USA Modern Express vol.82 -独創力が勝利のカギ-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

テーブルトップでも『団結のドミナリア』がリリースされて2週間が経ちましたが、みなさんはモダンを楽しんでいますか?

さて、今回の連載ではModern Showcase ChallengeとModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Modern Showcase Challenge #12473562
『団結のドミナリア』の新カードによって強化された多色デッキ

2022年9月17日

  • 1位 Creativity Combo
  • 2位 Hammer Time
  • 3位 4C Omnath
  • 4位 Creativity Combo
  • 5位 Eldrazi Tron
  • 6位 Grixis Shadow
  • 7位 4C Omnath
  • 8位 Amulet Titan

トップ8のデッキリストはこちら

『団結のドミナリア』の新カード《力線の束縛》は、Creativity Comboや4C Omnathなど多色デッキの安定性の向上に貢献しています。

現環境で人気なIzzet Ragavanは、《力線の束縛》の登場によって《濁浪の執政》が処理されやすくなり、以前よりも厳しくなったのか今大会ではプレイオフでは見られませんでした。

Creativity Comboなど全体的にコンボデッキが強い環境です。

デッキ紹介

Creativity Combo

ここ最近結果を残し続けているのがこのCreativity Combo。デッキの詳しい動きについては、前回の連載でも取りあげています。

《ドワーフの鉱山》でトークンが出るように、「山のタイプを持つ土地」と「それらをサーチできるフェッチランドのみ」でマナ基盤が構築されています。《不屈の独創力》から《残虐の執政官》をサーチすることがこのデッキの主な勝ち手段になります。

コンボをケアしつつ《レンと六番》のようなプレインズウォーカーなど異なるタイプの脅威を同時に対策するのは容易ではなく、4C Omnathなど多くのフェアデッキに対して有利がつきます。

☆注目ポイント

レンと六番

多色デッキのマストとして定着している《レンと六番》は、《敏捷なこそ泥、ラガバン》などタフネス1のクリーチャーを除去したり、毎ターン確実に土地を置くことを可能にします。フェッチランドを墓地から回収することができるので、4ターン目には《ドワーフの鉱山》からトークンが出しやすくなるようになり、コンボが決まりやすくなります。

プリズマリの命令

《プリズマリの命令》は地味ながら《不屈の独創力》で対象にできるトークンを生み出すことができ、コンボパーツを探し出す助けにもなります。このカードのもっとも優れている点は、メインから無理なく採用できるアーティファクト対策ということにあり、Hammer Timeに対しても有利がつきます。

エメリアの盾、イオナ

基本的にフィニッシャーは《残虐の執政官》で十分ですが、Burnや「続唱」デッキなど特定の戦略をシャットアウトすることができる《エメリアの盾、イオナ》が、追加の勝ち手段としてサイドに忍ばせてあります。

4C Omnath

Creativity Comboなど厳しいマッチアップが増えてきたものの、まだまだ健在のモダンを代表するミッドレンジ。フェッチランド、ショックランド、トライオームによる強固なマナ基盤のおかげで環境最高の脅威と解答にアクセスすることができ、アドバンテージ源も豊富です。

ウルヴェンワルド横断儚い存在敏捷なこそ泥、ラガバン

今大会で結果を残していたのは《ウルヴェンワルド横断》などを搭載した「昂揚」バージョンでしたが、《儚い存在》でクリーチャーを使いまわしてアドバンテージを取るバージョンや、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したバージョンなど、メタによってカスタマイズができるところもこのデッキの特徴です。

☆注目ポイント

レンと六番時を解す者、テフェリー

多色デッキにとって《レンと六番》の存在は大きく、マナ基盤を序盤から整えてくれます。《時を解す者、テフェリー》も「続唱」やカウンターを無力化するため、多くのマッチアップで重要なプレインズウォーカーになります。これらのプレインズウォーカーなどでアドバンテージを取り、フィニッシャーの《創造の座、オムナス》へとつないでいきます。

虹色の終焉孤独邪悪な熱気Leyline Binding

多色コントロールの強みは各色から優秀な除去にアクセスできることです。

《虹色の終焉》環境の幅広い脅威に対する解答となる万能除去になります。

《孤独》は序盤の猛攻を食い止め、中盤以降はアドバンテージを取ることができます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》と組み合わせることで、さらにアドバンテージ差を広げることができるので相手にとっては脅威となります。

《邪悪な熱気》はこのデッキでも効率的な除去として定着しています。《ウルヴェンワルド横断》バージョンは「昂揚」を達成するために《ミシュラのガラクタ》なども採用しているため、ほぼ1マナの確定除去として機能します。

多色デッキなので「版図」を活用しやすいため、《力線の束縛》はこのデッキにも採用されています。実質1マナのインスタント除去を手に入れたことでより対応力が上がりました。《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性が良いのもポイントです。

ウルヴェンワルド横断

最近の多色コントロールは《ウルヴェンワルド横断》を採用した形が主流になっています。Living Endに有効な《忍耐》や除去になる《孤独》、TronやAmulet Titanに対しては《月の大魔術師》、コントロールミラーの切り札となる《約束された終末、エムラクール》などマッチアップに合わせて有効なクリーチャーをサーチできます。

また《耐え抜くもの、母聖樹》もサーチすることができるので、コントロールにとって厄介な土地である《ウルザの物語》を対処できます。《ウルヴェンワルド横断》は墓地の状況に依存するという弱点を抱えているのも事実ですが、それでも十分に有用なサーチスペルです。

