はじめに
みなさんこんにちは。
Legacy Showcase Challengeが終了し、アメリカでは大規模なテーブルトップのイベントであるThe Legacy Pit Open Ⅱが開催されて充実していました。
そして気になる禁止制限告知。《表現の反復》や《濁浪の執政》あたりが禁止になると話題でしたが、今回も変更なしでした。
公式の声明によると《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止になって以来、勝率が低下していることに加えて《未認可霊柩車》や《鏡割りの寓話》など新カードの影響もあり、環境の健全性を脅かすほどではないとの判断だったようです。
さて、今回の連載ではLegacy Showcase ChallengeとThe Legacy Pit Open Ⅱの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Showcase Challenge #12476791
『団結のドミナリア』のあのカードがレガシーでも大活躍
2022年9月25日
- 1位 Doomsday
- 2位 Naya Depths
- 3位 Mono Red Stompy
- 4位 Mono Black Helm
- 5位 Mono Red Stompy
- 6位 4C Control
- 7位 Izzet Delver
- 8位 8 Cast
トップ8のデッキリストはこちら
Legacy Showcase Challengeということでプレイオフには強豪プレイヤーが名を連ねています。
Mono Red StompyやMono Black Helmといった、メインからIzzet Delverに刺さるカードを搭載したデッキが多く勝ち残っていました。
そんななかで最終的に優勝を収めたのは、Maxtortionが使うDoomsdayでした。
デッキ紹介
Doomsday
今やレガシーを代表するコンボデッキの一つとして定着しているDoomsday。
バージョンによっては《濁浪の執政》などコンボ以外の勝ち手段を搭載したものも見られますが、《最後の審判》を通して《タッサの神託者》によって特殊勝利を目指す純正のコンボバージョンがもっともポピュラーで成功を収めています。マナ加速を利用することで早い段階から仕掛けることも容易で、ハンデスやカウンターによって《最後の審判》を無理やり通すこともできます。
☆注目ポイント
このリストで印象的なのは、サイドに採用されている《黙示録、シェオルドレッド》です。『団結のドミナリア』の新カードはレガシーでも通用する逸材だったようです。
《船殻破り》のように《渦まく知識》などキャントリップ対策になり、《紅蓮破》にも耐性があるのでIzzet Delverにとって非常に厄介なクリーチャーとなります。サイド後は相手のデッキから除去が減るので《暗黒の儀式》から2ターン目にプレイしても対処されづらく、解答を探しに行こうとすると多くのライフを失ってしまいます。
《敵対工作員》は《暗黒の儀式》によって早い段階からプレイすることができ、追加の勝ち手段として申し分ない性能を持っています。特に同型、Death and Taxesなどライブラリーサーチを頻繁にするデッキとのマッチアップで活躍します。
Mono Black Helm
レガシーの黒単といえば最近活躍していた《暗黒の深部》コンボを搭載したMono Black Depthsでしたが、今回入賞を果たしたのは黒単色の《Helm of Obedience》コンボでした。
《ダウスィーの虚空歩き》+《Helm of Obedience》による瞬殺コンボがこのデッキの主な勝ち手段で、《暗黒の儀式》や《金属モックス》、2マナランドによるマナ加速の助けもあり、比較的早い段階から仕掛けることができます。
コンボ以外でも《敵対工作員》《大いなる創造者、カーン》《黙示録、シェオルドレッド》など、ほかの勝ち手段や相手の行動を縛るカードがあり強力なものがそろっています。
☆注目ポイント
メインからフル搭載された《虚空の力線》はReanimatorやDredgeに刺さるだけでなく、《濁浪の執政》《ドラゴンの怒りの媒介者》の「探査」や「昂揚」対策にもなります。
もちろんコンボパーツでもあるので、0ターン目から設置することができればマナ加速と合わせて2-3ターン目に勝利することも可能です。
《大いなる創造者、カーン》はコンボ以外の追加の勝ち手段で、主に《マイコシンスの格子》をサーチして相手をロックすることになります。また、コンボパーツの《Helm of Obedience》やクリーチャーによる攻撃をシャットアウトする《罠の橋》など状況に応じてサーチできる優秀なカードです。
新戦力《黙示録、シェオルドレッド》がこのデッキではなんとメインから4枚採用されています!
