はじめに
みなさんこんにちは。
先月はBIG MAGIC Open Vol.12 LegacyやSCG Con Baltimoreなどテーブルトップのレガシーのイベントが充実していましたね。それともうひとつ、我々レガシープレイヤーにとって嬉しいニュースがあります。
MOで『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』のカードやそのほかの統率者セットのカードが実装されました。そのなかには、MOを主戦場とするプレイヤーの多くが実装を待ち望んでいた《狂乱の呪詛》と《時を超えた英雄、ミンスクとブー》も含まれていました。
さて、今回の連載では上記2大会と、4 Seasons Tournaments、Legacy Chalenngeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
BIG MAGIC Open Vol.12 Legacy
最後に勝つのはデルバー
2022年8月23日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Sneak and Show
- 3位 Death and Taxes
- 4位 Mono Red Stompy
- 5位 Infect
- 6位 Selesnya Depths
- 7位 Mono Red Stompy
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
日本国内で久々に開催されたBig Magic主催のテーブルトップイベント。解説付きの配信もあったこともあり、大いに盛り上がりました。
Delver一強の環境らしくトップ32に多数入賞しており、プレイオフにもDelver系が2名で優勝もやはりDelverでした。
余談にはなりますが、Izzet Delverには《秘密を掘り下げる者》を採用したものと《秘密を掘り下げる者》の代わりに《帳簿裂き》を採用した2つの型があります。デッキの基本的な動きに大きな変化がなく、日本国内外で同じアーキタイプとして扱われることが多いため、この記事でもIzzet DelverとDelverlessは同様のものとして扱います。
優勝はDelverでしたが、今大会ではSneak and Show、Death and Taxes、Red Stompy、Selesnya Depths などコンボ、アグロコントロール、プリズン系などさまざまなアーキタイプが結果を残していました。
デッキ紹介
Sneak and Show
Delver系のデッキがトップメタの環境では、Sneak and Showなどコンボデッキにとって厳しいものがありましたが、最近は《帳簿裂き》を採用するなど同型を意識した中速寄りの型が流行り出したことにより、コンボデッキにも若干の猶予ができました。
最近定番の《目くらまし》が不採用で《全知》とのハイブリット型になっています。《水蓮の花びら》や《猿人の指導霊》、2マナランドのおかげでソフトカウンターにもある程度まで耐性があります。
☆注目ポイント
《厚かましい借り手》はクロックやヘイトベアーなどをバウンスすることができ、除去が減らされる傾向にあるサイド後は、コンボ以外の勝ち手段にもなるフレキシブルなところが特徴です。
サイドボードで特に注目をしたいのが3枚採用されている《激情》です。手札に余ったコンボパーツの《騙し討ち》や《猿人の指導霊》を有効活用しつつ、《スレイベンの守護者、サリア》など厄介なヘイトベアーを一掃できます。
Mono Red Stompy
現環境で活躍しているMono Red Stompyですが、今回入賞を果たしたYokokawa Yuta選手のリストは一般的なリストと比べるとカードチョイスが大きく異なります。
勝ち手段の枠が《再鍛の刃、ラエリア》や《混沌の洞窟の冒険者》といった統率者のセットから登場した強力なクリーチャーにブラッシュアップされています。
カードチョイスについてはYokokawa選手自身もnoteにて詳しい解説をされています。
☆注目ポイント
『統率者(2021年版)』の伝説のクリーチャーサイクルである《再鍛の刃、ラエリア》は、自身を強化しつつカードアドバンテージも稼げるのでコンボ、フェア問わず多くのマッチアップで活躍します。
『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』から登場した《混沌の洞窟の冒険者》はタフネスが3と低めですが、トランプルがあるのでクロック能力が高くアドバンテージも取りやすいためロングゲームにも対応できます。
《エインジーの荒廃者》はMadnessにも採用されている「マッドネス」クリーチャーで、《鏡割りの寓話》のⅡ章の能力によって「マッドネス」でプレイすることができます。
最近はメインから採用されていることが多い《未認可霊柩車》が不採用など、メインからの墓地対策が薄めな分サイドには《虚空の力線》がしっかり4枚採られています。
SCG Con Baltimore
墓地コンボがチームを優勝に導く
