スタンダード情報局 vol.84 -厄介なカードを《かき消し》て-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回は『ニューカペナ・チャンピオンシップ』の結果を振り返りました。グリクシス吸血鬼やナヤミッドレンジなど新しいデッキが生まれたことでメタゲームは変動し、スタンダードはますます盛り上がりを見せています。

今回は2年ぶりのテーブルトップでの公式イベントである『日本選手権2022 -Tabletop Returns-』の大会結果を振り返っていきます。

先週末の注目トピックは?

『ニューカペナの街角』リリースから一月経過し、この環境の総決算ともいえる公式イベント『日本選手権2022』が開催されました。前週の『ニューカペナ・チャンピオンシップ』の影響は色濃く、グリクシス吸血鬼とティムールコントロールが増加しています。

目まぐるしくメタゲームが変動しているスタンダードですが、実はアーキタイプの垣根を越えて使われ続けているカードがあります。『日本選手権2022』のトップ16までのデッキを確認したところ、ほとんどのデッキに《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》のいずれかが採用されていました。

婚礼の発表鏡割りの寓話

これらのエンチャントの共通点は戦場に出た後に対処されても損をしない点と、経過ターンとともに脅威を増していくため放置することを許さない点にあります。出されたら最後、指をくわえて死を待つよりほかはないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。スタンダードのカードプールにはカードアドバンテージの観点からも損をしない対処手段が見つかっています。そこで今回はスタンダードの攻防のカギとなる3ターン目のパーマネント、この切り返し方を見ていきます。

対策その1:プレイされる前に対処する

強迫侮辱罠を探す

ひとつ目の対策は手札破壊でプレイされる前に捨てさせてしまう攻めの対処法です。幸いにしてスタンダードには《強迫》《侮辱》《罠を探す》といった軽量の手札破壊が揃っています。特に《強迫》はその軽さからほかのカードとの兼ね合いもよく、自身の展開を阻害しません。

副次効果として手札確認できるのも後のゲーム展開を考えるうえで大きなメリットとなります。

対策その2:戦場に出る前に対処する

ジュワー島の撹乱かき消し呪文貫き無効

もうひとつの対策は打ち消し呪文を構えてプレイされたとしても着地を未然に防ぐ守りの対処法です。後手でも対処することを考えると2マナ以下であることが必須。《ジュワー島の撹乱》《かき消し》はエンチャントに限らず、《策謀の予見者、ラフィーン》などほかのカードに対しても効果があります。

対して《呪文貫き》《無効》は1マナと軽く、打ち消した際のテンポ面で大きなリターンが期待できます。《強迫》と同じく展開と妨害の両立が可能なのです。ただし、効果範囲が狭く、場合によっては構えていた分だけマナを損してしまう危険性も持ち合わせています。

上記以外にも損を承知で《消失の詩句》を使う力技もありますが、できることなら効率的に対処したいところ。しばらくの間はこれらのエンチャントへの対策は必要不可欠となります。

前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。

日本選手権2022 -Tabletop Returns-

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 亀崎 頌 オルゾフミッドレンジ
準優勝 棚橋 雅康 イゼットコントロール
トップ4 石川 剣治 エスパーミッドレンジ
トップ4 小林 亮介 ジャンドミッドレンジ
トップ8 田中 博範 グリクシスコントロール
トップ8 藤原 瑞季 イゼットドラゴン
トップ8 堀江 将司 グリクシス吸血鬼
トップ8 山口 弘太郎 エスパーミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者237名で開催された日本選手権2022 -Tabletop Returns-を優勝したのは亀崎 頌選手。3色ミッドレンジが増加傾向にある環境下でオルゾフミッドレンジを使用しての優勝となりました。

鏡割りの寓話過充電縫合体

田中 博範選手が使用したグリクシスコントロールは呪文主体のコントロールデッキですが、一風変わったロックコンボが内蔵されています。《鏡割りの寓話》が変身を果たせば準備完了。相手の呪文に応じて《過充電縫合体》をプレイし、コピーを生成&「濫用」して打ち消すだけ。わずか1マナであらゆるカードに対処してくれます。ミッドレンジ全盛期ということもあり、ハマると抜け出すのは困難を極めます。

幽体の敵対者風変わりなペット

目新しいデッキばかりに目がいってしまいますが、エスパーミッドレンジも進化を遂げていました。現環境には着地した瞬間にゲームの優勢を大きくかえるカードが数多く存在しています。《黄金架のドラゴン》《暁冠の日向》《蜘蛛の女王、ロルス》はその最たる例であり、打ち消し呪文などを構えて動きたいところです。

