はじめに
10月10日、禁止制限告知が発表され、スタンダードとモダンでそれぞれ1枚ずつ禁止カードが発表されました。
スタンダードは《食肉鉤虐殺事件》、モダンからは《空を放浪するもの、ヨーリオン》でした。前者はスタンダードにおける黒の強さを不動のものとし、後者はデッキ構築の自由化を促しました。どちらのカードも構築環境に多大な影響を及ぼしてきました。
去り行くカードに追悼の意を込めて、今回は禁止になったカードを振り返って行きます。
スタンダード
《食肉鉤虐殺事件》は『イニストラード:真夜中の狩り』で登場した全体除去付きのエンチャント。過去の《絶滅の契機》や《衰滅》などとの違いは、戦場を一掃した後も効果を発揮し続ける本体の存在でした。《血の芸術家》や《ズーラポートの殺し屋》の亜種であるこのエンチャントはゲームが長引けば長引くほどライフレースに影響を及ぼすカードでした。
スタンダードでは黒単ミッドレンジをはじめ、環境を代表するミッドレンジデッキには必ずといっていいほど採用されていました。これ1枚で速度を武器にしたアグロ戦略は瓦解し、せっかく削ったライフも回復されてしまいます。「あと、1ターンで削りきれる」と思ったところから急転直下、その1ターンは永遠に訪れません。
《ヴェールのリリアナ》とタッグを組むことで、数を並べるアグロ戦略と単体のスタッツで突破を狙うミッドレンジ戦略の両方に対処できました。単体でも組み合わせでも、黒系ミッドレンジ戦略の防御面を支えていたのです。
モダン
《空を放浪するもの、ヨーリオン》は『イコリア:巨獣の棲処』を代表する「相棒」クリーチャーであり、世のミッドレンジ-コントロール好きがこぞって愛用していました。デッキの総枚数の増加を肯定しつつ、戦場へ出たときの誘発型能力を持つパーマネントとシナジーを形成していたのです。
レンアンドオムナスはその最たる例です。60枚へと落とし込むことが難しいカードパワーの群れを《空を放浪するもの、ヨーリオン》がまとめ上げ、デメリットを「相棒」が打ち消し、デッキとしての形を成したのです。単体でアドバンテージをもたらす《氷牙のコアトル》や《激情》を使いまわし、ときにはプレインズウォーカーの忠誠度の回復役となりました。緊急時には《孤独》の代替コストにも。
また、デッキ総数が増えたことで、さまざまなパッケージが盛り込まれているのも特徴でした。デッキ内のマナコストを調節することで「続唱」から確実に《衝撃の足音》をプレイできるようにしたり、マナベースを調節して《風景の変容》から《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》による一撃コンボを内蔵した構築も見られました。
禁止改定後の環境について
スタンダード
強力な全体除去を失ってしまいましたが、《黙示録、シェオルドレッド》や《絶望招来》などがあり、黒系ミッドレンジは環境に残り続けることになります。注意すべきは《食肉鉤虐殺事件》よって押さえつけられていたアグロデッキとの力関係の変化にあります。
細いボディが問題視されていた単色アグロは、確実に増えていきます。いくら除去の豊富な黒といえど、単体除去のみではすべての小型クリーチャーをさばくことはかないません。《黙示録、シェオルドレッド》の横をすり抜けるクリーチャーによってライフを削りきられてしまう可能性が出てきています。
モダン
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を失ったことで、レンアンドオムナスは以前通り60枚の構築へと戻りそうです。ただし、モダンの広いカードプールから適切な60枚へ絞り込むのは至難の業。最適なデッキ構築が《空を放浪するもの、ヨーリオン》亡き世界のスタート地点となります。
その一方で、カウンターモンキーやハンマータイム、《不屈の独創力》コンボなど無傷なデッキが多いのもモダンの特徴。先日開催された第21期モダン神挑戦者決定戦では、さまざまなアーキタイプが上位に見られました。多用な環境が維持されていきそうです。
カウンターモンキー
ハンマータイム
《不屈の独創力》コンボ
おわりに
2枚のカードが去ったことで、スタンダードとモダンの両フォーマットは新たなステージへと歩を進めます。スタンダードではアグロと黒系ミッドレンジによる覇権争いが始まり、モダンでは《創造の座、オムナス》を軸として構築の最適化が急務です。その間にもズル賢いサルや機械生物は着々と勢力を拡大しているのですから。今後、これらのフォーマットがどのように変化するのか、要注目ですね。
こちらは動画でも解説しています。ぜひご覧ください!