はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
プロツアー本戦への出場権をかけて、多くのプレイヤーが大会から大会へと連戦を続けています。
このプロツアー予選は一部を除いて、本戦ともにフォーマットはパイオニアで行われます。本稿では毎週末に開催されるプレミアム予選を中心に、テーブルトップでのメタゲームを集計し、参加者たちの思考を読み解いていきます。
それでは早速、直近の大会結果をみていきましょう。
先週末のメタゲームは?
今回は7月23日~31日までの間に開催されたプレミアム予選を振り返っていきます。
第3週
デッキタイプ | 静岡 | 占有率 | 名古屋 | 占有率 |
---|---|---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 16 | (25.8) | 26 | (29.8) |
イゼットフェニックス | 9 | (14.5) | 11 | (12.6) |
緑単信心 | 9 | (14.5) | 10 | (11.6) |
パルヘリオンシュート | 4 | (6.5) | 3 | (3.5) |
ロータスコンボ | 4 | (6.5) | 2 | (2.4) |
アゾリウスコントロール | 3 | (4.8) | 6 | (6.8) |
赤単アグロ | 3 | (4.8) | 6 | (6.8) |
人間 | 2 | (3.2) | 1 | (1.1) |
ボロスヒロイック | 1 | (1.6) | 1 | (1.1) |
青単スピリット | 1 | (1.6) | 3 | (3.5) |
その他 | 10 | (16.2) | 18 | (20.8) |
合計 | 62人 | 100% | 87人 | 100% |
トップメタはラクドスミッドレンジとなり、占有率は2割を越えて3割近くにまでのぼります。ほかのトップメタであるイゼットフェニックス、緑単信心と合わせるとその数は半数以上を占めており、単純計算1ラウンドおきにいずれかのデッキと対戦することになります。まだまだガードを下げるわけにはいきません。
静岡のチャンピオンズカッププレミアム予選ではロータスコンボやパルヘリオンシュートなどのコンボデッキが微増し、ミッドレンジ帯のデッキが狙われています。その分アグロが減っており、結果として緑単信心は戦いやすいフィールドが形成されていました。《大いなる創造者、カーン》のおかげで、増えていたコンボにも後れを取らずに済んだのです。
前日の静岡予選と比べ、名古屋のチャンピオンズカッププレミアム予選では干渉手段を内包したアーキタイプが見られます。コンボデッキと入れ替わったのはアゾリウスコントロールや青単スピリットであり、前者は増加の一途をたどるラクドスミッドレンジを、後者はラクドスを倒してくるはずの緑単信心を狙っています。
地域差はあれど、基本的には3強は固定され、次点のデッキに差が生まれる程度。その差も微差です。それでもなお、人気が集まるのがラクドスミッドレンジというアーキタイプ。名古屋予選では3割近くまで増え、世はまさに大ラクドス時代を向かえています。
第4週
デッキタイプ | MINT横浜店 | 占有率 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 22 | (23.1) |
イゼットフェニックス | 14 | (14.7) |
緑単信心 | 9 | (9.5) |
アゾリウスコントロール | 6 | (6.3) |
ロータスコンボ | 5 | (5.3) |
赤単アグロ | 4 | (4.2) |
サクリファイス | 4 | (4.2) |
白単アグロ | 4 | (4.2) |
パルヘリオンシュート | 3 | (3.2) |
黒単アグロ | 3 | (3.2) |
ボロスヒロイック | 2 | (2.1) |
人間 | 2 | (2.1) |
青単スピリット | 2 | (2.1) |
その他 | 15 | (15.8) |
合計 | 95人 | 100% |
1週間後に開催されたのはMINT横浜店のチャンピオンズカッププレミアム予選。同店舗のメタゲームにつきましては、筆者が目測にて計測していますので、若干のズレが生じる場合がございます。ご了承ください。
こちらも上位は変わらず、3アーキタイプが占めているわけですが、下位に変化が見られます。アゾリウスコントロールとロータスコンボに続くのは、3つのクリーチャーベースのデッキ。赤単アグロとサクリファイス、そして人間をベースに構築された白単アグロです。
その他に分類したデッキまで含めると低マナ域に寄せたアグロデッキの母数は19名まで増え、占有率では2割になります。横浜予選のメタゲームは、トップメタ vs. アグロの構図が浮かび上がってきます。アグロデッキの選択者は速度を軸に、干渉手段や保護呪文、防御網をこじ開ける術のいずれかを持ち合わせ、明確にラクドスの支配するメタゲームの攻略を試みていたのです。
メインボードに取られた《絶望招来》はミラーマッチやロングゲームでこそ強いものの、早い展開では機能しません。迫りくる小型クリーチャーを前に手札で抱えてモジモジするのが関の山、といったところでしょう。見据えるメタゲームの違いによって生まれた速度差こそ、アグロデッキの増加の要因だったのです。
まとめ
第4週終了時点でのメタゲームまとめは、以下の通りです。
Tier | デッキタイプ |
---|---|
Tier1 | イゼットフェニックス 緑単信心 ラクドスミッドレンジ(増) |
Tier2 | アゾリウスコントロール ボロスヒロイック 赤単アグロ 白単アグロ(増) |
Tier3 | パルヘリオンシュート ロータスコンボ サクリファイス 人間 青単スピリットなど |
元々多かったラクドスミッドレンジがさらに増加したことで、ミラーマッチを攻略すべく構築は重いほうへとシフト。干渉領域が広いことも相まって、コントロールやコンボは思ったほど数を伸ばせていません。
代わってそれを狙い撃つかたちで白単アグロが突如として表舞台へと現れました。有利だったはずのマッチアップは構築の変化により逆転し、アグロ側がメタゲームの虚を突いた形となりました。
