はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は個人的に好きな《八百長試合》を使ったデッキをご紹介しました。トレジャーデッキをベースにしたことで、踏み倒し要素がありながら手札に来た《タラスク》や《焼却するもの、ジアトラ》をプレイできるように構築されていました。巨大クリーチャーを使って対戦相手を蹂躙したい方にはオススメのデッキです。
今回はStandard Challengeの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
これまでのスタンダードのメタゲームを簡易的におさらいしますと、一時はジェスカイオパスが最大シェアを誇っており、ミッドレンジ帯のデッキを寄せ付けない活躍を見せていました。多数の打ち消し呪文とそれに守られた《暁冠の日向》、加速度的にプレイされる《マグマ・オパス》に対応しきれませんでした。
しかし、ここで軽量クリーチャーと速攻クリーチャーで猛チャージをかけたのがボロスアグロ。速度を武器にした生粋のアグロデッキは徐々に数を増やし、ついにはStandard Challengeでトップ16へ複数名を送り込むことに成功します。ボロスアグロはジェスカイオパスに次ぐシェア2位まで成長していました。ここまでが前々回の状況です。
そこから2週間分のStandard Challengeへ目を通したところ、驚くべき結果となっていました。ボロスアグロはジェスカイオパスに代わって不動のトップメタへと成長していたのです。
ミッドレンジが減ってボロスアグロとジェスカイオパスの2強になったことで、ほかのデッキも見られるようになりました。特にStandard Challenge #12437637では緑単アグロが息を吹き返し、トップ8へ2名が進出しています。《老樹林のトロール》などのタフなクリーチャーと《蛇皮のヴェール》の組み合わせは、デッキ全体を通して火力に高い耐性があります。
クリーチャーベースデッキが上位に増えてくれば、いうまでもなく対クリーチャーシフトしたコントロールの出番。ボロスアグロとジェスカイオパスを意識したデッキとしてオルゾフコントロールが登場しています。軽量の手札破壊と除去、そこにコントロール色の強いクリーチャーを組み合わせて真綿で首を締めるがごとくじわじわと支配していきます。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
7/3(日):Standard Challenge #12437649
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Misplacedginger | オルゾフコントロール |
準優勝 | Lennny | ジェスカイオパス |
トップ4 | SoulStrong | ジェスカイオパス |
トップ4 | _Batutinha_ | オルゾフコントロール |
トップ8 | FerMTG | ボロスアグロ |
トップ8 | GabingGoblin | グリクシス吸血鬼 |
トップ8 | bcs8995 | ボロスアグロ |
トップ8 | Graciasportanto | グリクシスコントロール |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
先週末の日曜日に開催されたStandard Challenge #12437649を制したのはMisplacedginger選手のオルゾフコントロール。上位にはボロスとジェスカイが多く、オルゾフコントロールが狙った通りのメタゲームになっていました。
GabingGoblin選手が使用したのは一風変わったグリクシス吸血鬼。2マナ域の定番であった《しつこい負け犬》と《血に飢えた敵対者》を解雇して、《空飛ぶ思考盗み》を採用しています。
《消失の詩句》を意識したというよりは、タフネスの高いクリーチャーを増やして定着を狙っています。火力でテンポを取られにくく、さらに後続の《死体鑑定士》とも相性抜群。たとえ相手がクリーチャーを出さずとも、「切削」により墓地へ落ちる可能性があるのです。
残念ながら吸血鬼ではないため《欲深き者、エヴリン》とのシナジーはない…と思いきや、なんと《死体鑑定士》と《欲深き者、エヴリン》が『ならず者』。中盤以降の打点がアップが期待できます。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ボロスアグロ | 10 | 5 |
ジェスカイオパス | 6 | 4 |
グリクシス吸血鬼 | 4 | 3 |
グリクシスコントロール | 4 | 2 |
オルゾフコントロール | 3 | 2 |
その他 | 5 | 0 |
合計 | 32 | 16 |
ボロスアグロがトップメタとなり、ジェスカイオパス、グリクシス吸血鬼とコントロールが続いています。トップ16ではその他のデッキは淘汰されてしまい、オルゾフコントロールの狙ったメタゲームとなっています。
トップ8デッキリストはこちら。
オルゾフコントロール (優勝)
今大会を制したのはMisplacedginger選手のオルゾフコントロール。メインボードからクリーチャー除去と手札破壊を多めに採用し、増加傾向にあるボロスアグロとジェスカイオパスを意識した構築となっています。
メインボードのコントロール枠に取られた《収得の熟練者》と《救出専門家》が特徴的なレシピです。