スタンダードとは違い、ハンデスでバックアップしながら《暗黒の儀式》で早期着地するので相手が対処できたころには大量のライフを失っていることも少なくありません。Doomsdayのサイドにも採用されており、現在もっとも注目を集めているカードの1枚で今後もよく見られそうです。
The Legacy Pit Open Ⅱ
最後に勝ち残ったのは王者デルバー
2022年10月1日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Ruby Storm
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Elves
- 6位 8 Cast
- 7位 Grixis Tempo
- 8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストはこちら
The Legacy Pit Openはアメリカのレガシーコミュニティーにとって最大級のイベントで、2日制でGPのようなイベントです。また今大会の優勝者には、賞金のほかにチャンピオンベルトも与えられました。
300名を超える参加者と大盛況で、メインイベントであるThe Legacy Pit Open ⅡはAnuraag Das氏を始めとしたレガシーのエキスパートや有名配信者による解説も行われるなど非常に豪華なイベントでした。
トップメタのIzzet Delverは全体の17パーセント以上を占める人気があり、優勝も含めてプレイオフに3名という安定した勝率を出しています。
Izzet Delverの次に人気があったのはSelesnya Depthsでしたが、上位には少数でした。《時を超えた英雄、ミンスクとブー》という新戦力を得て台頭してきたコントロールも人気があったものの、コンボデッキとのマッチアップが厳しかったためか上位には少数となっています。
デッキ紹介
Ruby Storm
レガシーでストームといえば《むかつき》を使ったANTですが、《語りの神、ビルギ》という強力なエンジンが登場したことによって赤単色のストームコンボが見られるようになりました。
ほかのストームコンボと同様に「儀式」スペルやマナアーティファクトによって多くのマナを捻出し、《電位式リレー》などに繋げてカードを大量に引きます。最終的に《燃え立つ願い》や《願い》といった「願い」スペルから《巣穴からの総出》《ぶどう弾》《苦悶の触手》といった勝ち手段をサーチしてきて勝利します。
定番のコンボである《ライオンの瞳のダイアモンド》+《永劫のこだま》が搭載されており、《防御の光網》を張っておくことで反撃の隙を与えません。《深淵への覗き込み》はマナ総量は7と重いものの、《むかつき》以上のカードアドバンテージを提供するのでライフの半分を支払う価値があります。
☆注目ポイント
今回入賞したリストの特徴は、なんといっても必須だと思われていた《ルビーの大メダル》が不採用なところです。
このデッキのエンジンとして機能していた《ルビーの大メダル》でしたが、《語りの神、ビルギ》で十分ということでしょうか。その分《猿人の指導霊》《オパールのモックス》《厳かなモノリス》といったマナ加速が多めに採用されており、安定してマナを確保できるような調整が施されています。
《語りの神、ビルギ》はこのデッキをトーナメントレベルにまで押し上げたカードです。《水蓮の花びら》や《オパールのモックス》といった0マナアーティファクトをプレイすることで、ストームを稼ぎつつマナを生成することができるようになります。第2面はマナ総量こそ重いものの優秀なアドバンテージエンジンとして機能します。
《ジェスカの意志》なども不採用でカードアドバンテージを稼ぐ手段は《電位式リレー》と《ライオンの瞳のダイアモンド》+《永劫のこだま》のみです。その分《永劫のこだま》はメインとサイドと合わせてフル搭載されているので一貫性のある構成になっているといえます。
サーチスペルとして採用されているのが《ギャンブル》で、《ライオンの瞳のダイアモンド》を使わずに《永劫のこだま》を墓地に落とす手段としても使えます。《ギャンブル》をメインのサーチスペルとして使用していることから、今大会ではGamble Stormとも呼ばれていました。