仮にラクドスミッドレンジがアグロデッキを意識するあまり除去を増やせばコンボなどに足をすくわれかねませんし、ミラーマッチのガードを下げるわけにもいきません。サイドボードで適正化されるとはいえ、やや窮屈な構築を求められそうです。
続いては実際の大会結果をみていきましょう。
大会結果
チャンピオンズカッププレミアム予選 in 静岡
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | ムラオカ ヒデアキ | 緑単信心 |
準優勝 | オガサワラ トモアキ | 緑単信心 |
トップ4 | イシハラ ジュン | アゾリウスコントロール |
トップ4 | ナカムラ ユウスケ | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | タカハシ リョウ | イゼットフェニックス |
トップ8 | カナイ ショウマ | イゼットフェニックス |
トップ8 | ヨシザワ カヲル | イゼットフェニックス |
トップ8 | マツシマ ナオト | ロータスコンボ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者62名で開催されたプレミアム予選(静岡)は緑単信心を使用したムラオカ ヒデアキ選手が権利を手にしています。
チャンピオンズカッププレミアム予選 in 名古屋
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | ウツノミヤ タクミ | ラクドスミッドレンジ |
権利獲得 | イダ ユウジ | 白単人間 |
トップ4 | コバヤシ タツウミ | イゼットフェニックス |
トップ4 | モリ ショウタロウ | イゼットフェニックス |
トップ8 | ヤマモト ケイイチ | 青単スピリット |
トップ8 | ミウラ リュウジ | アゾリウスエンソウル |
トップ8 | キヨフジ カズヤ | アゾリウスコントロール |
トップ8 | オヤマ タカフミ | ラクドスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者87名で開催されたプレミアム予選(名古屋)を突破したのはラクドスミッドレンジと白単アグロ。トップ8の《アーティファクトの魂込め》デッキやアゾリウスコントロールには、ミッドレンジ攻略の工夫が随所にちりばめられています。
白単人間
スタンダードにも存在する白単アグロの亜種であるこのデッキは、歴代の優良クリーチャーをベースに構築されています。2マナ域にラインナップされた《スレイベンの守護者、サリア》、《光輝王の野心家》、《サリアの副官》を見ればうなずけるというもの。いずれのクリーチャーもボードに大きな影響をもたらしてくれます。
特筆すべきはその呪文枠に取られた1枚のインスタント、《精霊への挑戦》です。クリーチャーすべてに色1色に対するプロテクションを付与するこのカードは《神々の憤怒》から自軍を守り、緑単信心の肉の壁をこじ開けて最後の一撃を演出してくれるのです。
《救出専門家》は消耗戦の切り札であり、攻撃不可の制約も《サリアの副官》や《光輝王の野心家》ならば気になりません。カードプールには《英雄たちの送り火》や《魅力的な王子》など相性の良いカードがあるため、使い方は無限大です。
アゾリウス“ロータス”コントロール
白のパーマネント対処手段と青の打ち消し呪文、歴代のプレインズウォーカーによって構築された伝統的なコントロールデッキです。ボードコントロール確立後にプレインズウォーカーが着地すれば、それは敗北と同義。珍しいのは土地枠に取られた《睡蓮の原野》とシナジーを形成するカードたちです。
ロータスコンボでお馴染みの《睡蓮の原野》は戦場に出たときに2枚の土地を要求するため、本来はマナが増えません。ですが《厳しい試験官》か《不連続性》と組み合わせることでデメリットを打ち消し、無条件で3マナ生成できる土地が手に入るのです。マナ加速手段を得て、本来有り得ないタイミングで《告別》が間に合うようになり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》はあらゆる呪文を構えることを可能にしてくれます。
チャンピオンズカッププレミアム予選 in MINT横浜店
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | フタマタ ヨウジロウ | 不屈の独創力 |
権利獲得 | カガミ ハジメ | ラクドスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者95名で開催されたプレミアム予選(MINT横浜店)は《不屈の独創力》デッキとサイドボードに《熱烈の神ハゾレト》の入ったラクドスミッドレンジが突破しています。
なお、デッキリストにつきましては本大会を突破されたフタマタヨウジロウ選手とカガミハジメ選手のTwitterより引用しております。
《不屈の独創力》
《不屈の独創力》をX=2で唱えて《世界棘のワーム》と《歓楽の神、ゼナゴス》を一気に戦場へ出して、一撃でライフを削りきるコンボデッキです。序盤ではデッキの全貌把握が難しく、しかもコンボ自体手札破壊か打ち消し呪文以外では対処が難しくなっています。1ゲーム目は特にコンボが決まりやすくなっています。
コンボの種としてクリーチャーかアーティファクトが必要となりますが、その役を演じるのは《大勝ち》と《予想外の授かり物》、《鏡割りの寓話》です。特に前2種はインスタントタイミングで生成できるため、相手の動いた隙を突いてコンボを決められます。
おわりに
今回は先週末までに開催されたプレミアム予選の大会を振り返りました。トップメタが固定化され、ラクドスがミラーマッチを勝つべく重い構築へと舵を切ったことで、序盤に隙が生まれてしまいました。白単アグロはラクドスの構築上の弱点を突き、メタゲームで優位な立ち位置となっていたのです。
今後もメタゲームを元にして各デッキの構築は変化していきます。本稿が最適なデッキ選択や構築の助けとなれば幸いです。
次回もプレミアム予選のメタゲームと大会結果をご紹介したいと思います。それでは!
(編集者注:本稿ではデッキの詳細解説は行わないため、それについては下記の記事をご覧ください。)
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