そこで目を付けたのはインスタントタイミングで戦場へ出るクリーチャーです。《幽体の敵対者》《風変わりなペット》は打ち消し呪文と相性がよく、隙を作らずにダメージクロックを形成できます。仮に対戦相手が動けば打ち消し呪文を、警戒して動かなければクロックをといった風に、両面の構えが可能になっています。

メタゲーム

デッキタイプ 1日目 2日目
エスパーミッドレンジ 66 19
グリクシス吸血鬼 26 10
ジャンドミッドレンジ 23 4
ティムールコントロール 22 8
ナヤルーン 12 1
ジェスカイオパス 11 4
ジェスカイストーム 8 2
イゼットドラゴン 7 1
白単アグロ 6 1
ナヤミッドレンジ 6 1
緑単アグロ 5 1
ボロスアグロ 5 1
オルゾフミッドレンジ 4 2
その他 36 9
合計 237 64

頂点こそ変化はありませんでしたが、チャンピオンシップと比べてナヤルーンとストームは大きく後退しています。押すばかりのミッドレンジ環境から軽量のインスタントを用いて捌けるコントロールが増えたことで、クリーチャーをベースにしたワンショット系コンボは不利な立場へと押し込まれてしまったのです。

トップ8デッキリストはこちら

大会放送リンク:1日目/2日目

オルゾフミッドレンジ

並み居るミッドレンジ対決を制したのはまさかの2色デッキ、オルゾフミッドレンジでした。《光輝王の野心家》から始まる軽量クロックを除去や《傑士の神、レーデイン》でサポートし、打ち消し呪文の代わりにプレインズウォーカーで蓋をします。

白黒ベースのミッドレンジといえばメタゲームのトップをひた走るエスパーを思いつきますが、《策謀の予見者、ラフィーン》を採用しない利点はどこにあるのでしょうか?

皇国の地、永岩城見捨てられたぬかるみ、竹沼

当たり前のことですが、2色と3色の違いはマナベースの強さ(安定性)にあります。マナベースに余裕が生まれたことで、土地の引きすぎを緩和してくれる能力付きの土地が多めに採用されています。ダメージソースとなるクリーチャー化土地以外では、《皇国の地、永岩城》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》があげられます。前者は戦闘限定ですが除去であり、「魂力」であるため打ち消される心配がありません。《黄金架のドラゴン》を対象にとっても宝物トークンが生成されないのもグッド。

《傑士の神、レーデイン》《ヘンリカ・ダムナティ》などのシステムクリーチャーに加えて3種類のプレインズウォーカーがおり、消耗戦では《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の対象に困りません。仮に《強迫》されたとしても土地であるため手札に残り、対戦相手は再プレイされるカードを指をくわえて眺めるだけです。

そのうえで基本土地が8枚も採用されているため、《廃墟の地》《浄化の野火》をプレイされても基本土地が尽きることはありません

シルバークイルの口封じ

《シルバークイルの口封じ》《陰謀団式療法》と同じくプレイヤーの練度によって強さが変化するカード。2マナパワー3とクロックとしても申し分なく、トリガーを気にするあまり対処に時間を要してはライフが持ちません。自身を対処する除去や次のターンにプレイされるであろうパーマネントを指定するのがオススメです。

華やいだエルズペス

《放浪皇》《蜘蛛の女王、ロルス》に混じって新顔である《華やいだエルズペス》が採用されています。消耗戦やミッドレンジゲームで強く、保護付きのパーマネントを展開できます。

パーマネントを出す効果ばかりに注目が集まりますが、[+1]ではボードを強化できます。ジャンド相手には巨大な《光輝王の野心家》を飛ばして上からダメージを稼いだり、競ったライフレースでは警戒や魂絆を付与して攻防一体の存在を作り上げてくれます。

強迫侮辱断割

サイドボードには現在のメタゲームを反映したカードがずらりと並びます。《強迫》《侮辱》《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》などを狙い撃つ攻めの妨害カード。先にプレイできれば《シルバークイルの口封じ》の指定にも役立ちます。《強迫》はその軽さを生かして本命となるカードを守るための露払いとしても最適。相手の打ち消し呪文をかいくぐって《婚礼の発表》を着地させましょう。

目を引くカードとしては《断割》があげられます。《消失の詩句》と似た効果範囲ですが、こちらは《漆月魁渡》《黒き誓約、オブ・ニクシリス》といった多色のプレインズウォーカーに加えて、《勢団の銀行破り》《未認可霊柩車》まで処理してくれます。いずれもロングゲームで存在感が増すカードであり、放置してはおけないのです。

