(編集者注:対緑単信心のサイドボードガイドの項を修正いたしました。)
Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/07/15)
《表現の反復》の禁止で不死鳥は沈むか?
やぁ、みんな!ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezだ。
紙の大会が帰ってきて、パイオニアはどんどん重要なフォーマットになってきているね。モダンとスタンダードの中間に位置し、ヒストリックと似た部分もあるパイオニアだけど、ほかのフォーマットにない特徴がいくつかある。
ひとつはフェッチランドがプールにないこと。マナベースの組み方に大きな影響がある。もうひとつは万能除去がないこと。《致命的な一押し》のような優秀な除去こそあれど、《対抗呪文》や《虹色の終焉》みたいなカードはない。だから除去したいものを想定したうえでカードを選択する必要がある。そして忘れてはならない最後の特徴、それが《宝船の巡航》《時を越えた探索》という壊れた「探査」呪文が使えることだ。
ウィザーズはこの2枚の呪文を使用可能にし続けることでパイオニアに特別感を与えている。環境屈指のパワー呪文ではあるけど、フェッチランドがない環境ならバランスが壊れることもない。
だけど、この数か月を振り返ってみると、《宝船の巡航》《時を越えた探索》を搭載するデッキの多くが《表現の反復》を採用しており、青赤系のデッキが極端に安定してカードアドバンテージをとれるようになっていた。
そこで、この2枚が禁止されることになった。
《表現の反復》が禁止されたのは、「探査」呪文と相性が良すぎたこと、そしてウィザーズがその「探査」呪文を環境に残したいと考えたからだ。これにより《弧光のフェニックス》デッキや《ジェスカイの隆盛》デッキは大きな変更を余儀なくされた。《宝船の巡航》は序盤に唱えられる呪文ではなく、デッキが回り出すまでに多くの労力が必要になったからだ。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》は単純にメタゲームを抑圧し過ぎていた。この禁止は良い判断だったと思う。
イゼットフェニックスにとって《表現の反復》は主力カードであり、禁止の影響の大きさから言ってTier2に降格するだろうというのが自分を含めた大方の意見だった。以前ほどの安定性がなくなったのは的中していたが、我々の予想は大方外れていた。
さぁ、今回はそのイゼットフェニックスについて話そう!
デッキリスト
現時点で自分が使っているリストはこれだ。
ネイサン・シュトイアー/Nathan Steuerのデッキリストをスタート地点にして色々なカードを試してみたけど、結局は彼と同じようなリストに落ち着いた。
《表現の反復》の禁止で損傷を負ったにもかかわらず、それでもなおイゼットフェニックスを使いたいと思わされている。それはなぜか。
最大の要因は、このデッキに非常に噛み合っている《帳簿裂き》の存在だ。
《帳簿裂き》
イゼットフェニックスにおける《帳簿裂き》はさまざまな機能を果たしていて、このデッキでは《表現の反復》よりも強いんじゃないかとすら思える。《帳簿裂き》は小さな穴をいくつも埋めてくれるんだ。
《帳簿裂き》は本当に何でも屋であり、イゼットフェニックスをTier1に引き戻した立役者だと思っている。
《巧みな軍略》か《航路の作成》か
イゼットフェニックスのカード選択はほぼ固定されているけど、なかには白黒ハッキリせず、結論をみていないものもある。
当初は《巧みな軍略》を評価していた。一見すると平凡に見えるけど、《弧光のフェニックス》と相性が非常に良く、「探査」呪文に向けて墓地を肥やしてくれる。
ただ、《巧みな軍略》にはいくつかの弱点がある。《宝船の巡航》の下準備をするという意味なら《パズルの欠片》と重複しているし、手札を増やした後に《弧光のフェニックス》を捨てたくても捨てられない。さっきも言ったように《稲妻の斧》をサイドアウトしているとこの状況は多発する。
その状況なら《航路の作成》は最高の1枚だし、何よりも《帳簿裂き》で攻撃して2ドロー呪文として使うのもそう難しくない。《巧みな軍略》と散らして採用するのもアリかなと思っているけど、最近は《航路の作成》のほうがわずかに強いんじゃないかと思っているよ。
除去は何を使うべきか?
イゼットフェニックスのように、ライブラリーを掘り進められるデッキは除去を散らす手法がよく採られる。《絞殺》と《溶岩コイル》にはとても満足しているけど、《炎恵みの稲妻》系の火力は疑問符が付く。
以前は追放火力を評価していたけど、今は0枚で良いと思っている。《炎恵みの稲妻》が効果的だった《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキは消え、《復活の声》と対峙する機会はめっきり減っている。
かつて《炎恵みの稲妻》はミラーマッチでも一定の使い道があり、ドロー呪文に比べて価値は低いものの、相手の《弧光のフェニックス》を追放する意義があった。だけど、昨今はもっとも除去したいクリーチャーのひとつが《帳簿裂き》になってきていて、《炎恵みの稲妻》は1点及ばず除去することができない。除去を探そうとすれば「謀議」を許してしまい、《帳簿裂き》を盤面に残してしまうとミラーマッチではあっさり負けてしまう。
その点、《溶岩コイル》と《絞殺》は評価を高めてきている。《溶岩コイル》は除去としては重いが、《炎恵みの稲妻》が抜けた”追放効果の穴”を多少なりとも埋めてくれるのは嬉しい。《老樹林のトロール》を綺麗に対処することもできる。
《絞殺》は《覆いを割く者、ナーセット》に強く、このプレインズウォーカーへの有効な対策が少ない1ゲーム目ではこの特徴が大きな意味を持つ。アゾリウスコントロール戦では《焦熱の衝動》や《炎恵みの稲妻》は死に札であり、それを《絞殺》にすれば1枚の呪文としてしっかりとカウントできる。メタゲーム次第では《溶岩コイル》を抜くことはあるだろうけど、《絞殺》は抜かないだろう。
脅威の選択は?
