決勝戦:壁屋 敦史(ティンカーモンキー) vs. 廣井 元基(8 Cast)

晴れる屋メディアチーム

《敏捷なこそ泥、ラガバン》

敏捷なこそ泥、ラガバン

『モダンホライゾン2』の発売とともに多くの環境を席巻した(ときには禁止という名誉ある称号も授かった)このクリーチャーは、当然ヴィンテージにも影響をもたらした。

《Mox Ruby》などのアーティファクトの助けを得て先攻1ターン目から攻撃し、相手のライフを削りながらマナ加速をして、カードを奪う。それがパワー9や同じモックスであるなら、さらにアドバンテージ差が広がる。対策をしなければそれ1枚で敗北につながることもある、恐るべきカードだ。

そんなこそ泥は、やはり『第6期関西帝王戦ヴィンテージ』でも大暴れした。

壁屋 敦史/ティンカーモンキー

壁屋 敦史が使用するのは「ティンカーモンキー」。

現ヴィンテージ環境の代名詞ともいえるデッキで、圧倒的なカードパワーと《修繕》から繰り出される無限ターンを得るコンボが特徴。ヴィンテージ環境に飛び込んだなら、ほぼ確実、かつ幾度となく相手をすることになるだろう。

壁屋 敦史

廣井 元基

対する廣井 元基が使用するのは「8 Cast」。

レガシーに颯爽と姿を現して、今やアーティファクトを使うデッキの代表格となったその力は、ヴィンテージではさらに強化される。凶悪な0マナアーティファクトがひしめくこの環境は、8 Castにとって鬼に金棒、虎に翼だ。

廣井 元基

ヴィンテージ最強の座まであと一歩の壁屋。第4期帝王として、再び頂点に返り咲く瞬間を狙う廣井。

2人のうちどちらかが、第6期関西帝王の冠をかぶるのだ。

決勝戦

Game 1

先攻の壁屋がノーマリガンなのに対し、後攻の廣井は1回のマリガンを経てゲームスタート。7枚の手札をキープした壁屋は早速、ヴィンテージならではの動きを見せる。

Black Lotus敏捷なこそ泥、ラガバン

《Black Lotus》を置いて3つの赤マナを生成した壁屋の手札から飛び出したのは、《敏捷なこそ泥、ラガバン》!しかも、「疾駆」で速攻まで持っていて、即座に攻撃できる状態だ!

さらに残ったマナで《多用途の鍵》を設置し、《ウルザの物語》まで置いた壁屋は、さっそくラガバンで攻撃して廣井のライフを18に削り、宝物・トークンを生成した。めくれた廣井のデッキトップは、なんと《思考の監視者》

思考の監視者

本来ならば唱えるのに6マナを要するクリーチャーだが、これは「親和」を持っている。そしてここはヴィンテージ環境──このターン内に唱えるのは、造作もない。

《Mox Pearl》《魔力の墓所》の順にアーティファクトを唱えた壁屋は、宝物・トークンから青マナを生み出して《思考の監視者》を唱える。これで彼の盤面には飛行戦力が追加されただけでなく、2枚の手札も補充されたのだ。先攻1ターン目から、悪夢のような光景である。

Ancestral Recall

さて、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を手札に戻してターンを終了した壁屋に対し、廣井は《Mox Sapphire》《オパールのモックス》《ウルザのガラクタ》を設置するところから始める。そして負けじと《Ancestral Recall》を唱えて、2枚ドローより1枚多い3枚のカードを手札に補充した。

湖に潜む者、エムリー魂標ランタン

次いで残った1マナで、《湖に潜む者、エムリー》を盤面に着地させる。8 Castのエンジンともいえるカードだが、壁屋は着地を許す。墓地に《Black Lotus》を含めた4枚のカードを落とした廣井は、やっと土地の《教議会の座席》を置き、《魂標ランタン》で壁屋の墓地にある《Black Lotus》を追放した。《湖に潜む者、エムリー》がいる状況であれば、ドローしつつ何度でも墓地のカードを追放できる。ひとまず墓地と盤面に反撃の手段を残した廣井は、壁屋にターンを渡した。

《湖に潜む者、エムリー》がいる以上、常にアーティファクトの再利用の危険性がある。とりあえず《魔力の墓所》のダメージを回避した壁屋としては、早々に除去するか、相手が莫大なアドバンテージを得る前に決着をつけたいところだ。

敏捷なこそ泥、ラガバン精神的つまづき

《Volcanic Island》《Mox Jet》を置いた壁屋は、またも《敏捷なこそ泥、ラガバン》で攻撃を仕掛けようとする。しかしこれは、廣井の手札に温存されていた《精神的つまづき》で打ち消された。アドバンテージ源を1つ失った壁屋だが、とりあえず《思考の監視者》で攻撃し、廣井のライフは16になる。

