はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
このプロツアー予選が始まって早一カ月が経過しました。イゼットフェニックス-ラクドスミッドレンジ-緑単信心の3強ではじまったパイオニア環境でしたが、トップメタを攻略せんと週替わりでさまざまなアーキタイプが登場しています。前回は白単アグロが登場し、権利を獲得していました。
本稿では毎週末に開催されるプレミアム予選を中心に、テーブルトップでのメタゲームを集計し、デッキの移り変わりと参加者たちの思考を読み解いていきます。
それでは早速、直近の大会結果をみていきましょう。
先週末のメタゲームは?
今回は先週末に群馬県で開催されたプレミアム予選の結果を振り返っていきます。
第5週(土) コミかる伊勢崎店
デッキタイプ | 伊勢崎 | 占有率 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 7 | (15) |
イゼットフェニックス | 5 | (10.9) |
白単アグロ | 5 | (10.9) |
緑単信心 | 4 | (8.7) |
ボロスヒロイック | 4 | (8.7) |
パルヘリオンシュート | 4 | (8.7) |
サクリファイス | 4 | (8.7) |
ロータス | 3 | (6.6) |
その他 | 10 | (21.8) |
合計 | 46人 | (100%) |
これまでメタゲームのトップを独走していたラクドスミッドレンジに陰りが見え始めた週末となりました。30%間近となっていたラクドスミッドレンジの占有率は急降下し、10%代まで落ち込んでいます。
代わって増加したのは白単とボロスといったアグロデッキ。重くなりつつあるメタゲームに風穴を空けようと、かなり速度偏重デッキが増えていました。特にボロスヒロイックは緑単信心のような干渉手段の少ない相手を咎めるデッキであり、決勝トーナメントを見据えた選択肢といえます。
アグロデッキはラクドスミッドレンジの減少もあって非常に良い選択肢と思われました。
しかし、この日ベストな選択肢をあげるならばラクドスサクリファイスに違いありません。トップメタを追いかけて上位に増えると予想されたアグロを狙い撃ったのです。クリーチャー戦に滅法強く、ノンクリーチャーのデッキにはとことん弱いと弱点のはっきりしたアーキタイプですが、この日持ち込むにはベストな選択肢であったといわざるをえません。事実、伊勢崎予選ではトップ8に2名を送り込むことに成功しています。
また、パルヘリオンシュートも増加しています。緑単信心の隆盛によりデッキの脆さが浮き彫りとなり、一度は沈んだデッキでした。マナ加速からの3ターン目《大いなる創造者、カーン》に対抗しようにも妨害とコンボの準備を同時に行おうとすれば、必要牌が増えたうえでそれらのカードをプレイする適正ターンが限られてしまい、時間が足りなくなってしまっていました。
新たに《ウィザーブルームの命令》を採用したことで、改善が見られます。マナ加速への対処と切削が一体となったこのカードは、相手の3ターン目《大いなる創造者、カーン》を妨害しつつ、自身のコンボ達成に向けて時計の針を進めてくれるのです。
第5週(日) コミかる高崎店
デッキタイプ | 高崎 | 占有率 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 12 | (17) |
緑単信心 | 10 | (14) |
イゼットフェニックス | 7 | (10) |
白単アグロ | 6 | (8.7) |
ボロスヒロイック | 5 | (7.3) |
アゾリウスコントロール | 5 | (7.3) |
パルヘリオンシュート | 4 | (5.9) |
ロータス | 4 | (5.9) |
人間 | 3 | (4) |
サクリファイス | 3 | (4) |
その他 | 11 | (15.9) |
合計 | 70人 | (100%) |
前日と比較して緑単信心とアゾリウスコントロールが目立ちます。パイオニアをプレイする上で《大いなる創造者、カーン》は決して無視できない存在であり、環境を定義しているといっても過言ではありません。
《大いなる創造者、カーン》はコンボパーツでありながら、どのマッチアップでも最適なカードをサイドボードから届けてくれるアドバンテージ源です。たとえばイゼットフェニックス相手には《未認可霊柩車》、ロータスコンボ相手には《減衰球》といったカードをサイド前に使用できるのです。
