はじめに
みなさんこんにちは。
先月は久々に開催されたBIG MAGIC Open Vol.12(チームモダン)などテーブルトップのイベントが充実していました。新セットの『団結のドミナリア』からもモダンで活躍しそうなカードが見られるので楽しみですね。
さて、今回の連載ではBMO Vol.12とModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
BIG MAGIC Open Vol.12
チーム戦でもラガバンが大活躍
トップ8のデッキリストはこちら
天候や社会情勢など不運に見舞われ続けたBMOでしたが、今回は無事に開催することができました。気がつけば約4年ぶりに開催されたBMOは、お祭り感のあるチームモダンで行われました。
チーム共同デッキ構築のルール上、各チームは同じカードを使えないため、デッキ選択を吟味する必要があります。
現環境のトップメタで安定した成績が期待できるIzzet Ragavanは、多くのチームが選択していました。ほかには、固定パーツが多くほかのデッキと競合する心配がないGolgari YawgmothやHammer Timeが人気だったようです。
チーム戦ということでMerfolkやTameshi Comboなど普段はあまり見かけないデッキも多く、人気の高い構築フォーマットのモダンらしいイベントでした。
デッキ紹介
Izzet Ragavan
多くのチームが選択していたのはIzzet Ragavanでした。効率的なクロック、カウンター、除去、アドバンテージ源と一通り揃ったIzzet Ragavanは、雑多なデッキにも強いので今大会で活躍した理由の一つだと言えます。
☆注目ポイント
『ニューカペナの街角』がリリースされた直後は、《稲妻》で処理されずらくルーター能力がデッキと相性のいい《帳簿裂き》が、《ドラゴンの怒りの媒介者》よりも優先して採用されていました。最近は4C CreativityやAmulet Titanなどコンボデッキもいるため、クロックのスピードで勝る《ドラゴンの怒りの媒介者》も再評価されています。
チームメイトのLiving Endが《神秘の論争》と《緻密》を使う代わりに、《狼狽の嵐》が3枚と追加の《大魔導師の魔除け》が採用されていました。Izzet Ragavanにとって《神秘の論争》はある程度までなら代用が効きますが、軽い対青のカウンターはコンボデッキであるLiving Endにとっては必須となります。
《緻密》をLiving Endに譲ってしまうと、Amulet TitanやElementalsなど《魂の洞窟》を使うマッチアップに若干の不安が残りますが、Amulet Titanにはもともと有利で、Elementalsはほかの多色デッキのバリエーションと比べると少数なので問題になることは少なそうです。
《未認可霊柩車》と《魂標ランタン》の2種類の墓地対策など一般のリストよりも対策が厚めです。また、多くのチームが選択していたHammer Time対策として《仕組まれた爆薬》が3枚、小型クリーチャーを一掃できる《激情》も採用されています。《激情》はGolgari Yawgmothとのマッチアップでも使えます。
Merfolk
Merfolkはモダンに長い間存在する部族アグロデッキで、『モダンホライゾン2』から登場したカードによって強化されたデッキです。
新セットの『団結のドミナリア』からも《ヴォーデイリアの呪詛抑え》という新戦力によってさらなる強化が期待できます。部族に特化したデッキなので《魂の洞窟》の恩恵を受けやすく、カウンターを多用するデッキにも耐性があります。
Merfolkと言えば青単色が一般的でしたが、緑を足したバージョンは《集合した中隊》にアクセスすることができ、除去を多用するミッドレンジやコントロールとのマッチアップでも息切れせずデッキパワーも向上しています。
☆注目ポイント
《集合した中隊》が空振りすることを避けるために、デッキ内の非クリーチャーカードは必要最低限に抑えてあります。《集合した中隊》を早い段階からプレイするために、《霊気の薬瓶》ではなくマナ加速の《楽園の拡散》が採用されています。また、コンボデッキと当たることを想定していたのか《否定の力》もメインからフル搭載されていました。
マーフォーク・神の《海と空のシヴィエルン》は、タフネスが4なので《稲妻》に耐性があり、破壊不能+アドバンテージも稼ぐことができるため、ミッドレンジやコントロールにとって非常に厄介なクリーチャーになります。
《マーフォークのペテン師》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対するブロッカーとして使用したり、《ウルザの物語》から生成された構築物・トークンに対しての除去として機能したりとさまざまなマッチアップで活躍します。
