はじめに
みなさんこんにちは、晴れる屋メディアチーム所属・認定レベル1ジャッジの島田と申します。
前回の記事から引き続き、本記事ではゲームでよく使われているカードやジャッジをしていてよく聞かれるルール”のみ”に焦点を絞り、回ごとのテーマに合わせ例を挙げて・極力わかりやすく説明していきたいと思います。
この記事が少しでもみなさまのルール理解に繋がり、ひいてはマジックの楽しさを増すことに繋がれば幸いです。
※2022/7/8時点のマジック総合ルールに基づいています。
※文章の都合上、表現を簡略化・省略している場合があります。ご了承ください。
※本記事は複数のジャッジが監修していますが、誤りや疑問点を見つけましたら遠慮なくお問い合わせページにてご指摘ください。
今回のテーマ:状況起因処理
704. 状況起因処理
704.1. 状況起因処理は、特定の条件(以下に列記)を満たしたときに自動的に発生するゲームの処理である。状況起因処理はスタックを用いない。
【アンケート】知りたいマジックのルールはどれ?
— 晴れる屋メディア (@hareruya_Media) July 19, 2022
アンケート結果は、連載「ジャッジと一緒にルールを学ぼう!」のテーマ決めの参考にさせていただきます!ご協力よろしくお願いします!
前回の記事はこちら!https://t.co/59zClGAFWt#mtgjp
先日はアンケートにご協力いただきありがとうございました。今後もアンケートなどを行う予定なので、興味のある方は晴れる屋メディアのTwitterをチェックしてみてください。
というわけで、第2回のテーマは「状況起因処理」です。
状況起因処理とは、自動でチェックされるゲームの処理です。身近なのは「ライフが0になったら負ける」「タフネス以上のダメージを受けたクリーチャーは死亡する」「忠誠度が0以下になったプレインズウォーカーは墓地に置かれる」などでしょうか。
状況起因処理は通常のゲームだと全部で18種類あり、そのほかに統率者戦や双頭巨人戦など特殊なルール専用のものもあります。
状況起因処理はゲーム中に何かあると(※)まず先にチェック&処理され、プレイヤーが割り込んで行動できないのが最大の特徴です。
(※細かく言うと「プレイヤーが優先権を得るたび、およびクリンナップ・ステップ」にチェックします。「優先権」の説明は次回以降に!)
たとえば?
具体的なシチュエーションを挙げます。
例1
Aさんは《収穫祭の襲撃》を唱え、《ニクスの祭殿、ニクソス》を2枚出した。Aさんは両方の《ニクソス》からマナを出したかったが、マナを出せるようになる前に状況起因処理の「複数の同名である伝説のパーマネントをコントロールしている場合、1つを残して残りを墓地に置く」で片方の《ニクソス》が墓地に置かれるため、1枚からしかマナを出せない。
例2
Bさんは《集合した中隊》を唱え、《歩行バリスタ》と《ピーマの改革派、リシュカー》を出した。Bさんは《リシュカー》の誘発型能力で《歩行バリスタ》に+1/+1カウンターを置きたかったが、その前に0/0の《歩行バリスタ》は状況起因処理の「タフネスが0以下のクリーチャーは墓地に置かれる」によって墓地に置かれる、《歩行バリスタ》は生き残れない。
状況起因処理の特徴
ほかにも状況起因処理にはさまざまな特徴があります。
■どのプレイヤーにもコントロールされておらず、対象を取っていない
例:《スランの医師、ヨーグモス》は「プロテクション(人間)」を持っているが、《ヨーグモス》を2体コントロールしているときの状況起因処理はプロテクションでは防げない。どちらかを墓地に送る必要がある。
■呪文や能力の解決中にはチェックされない
例:《プリズマリの命令》を唱え、「2点ダメージ」と「2枚引いて2枚捨てる」モードを選び、相手の《ダウスィーの虚空歩き》を2点ダメージの対象にした。
《ダウスィーの虚空歩き》は2点のダメージを受けるが、呪文の解決中はまだ状況起因処理はチェックされないので《ダウスィーの虚空歩き》は場に残っており、捨てた2枚のカードと解決された《プリズマリの命令》はすべて追放される。解決後、タフネス以上のダメージを受けた(これを「致死ダメージ」と言います)《ダウスィーの虚空歩き》がやっと破壊される。
