パウパーの魅力って?
2022年6月25日、第1期パウパー神決定戦が開催された。もともと待望の声が大きかった大会だったが、蓋を開けてみればなんと参加者は268名!昨今のモダン/レガシー神決定戦よりも多い結果になった。
コモンしか使えないパウパーはデッキ価格が安いため、非常に参入しやすい。だからこそこれだけのプレイヤーが集結したのかもしれないが、パウパーというフォーマット自体が面白くなければそうはならないはずだ。
では、多くの人を虜にしたパウパーの魅力とは何なのだろう。それを上手く言語化できる人間といったら……あの人たちしかいない。
みなさんはパウパーの禁止告知記事を読んだことがあるだろうか。「パウパーの禁止記事は読み物として面白い。禁止内容もよく練られている」と言われることがある。その納得の内容を作りだす縁の下の力持ちとなっているのが、ウィザーズ公式にフォーマットに関する知見を授けるパウパー・フォーマット委員会(PFP)だ。そして、そのPFPに日本代表として参加している3人のマジックプレイヤーがいる。それが大西 秀登、齋藤 隆二、加藤 優の3名だ。
彼らはポータルサイト「Pauper MTG」を運営し、Youtubeにパウパー動画をあげ、積極的にパウパーコミュニティに貢献している。これほどパウパーの魅力を語ってくれるにふさわしい人たちはいないだろう。
大西 秀登
ー大西さんにとって、パウパーの魅力は何だと思いますか?
大西「パウパーの魅力は、ワクワク感を形にしやすいことだと思いますね。トレーディングカードゲームって『このカードはこんな風に使ったら面白いんじゃないかな?』というワクワクを形にすることだと思うんです。ほかのフォーマットだとアイディアを思いついても気軽に75枚を揃えるのは難しかったりしますよね。パウパーならそれが数千円でできるんですよ」
「パウパーがエターナル準拠のフォーマットっていうのもポイントです。途方もなく広くて、ずっとワクワクしていられる。知らないカードがあるかもしれないと思うと、この75枚は本当に最適なのか?と探究心を持ち続けられます」
ー今回、神決定戦に多数のプレイヤーに集まっていただきました。この要因は何だと思いますか?
大西「『ちょっとやってみるか』と思える値段で始められるからかなと。これだけ人が集まれば、人が集まらなくて遊べないという状況は打開しつつあるんじゃないでしょうか。実際、関東圏内の晴れる屋の大会に参加してみても、卓が立たないことは最近はあんまりないですね」
ーパウパーはますます盛り上がりそうな予感ですね。これを機にパウパーに興味を持った人におすすめのデッキはありますか?
大西「楽しむという意味で、赤単《窯の悪鬼》はどうでしょうか。初心者でも使いやすく、考えれば選択肢が意外とあります。エターナルフォーマットらしく、理不尽な叩きつけができるのも良いですね」
ーインタビューを受けていただきありがとうございました。さいごになにか読者に一言いただけますか?
大西「パウパーは競技的で初心者には厳しいと言われることもあります。でも、今回の神決定戦を見回してみても、自分らしく面白いデッキを持ち込んでいる人はいますし、それが実現しやすいフォーマットでもあると思うんです。なので、ガチ以外にも選択肢があるフォーマットなんだよと思って欲しいですね」
加藤 優
ー加藤さんにとって、パウパーの魅力は何だと思いますか?
加藤「安いことじゃないでしょうか。参入しやすいという意味ではなく、デッキを組むうえで”高いからデッキに入れられない”というカードがほぼ存在せず、資産が障壁にならないという意味ですね。だから1万でデッキをひとつ組むよりも、10万かけてパウパーのデッキを全て組めと知人には言うようにしています。必要な資産を揃えてフォーマットにガッツリ取り組もうっていう考えですね。すぐに資産面では最前線のプレイヤーに追いつけるんです」
ー初心者におすすめ!というデッキがあれば教えてください。
加藤「パウパーはプレイングが大事なフォーマットなので、選択肢が狭いデッキはあんまり握って欲しくないですね。《定業》などのキャントリップが使える青系デッキが良いんじゃないでしょうか。アゾリウスファミリアとかフェアリーですね。遊んでいくなかでプレイのシビアさみたいなものを味わっていただけたらと思います」
齋藤 隆二
ーパウパーの魅力は何だと思いますか?
