メタゲームブレイクダウン
晴れる屋メディアチーム
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第8期パイオニア神挑戦者決定戦に参加したプレイヤー数は210名。パイオニアは現在各地で開催されているプロツアー予選のフォーマットにも指定されており、今もっとも注目されるフォーマットである。
では、パイオニアを制するにはどうしたら良いのだろう。デッキを使い込む、新しいデッキを創造する、まだ誰も気がついていないサイドボードカードを見つける…さまざまなアプローチが考えられる。
いや、もっと簡単な道がある。大会を制するには情報を有効活用すること、つまりはメタゲームを分析する手だ。過去の大会結果から次のデッキ分布を予想することで、自ずと次のデッキ選択の助けとなるはず。当たるデッキが絞り込めるなら、それに有利な構築のデッキを持ち込めば良いわけだ。
早速、本大会のメタゲームブレイクダウンをお届けしよう。
デッキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 42 | 20.0 |
イゼットフェニックス | 28 | 13.3 |
緑単信心 | 20 | 9.5 |
赤単アグロ | 12 | 5.7 |
ロータスコンボ | 12 | 5.7 |
青単スピリット | 10 | 4.8 |
アゾリウスコントロール | 10 | 4.8 |
ボロスヒロイック | 8 | 3.8 |
人間 | 6 | 2.9 |
アゾリウススピリット | 5 | 2.4 |
その他 | 57 | 27.1 |
合計 | 210 | 100% |
前回の挑戦者決定戦との決定的な違いは、赤単アグロの凋落とそれに代わる3つのアーキタイプの台頭である。
なかでもイゼットフェニックスとラクドスミッドレンジはパイオニアを代表するデッキであり、人気を二分してきた。そこへ緑単信心が加わり、トップ集団を形成しているわけだが、今回はラクドスミッドレンジが頭一つ抜け出し、最大母数となったようだ。
フェアなマッチアップに強いザ・ミッドレンジというべきこのデッキは、数多の干渉手段を用いて自分有利なゲーム展開へと引き込んでくる。ボード勝負なら《致命的な一押し》《砕骨の巨人》、コントロール相手には《思考囲い》《戦慄掘り》、墓地を活用するならば《墓地の侵入者》《ゲトの裏切り者、カリタス》といった具合にあらゆる領域へと手を広げている。
特に《墓地の侵入者》はメインボードから積める《弧光のフェニックス》対策となっている。単体除去に対しても「護法」により追加カードを要求できる厄介な1枚だ。
加えて、《死の飢えのタイタン、クロクサ》や《反逆の先導者、チャンドラ》、《ロークスワイン城》といったリソース勝負でも負けないカードが採用されている。長丁場を戦い抜くだけのデッキパワーと安定性を兼ね備えているため、高い人気を得たようだ。
《表現の反復》を失ってなお、勢いの劣れぬイゼットフェニックス。その強さを支えるのは使い減りしないクロックである《弧光のフェニックス》と、その過程で膨れた墓地を有効に活用できる「探査」呪文の存在だ。
《弧光のフェニックス》を墓地へと落とし準備が整ったらインスタントとソーサリーを連鎖していく。《選択》や《考慮》、火力などを絡めて《弧光のフェニックス》を呼び戻していく。イゼットフェニックスはカード単体のパワーは低いものの、インスタントとソーサリーに「《弧光のフェニックス》を戻す」をいう付加価値を付けることでデッキ全体の底上げを図っている。
しかもこの過程で墓地へ溜まったカードは《宝船の巡航》や《時間への侵入》のコストに当てるのにうってつけというわけだ。
また、新顔の《帳簿裂き》は《弧光のフェニックス》を墓地へ落とす役割でありながら、呪文を連鎖する工程で半自動的に強化される非常に相性の良いクリーチャー。《表現の反復》亡き後も一定の活躍を見せているのはこの2マナの鳥のおかげかもしれない。
パイオニアを語る上で避けては通れないのが緑単信心。マナクリーチャーからシンボルの濃いクリーチャーへとつなげて「信心」を稼ぎ、《ニクスの祭殿、ニクソス》でダイナミックに加速するアーキタイプだ。マナ加速に重きを置いているだけに、初動をさばき損ねると展開力で圧倒されかねない。さらに見逃せないのは、ややクロック速度の遅いイゼットフェニックスとラクドスミッドレンジの両アーキタイプに強いという点だ。
通常こういったアーキタイプはマナクリーチャーを除去されると途端に愚鈍な動きしかできず、そのまま押し切られてしまうことが多々あった。しかし、除去に引っかからない《森の女人像》や《狼柳の安息所》が動きを助け、《老樹林のトロール》と《茨の騎兵》がボードをしっかりと支えてくれる。
相手のダメージクロックが突出していない限り、《収穫祭の襲撃》からボードの再構築は余裕というわけだ。プレインズウォーカーによる無限マナを含め多彩な攻め手が用意されており、いつ一番手に躍り出てもおかしくない。今後も目が離せないアーキタイプのひとつだろう。
今回紹介した以外にも多くの戦略とカードが溢れるパイオニア環境。使用者数上位こそ逃したものの、赤単アグロやロータスコンボ、青単スピリットにアゾリウスコントロールとさまざまなアーキタイプが残っている。特にロータスコンボは苦手の速攻デッキが減り、ミッドレンジへと以降した現在のメタゲームに合致した選択デッキであり、飛躍の時を迎えつつある。
また、巻末にはトッププレイヤーが執筆したパイオニア環境を掲載しているため、パイオニア攻略に向けて、ぜひ、一読していただきたい。