■一度のチェックで複数の状況起因処理が条件を満たした場合、それらは同時に処理される
例:《策謀の予見者、ラフィーン》と忠誠度1の《放浪皇》がいる場で《霜と火の戦い》を出した。
クリーチャーとプレインズウォーカーに4点のダメージが与えられると、致死ダメージを受けた《策謀の予見者、ラフィーン》と忠誠度が0以下になった《放浪皇》は、それぞれの状況起因処理で同時に墓地に置かれる。
■状況起因処理をチェックしたことで別の状況起因処理が発生した場合、それもすぐにチェックされて処理される
例:《真珠三叉矛の達人》と《潮流の先駆け》がいる場で《ブレス攻撃》を唱えた。
《ブレス攻撃》を解決すると、まず2/2の《真珠三叉矛の達人》が致死ダメージで破壊される。それによって+1/+1修正がなくなり、2/2になった《潮流の先駆け》も、その後すぐに致死ダメージで破壊される。
■状況起因処理の結果として、ほかの状況起因処理が行われるのと同時にパーマネントが戦場を離れる場合、そのパーマネントの最後の情報(※)はそれらの状況起因処理を行う前の情報を見る
(※新ワード「最後の情報」の説明は次回以降に!)
例:+1/+1カウンターが1個置かれた《若き狼》に《皮裂き》で-1/-1カウンターを3個置いた。
このとき「タフネスが0以下のクリーチャーは墓地に置かれる」と「+1/+1カウンターと-1/-1カウンターは1:1で対消滅する」という2つの状況起因処理が同時にチェックされる。
結果「+1/+1カウンター0個、-1/-1カウンター2個」で-1/-1になった《若き狼》は墓地に置かれるが、チェックの前には「+1/+1カウンター1個、-1/-1カウンター3個」だったので「不死」が誘発する条件を満たさず、戻ってこない。
■複数の状況起因処理が同じタイミングで同じ結果を起こす場合、それらは1つの置換効果でまとめて置換される
例:Cさんはライフ1・ライブラリー0枚・手札7枚であり、《極上の大天使》をコントロールしている。Dさんは《熱病の幻視》をコントロールしている。
Cさんが《熱病の幻視》でカードを1枚引いて2点のダメージを受けると、状況起因処理の「カードがないライブラリーからカードを引こうとしたプレイヤーはゲームに敗北する」と「ライフが0以下のプレイヤーはゲームに敗北する」が同時にCさんを敗北させる。が、その両方をまとめて《極上の大天使》が置換してくれるので、Cさんは(まだ)負けずに済む。
見かける頻度に差はありますが(最後のはほとんど遭遇したことないです)、このルール特有の特徴が多いですね。これらを覚えておけば、最初に挙げたような「思い違いでやりたいプレーができなかった」という事態を防げる…かもしれません。
18個の状況起因処理
特徴を説明したので、ここからは具体的にどんな状況起因処理があるかを見ていきましょう。
全部で18個もあるので、いくつかのグループに分けて紹介していきます。
■「ゲームに敗北する」系
1. ライフが0以下のプレイヤーはゲームに敗北する。
2. 0枚のライブラリーからカードを引こうとしたプレイヤーはゲームに敗北する。
3. 毒カウンターが10個以上のプレイヤーはゲームに敗北する。
勝敗に直結する重要な状況起因処理です。
2個目は少し特殊で、ライブラリーが0枚になった時点ではまだ負けません。次のドローステップが来たりしてカードを引くと初めて負けになるので、その前に相手のライフを0にして勝つことも可能です。
■「墓地に置かれる」「破壊する」「生け贄にする」系
4. 致死ダメージ(タフネス以上のダメージ)を受けたクリーチャーは破壊される。
5. 「接死」を持った発生源(クリーチャーなど)からダメージを受けたクリーチャーは破壊される。
6. タフネスが0以下のクリーチャーは墓地に置かれる。
7. 忠誠度が0以下になったプレインズウォーカーは墓地に置かれる。
8. 同じ名前の「伝説」のパーマネントを2つ以上コントロールしているプレイヤーは1つだけ選ぶ。残りは墓地に置かれる。