Grixis Shadow

《力線の束縛》の登場によって《濁浪の執政》が対処されやすくなってきたのと、コンボデッキの台頭によりGrixis Shadowが環境最高の《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキとして再評価されています。

Grixis Shadowは《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》などの効率的な脅威に、《表現の反復》によるカードアドバンテージで攻め続けます。

同じようなデッキであるIzzet Ragavanとの違いは、《未認可霊柩車》《忍耐》といった墓地対策に耐性があるところです。デッキ名にもなっている《死の影》は、《濁浪の執政》と異なり相手の墓地対策によって無力化されることもありません。

☆注目ポイント

死の飢えのタイタン、クロクサ

最近は墓地対策が厳しいためメインに1枚だけの採用ですが、《死の飢えのタイタン、クロクサ》たとえ除去されてしまってもすでに仕事済なので、フェアデッキにとって非常に脅威となります。

《濁浪の執政》を採用していないGrixis Shadowは、Izzet Ragavanと異なり墓地対策による効果が薄いのでこのカード1枚のために墓地対策をサイドインすることはあまり得策とは言えず、相手にとっても悩ましい選択となります。

終止稲妻致命的な一押し

メインの除去枠はメタやプレイヤーのスタイルによって個性が見られる部分です。《濁浪の執政》に対する解答になる《終止》や、除去兼火力の《稲妻》など選択肢はさまざまですが、《帳簿裂き》や同型の《死の影》など環境の多くの脅威に対して効果のある《致命的な一押し》が最適な選択肢のようです。

仕組まれた爆薬激しい叱責

効率的な脅威、除去、ハンデス、アドバンテージソースと一通りそろっているので、メインから環境の多くのデッキに対応できます。《仕組まれた爆薬》はTemur CascadeやHammer Time、《ウルザの物語》のトークンなどを一掃することができ、横に並ばれると厳しいGrixis Shadowにとって重要なサイドカードになります。

《激しい叱責》《ウルザの物語》のトークン対策だけでなく、《死の影》を一時的に13/13にしたり、《死の飢えのタイタン、クロクサ》を場に留まらせることができます。

漆月魁渡

サイドのカードで一番目を引くのは《漆月魁渡》です。軸をずらしたプレインズウォーカーは、特にクリーチャー除去を多用するコントロールデッキとのマッチアップで活躍しそうです。

Modern Challenge #12473597
独創力が試される環境

2022年9月18日

  • 1位 Creativity Combo
  • 2位 Izzet Ragavan
  • 3位 Dredge
  • 4位 Amulet Titan
  • 5位 Rakdos Grief
  • 6位 Izzet Ragavan
  • 7位 Golgari Yawgmoth
  • 8位 Rakdos Grief

トップ8のデッキリストはこちら

Showcase Challengeでも優勝していたCreativity Comboは、今大会でも優勝と圧倒的な強さを見せます。《力線の束縛》を得たことは大きく、Izzet Ragavanとのマッチアップでより安定したゲームを展開できるようになりました。

また、Showcase Challengeでは振るわなかったIzzet Ragavanは、今大会では優勝こそ逃したものの再び上位に舞い戻ってきました。

デッキ紹介

Izzet Ragavan

《邪悪な熱気》《対抗呪文》がもたらす柔軟性は変わらず、Golgari Yawgmothなどやや不利なマッチアップは存在するものの、調整とプレイング次第で環境の多くのデッキに対して互角以上に渡り合えるため、新環境になってもトップメタの一角として常に上位で見かけるデッキの一つです。

『団結のドミナリア』がリリースされる前の環境でもデッキとしてはすでに完成されていた感がありますが、今大会でスイスラウンドを無敗で通過して準優勝したRyanWuのリストは、一般的なリストといくつか異なるアプローチが施されていました。

☆注目ポイント

ドラゴンの怒りの媒介者

最近は同型よりもCreativity ComboやAmulet Titanといったコンボデッキも幅を利かせているため、《帳簿裂き》よりも《ドラゴンの怒りの媒介者》が優先されています。

緻密

主にAmulet Titanに対してサイドインされることが多い《緻密》ですが、このデッキではメインに採用されています。クロックの速い《ドラゴンの怒りの媒介者》《魂の洞窟》からの《原始のタイタン》を対処しやすくなったので、メインから優位に立ち回れるようになりました。また、多色コントロールやCreativity Comboとのマッチアップでも後手の際にカウンターすることが難しい《レンと六番》を対処することもできます。

呪文嵌め呪文貫き

自由枠のカウンターとして採用されている《呪文嵌め》は、多色デッキの《レンと六番》や同型の《帳簿裂き》《表現の反復》《対抗呪文》、Hammer Timeの《純鋼の聖騎士》《石鍛冶の神秘家》などいろいろな脅威に対応できます。

2枚の《呪文貫き》と合わせると、RyanWuのリストは一般的なリストに比べて後手時でも2ターン目にプレイされる《レンと六番》を対策しやすいように調整されているようです。

総括

不屈の独創力原始のタイタン死の影

Creativity ComboやAmulet Titanなどコンボデッキが結果を残し続けており、コンボデッキに強いGrixis Shadowも復権してきました。

『団結のドミナリア』からの新カードによって強化された各種部族デッキですが、アドバンテージを稼ぐ手段が豊富でコンボによる瞬殺プランも搭載されたGoblins以外は、小型クリーチャーを一度に複数除去できる《激情》を多くのデッキが採用していることもあり厳しい印象です。

USA Modern Express vol.82は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら