はじめに
みなさんこんにちは。
今週末には日本国内でBIG MAGIC Open Vol.12が開催されます。アメリカでもSCG CON Baltimore 2022(本戦はチーム戦でレガシー5Kが併催イベントとして開催)があり、テーブルトップのレガシーイベントが充実しています。
さて、今回の連載ではLegacy Showcase Qualifierと、先週末に開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12456976
懐かしい形のデルバーが優勝
2022年8月13日
- 1位 Jeskai Delver
- 2位 Elves
- 3位 Reanimator
- 4位 Elves
- 5位 4C Control
- 6位 Paradigm Shift
- 7位 Cloudpost
- 8位 8 Cast
トップ8のデッキリストはこちら
現環境トップメタのIzzet Delverはプレイオフにおらず、ElvesやReanimatorといったコンボデッキや8 Cast、比較的めずらしいデッキであるParadigm Shiftが勝ち残っていました。
今大会を制したのは、《もみ消し》や《真の名の宿敵》など懐かしいカードを搭載したJeskai Delverでした。
デッキ紹介
Jeskai Delver
ヨーロッパのレガシープレイヤーで配信者のTrueHero(@IsThatTrueHero)は、今回《もみ消し》入りのテンポに寄せたJeskai Delverに調整を加え、現在のレガシー環境に合わせたバージョンで見事に優勝を収めました。
これまで《もみ消し》を採用したDelverは、《タルモゴイフ》や《敏捷なマングース》を使ったTemur Delverが主流でしたが、現在は《濁浪の執政》という強力なフィニッシャーがいるため緑を足す必要性が薄れています。
Jeskaiにすると《剣を鍬に》や《虹色の終焉》といった白の優秀な除去にアクセスすることができ、サイドボードの選択肢も豊富になります。また、《濁浪の執政》によって数ターンで決着をつけることができるため、最近は火力よりも確定除去が優先される傾向にあります。
☆注目ポイント
《もみ消し》はフェッチランドの起動を妨害して相手のマナを縛ったり、《不毛の大地》の起動をカウンターして土地を守ったりと、警戒していない相手に劇的な効果が望めます。
ほかにも、Elvesの《孔蹄のビヒモス》《エルフの開墾者》《飢餓の潮流、グリスト》や、Reanimatorの《グリセルブランド》、誘発型能力持ちのクリーチャーを多用するDeath and Taxesなどさまざまなマッチアップで使えます。
ソフトカウンターやマナ否定戦略を搭載したこのデッキの《エスパーの歩哨》は、非常にいい働きをします。《もみ消し》を構えられていると相手もフェッチランドを起動しにくいので追加コストも払いにくく、ドローを嫌って追加コストを支払ったところにソフトカウンターが刺さります。
《秘密を掘り下げる者》や《濁浪の執政》に加えて採用されているクロックが《真の名の宿敵》です。コンボ相手には少し遅くなりますが、全体除去が少なく単体除去が中心の環境では、除去耐性のあるこのカードは信頼性の高いクロックとなります。
Jeskaiはサイドの選択肢が豊富です。このバージョンは特にマナを縛ることを重視しており、サイドにはなんと《冬の宝珠》が3枚も採られています。
緑を使った多色コントロールが《花の絨毯》を採用していることから、しばらく見かけなくなった《冬の宝珠》。《エスパーの歩哨》や《目くらまし》と相性が良く、最近ではどのデッキも《表現の反復》を採用しておりマナを多く必要とするため、コントロールやミッドレンジとのマッチアップで活躍します。
Legacy Showcase Qualifier
多色ミッドレンジの勝利
2022年8月14日
- 1位 Blue Zenith
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Selesnya Depths
- 4位 Oops! All Spells
- 5位 Cephalid Breakfast
- 6位 Sneak and Show
- 7位 Elves
- 8位 Selesnya Depths
Legacy Showcase Qualifierは、Legacy Showcase Challengeで上位入賞したプレイヤーが参戦できる招待制のイベントです。優勝者にはMOCS本戦の権利が与えられるため、参加者29名という小規模ながらレベルが高いイベントとなっています。
今大会で見事に優勝を収めたのは、メインから《花の絨毯》を複数枚搭載するなど、現環境のトップメタであるIzzet Delverを徹底的に意識したBlue Zenithでした。
Blue Zenith
今大会のように招待制で規模が小さく、プレイヤーがどのようなデッキを持ち込むのか予想できるイベントでは、特定の戦略を意識したデッキを持ち込むのも有効な戦略になります。
今回優勝を収めたcftsoc3のリストは、Izzet Delverを強烈に意識した構成になっています。コンボが少なくIzzet Delverが多くなると予想していたようで、決勝でもIzzetに勝利していました。
☆注目ポイント
Izzet Delverのメイン戦略として、軽いクロックをソフトカウンターでバックアップが挙げられます。《花の絨毯》は《不毛の大地》や《目くらまし》対策として機能しつつ、強力なマナ加速として活躍します。
さらに《花の絨毯》だけでなく、《紅蓮破》や《水流破》といったIzzet Delverに効果的なカードがメインから採用されています。
《呪文探求者》はこのデッキのキーカードです。《緑の太陽の頂点》や《剣を鍬に》をサーチできるのはもちろん、そのほかにも《ウルヴェンワルド横断》や《表現の反復》などがピン刺しされているので、臨機応変に戦うことができます。