最序盤にプレイできる《戦慄の遁走》は相手を問わずに使えて、出鼻をくじいてくれるゲームコントロールへの第一歩。カードタイプを選ばず捨てさせられるため《強迫》よりもメイン向きであり、この1枚で相手のゲームプランを狂わせることもあります。ロングレンジのゲームでは「切除」コストを払うことでフィニッシャーやプレインズウォーカーを狙っていきます。
スペルランドの《ペラッカの捕食》も採用されており、相手のデッキや展開に応じてモードを使い分けていきます。ジェスカイオパスに対しては《鏡割りの寓話》や《暁冠の日向》などを狙いますが、ボロスに対してはよほど余裕がない限りボードで押されてしまうためサッサと土地として置いてしまいましょう。
《収得の熟練者》は相手の手札を奪う《貪欲なるネズミ》の亜種ですが、戦場のパーティー数に応じて手札の参照値が変更される仕様です(最高は4)。地味ながら1枚で妨害と展開を両立しており、死亡しやすいサイズなのもポイントです。
3マナ域に控える《救出専門家》は《収得の熟練者》を戦場へと呼び戻し、さらに追加の手札1枚を要求します。カードとテンポの両面でアドバンテージを獲得しながら戦闘でも十分活躍できるスタッツを兼ね備えており、アグロマッチでは貴重なライフ回復手段になっています。
フィニッシャーを務めるのは《ヘンリカ・ダムナティ》と《軍団の天使》、各種プレインズウォーカーです。《ヘンリカ・ダムナティ》は戦闘開始時に3つのモードから1つを選べる便利なクリーチャー。先ほどの《収得の熟練者》など生け贄のコストには事欠きません。《暁冠の日向》の返しを狙って出したいところ。
サイドボードには対ボロス用の全体除去として《危難の道》が用意されています。基本的には3マナでプレイして戦場を一掃し、後続を単体除去で潰していきコントロールの確立を目指します。
グリクシスコントロール (トップ8)
Graciasportanto選手が使用したのはジェスカイオパスをメタったグリクシスコントロール。6月26日、さらに前日に開催されたStandard Challengeと連続優勝しており、今回を含めると3連続トップ8と非常に安定した成績を残したことになります。
イゼットをベースにしたコントロールに一部の黒のカードをタッチした構築。除去が少なく、序盤のコントロール要素を打ち消し呪文に頼っているため、《スレイベンの守護者、サリア》がややキツイアーキタイプとなります。コントロールデッキでジェスカイオパスを攻略したい方にはオススメのデッキです。
タッチ黒で採用されているのは《罠を探す》と《魂の粉砕》の2種4枚。どちらもジェスカイオパスに効果的なカードとなります。
コントロールマッチでは少ないマナで能動的に動ける呪文は重宝します。手札破壊は干渉しつつ後のゲームプラン構築の助けとなるカードであり、相手のどのカードを対処し自分がいつ動くべきかの判断材料になります。
《魂の粉砕》は対象をとらないため《暁冠の日向》や《黄金架のドラゴン》の影響を受けずにテンポ良く対処できます。
ジェスカイオパスが流行するにつれて、各種コントロールやミッドレンジはドローソースとして《勢団の銀行破り》が増量しています。《プリズマリの命令》はメインボードに詰めるアーティファクトとクリーチャー対策であり、《削剥》と違ってマナ加速としても使えます。前もって宝物トークンを生成しておけばほかのインスタントを構えて守りながら《船砕きの怪物》をプレイすることも可能です。
《表現の反復》と《勢団の銀行破り》の追加ドローソースとして入っている《さまよう心》。手札を減らさずにクリーチャーを展開でき、コントロールマッチではライフとプレインズウォーカーにプレッシャーをかけられます。《鏡割りの寓話》とも相性抜群です。
フィニッシャーを務めるのは完全無欠の《船砕きの怪物》。自身が呪文をプレイするたびに《非実体化》を誘発させるため、マナと手札さえあればあっという間にゲームを掌握してしまいます。
ジェスカイオパスのようにコントロール手段を打ち消し呪文と火力に頼った相手には強力であり、《勇敢な姿勢》が減っていることも相まって、着地したら対抗手段はありません。
その他の大会結果
6/25(土):Standard Challenge #12434061
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Talisker | ラクドスアグロ |
準優勝 | Promidnightz | ボロスアグロ |
トップ4 | SilvergillLord | ジェスカイオパス |
トップ4 | SKK | ジェスカイオパス |
トップ8 | Cabezadebolo | イゼットコントロール |
トップ8 | SidRocha | ジェスカイオパス |
トップ8 | medvedev | ボロスアグロ |
トップ8 | Marangon3 | ジャンドミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12434061を制したのはラクドスアグロ。サクリファイスエンジンを廃した純粋なビートダウンスタイルは久しく見ていません。
《スカイクレイブの影》などのパワー3のクリーチャーを使い、前のめりにライフを詰めていきます。《兎電池》を採用することで攻撃までのラグを消し、絶えずライフにプレッシャーをかけていくことが可能です。ボロスよりも接触戦闘を苦手としますが、使い回せるクリーチャーがいるためコントロールなどの消耗戦を得意とします。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ボロスアグロ | 10 | 4 |