彼のターン終了時に、お返しとばかりに廣井が《ウルザのガラクタ》を起動。ランダムに見た壁屋の手札は《Volcanic Island》。これにより追加のドローを得た廣井は、《魂標ランタン》を起動してさらに手札を補充する。しかも今度は、エムリーの能力で墓地から回収するおまけつきだ。再び着地した《魂標ランタン》で壁屋の墓地のラガバンを追放した廣井は、ランタンを生贄に捧げてまたもドロー。

ここまでカードを引いた廣井が、別のアクションを挟んだ。《ウルザの物語》を出し、マナを捻出した廣井は《真髄の針》を唱えて、第Ⅱ章に至っていた壁屋の《ウルザの物語》を封じようとした。当然、彼はスタックで能力を起動し、構築物・トークンを戦場に出す。

相手が生成するトークンの数を最小限に抑えた廣井は、《ミシュラのガラクタ》を戦場に出して、即座に起動。壁屋のデッキトップを見ながら、手札の補充を図る。確実な勝利の手段を模索しているのか、それとも手段を手札に引き込もうとしているのか。

いずれにせよ、壁屋は静観していられない。ターンを得て、またも《魔力の墓所》のダメージを回避した壁屋が、《ウルザの物語》の第Ⅲ章で《師範の占い独楽》を戦場に送り込んだ。早速独楽を「回した」彼は、少し悩んだ様子でデッキトップのカードを戻す。

修繕Time Vault

そして追加の《Volcanic Island》を置いた壁屋が唱えたのは、デッキの名前でもある《修繕》《魔力の墓所》を生贄にして呼び出すのは、もちろん《Time Vault》

《多用途の鍵》と組み合わせれば簡単に無限のターンをもたらすコンボを見て、廣井は投了。先ほどまでのアドバンテージ合戦が嘘のように、あっさりと第1ゲームを壁屋がもぎ取った。

壁屋 1-0 廣井

Game 2

サイド後、廣井がマリガンを選択。壁屋は相変わらずのノーマリガンだ。

Mox JetAncestral Recall

先攻を得た廣井は《教議会の座席》《Mox Jet》《Ancestral Recall》と流れるように呪文を唱え、カードを3枚ドロー。それから《多用途の鍵》を設置してターンエンド。

これに対し、壁屋はファイレクシアマナを支払って《ギタクシア派の調査》を唱える。前方確認ほど安全をもたらしてくれるものはない──レガシー環境で禁止されるほどのスペックを持っているなら、より安心できる。

思考の監視者神秘の論争意志の力
Tundra島

廣井が見せた手札は《思考の監視者》《神秘の論争》《意志の力》《Tundra》《島》の5枚。アドバンテージ要員に土地、妨害手段もそろった手札だ。

ひとまず廣井の手札をメモして1枚ドローした壁屋は、《霧深い雨林》《Mox Pearl》の順に戦場に置き、ターンエンド。廣井にターンを渡すが、廣井も《教議会の座席》を置いただけに留まり、壁屋にターンを返す。相手に手札を消費させる好機だが、壁屋もドロー・ゴー(というのも、このとき壁屋の手札には《紅蓮破》が3枚もあった)。

敵のアクションを受け止めるだけのカードがある。そう判断するには十分すぎるターンの受け渡しを確認したうえで、廣井がついに動いた。《Mox Pearl》を置き、アーティファクトの数を確認してから、《思考の監視者》を2マナで唱えたのだ。

当然、壁屋が容認するはずがない。フェッチランドを切って《Volcanic Island》を持ってきた壁屋は、《紅蓮破》で打ち消しを図る。《意志の力》があると分かっていた壁屋だが、廣井がスタックで唱えたのはまったく別の《精神的つまづき》だった。

思考の監視者精神的つまづき意志の力神秘の論争

打ち消しを狙う廣井に対し、壁屋は虎の子の《意志の力》をピッチスペルとしてキャスト。《覆いを割く者、ナーセット》を捨ててまで打ち消しにかかったが、《神秘の論争》を前にあえなくおじゃんとなった。

こうして無事に《思考の監視者》を着地させた廣井は2枚ドロー。こうしてターンエンドかと思いきや、彼はとんでもないものを引いていた──2体目の《思考の監視者》だ!