また《儚い存在》によって能力を使いまわすことができ、《永遠の証人》を再利用してアドバンテージを稼ぐことも可能です。
《忍耐》もまたアンチIzzet Delverカード。コンボデッキが苦手なこのデッキにとって、メインから採用できる墓地対策は重要です。
《女王スズメバチ》は7マナとかなり重いフィニッシャーですが、《花の絨毯》を経由することで比較的楽にプレイすることが可能です。
サイドの《唐突なる死》はElvesやDeath and Taxes用の全体除去で、選んだ色のクリーチャーのみにダメージが入るので使い方によっては相手側にだけ被害を与えることができます。
Sneak and Show
コンボデッキも結果を残しています。Sneak and Showは、Izzet Delverと相性が悪いことから最近はあまり見られなかったデッキですが、Izzet側も同型を意識して《邪悪な熱気》や《帳簿裂き》を採用した形が主流になってきており、クロックが遅くなったことでコンボデッキにもチャンスが巡ってきました。
☆注目ポイント
3-4マナのスペルでゲームを終わらせるこのデッキにとって、ピッチでプレイできるカウンターはコンボを通しやすくしてくれます。最近はほぼ青一強状態なので、相手のカウンターなど妨害の前に決着をつけるために《目くらまし》は重要な役割を果たします。
青いデッキを対策するために、サイドには《防御の光網》も複数枚採られています。また、特殊地形対策として《血染めの月》よりも《月の大魔術師》が優先されています。理由としては、《耐え抜くもの、母聖樹》の存在があります。このデッキに対して相手は除去を減らしてくることが多いため、サイド後は《血染めの月》よりも対策されにくくなります。
主にDelver系に採用されていることが多い《もみ消し》ですが、このデッキよりも速度で勝るReanimatorの《グリセルブランド》《悲嘆》《残虐の執政官》の能力をカウンターしたり、緑デッキが置物対策として採用している《秋の騎士》の誘発能力をカウンターしたりと要所で活躍します。
Legacy Challenge #12456985
Izzet Delver祭り
2022年8月14日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Elves
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Jeskai Stoneblade
- 6位 Blue Zenith
- 7位 Red Stompy
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
Legacy Showcase Qualifierの裏番組的なイベントだった日曜日のチャレンジは、大会結果が異なりIzzet Delverがプレイオフの半数を占め、決勝戦もIzzet Delverミラーという極端な結果となりました。
Jeskai Stoneblade
Jeskaiは青いフェアデッキではIzzetに次いで人気のあるデッキです。
コントロール寄りのJeskai Mentor、《一日のやり直し》入りのJeskai Control、土曜日でも優勝していたJeskai Delver、そして今回のJeskai StonebladeとJeskaiはバリエーションが豊富です。
Jeskai Stonebladeは《石鍛冶の神秘家》+装備品を主な勝ち手段として、白の優秀な除去と青のドロースペルとカウンター、そして豊富なサイドボードの選択肢と一通りそろっており動きが安定しています。クロックが遅く装備品が腐りやすいため、コンボデッキは苦手なマッチとなります。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》はJeskai Stonebladeでも主力として活躍します。軽いクロックは、Jeskaiが本来苦手とするコンボデッキとのマッチアップでも重要で、「昂揚」させることで回避能力もつくので装備品とも相性がいいクリーチャーです。
《表現の反復》は定番のアドバンテージ源として定着しています。Jeskaiは《虹色の終焉》や《剣を鍬に》《紅蓮破》といった大量の除去にアクセスできるため、《濁浪の執政》を巡ったゲームになりやすいIzzetとのマッチアップで有利がつきます。
Jeskaiの人気がある理由としては、サイドボードの選択肢が豊富なところにあります。8 CastやStormなどマナアーティファクトを多用する相手には《石のような静寂》や《摩耗/損耗》、ElvesやDeath and Taxesなど小型クリーチャーを並べるデッキ対策に《イゼットの静電術師》などさまざまな戦略に対応できます。
総括
Izzet系のデッキが依然としてトップメタで、現環境のレガシーは青いフェアデッキが中心になっています。また、トップメタのIzzetに強いElvesも上位でよく見られます。
Legacy Showcase Qualifierではさまざまなコンボデッキが結果を残していました。これはIzzet Delverが同型対策として《帳簿裂き》や《邪悪な熱気》を採用してミッドレンジ寄りの構成になっていることが理由の一つです。
もともと《虚空の杯》や《血染めの月》によって環境の多くのデッキに強い要素を持っていたMono Red Stompyも、《激情》や《鏡割りの寓話》《バグベアの居住地》といった比較的最近のセットから登場したカードによって大幅に強化され、結果を残し続けています。
MOでは現在テーブルトップで使われている《狂乱の呪詛》と《時を超えた英雄、ミンスクとブー》が実装されていないこともあり、テーブルトップとオンラインのメタに若干の差が見られるようになったので、今週末に開催されるBIG MAGIC Open Vol.12とSCG CON Baltimore 2022が楽しみです。
以上、USA Legacy Express vol. 204でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!