《激浪の形成師》の相手の土地を島に変化させる能力は、地味ながら《ウルザの物語》やTron対策になります。《緻密》はMerfolkではないものの、Amulet Titanなどカウンター以外の妨害要素が必要なマッチアップで重宝します。
Golgari Yawgmoth
『モダンホライゾン』の強力なカードを活用した古典的なクリーチャーベースのコンボデッキ。
《若き狼》など「不死」クリーチャーが中心で地上が固いため、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に強くIzzet Ragavanとも互角以上に渡り合うことができます。
このデッキにはアーティファクト対策が多く、《スランの医師、ヨーグモス》コンボを防ぐ手段に乏しいHammer Time相手には有利です。またメインから《忍耐》にアクセスできるため、Living Endとのマッチアップも悪くないなど環境的にもいい立ち位置にあるといえます。
メインの勝ち手段は《スランの医師、ヨーグモス》と「不死」クリーチャー2体、《血の芸術家》をそろえて無限コンボを決めることです。
コンボを完全に決めなくても《スランの医師、ヨーグモス》で相手のクリーチャーを除去しつつ、カードを引くことができるのでアドバンテージ差をつけることができます。また《召喚の調べ》と《異界の進化》の2種類のサーチ手段が搭載されているため、デッキの動きも安定しています。
☆注目ポイント
《スランの医師、ヨーグモス》と「不死」クリーチャーを並べてコンボを成立させるために、マナを多く必要とするのでマナクリーチャーが多数採られています。特に《根の壁》はブロッカーとして時間を稼ぎつつ《召喚の調べ》の「召集」にも貢献します。
《飢餓の潮流、グリスト》は《召喚の調べ》や《異界の進化》でサーチできるプレインズウォーカーです。トークンを生成する[+1]能力は、《スランの医師、ヨーグモス》によってドローに変換することができ、[-2]能力は《濁浪の執政》を含めた脅威を処理します。
サイドの《活性の力》や《辺境地の罠外し》《罪/罰》といったアーティファクト対策により、Hammer Timeには有利に立ち回れます。地上の守りが強固な一方で飛行に対しての守りが薄いため、《濁浪の執政》や《帳簿裂き》などを対策するために《巻き添え》も採られています。
Modern Challenge #12468579
新戦力を獲得した部族デッキ
2022年9月3日
- 1位 Goblins
- 2位 Glimpse
- 3位 Belcher
- 4位 Living End
- 5位 Hammer Time
- 6位 Affinity
- 7位 Rakdos Grief
- 8位 Hammer Time
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『団結のドミナリア』がMOに実装されて初のModern Challengeを制したのは、新カードの《ランドヴェルトの大群率い》をフィーチャーしたGoblinsでした。
準優勝を収めたGlimpseも、『団結のドミナリア』から登場した《力線の束縛》をフル搭載しているなど早速新セットのカードが活躍していました。
デッキ紹介
Goblins
モダンの部族デッキの中でもGoblinsはシナジーがあり、コンボによる勝ちパターンも搭載されているなど非常に面白いデッキです。
《霊気の薬瓶》と《魂の洞窟》によってカウンターにも耐性があります。《ゴブリンの女看守》や《ゴブリンの首謀者》といった必須カードも再録され、アドバンテージを稼ぐ手段もある単体除去にも強いデッキになります。
ゴブリンクリーチャーによる物量で押し切ることもできますが、《ボガートの先触れ》と《人目を引く詮索者》を組み合わせることで最速で3ターン目にコンボによる勝利を狙うこともできます。
コンボ手順は《人目を引く詮索者》が場にある状態で《ボガートの先触れ》をプレイし、《鏡割りのキキジキ》をライブラリーのトップに置きます。
《人目を引く詮索者》は《鏡割りのキキジキ》の能力を得るため、《人目を引く詮索者》自身のトークンを生成し続けます。
必要な分のトークンを生成したら《ボガートの先触れ》のトークンを生成して、《投石攻撃の副官》か《モグの狂信者》をライブラリーのトップに置き、《人目を引く詮索者》のトークンをサクリファイスして相手のライフを削り切ります。
☆注目ポイント