ティムールコントロール

トップ16に入賞したAkaike Yo選手が使用したのは『ニューカペナ・チャンピオンシップ』で話題となったティムールコントロール。先ほどオルゾフミッドレンジとうって変わり、受動的なさばきを戦略に据えます。打ち消し呪文で相手の呪文をさばき、《鏡割りの寓話》《ガラゼス・プリズマリ》《黄金架のドラゴン》へと繋げて強引に攻防を入れ替えます。イゼットに軸足を置いた干渉手段満載のデッキですが、最終的に打ち消し呪文ではなく《産業のタイタン》のような制圧力の高いパーマネントによってゲームに幕を降ろします

かき消し

新顔の《かき消し》はカードタイプを選ばないため現環境ではもっとも信頼のおける打ち消し呪文。偉大なる先輩である《ジュワー島の撹乱》の陰に隠れて警戒されにくく、デッキ全体が重めのミッドレンジによく刺さります

茨橋の追跡者

2マナの打ち消し呪文を厚めに取ったところで、3ターン目に攻勢へ転じるカードが欲しいところ。《鏡割りの寓話》に加えて、《茨橋の追跡者》が採用されています。1枚でカード2枚分となる単体除去に強い仕様でありながらスタッツも申し分なく、クリーチャー同士のぶつかり合いでも引けを取りません

忘れてはならないのが警戒の二文字です。最近のメタゲームを考えるうえで無視できないカードといえば《放浪皇》の存在。ノーガードで飛び込めばライフを詰めたい気持ちを逆手に取られて処理されてしまいますが、《茨橋の追跡者》は違います。何度攻撃へ向かえどタップ無用のため、《放浪皇》で追放される心配はありません。

揺らぐ信仰の呪い未認可霊柩車

《揺らぐ信仰の呪い》は1ターンに複数枚の呪文を唱えるとその分だけダメージが入るストームをメタったカード。2マナと軽いこともあり、対処手段はかなり限定されます。

《未認可霊柩車》は緩めの墓地対策ですが、ゲームが長引けば長引くほど効果が高まっていきます。たとえば《しつこい負け犬》《死体鑑定士》などのアドバンテージカードを封じ、《溺神の信奉者、リーア》を使った戦略自体を否定してしまいます。繰り返し使うことで悠々と火力の射程圏外となってしまいます。最近では《ドラゴンの火》に押されて採用率低めの《削剥》ですが、ロングレンジを想定するなら入れ替えるのも手かもしれません。

その他の大会結果

Standard Challenge #12422661

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Jaberwocki ジェスカイオパス
準優勝 Albimtg ティムールコントロール
トップ4 O_danielakos ジェスカイオパス
トップ4 rastaf ジェスカイストーム
トップ8 bless_von 緑単アグロ
トップ8 LucasG1ggs イゼットランデス
トップ8 Edel エスパーミッドレンジ
トップ8 RicardinhoMangusto 白単アグロ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12422661を制したのはJaberwocki選手のジェスカイオパス。干渉手段が2マナ以下のため3ターン目以降は同一ターン中に複数の干渉手段をプレイでき、ボードで先行されたとしてもテンポ面で巻き返しやすくなります。

呪文ベースのコントロールはソーサリータイミングでしか動けないミッドレンジに強く、増加傾向にあります。しかしそれにより白単アグロも息を吹き返しつつあります。呪文がベースならば《スレイベンの守護者、サリア》の出番です。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
ジェスカイオパス 8 5
エスパーミッドレンジ 7 4
グリクシス吸血鬼 4 1
ジェスカイストーム 3 1
その他 10 5
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

Standard Challenge #12422673

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Jaberwocki ジェスカイオパス
準優勝 Terribad ジャンドミッドレンジ
トップ4 cftsoc3 ジェスカイストーム
トップ4 nathansteuer ジェスカイストーム
トップ8 Sapoa ティムールコントロール
トップ8 Comebackkid 5色エシカ
トップ8 SuperCow12653 エスパーミッドレンジ
トップ8 Hamuda オルゾフアグロ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12422673を制したのは、昨日に続きJaberwocki選手。使用デッキはまったく同じくジェスカイオパスであり、完成度の高さがうかがえます。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
ジェスカイストーム 9 4
エスパーミッドレンジ 7 3
ジャンドミッドレンジ 3 1
オルゾフミッドレンジ 3 2
グリクシス吸血鬼 2 0
ジェスカイオパス 2 2
その他 5 4
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

おわりに

今回はオルゾフミッドレンジとティムールコントロールをご紹介しました。あえて色を足さないことでマナベースが安定し、マナ以外の効果を持つ土地を複数採用でき、長期戦を戦い抜けるだけのカードを手に入れていることもわかりました。単色や2色にとどめるか、それとも多色化するか。カラーボードの悩みが尽きることはありませんね。

次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それでは!

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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