9. 「ワールド」のパーマネントが複数ある場合、一番新しいものだけが残ってほかは墓地に置かれる。
10. 伝承カウンターが最終章の数以上置かれており、それを誘発させた能力がスタックに積まれていない英雄譚は生け贄に捧げられる。
どれも結果的には墓地に置かれるのですが、表現が異なるのにお気づきでしょうか。
「破壊される」の場合は「再生」できますし「破壊不能」で防げますが、「墓地に置かれる」や「生け贄に捧げられる」の場合はそれらで防ぐことができません。
最後は少しわかり辛いので例を挙げます。
《ウルザの物語》(最終章は「Ⅲ」)は、3つ目の伝承カウンターが置かれるとアーティファクトを探す能力が誘発します。この時点では「《ウルザの物語》が誘発させた能力がスタックに積まれている」のでまだ戦場に残っており、何かの手段で手札に戻したり、ほかの能力を起動することができます。
能力が解決されると、そこでやっと状況起因処理のチェックに引っかかって生け贄に捧げられます。
■「消滅する」「外れる」系
わかりづらいものが多いので、それぞれ例を挙げます。
11. 戦場以外にあるトークンは消滅する。
例:トークンを対象に《儚い存在》を唱えた。追放されたトークンは、一度追放されて消滅するので戻ってこない。
※「呪文や能力の解決中はチェックしないんじゃないの?」とツッコまれそうですが、「戦場を離れたトークンはほかの領域に移動したり戦場に戻ったりせず、元の領域にとどまる」というルールがあります(総合ルール111.8)。
正確な流れは「追放される→戻ろうとするが戻れず追放領域に残る→呪文を解決する→状況起因処理で消滅する」です。
12. スタック以外にある呪文のコピーや、スタック or 戦場以外にあるカードのコピーは消滅する。
例:《感電の反復》で唱えた呪文のコピーは解決されて墓地に置かれ、その後消滅する。
13. 不正なものについているオーラや何にもついていないオーラははずれて、墓地に置かれる。
例:クリーチャー化した《墨蛾の生息地》に《きらきらするすべて》をつけた。ターンが終わると《墨蛾の生息地》はクリーチャーでなくなるので、クリーチャーにしかつけられない《きらきらするすべて》ははずれて墓地に置かれる。
14. 不正なものについている装備品や城砦ははずれて、戦場に残る。
例:《オーリオックのチャンピオン》に《火と氷の剣》が装備されている。ここで《絵描きの召使い》を出して「赤」を選ぶと、赤になった《火と氷の剣》は《オーリオックのチャンピオン》の「プロテクション(赤)」ではずれる。
15. クリーチャーになった装備品やオーラや城砦、もしくはオーラでも装備品でも城砦でもないカードが何かについていたらはずれて、戦場に残る。
例:《細菌トークン》についている《殴打頭蓋》を《大いなる創造者、カーン》でクリーチャーにすると、《殴打頭蓋》ははずれる。
■「取り除く」系
16. 最後まで踏破されたダンジョンはゲームから取り除かれる。
17. 同じパーマネントに+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが置かれた場合、1:1で対消滅する。
18. 「〇個以上カウンターを置けない」というカードに〇個以上カウンターが置かれた場合、余分は取り除かれる。
3個目は本記事時点では《Rasputin Dreamweaver》という「レジェンド」のカード専用のルールです。マジックには単独でルールを作ってしまうカードが何枚か存在するのですが、このカードもその1つです。ほかには《解放された者、カーン》や《魔力奪取》などがあります。こういう「マイナールール特集」もいずれやりたいですね。
「統率者戦」など特殊ルール専用の状況起因処理は、今後の記事で紹介する予定です。それまではお手数ですが、総合ルールを読むか、お近くのジャッジにご確認ください。
問題
ここまでの説明を踏まえて、問題です。
問題1
あなたは《タルモゴイフ》をコントロールしていて、墓地に《思考囲い》と《新緑の地下墓地》がある。対戦相手の墓地には何もカードがない。この状態で、相手があなたの《タルモゴイフ》に《稲妻》を唱えた。《タルモゴイフ》はどうなる?