2022年8月21日
- 1位 Reanimator
- 2位 4C Stoneblade
- 3位 Izzet Delver
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Doomsday
- 6位 Naya Depths
- 7位 Jeskai Days Undoing
- 8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストはこちら
パイオニア、モダン、レガシーのチーム戦で競われたSCG Con Baltimore。レガシーはIzzet Delverを選択したチームが多く、安定した成績を残していましたが、決勝戦まで勝ち残ったのは今話題の《時を超えた英雄、ミンスクとブー》をフィーチャーした4C StonebladeとReanimatorでした。
4C Stoneblade
話題の《時を超えた英雄、ミンスクとブー》をフィーチャーした多色のStonablade。
BantカラーのStonabladeをベースに《時を超えた英雄、ミンスクとブー》とサイドボードのカードのために赤をタッチした構成になっています。《剣を鍬に》《紅蓮破》《氷牙のコアトル》といった《濁浪の執政》に対する回答も多数用意されているため、Izzet Delverに相性が良いデッキの一つになります。
クロックが遅いためコンボデッキは苦手なマッチとなりますが、《石鍛冶の神秘家》から《カルドラの完成体》をサーチしてくることでプレッシャーをかけられるようになり、相手の追加のドローを封じる《覆いを割く者、ナーセット》も搭載されているのである程度相性が緩和されています。
☆注目ポイント
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》がようやくMOに実装されました。除去されない限りトークンを補充し続けるので、特にフェアデッキとのマッチアップで強さを発揮します。トークン生成能力は装備品を使うこのデッキと非常に相性が良く、装備品抜きでも[+1]能力によって強化することができるので脅威となります。
サイドには《花の絨毯》が3枚採用されており、徹底的にDelverを対策しています。装備品を使用するこのデッキは余ったマナを活用しやすいので、オススメのサイドカードになります。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》が多くのデッキで採用されるようになった現在では、《青霊破》の価値も上がっています。《狂乱の呪詛》や《鏡割りの寓話》などもよく見られるため、今後は必須のサイドカードになりそうです。
4 Seasons Tournaments
ヨーロッパのレガシーのイベントでも《Minsc & Boo》が大活躍
2022年9月11日
- 1位 Doomsday
- 2位 4C Control
- 3位 Temur Delver
- 4位 Izzet Delver
- 5位 4C Control
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Izzet Delver
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4 Seasons Tournamentsはヨーロッパで開催された大規模なテーブルトップのイベントです。決勝ラウンドは半数以上がDelver系でしたが、決勝戦まで勝ち残ったのは4C ControlとDoomsdayでした。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は今大会でも活躍していました。多色コントロールの新たな勝ち手段として定着しており、一部ではオーコの再来とも言われています。
デッキ紹介
Temur Delver
最近のDelverといえばほぼイゼットでしたが、今大会ではティムールバージョンも入賞していました。
ティムールにするメリットとしてサイズで勝る《タルモゴイフ》が使えることでしたが、《濁浪の執政》が登場して以来その必要性も薄れていました。
《表現の反復》などアドバンテージ獲得手段を搭載した中速寄りのIzzet Delverと異なり、《もみ消し》なども採用されているなどいわゆるカナディアンスレッショルドを彷彿とさせる懐かしいスタイルです。
☆注目ポイント
《もみ消し》や《不毛の大地》で相手のマナを縛ることでソフトカウンターも活きてきます。《呪文貫き》が採用されていることから、よりテンポ戦略を意識していることが分かります。《表現の反復》などでアドバンテージを稼いで《濁浪の執政》でトドメを刺すIzzet Delverと明確に差別化されています。《濁浪の執政》や《表現の反復》に対する回答として《紅蓮破》もしっかりメインから採用されています。
《濁浪の執政》や《マリット・レイジトークン》に対する解答になる《巻き添え》が使えるのも緑をタッチするメリットになりますが、Temurカラーにする最大のメリットは《時を超えた英雄、ミンスクとブー》にアクセスできるところです。