ジェスカイオパス | 7 | 5 |
グリクシス吸血鬼 | 4 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 2 |
エスパーミッドレンジ | 2 | 1 |
グリクシスコントロール | 2 | 1 |
その他 | 4 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
ここにきてついにボロスがトップメタへと躍り出ました。ジャンドやエスパーなどのミッドレンジが減ったことでアグロ戦略は追い風となっています。
トップ8デッキリストはこちら。
6/26(日):Standard Challenge #12434072
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Graciasportanto | イゼットコントロール |
準優勝 | Sapoa | オルゾフコントロール |
トップ4 | Folero | ジェスカイオパス |
トップ4 | Ekkoftime | エスパーコントロール |
トップ8 | marolanzi | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Xuxa | ボロスアグロ |
トップ8 | sick_boy138 | グリクシス吸血鬼 |
トップ8 | TBS | ボロスアグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12434072を制したのはタッチ黒したイゼットコントロール。《さまよう心》4枚が特徴的であり、ミッドレンジやコントロールを意識した構築となっています。メインボードに採用された《魂の粉砕》からも《暁冠の日向》や《黄金架のドラゴン》を意識していることが伺えます。
Ekkoftime選手が使用したのは一風変わったエスパーコントロール。クリーチャーがほとんど採用されておらず、かなり防御寄りの構築となっています。代わりに全体除去の効果を最大限に引き出すことに成功し、単体除去と打ち消し呪文と合わせてゲームを掌握し、プレインズウォーカーでアドバンテージを稼いでいきます。
《常夜会一家の介入者》は《溺神の信奉者、リーア》の状況下でも妨害として機能する貴重な打ち消し呪文となります。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ボロスアグロ | 11 | 5 |
ジェスカイオパス | 5 | 2 |
エスパーミッドレンジ | 4 | 2 |
グリクシス吸血鬼 | 2 | 2 |
ジャンドミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 8 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
ボロスアグロの勢いは止まることなく、こちらでもトップメタを占めています。合わせるようにエスパーミッドレンジが増加していますが、苦手なジェスカイオパスやグリクシス吸血鬼を超えることは難しく、トップ8には届いていません。
トップ8デッキリストはこちら。
7/3(土):Standard Challenge #12437637
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Graciasportanto | グリクシスコントロール |
準優勝 | Jaberwocki | ジェスカイオパス |
トップ4 | _Spata_ | 緑単アグロ |
トップ4 | pepeisra | グリクシスコントロール |
トップ8 | Mogged | 白単アグロ |
トップ8 | FerMTG | ボロスアグロ |
トップ8 | Coly2 | 緑単アグロ |
トップ8 | Folero | ジェスカイオパス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Graciasportanto選手がStandard Challenge #12437637を制し、2週連続優勝を達成しています。トップ8には久しく見ていなかった緑単アグロがおり、メタゲームの変動を感じる結果となりました。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ボロスアグロ | 7 | 5 |
ジェスカイオパス | 6 | 4 |
グリクシスコントロール | 6 | 3 |
緑単アグロ | 3 | 2 |
ラクドスアグロ | 2 | 0 |
その他 | 8 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は2つの長期戦デッキ、オルゾフコントロールとグリクシスコントロールをご紹介しました。ジェスカイオパスで終わりを迎えたかに見えたスタンダードですが、そこからボロスアグロが増加し、グリクシスコントロールも活躍するなど終わる気配はまったくありません。『神河:輝ける世界』発売以降、良好にメタゲームは回り、スタンダードは多様性あふれる環境を維持しているようです。
次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それではノシ