《強迫》や《夏の帳》といった妨害スペルを使えないので、メインから《防御の光網》をフル搭載することによって青いデッキにも耐性を付けています。ほかにも青対策として採用されている《圧服》は、キャントリップスペルなのでカウンターを使用しない相手に対しても無駄になりにくいスペルです。
8 Cast
レガシーのエキスパートであるBob Huang氏は、Legacy Showcase Challengeでも同様のデッキでプレイオフに入賞していました。
このデッキは、軽いアーティファクトを多数置いて《思考の監視者》や《物読み》でアドバンテージを稼ぎ、《練達飛行機械職人、サイ》によって飛行機械・トークンを多数生成して相手を圧倒します。
☆注目ポイント
大量の0マナアーティファクトにより、《練達飛行機械職人、サイ》の強さを活かしやすい構成になっています。《濁浪の執政》に対するブロッカーを安定して提供し続けられるため、Izzet Delverに対して非常に強いクリーチャーです。
メインから採用されている《未認可霊柩車》もIzzet Delverに有効で、コンボ、フェア問わず活躍してくれます。《上天の呪文爆弾》や《天上都市、大田原》など、《濁浪の執政》や《マリット・レイジトークン》を対処する手段が豊富なのもこのデッキの特徴です。このように、メインのカードを数枚調整するだけでもマッチアップの相性を改善させることができます。
Grixis Tempo
今大会でもっとも印象に残ったリストは、Samantha Murphy氏のGrixis Tempoでした。
《最後の審判》コンボは、リストによってはコンボまでの時間稼ぎ兼カードアドバンテージ源として《悪意の大梟》が採用されていましたが、《濁浪の執政》を加えることでフェアなゲームプランでも勝てるような構成にしてあるのがこのテンポバージョンです。
Delverのテンポ戦略と《最後の審判》コンボという一見すると矛盾する2つの異なる戦略を搭載していますが、マッチアップによって役割を変えることができるところがこのデッキの特徴です。
Izzet Delverとのマッチアップでは、除去と《悪意の大梟》《表現の反復》でミッドレンジ寄りのテンポとして振舞い、Selesnya Depthsなどに対しては《最後の審判》コンボとしてゲームプランを立てていくことになります。
フェアデッキのようにじっくりと腰を据えてプレイしつつ、相手が《濁浪の執政》など脅威を対処するためにリソースを費やしたり隙を見せた際に《最後の審判》コンボを決めるというプランは非常に対処が難しく、対戦難易度が高い戦略となります。
☆注目ポイント
《最後の審判》コンボと《濁浪の執政》は異なる解答を要求します。たとえばコントロールにとっては、《最後の審判》コンボに対して無駄カードになりやすい《剣を鍬に》を残しておくのはリスクが大きいため、こういったハイブリット戦略は相手にとっては非常に厄介と言えます。
《表現の反復》はミッドレンジプランを実行する際のアドバンテージ源として重宝し、《神秘の聖域》で使いまわす動きは非常に強力です。赤をタッチすることで《紅蓮破》を使うことができ、《激しい叱責》からDoomsdayコンボを守るためにも使えます。
サイドの《厚かましい借り手》は《マリット・レイジトークン》や各種置物対策としてフレキシブルな選択肢となります。《碑出告が全てを貪る》 は1マナのパーマネントを一掃することができるため、主にIzzet Delverのクロックを減速させるために使用することになります。
総括
現環境トップメタのIzzet Delverは大きな大会では常に全体の20パーセント近くを占めていますが、公式が禁止を出すときの基準の一つとされている勝率55パーセント以上には達しておらず、さまざまなデッキを上位で見られるのも現状です。
しかし多くのデッキが《表現の反復》を採用しており、Doomsdayを採用したバージョンが見られるなど引き続き入念に観察していく必要があることは確かです。
USA Legacy Express vol.206は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!