齋藤「一般的にパウパーの魅力というと、金銭的に優しいことだと言われます。ただ、個人的にはそれだけじゃなくて、カードプールの広さが強みだと思うんです」
「最初マジックを始めたのは『第5版』のころだったんですが、先生にデッキを没収されて『インベイジョン』のころに一度やめたんです。社会人になって、安く始められるからということでパウパーを触りだしたのですが、”えっ!昔使ったカードが使えるじゃん!“って衝撃を受けて。しかも、愛着のあるカードが最新のカードと意外なシナジーがあったりするんですよね」
齋藤「カードプールが広いからこそ、想い出のカードを使えたり、オリジナルのデッキやコンボを作ったりできること。それが魅力のひとつじゃないでしょうか」
ーこれからパウパーを始めようという人におすすめしたいデッキはありますか?
齋藤「マジック歴によると思いますね。初心者の方なら昔から構成がほとんど変わらず、新カードを数枚試すだけで良いというアーキタイプは長く遊べて良いかもしれません。緑単ストンピィやバーンなどですね。緑単ストンピィならコンバットが上手くなれますし、バーンはわかりやすいデッキでありながら勝つ楽しさを味わえます」
齋藤「もうマジックをプレイしていて自分の好みがわかっているなら、おすすめのデッキは変わります。モダンやレガシーでイゼットカラーが好きなら青のキャントリップが使えるイゼットフェアリー、ホガークが好きなら《拷問生活》、アーティファクトが好きなら親和といった具合ですね。最近スタンダードから入った人でも《実験統合機》や《月回路のハッカー》といった強力コモンをパウパーで使えますよ」
ーさいごに読者に向けてなにか一言いただけますか?
齋藤「パウパーは地味だと言われますし、確かに地味だと思います。でも、一度パウパーをやってみて欲しい。パウパーもマジックであって、マジックの楽しさが詰まってます。パウパーを推している身ではありますが、パウパーでマジックを楽しんで、ほかのフォーマットまで裾野を広げていってもらう。それが僕の理想です」
おわりに
「パウパー=安い」。それは間違いではなく、たしかにこのフォーマットを支える魅力だ。しかし、安さだけが取り柄ではない。安いからこそ、自分のアイディアを実現できたり、資産面で不利になることなく競技に没頭できたり、自分らしさを追求できたりする。
今回のパウパー神決定戦は参加者のみならず、SNS上でも大きな反響を呼んだ。
【大会情報】記念すべき第一期パウパー神決定戦、はじまりました!なんと参加者数は……267名!!!パウパーの参入しやすさが参加者数に表れていますね!
— 晴れる屋メディア (@hareruya_Media) June 25, 2022
9回戦のスイスラウンドののち、シングルエリミネーションは生配信予定です!#mtgjp #神決定戦 pic.twitter.com/hkRqZy57Oh
今回の神決定戦をきっかけに少しでもパウパーに興味を持ったのなら、ぜひ「ちょっとやってみるか」と気軽にパウパーの世界に足を踏み入れて欲しい。「安い」の先にある何かがきっと発見できるに違いない。
そして『ダブルマスターズ2022』からは《僧院の速槍》や《第10管区の軍団兵》など、パワフルなカードがコモン落ちしている。第2期パウパー神決定戦では、一体どんなプレイヤーたちが、カードが活躍しているのだろう。パウパーの進化からますます目が離せない。
なお、今回ご協力いただいたPauper MTGのお三方が主催するイベント、PAUPER SUMMIT CUP2が7/16(土)に開催されます。すでに定員が埋まりつつありますが、キャンセルで若干名の空きが出れば公式Twitterにて告知するとのことです。チャンスがあれば、ふるってご参加ください!