その派手な効果から起動型能力ばかり注目されがちですが、常在型能力も侮れません。「対戦相手がコントロールしているアーティファクトの起動型能力は起動できない」というシンプルな一文は、パルヘリオンシュートやサクリファイスの戦略自体を瓦解させるには十分すぎるほど。手がかりなどのトークンの起動すら許しません。
アグロデッキの増加は懸念点ですが、メタゲーム上の有利なマッチが占める割合とデッキパワーの高さ、そして安定性を考えての選択と思われます。
まとめ
第5週終了時点でのメタゲームまとめは、以下の通りです。
Tier | デッキタイプ |
---|---|
Tier1 | ラクドスミッドレンジ(減) 緑単信心 イゼットフェニックス |
Tier2 | 白単アグロ(増) ボロスヒロイック パルヘリオンシュート(増) アゾリウスコントロール ロータス |
Tier3 | 赤単アグロ 青単スピリット 人間 サクリファイスなど |
攻略の進むラクドスミッドレンジが減少し、入れ替わるかたちでアグロが増加。特に白単アグロは両予選通じて一定数確保しており、イゼットフェニックスとほぼ同数まで迫っています。
干渉手段の少ないフェアデッキが増加したことでパルヘリオンシュートも有力な選択肢となっています。これまで複数の色の組み合わせがありましたが、今後は《ウィザーブルームの命令》が使えるアブザン一択となりそうです。
続いては実際の大会結果をみていきましょう。
大会結果
チャンピオンズカッププレミアム予選 in コミかる伊勢崎店
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得者 | シラカワ ユウイチロウ | 緑単信心 |
準優勝 | アイウラ ヒロシ | パルヘリオンシュート |
トップ4 | タカハシ リョウ | パルヘリオンシュート |
トップ4 | フクシマ ナオヤ | 緑単信心 |
トップ8 | アサウミ ヒロキ | ラクドスサクリファイス |
トップ8 | オオキ タツヒコ | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | キハラ アツキ | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | カジ タカユキ | ロータスコンボ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
メタゲームおよびデッキリストにつきましてはトレーディングカード専門店 コミかる堂様にご協力いただき、掲載しております。
参加者48名で開催されたプレミアム予選(コミかる伊勢崎店)は緑単信心が突破しています。サクリファイスが2名残っていたものの、決勝ラウンドは予想に反して厳しいデッキが残ってしまったようです。
パルヘリオンシュート
パルヘリオンシュートは《縫い師への供給者》などで《パルヘリオンⅡ》を墓地へと落として《大牙勢団の総長、脂牙》でリアニメイトし、そのまま攻撃へと向かうダイナミックなコンボデッキ。マルドゥやエスパーなどバリエーションが複数存在する自由度の高いデッキでしたが、今回はアブザンをご紹介します。
アブザンのメリットはコンボパーツでありながら単体でクロックとしても機能する《エシカの戦車》と、墓地を肥しながら《大牙勢団の総長、脂牙》を見つけられる《忌まわしい回収》でした。
新たに加わった《ウィザーブルームの命令》は3色目として緑を選択するに値する1枚です。《ラノワールのエルフ》と《狼柳の安息所》の両方に対処でき、しかもマナコストは2マナ。後手の場合も3ターン目の《大いなる創造者、カーン》着地を防いでくれるのです。仮に相手の戦場に2種類のマナ加速が揃っていたとしても、です。2マナで複数のパーマネントを同時に破壊できるのは《ウィザーブルームの命令》以外ありえません。
もし対処すべきパーマネントが1枚ならば、切削モードを選びコンボの下準備を進めていきます。デッキ内にリソースを伸ばすカードが少ないこともあって土地回収が地味に嬉しく、コンボパーツが揃わない場合の《エシカの戦車》のプレイの助けとなってくれるのです。
チャンピオンズカッププレミアム予選 in BIG MAGICなんば店
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得者 | サカタ ナオヤ | イゼットフェニックス |
準優勝 | カマタ カズヒロ | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | ホシノ トモユキ | ラクドスミッドレンジ |
