はじめに
みなさんこんにちは。
来月にはBIG MAGIC Open vol.12がチームモダンで開催されます。構築フォーマットの中でも人気があるモダンのチーム戦なので盛り上がりが期待できそうです。
さて、今回の連載ではSCG Con Syracuse、Modern Challengeの結果を見ていきたいと思います。
SCG CON Syracuse – Modern $30K
最高のデッキはヨーリオン
2022年7月9日
- 1位 4C Control
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Living End
- 4位 Golgari Food
- 5位 Eldrazi Tron
- 6位 Hammer Time
- 7位 Amulet Titan
- 8位 Burn
トップ8のデッキリストはこちら
モダンで行われた2日制のイベント。テーブルトップでもモダンは人気です。
Izzet Ragavan、4C Control、Living End、Hammer Timeといった現環境の第一線で活躍するアーキタイプに混じって、BurnやEldrazi Tron、Amulet Titanなどモダンの定番のデッキが結果を残していました。
デッキ紹介
4C Control
モダンを代表するコントロールデッキ。マナ基盤に恵まれているモダンでは、環境最高の脅威と解答にアクセスできる多色コントロールを組むことが容易です。
豊富な妨害手段に加えてプレインズウォーカーと《表現の反復》などで手軽にアドバンテージを獲得できるので、Izzet RagavanやHammer Timeなどクリーチャーデッキに強いデッキになります。
Amulet TitanやTronといった土地コンボや軸をずらしたコンボなどが苦手なマッチアップとなりますが、それらのデッキは現環境ではIzzet RagavanやHammer Timeなどに比べると少数になります。多色コントロールは動きが安定しており、特にフェアデッキが好まれる傾向にあるテーブルトップでは人気があります。
このデッキを使う上での注意点として、ゲームに勝つのに時間がかかるので、引き分けラインに入らないよう投了のタイミングやプレイングのスピードに気をつけていきたいところです(引き分けラインに入ることで同型に当たる確率も上がる)。
☆注目ポイント
同型ではゲームが長引く傾向にあるため、1ゲーム目の勝者がそのままマッチに勝利することもあります。そのため、今回優勝したリストはメインから同型に有利な構成になっています。《約束された終末、エムラクール》は同型やAzorius Controlとのマッチアップでは決定打になるカードで、先に出した側はそれだけでゲームを有利に進めることができます。
エレメンタルシナジーに寄せた4C Elementalsなどいくつかバリエーションのある多色コントロールですが、このバージョンを選択する理由は《対抗呪文》が使えることで、Living Endなどコンボデッキに対してほかのミッドレンジと比べると耐性があります。
《冥途灯りの行進》は《ウルザの物語》への解答になる除去で、インスタントなので「疾駆」の《敏捷なこそ泥、ラガバン》も対処できます。また、《氷牙のコアトル》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》への解答になるだけでなく、《濁浪の執政》も止めることが可能です。
サイドには苦手なマッチアップで有効なカードがいくつか見られます。Living Endとのマッチアップ用に《忍耐》、特定のカードに頼ったコンボ用には《翻弄する魔道士》、TronやAmulet Titanなど土地コンボ用に《月の大魔術師》など、クリーチャーは《エラダムリーの呼び声》でサーチできるのでさまざまなマッチで対応することができます。
Modern Challenge #12442930
フォーマットを疾駆する猿
2022年7月16日
- 1位 Grixis Shadow
- 2位 Hammer Time
- 3位 Izzet Ragavan
- 4位 Azorius Control
- 5位 Izzet Ragavan
- 6位 Vivien pods
- 7位 Grixis Shadow
- 8位 Golgari Yawgmoth
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《夢の巣のルールス》が禁止になっても結果を残し続けているGrixis Shadowは、今大会ではIzzet Ragavanを抑えて優勝を収めました。
準優勝は現環境のトップメタの一角であるHammer Timeでした。最近は青白バージョンが主流でしたが、結果を残していたのは白単バージョンでした。4C Controlはプレイオフにおらず、Azorius Controlが入賞しています。
デッキ紹介
Azorius Control
最近は4C Controlの陰に隠れがちですが、コントロールのエキスパートであるGuillaume Wafo-Tapa氏はこのAzorius Controlで結果を残し続けています。4C Controlよりマナ基盤が強固なので、《大魔導師の魔除け》など色拘束が強いスペルを使用できるのが強みです。
Wafo-Tapa氏のリストの特徴は、プレインズウォーカーが少なめでインスタントスピードのスペルが多めに採られているところです。カウンターや除去で相手の脅威を捌いていき、《大魔導師の魔除け》や《瞬唱の魔道士》でじっくりとアドバンテージ差を広めて最終的に《サメ台風》でゲームを決めます。
☆注目ポイント
追加の除去として《火/氷》が採用されているなど、可能な限りインスタントスピードで動けるように構築されています。《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対する解答になり、クリーチャーを使用しないデッキ相手にもマナを縛りつつキャントリップできる使いやすいスペルです。