メインは《秘密を掘り下げる者》や《タルモゴイフ》といった効率的なクロックを、土地破壊やソフトカウンターでサポートしていくテンポ寄りの戦略から、サイド後は《時を超えた英雄、ミンスクとブー》によって相手にプレッシャーをかけつつアドバンテージを稼ぐという戦略にシフトすることによって対策されにくくなります。
Legacy Challenge #12470347
ハムスターの相棒はヨーリオン
2022年9月11日
- 1位 4C Control
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Jeskai Days
- 4位 Death’s Shadow
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Reanimator
- 7位 Displacer Combo
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
Izzet Delver、Death’s Shadow、4C Controlなどフェアデッキが多数入賞しています。
そんななかで優勝を収めたのは、レガシーのコントロールのエキスパートで有名配信者でもあるAnziDでした。
デッキ紹介
4C Control
AnziDは今大会で《時を超えた英雄、ミンスクとブー》をフル搭載した多色のコントロールを使用し見事に優勝を収めました。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたコントロールデッキで、主要な除去やプレインズウォーカーに加えて墓地対策の《忍耐》もフル搭載されており、最近はあまり見られなくなった《終末》も採用されているなど、多くの状況に対応できる構成になっています。
☆注目ポイント
Temur Delver、Naya Depths、4C Controlなどさまざまなデッキで採用されている《時を超えた英雄、ミンスクとブー》ですが、やはりこのプレインズウォーカーが活きるのは除去やスイーパーによってプレインズウォーカーを維持しやすいコントロールデッキのようです。
コントロールデッキにとって問題となるのが、勝ち手段が薄いことによる時間切れによる引き分けです。自分の持ち時間が切れることで自動的にマッチの敗北となるMOでは特に顕著でした。
トークンが除去されても4/4の速攻トランプルを生成し続ける《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は、[-2]能力で本体に直接ダメージも入れることができるため、生き残れば速やかにゲームを終わらせてくれます。
また、《時を超えた英雄、ミンスクとブー》の強みは《紅蓮破》に引っかからないところにあります。多くのデッキが青のフェアデッキとのマッチアップを意識して《紅蓮破》をメインから採用しているため、青くない脅威というのは貴重です。4C Stonebladeのところでも挙げたように、今後は《水流破》も必須のサイドカードになりそうです。
このデッキはIzzet DelverやJeskaiなどに強い構成になっていますが、StormやElvesなどコンボデッキは苦手なマッチとなります。墓地デッキにはメインからフル搭載された《忍耐》がある分、ほかのコンボと比べると少し希望があります。
《虹色の終焉》など優秀な単体除去に恵まれているのもあり、最近のコントロールは単体除去が中心でしたが、Elvesなどクリーチャーを並べてくるマッチアップも無視できないためメインに《終末》、サイドに《イゼットの静電術師》が採用されています。墓地に落ちた《終末》を《神秘の聖域》でライブラリーのトップに戻して「奇跡」を仕込むという過去のMiraclesのテクも健在です。
総括
各イベントの上位入賞デッキを見てみると分かりますが、Izzet Delverは勝ってはいるもののほかのデッキも同様に結果を残しており、特に注目するポイントはMono Red Stompy、Selesnya Depths、Death and Taxes、Reanimatorなど非青デッキが活躍していることです。
ここ最近リリースされているセットに青以外のデッキで使えるカードが多数収録されていたのもあり、非青デッキが全体的に底上げされています。そのなかでも活躍が著しいのはMono Red Stompyで、《鏡割りの寓話》はリリースされた直後こそあまり注目をされていませんでしたが、現在は複数の異なる構築フォーマットで使われているカードになっています。
そしてついにMOでも《狂乱の呪詛》と《時を超えた英雄、ミンスクとブー》が実装されたことで、より精密なデータを集めることができるようになりました。わずかなカードプールの差でしたが、特にこの2種類のカードの差は大きかったので今後の展開にも要注目です。
以上、USA Legacy Express vol.205でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!