続唱対策その2。効かないわけではないですが、突破したときに墓地にクリーチャーが残っていればそのまま《死せる生》に繋がるため、墓地対策に比べるとまだ対応できるレベルです。
《エメリアのアルコン》《弁論の幻霊》
続唱対策その3。1ターンに1度の呪文制限が掛かると、続唱からの《死せる生》が成立しなくなるため詰みます。これらを考えると《厚かましい借り手》《巨大な空亀》が必要な気もしますが、メタゲーム上にこれらのカードを採用するデッキが少ない限りはいないものとして無視しています(…)。
《屍呆症》
《死せる生》を抜けばほぼ勝ちです。ただし、3マナということもあって有効なターンは限られているので過信は禁物です。後手の場合は間に合わないのでサイドインしないほうがよいでしょう。
《狼狽の嵐》
打ち消し合戦では最強の打ち消し呪文です。《否定の力》をバックアップに構えていても乗り越えられてしまいます。ただ、これ単体ではいつかは《悲嘆》の上から仕掛けられてしまうため、素早いクロックかほかの対策との併用が求められます。
クリーチャーを墓地に送る
強力なクリーチャーを墓地に送り込むことで、実質《死せる生》の対策にもなります。あえてカードをプレイせずクリンナップ・ステップでカードを捨てたり、《飢餓の潮流、グリスト》や《激情》で自爆させたりなどなど。《献身のドルイド》や《桜族の長老》など、自前で墓地に送れるカードもあります。方法はいろいろあるので、自分のデッキでは何ができるかを把握しておきましょう。
ただ、適当にクリーチャーを墓地に送っても、単純なサイズなどはそれを前提としているリビングエンド側に分があります。なので、その土俵で戦っても勝ち目がない場合は下手にクリンナップ・ステップを利用するより、普通に戦ったほうがよい場合もありえます。
《原始のタイタン》《耕作する巨躯》《創造の座、オムナス》のようにマナ差をすぐに埋めてくれる、《残虐の執政官》のように単体での完走が見込めるクリーチャーが理想です。それらを利用したデッキは、積極的にクリンナップ・ステップでカードを捨てましょう(例:アミュレットタイタン、エスパーリアニメイト)。
◆おわりに
以上でリビングエンドのデッキガイドは終了になります。
私自身、リビングエンドを使い始めるまでは「リビングエンドってサイクリングして続唱するだけでしょ?」と思っていました。たしかにそれだけで終わってしまう、単調なゲーム展開がまったくないわけではありません。しかし、実際に使ってみると意外と奥が深く、なかなか飽きないデッキで非常に楽しく練習に取り組めました。
本記事を通してリビングエンドに興味を持つキッカケになる、またリビングエンドを扱う人の手助けになれば幸いです。
増田 勝仁 (Twitter)