トップ4 | ナカジマ チカラ | 緑単信心 |
トップ8 | コンドウ ショウゴ | 緑単信心 |
トップ8 | ニシカワ リョウタ | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | キョウゴク キョウスケ | ラクドスミッドレンジ |
トップ8 | エノモト ケイスケ | ラクドスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
デッキリストにつきましてはBIG MAGIC様にご協力いただき、掲載しております。
参加者45名で開催されたプレミアム予選(BIG MAGICなんば店)はイゼットフェニックスが権利を獲得しています。墓地対策が進んでいるため、《帳簿裂き》や《若き紅蓮術士》のように《弧光のフェニックス》に代わるクロックが必須とわかります。
ラクドスサクリファイス
ラクドスサクリファイスは生け贄に捧げることでメリットを生むカードと、それらを生け贄に捧げるためのカード(以下、サクリ台)を組み合わせてデッキを循環させていきます。デッキ内は《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《初子さらい》《波乱の悪魔》とかつてのスタンダードでよく見たカードで構成されています。ボードコントロールに特化した構築であり、クリーチャーベースのデッキで太刀打ちすることは困難を極めます。
わずか1マナの《初子さらい》はテンポよくクリーチャーを奪い、サクリ台である《命取りの論争》や《魔女のかまど》がリソースへと変換します。これらのカードに加えて、横に《波乱の悪魔》がいればパーマネントを生け贄に捧げるたびにダメージが誘発し、小型クリーチャーは一掃されてしまうというわけです。
チャンピオンズカッププレミアム予選 in コミかる高崎店
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得者 | オオモリ ケンイチロウ | ボロスヒロイック |
権利獲得者 | ホリウチ マコト | 緑単信心 |
トップ4 | アサウミ ヒロキ | ラクドスサクリファイス |
トップ4 | ヤクシ ヒデキ | セレズニア人間 |
トップ8 | トラン ジュン | セレズニア天使 |
トップ8 | カガ ヒロユキ | 青単スピリット |
トップ8 | タカハシ リョウ | パルヘリオンシュート |
トップ8 | コバヤシ タツウミ | 緑単信心 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
メタゲームおよびデッキリストにつきましてはトレーディングカード専門店 コミかる堂様にご協力いただき、掲載しております。
参加者70名で開催されたプレミアム予選(コミかる高崎店)はボロスヒロイックと緑単信心が突破しています。プレイオフには人間やスピリット、天使など部族デッキが多く残る珍しい結果となっています。
ボロスヒロイック
ボロスヒロイックは英雄的や果敢を持つクリーチャーへコンバットトリックをプレイし、瞬間的にダメージを増幅して短期決戦を挑むデッキです。《照光の巨匠》は二段攻撃と「謀議」を持つ最高のクロックであり、一撃で二桁のダメージを与えることもあります。
軽量の呪文を連打する一種のストームのような挙動をとりますが、クリーチャー除去には注意が必要です。ラクドス相手にはすべてのマナを使わずに、《神々の思し召し》などの保護カード用のマナだけは残しておきましょう。
軽量除去が多いデッキには弱いものの、サイドボード後は《スカルドの決戦》を投入して対抗します。リソースを供給しつつボード強化もできるため、速攻クリーチャーを絡めてボードを再構築します。
おわりに
今回は先週末に開催されたプレミアム予選の大会を振り返りました。ラクドスミッドレンジが減少しているのを目の当たりにして、メタゲームは流動的なものであると改めて実感できましたね。これまでトップに位置していたデッキも立ち位置が変われば、構築の変更を余儀なくされるかもしれません。来週のメタゲームはどのようになっているのでしょうか。
次回もプレミアム予選のメタゲームと大会結果をご紹介したいと思います。それでは!
(編集者注:本稿ではデッキの詳細解説は行わないため、それにつきましては以下の記事をご覧ください。トッププレイヤー視点での環境解説がございます。)
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