このデッキの主な勝ち手段は、メインからフル搭載された《サメ台風》です。カウンターや除去を駆使してゲームを長引かせ、インスタントスピードで生成される巨大なサメ・トークンでゲームを決めます。
カウンターが中心のコントロールにとって厄介なのは、Burnなど1マナスペルを多用する高速アグロです。Burn、Izzet Ragavan、Grixis Shadow、Hammer Time、Temur Cascade、Living Endなど、0-1マナスペルの多いモダンでは《虚空の杯》をメインから採用する価値があります。
墓地対策の中でも《安らかなる眠り》は、4C Control、Izzet Ragavan、Living Endなど環境のポピュラーなデッキに有効なカードです。ほかにも《レンと六番》や《約束された終末、エムラクール》、「昂揚」や「探査」などを一度に対策できます。
Golgari Yawgmoth
クリーチャーコンボデッキのGolgari Yawgmothも、最近上位で頻繁に見られるようになりました。
《スランの医師、ヨーグモス》と《若き狼》や《絡み根の霊》といった「不死」クリーチャー2体と《血の芸術家》をそろえることでコンボによる勝利を狙えるデッキです。
コンボに頼らずともミッドレンジアグロとしての強さも十分で、「不死」クリーチャーが中心なので除去に耐性があり、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対しても強いデッキです。
☆注目ポイント
地上こそ固いデッキですが、《濁浪の執政》など大型の飛行クリーチャーを対処する手段が少ないため、《飢餓の潮流、グリスト》をサーチできる《召喚の調べ》と《異界の進化》が重要になります。また、メインから《忍耐》や《漁る軟泥》といった墓地対策にアクセスできるので、Living Endにも有利に立ち回ることができます。
TronやAmulet Titanといった土地コンボ用にサイドには《月の大魔術師》が採られています。《召喚の調べ》からサーチできるのが優秀で、マッチアップの相性を大きく改善させることができます。手札に来てしまっても赤マナをマナクリーチャーから捻出することができるので、最速で2ターン目に出すこともできます。
サイドには《活性の力》《引き裂く突風》《罪/罰》といった《ウルザの物語》デッキに有効なスペルが多数見られます。追加の墓地対策の《忍耐》や《漁る軟泥》もあるので、特にサイド後は墓地を使ったデッキに対してかなり有利になります。
Modern Challenge #12442936
優勝はHammer Time
2022年7月17日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Hammer Time
- 4位 Izzet Ragavan
- 5位 Izzet Ragavan
- 6位 Living End
- 7位 Enchantress
- 8位 Hammer Time
トップ8のデッキリストはこちら
日曜日のModern Challengeは、土曜日でも準優勝していた白単色のHammer Timeが優勝を収めました。また、Izzet Ragavanが3名も入賞しています。
テーブルトップと異なり4C Controlはそこまで振るわず、《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキ、Hammer Time、Living Endが中心になっています。
デッキ紹介
Hammer Time
いまの主流は《現実チップ》や《呪文貫き》《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》《時を解す者、テフェリー》をタッチした青白バージョンでしたが、今大会で優勝したのは白単色でした。減少傾向にあった《メムナイト》などもフル搭載された形です。
最近はIzzet Ragavanがメインから《激しい叱責》を採用しており、サイドには複数の《仕組まれた爆薬》、緑デッキの多くはサイドに《活性の力》を積んでいるためHammer Timeには少し厳しい環境です。ただ、対策が厳しいということはそれだけ強いデッキということであり、少しでも対策を怠れば最初の2-3ターン目に勝負が決まってしまいます。
☆注目ポイント
一般的に《カルドラの完成体》や相手の除去をかわす《鍛冶屋の技》《ルーンの与え手》といったカードを採用していることが多いですが、《鋼打ちの贈り物》を多めに採って早い段階から《巨像の鎚》で勝負を決めるコンボに寄せた構成になっています。
サイドの《薄氷の上》は《濁浪の執政》や《帳簿裂き》などに有効な除去で、たとえ割られてしまっても+1/+1カウンターをリセットすることができます。
白単なのでカウンターがないと思ったら大間違い。除去やフィニッシャーを出そうとフルタップしたとこに刺さるのが《マナの税収》です。今後は白単相手にもソフトカウンターをケアしていく必要が出てきそうです。
ボーナストピック:Izzet Ragavan
今回はおまけとして、筆者が普段使用しているIzzet Ragavanにおける現環境の主要なマッチの解説をしていきたいと思います。今回解説するリストは、現在一般的に使用されているリストに近かったSCG CON Syracuse – Modern $30Kで準優勝していたものになります。
このデッキは、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《帳簿裂き》《濁浪の執政》といった強力なクリーチャーを《対抗呪文》や《邪悪な熱気》などの効率的なスペルでサポートしていくミッドレンジです。《表現の反復》や《大魔導師の魔除け》といったアドバンテージ源にも恵まれているのでロングゲームにも強く、多くのマッチアップで互角以上に渡り合える対応力の高さが人気の理由になっています。