問題2
対戦相手が《しつこい負け犬》で攻撃してきた。あなたは《イマースタームの捕食者》でブロックして《構築物トークン》を生け贄に捧げ、《イマースタームの捕食者》を4/4・破壊不能にして生き残らせた。戦闘後、相手は《食肉鉤虐殺事件》をX=1で唱えた。《イマースタームの捕食者》はどうなる?
問題3
あなたは《アーティファクトの魂込め》のついた《バネ葉の太鼓》をコントロールしている。この状態で、相手が《絶望招来》を唱えた。クリーチャーを生け贄にする効果であなたは《バネ葉の太鼓》を生け贄に捧げた。次のエンチャントを生け贄に捧げる効果で、あなたは《アーティファクトの魂込め》を生け贄に捧げられるか?
今回はいろんな状況を用意してみました。同じ場面になったことがある方もいるのではないでしょうか。
解答
解答1
《タルモゴイフ》は生き残る。
《稲妻》を解決すると、2/3の《タルモゴイフ》は3点のダメージを受けます。しかし、呪文の解決中なので状況起因処理はまだチェックされません。
《稲妻》が解決されて墓地に置かれると、《タルモゴイフ》はインスタントが増えたので3/4になります。ここで状況起因処理をチェックするタイミングが訪れ、そのときの《タルモゴイフ》は「3点のダメージを受けた3/4のクリーチャー」なので生き残ります。
解答2
《イマースタームの捕食者》は生き残る。
《食肉鉤虐殺事件》が出る前の《イマースタームの捕食者》は「3点のダメージを受けた4/4で破壊不能のクリーチャー」です。ここで《食肉鉤虐殺事件》の-1/-1修整を解決すると、《イマースタームの捕食者》は「3点のダメージを受けた3/3で破壊不能のクリーチャー」になります。
依然として破壊不能が「致死ダメージで破壊される」の状況起因処理を防いでくれるので、《イマースタームの捕食者》は生き残ります。
解答3
《アーティファクトの魂込め》を生け贄に捧げられる。
《バネ葉の太鼓》を生け贄に捧げると《アーティファクトの魂込め》は何にもついていないオーラになりますが、呪文の解決中なのでまだ戦場に残っています。そのまま生け贄に捧げるエンチャントを選ぶタイミングが来るので、あなたは戦場に残っている《アーティファクトの魂込め》を選ぶことができます。
解答2を見て、MTGアリーナユーザーの中には疑問に思われる方もいるかもしれません。MTGアリーナでは、クリーチャーがダメージを受けるとタフネスの色が赤く変わって数字が小さくなるので、ダメージがタフネスを減らすように見えます。
ですがこれは視覚上の演出で、実際にはタフネスは減っていません。マイナス修整との絡みなどで重要になるので、演出を変えて欲しいと思っているのですが…
おわりに
第2回のテーマ、「状況起因処理」はいかがでしたでしょうか。
「長い」「短い」「この用語何?」「次はこんなテーマがいい」「このカードのルール教えて」など、ご意見・ご要望がありましたらぜひお問い合わせページや晴れる屋メディアのTwitterまでご連絡ください。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。