《モグの狂信者》はコンボパーツであると同時に、マナクリーチャーや《敏捷なこそ泥、ラガバン》などに対する除去としても機能します。ブロッカーを用意しやすいため《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキに強く、《人目を引く詮索者》や《ゴブリンの首謀者》によってアドバンテージも稼ぐことができるため、コントロールとのマッチアップでも互角以上に渡り合えます。
『団結のドミナリア』から登場した《ランドヴェルトの大群率い》は、念願の2マナのゴブリンロードです。ゴブリントークンを生成する《モグの戦争司令官》と相性が良く、相手にとっては脅威となります。
そして、《ランドヴェルトの大群率い》の能力は全体強化だけではなくアドバンテージ源にもなります。ゴブリンが死亡する度に能力が誘発するので除去されてもリカバリーがしやすく、《スカークの探鉱者》や《投石攻撃の副官》ともシナジーがあるなど戦略の幅が広がります。《ランドヴェルトの大群率い》のおかげで、より積極的に相手のクリーチャーや除去と交換がしやすくなり、デッキの粘り強さが増しています。
フェアデッキに強い一方で「続唱」系やYawgmothなどコンボデッキとは相性が悪いため、《思考囲い》《虚空の杯》《虚空の力線》《月の大魔術師》など、サイドには各種コンボ対策が多めに用意されています。《激情》はクリーチャーベースのコンボとのマッチアップでも有用で、カードを補充する手段が豊富なこのデッキではピッチコストを支払うのも容易です。
Modern Challenge #12468586
コンボが強い環境
2022年9月4日
- 1位 Golgari Yawgmoth
- 2位 5C Creativity
- 3位 Jeskai Oswald
- 4位 4C Creativity
- 5位 Hammer Time
- 6位 Rakdos Midrange
- 7位 Calibrated Blast
- 8位 Tron
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『団結のドミナリア』実装後の日曜日のModern Challengeでは、コンボデッキが多数勝ち残っていました。『団結のドミナリア』のトップレアの1枚として話題になっている《セラの模範》をフル搭載した、《オズワルド・フィドルベンダー》デッキも早速結果を残していますね。
新カードの《力線の束縛》はさまざまなデッキに採用されており、土地に恵まれているモダンでは定番カードの1枚として今後もよく見かけるカードになりそうです。
5C Creativity
トークンを《不屈の独創力》で《残虐の執政官》に変換するコンボデッキです。《ドワーフの鉱山》からトークンが出るように、山のタイプを持つ土地とそれらをサーチできるフェッチランドのみでマナ基盤が構築されています。
デッキ自体は『モダンホライゾン2』リリース後の環境から存在しましたが、『神河:輝ける世界』から《鏡割りの寓話》を獲得したことで強化され、最近はトップメタに迫る勢いです。
☆注目ポイント
《残虐の執政官》はマナコストを踏み倒す系デッキのフィニッシャーとして定着しています。ハンデスとライフの回復、ドローによって即座にアドバンテージを得ることができるので、除去やバウンスをされたとしてもそこまで痛手ではありません。《残虐の執政官》が攻撃をし始めればまず負けることはないでしょう。
《鏡割りの寓話》は《不屈の独創力》の種を提供してくれるだけでなく、手札を入れ替えたり、変身後には《残虐の執政官》をコピーしたりとすべての能力がこのデッキとマッチしています。
デッキに山しかないとはいえ、トライオームやショックランドのおかげで「版図」をフルで活用することができます。条件がそこまで難しくないうえに、わずか1マナで土地以外のどんなパーマネントにも対処できるため、多くのマッチアップで活躍してくれます。
総括
『団結のドミナリア』が実装されたMOのイベントでは、《力線の束縛》や《セラの模範》《ランドヴェルトの大群率い》など早くも新カードが活躍していました。
特に《力線の束縛》は多色デッキにおいてモダンの必須カードとして今後も活躍が期待できそうです。さまざまなコンボデッキが活躍するモダンですが、Golgari Yawgmothや5C Creativity、Goblinsなどオールインコンボよりもコンボキルを搭載したミッドレンジが結果を残しています。相手が隙を見せた際にコンボによってゲームを決める戦略は、対戦難易度が高くデッキの種類が多いモダンでは良チョイスになります。
USA Modern Express vol.81は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!