メインデッキの脅威の選択は《帳簿裂き》4枚、《弧光のフェニックス》4枚、《氷の中の存在》数枚で比較的固定されている。だけど、サイドボードに違いが出る。
ひとつ注意しておくと、除去が必要なマッチアップなら、どの脅威もプレイアブルだからと言って脅威をあるだけ入れてはいけない。デッキ本来の動きをするには呪文の枚数を充分に確保しなくちゃいけないからだ。過剰なサイドボーディングは禁物!
《氷の中の存在》
《氷の中の存在》は緑単や、これに触れないデッキに対して切り札となるカードであり、サイドボード含めて4枚体制をとれるようにしたい。ただ、除去されやすいマッチアップではかなり残念なカードになるから、2:2で分けるのが良いと思う。ウィノータに対して最高のカードだったけど、今は呪文に枠を使って、必要なときに《氷の中の存在》を入れるのが良いんじゃないかな。
《若き紅蓮術士》
《若き紅蓮術士》は最初好きじゃなかった。だけど、どんどんその評価が覆っている。
《若き紅蓮術士》は《ドビンの拒否権》《安らかなる眠り》、そして対峙することの多い《神秘の論争》に対して強く、コントロール戦では最高の脅威だ。《ポータブル・ホール》や《冥途灯りの行進》といった除去でさばかれるかもしれないけど、イゼットフェニックスならその除去を解決するまでに1~2体のトークンを展開することは難しくない。それだけトークンが出れば、プレインズウォーカーや相手のライフを狙っていくには充分だろう。
中盤戦で《若き紅蓮術士》が着地すれば《至高の評決》を要求することも多く、それだけでもサイドボードの枠を使うに値する。
《神秘を操る者、ジェイス》
《神秘を操る者、ジェイス》はサイドボードにぜひ置いておきたいカードであり、2枚目すら《弾けるドレイク》と枠を争える。《神秘を操る者、ジェイス》は勝ち筋となるだけでなく、《思考囲い》《真っ白》を用いるデッキに対してのアドバンテージ源としても機能するため、見た目以上に使い勝手が良い。
2枚目は検討の余地があるけど、1枚目の《神秘を操る者、ジェイス》は必須だと思う。デッキ内に《神秘を操る者、ジェイス》があるというだけで、終盤戦の戦い方が変わる。消耗戦ではライブラリーアウト負けが現実的だからだ。デッキに《神秘を操る者、ジェイス》がいれば、ドローを進めていくうちにいずれ彼にたどり着けるとわかりながら戦える。
そのため、《宝船の巡航》を数発撃った段階までゲームが進んでいるときは《パズルの欠片》を慎重に使わなくてはいけない。1枚(あるいは2枚)の《神秘を操る者、ジェイス》が墓地に落ちると、それが敗北を意味するからだ。
ただ、実際にはクリーチャーデッキと当たることが最近は多く、そこを意識したサイドボードの枠をもっと用意したい。それだけでなく、個人的に《弾けるドレイク》が好きなので、元のリストにあった2枚目の《神秘を操る者、ジェイス》を《弾けるドレイク》に変更している。今のところ良い感じだよ。
《弾けるドレイク》
消耗戦では《弾けるドレイク》は《神秘を操る者、ジェイス》ほど強くないけど、有効なカードであるのは間違いない。対人間デッキのように「あと1枚脅威があれば勝てる」という展開になりやすいデッキに対してサイドインする。
《反射魔道士》入りの相手には脅威を散らして置くことが重要で、《帳簿裂き》を引きすぎてしまうと痛い目を見る。サイド後に残したくないカードがメインにあるデッキを使うときは《弾けるドレイク》のようなカードはサイドボードにあると頼もしい。
《未認可霊柩車》の不採用
《未認可霊柩車》はミラーマッチを決定づけるカードだと考えられているようだけど、そこまで強いとは思えない。2ターン目に着地するとそのまま勝てることもあるものの、2ターン目より後に出すと弱い。《弧光のフェニックス》はミラーを定義するカードじゃないと思っているし、《未認可霊柩車》を入れれば《帳簿裂き》や《パズルの欠片》による回りに対して弱い構成になってしまう。
イゼットフェニックスは墓地を肥やすことに長けているデッキだから、2ターン目に《未認可霊柩車》を設置しても、必ずしも《宝船の巡航》を防げるとも限らない。それに「搭乗」するのも簡単じゃない。
《表現の反復》があった時代なら《未認可霊柩車》は今より強かったと思う。だけど、今の構成だと《パズルの欠片》が打ち消されたときに息切れしてしまうことがあり、そうなると《未認可霊柩車》のような状況を選ぶカードは一気にリスクあるカードに化けてしまう。
サイドボードガイド
決まり文句を言うようだけど、サイドボードの入れ替えは流動的なものだ。相手のデッキを目で見て、臨機応変に対応しよう。サイドボーディングはダンスみたいなものだね!
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
ラクドスミッドレンジ
対 ラクドスミッドレンジ
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
緑単信心
対 緑単信心
ロータスコンボ
対 ロータスコンボ
いつも読んでくれてありがとう!