さらにカードを引いた廣井は、お返しの《ギタクシア派の調査》を唱えて壁屋の手札を確認する。《修繕》《ダク・フェイデン》、2枚の《紅蓮破》の内容をメモして、《ウルザの物語》《Mox Emerald》を置き、ターンエンド。

相手の盤面を放っておけば、飛行軍団に加えて構築物・トークンまで攻め込んでくる。事態を重く見たようだったが、ドローで得た《汚染された三角州》を置いた壁屋はこれを起動せず、廣井にターンを渡した。

Time Vault

ここを好機ととらえたのか、廣井は攻撃だけでない勝利手段を繰り出す。手札から唱えられたのは、意趣返しと言わんばかりの《Time Vault》青いカードであれば対処できるはずの壁屋だったが、アーティファクト相手にはどうしようもなかったようで、ここで投了した。

壁屋 1-1 廣井

Game 3

壁屋、廣井ともに王手。泣いても笑っても、ここが最終決戦。壁屋はキープ、廣井は相当悩んだ末にマリガンを行い、ゲームが始まった。

そんな廣井が悩んだ手札を、壁屋が早速《ギタクシア派の調査》でチェック。正念場でキープを選んだ手札には、ライフを2点削ってでも見る価値がある。

思考の監視者ギタクシア派の調査覆いを割く者、ナーセット
トレイリアのアカデミー教議会の座席ウルザの物語

廣井の手札は《思考の監視者》《ギタクシア派の調査》《覆いを割く者、ナーセット》《トレイリアのアカデミー》《教議会の座席》《ウルザの物語》。悩んだだけあり、濃密な手札だ。壁屋はこの障害を乗り越えて、勝利しなければならない。

1ドローした壁屋はメモした相手の手札を確認しつつ、《Black Lotus》を設置。即座にマナを生み出し、1ゲーム目と同様に「疾駆」で《敏捷なこそ泥、ラガバン》を送り込んだ。

Black Lotus敏捷なこそ泥、ラガバン魔力の墓所

さらに《ウルザの物語》を置いた壁屋が、ラガバンで攻撃。廣井のライフを18に削り、宝物・トークンを1つ生成して、デッキトップをめくり手に入れたカードは、壁屋にさらなる行動を促す《魔力の墓所》当然それを戦場に出した壁屋だが、早急には動かず、ラガバンを手札に戻してターンエンド。

これに対し、ターンを得た廣井も《ギタクシア派の調査》を唱えて壁屋の手札を確認する。だが、かなり悩んだ末に壁屋は宝物・トークンを生贄に捧げて《紅蓮破》を唱えた。対策はないのか、廣井は対応せず《ウルザの物語》を置いてターンエンド。ひとまず、壁屋の情報は守られた。

ウルザの物語

さて、壁屋は《紅蓮破》を用いてでも守りたかった手札から追加の《ウルザの物語》を戦場に出してターンエンド。少なくとも2~3体の構築物・トークンが出る状況は、廣井にとって避けたいシチュエーションだ。

とはいえ、できることも少ないのか(あるいは好機をうかがっているのか)、廣井も《教議会の座席》を置いて壁屋にターンを渡す。相手が行動しなければ、出てくるのは当然《ウルザの物語》の構築物・トークンだ──しかも、2体だ。

しっかりとトークンを出してから、第Ⅲ章の能力で壁屋は《Mox Ruby》を戦場に出す。それから壁屋は、大いに悩んだ。悩みに悩みぬき、彼は決めた。《Volcanic Island》を置き、勝負を決めるプレインズウォーカー、《ダク・フェイデン》を戦場に送り込むことを!

ダク・フェイデン

これを処理しなかった廣井の前で、ダクは《教議会の座席》を奪い取る。これによりパワーが5に膨れ上がった構築物・トークンが、廣井に強烈な一撃を叩き込んだ!

ライフが11となった廣井は、ダクの登場でたちまち劣勢に追いやられるが、《ウルザの物語》《太陽の指輪》を持ってくる。そして《オパールのモックス》《トレイリアのアカデミー》と戦場に出し、《覆いを割く者、ナーセット》を繰り出す。ナーセットの能力で《Time Walk》を手札に加えた廣井だが、眼前に並ぶ構築物・トークンへの回答とはならない。

ターンを終了した廣井に対し、壁屋はさらに構築物・トークンを1体増やすと、第Ⅲ章の能力で《Mox Sapphire》を置いた。そして万全を期すために、彼が手札から放ったのは、「複製」で2枚のマナアーティファクトを狙い撃ちした《破壊放題》

破壊放題

必至に対策を考える廣井だが、もはや打つ手なし。アーティファクト対策カード2枚を前に、廣井が投了を選択し、勝敗は決した。

壁屋 2-1 廣井


壁屋 敦史

第6期関西帝王戦ヴィンテージ、優勝は壁屋 敦史!おめでとう!

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