このデッキのカード選択などに関しては、前回の連載でも取りあげられているので今回は割愛します。
マッチアップ解説
4C Control
vs. 4C Control
《レンと六番》がいるため迂闊に《敏捷なこそ泥、ラガバン》を出すことができず、そのほかのクリーチャーも《虹色の終焉》や《孤独》で処理されてしまいます。《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》など厄介なカードが多く、それらをすべて対処しようとすると受け身に回ってしまうため、4C Controlにとって有利な方向に進んでしまいます。
エレメンタル寄せと違って《魂の洞窟》がない分カウンターが効くので、相手の脅威をカウンターしつつ《敏捷なこそ泥、ラガバン》の「疾駆」などで削っていきます。《敏捷なこそ泥、ラガバン》と《濁浪の執政》の両方が止まる《氷牙のコアトル》は、可能な限りカウンターしたいカードです。
サイド後は無駄になりやすい火力スペルを中心にサイドアウトしますが、《レンと六番》《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》《忍耐》を処理できる《邪悪な熱気》は残します。《呪文貫き》は2ターン目の《レンと六番》など対象になるスペルが多いため残しておきます。
同型
vs. 同型
トップメタの一角なだけあって同型戦は避けられません。各種キャントリップや除去、カウンターを打ち合い《表現の反復》でアドバンテージを補充するためゲームが長引く傾向にあります。そのため、ソフトカウンターの《呪文貫き》は効果が薄くなります。同様の理由で《狼狽の嵐》もサイドインしません。
『ニューカペナの街角』の登場によって同型にも若干変化が見られます。《未認可霊柩車》が投入されるサイド後は、以前よりも《濁浪の執政》のフィニッシャーとしての信頼性が落ちています。そういった理由から《濁浪の執政》をサイドアウトすることもありましたが、すでに4枚から3枚に減らされているため今回はサイドアウトしないことに決めました。
多くのマッチで共通することですが、《ミシュラのガラクタ》は引き当てたいカードや相手のトップの情報が必要ない場合は《帳簿裂き》の能力を発動するために温存しておきたいところです。《稲妻》の射程圏外の2/4にすることが重要となります。
Living End
vs. Living End
カウンター1枚ぐらいは相手も《悲嘆》で乗り越えてきます。Living End側はクリーチャー除去に貧しいので、理想は早い段階から《敏捷なこそ泥、ラガバン》を出してクロックをかけることです。
《帳簿裂き》はルーター能力でカウンターを探せるので、このマッチアップでは重要なカードの1枚になります。サイドインするカードは追加のカウンターや墓地対策、特殊地形対策が中心で、《忍耐》などによりフィニッシャーとして安定しない《濁浪の執政》やあまり役に立たない火力スペルを減らしていきます。
Hammer Time
vs. Hammer Time
このマッチアップは、相手のプランを妨害できる火力除去の枚数や相手の動きによって変動するため、苦手なマッチと感じられることもあると思います。メインから《ウルザの物語》の構築物・トークンを対策する手段である《激しい叱責》を採用していることは大きく、相性の緩和に貢献しています。1マナのスペルが多く、《ウルザの物語》も採用しているデッキに対して《対抗呪文》は効果が薄いためサイドアウトされます。
相手が《ヴェクの聖別者》を多数採っている場合は、《敏捷なこそ泥、ラガバン》もサイドアウトすることがあります。サイド後は追加の《激しい叱責》や、3枚の《仕組まれた爆薬》が投入されるのでメイン戦より有利になります。
Hammer Time側には《鍛冶屋の技》と《呪文貫き》という妨害手段があるので、妨害のタイミングに注意していきたいところです。白単にも《マナの税収》があるので意識しておきましょう。
総括
現環境のモダンはさまざまなデッキが活躍しています。特別に環境を支配しているアーキタイプは存在しないものの、実際は《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキ(Izzet Ragavan、Grixis Shadow)や《空を放浪するもの、ヨーリオン》デッキ(4C Control、Elementalsなど)にHammer TimeやLiving Endといったコンボデッキがローテーションしている状態で、環境としてはやや停滞しているとの意見も一部で散見されています。
こういったシチュエーションで出てくる定番の話題として、過去に禁止カードとして指定されたカードを解禁するという話があります。昨年リリースされた『モダンホライゾン2』に強力なカードが多数収録されたことで、現在のモダンは過去のモダンとはまったく別のフォーマットと言ってもいいぐらいに大きな変化を遂げています。
現在の禁止カードリストの中には、モダンの黎明期に健全な環境を作るために一度もチャンスを与えられることなく禁止になったカードや、その当時は強力だったもののカードパワーが向上した現在では許されても良さそうなカードもありそうだという意見も見られます。
《ゴルガリの墓トロール》のような例もあるため禁止解除には慎重になる傾向にありますが、《精神を刻む者、ジェイス》や《石鍛冶の神秘家》のように既存のアーキタイプを強化したり、新たなアーキタイプを生み出すことで環境を一新した例があることも事実です。
USA Modern Express vol.79は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!