はじめに
みなさんこんにちは。
10月10日に禁止制限告知がありました。《空を放浪するもの、ヨーリオン》の退場は、特にテーブルトップをメインにプレイしている人にとってはそれほど驚くべきニュースではなかったでしょう。80枚という「分厚いデッキ」の扱いの困難さと、フェッチランドなどサーチ手段によってゲームが長引きやすいというテーブルトップ特有の問題は公式でも取りあげられていました。
しかしツイッターなどSNS上では、そもそもフェッチランドを回収したり、タフネス1のクリーチャーをシャットアウトする《レンと六番》のほうが問題ではという意見も散見されています。
さて、今回の連載では《空を放浪するもの、ヨーリオン》退場後の環境を見ていきたいと思います。
Modern Showcase Challenge #12485578
《空を放浪するもの、ヨーリオン》亡き後のモダン環境は猿の天下
2022年10月15日
- 1位 Izzet Ragavan
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Rakdos Midrange
- 4位 Goblins
- 5位 Golgari Yawgmoth
- 6位 Izzet Ragavan
- 7位 Creativity Combo
- 8位 Urza
トップ8のデッキリストはこちら
禁止改定後、初の大規模なイベントであるModern Showcase Challenge。《空を放浪するもの、ヨーリオン》が禁止されたことで弱体化を強いられた多色コントロールは数を減らし、旧環境でも常にメタの上位を維持していたIzzet RagavanやCreativity Combo、Golgari Yawgmothなどが順当に結果を残していました。
しかし、《空を放浪するもの、ヨーリオン》禁止後の環境でも多色コントロールの可能性が模索されており、60枚バージョンの多色コントロールも9位と好成績を残していました。また『団結のドミナリア』から新戦力を獲得して強化された部族デッキ・Goblinsも見られます。
デッキ紹介
Izzet Ragavan
Izzet Ragavanは多色コントロールとの相性が悪かったため、今回の禁止改定の恩恵を受けているデッキのひとつです。
《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《帳簿裂き》《濁浪の執政》の4種類の脅威は除去されても何かしらのアドバンテージを得られることが多く、それぞれ異なる解答を要求します。コストも軽くすべて単体でゲームを終わらせるパワーがあり、それらをカウンターやアドバンテージ源である《表現の反復》でバックアップしていくという強力な戦略は健在です。
軽いクロックとカウンターのおかげで環境に残ったLiving Endや土地コンボと相性が良く、環境によって調整が効くフレキシブルさもこのデッキの強さを後押ししています。
☆注目ポイント
コントロールが数を減らし、コンボやアグロデッキが増加傾向にある環境では《大魔導師の魔除け》は遅すぎるため、最近は軽い《呪文貫き》が選択される傾向にあります。これらのパーツは固定ではなく、環境やメタによって変動する枠になります。
メインに採用された《血染めの月》は、1ゲーム目はケアされづらくいろいろなマッチアップで活躍します。最近では《力線の束縛》を活用するためにトライオームやショックランドを増量しているデッキが多く、《血染めの月》が刺さりやすくなっています。
一時期は《ドラゴンの怒りの媒介者》の代わりに《帳簿裂き》を優先したリストが流行しましたが、コンボデッキの増加と《レンと六番》の減少により、クロックとして優秀な《ドラゴンの怒りの媒介者》も再び採用されることになりました。
サイドの追加のカウンターも《狼狽の嵐》や《侵襲手術》といった1マナのカウンターが多めに採用されており、同じターンに複数のアクションがとれるように調整されています。
Golgari Yawgmoth
Izzet Ragavanと同様に、相性が悪かった多色コントロールの弱体化によって相対的に強化されたGolgari Yawgmoth。旧環境でも常に上位入賞する強さで、今大会でもしっかりと結果を残しています。
このデッキはIzzet Ragavanに強いため、禁止改定後の環境でも有力な選択肢になり得ます。
☆注目ポイント
基本的なデッキ構成は旧環境のものと変わらず、《スランの医師、ヨーグモス》+2体の「不死」クリーチャー+《血の芸術家》の無限ループコンボが主な勝利手段です。
たとえコンボによる勝利につながらなかったとしても、《スランの医師、ヨーグモス》を何度も起動することで相手のクリーチャーを除去しつつアドバンテージを得ることができます。
このデッキは《異界の進化》や《召喚の調べ》といったサーチスペルによって、安定してコンボパーツをそろえることができます。また《力線の束縛》が散見される現環境では、《耐え抜くもの、母聖樹》は今まで以上に重要な土地となります。
《飢餓の潮流、グリスト》は《濁浪の執政》に対する解答になり、《異界の進化》や《召喚の調べ》からもアクセス可能なためコンボ以外の勝ち手段として活躍します。[-2]能力は「不死」クリーチャーと相性が良く、生成した昆虫・トークンも《スランの医師、ヨーグモス》によってドローに変換することができます。
墓地対策には《忍耐》が採用されていることが多いですが、サーチ用として1枚のみとなっており、《未認可霊柩車》が優先的に採用されています。Izzet Ragavanに対して「探査」や「昂揚」を妨害でき、マナ総量と搭乗コストともに軽くDemonicTutors本人も絶賛していました。
現在あらゆる構築フォーマットで活躍している《黙示録、シェオルドレッド》も採用されています。カードをドローする度にライフを回復できる能力は、《スランの医師、ヨーグモス》とも相性が良く追加の脅威として有力な印象ですが、本人がModern Showcaseを振り返る動画ではあまり活躍しなかったとコメントしており、次のイベントに参加する際はほかのカードを採用するそうです。
Rakdos Midrange
ミッドレンジやコントロールにとってアドバンテージの面で圧倒的に不利なマッチアップだった多色コントロールが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を失い弱体化したことで復権を果たしたRakdos Midrange。
《稲妻の骨精霊》など独特のカードチョイスが印象的で、ハンデスや除去、《歴戦の紅蓮術士》《コラガンの命令》といったロングゲームを意識したカードも多数見られます。
☆注目ポイント
《稲妻の骨精霊》や《戦慄の朗詠者、トーラック》といった攻めながら相手のプランを妨害するカードがメインから多く、コントロールやコンボを意識した構成になっています。
このタイプのミッドレンジはLiving Endなどコンボデッキを苦手とするため、《ダウスィーの虚空歩き》というメインから無理なく運用できる墓地対策は重要になります。クロックとしても優秀で、Rakdosカラーのミッドレンジを選択する理由のひとつになります。
《歴戦の紅蓮術士》は不要になったハンデスや除去を有効牌に変換することでバリューを得ることができます。
サイドには《血染めの月》《虚空の杯》《未認可霊柩車》など特定のマッチアップに刺さるカードが多く採用されているため、メインで不利なマッチアップでもサイド後に大きく改善させることができます。
Modern Challenge #12485613
新環境のコントロールデッキ
2022年10月18日
- 1位 Azorius Control
- 2位 Domain Zoo
- 3位 Rakdos Grief
- 4位 Burn
- 5位 Burn
- 6位 Jeskai Underbreach
- 7位 Scapeshift
- 8位 Living End
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先週末に開催されたModern Challengeは、コントロール・アグロ・コンボとさまざまなアーキタイプが結果を残していました。
優勝したのはAzorius Controlですが、《力線の束縛》を活用するためにトライオームを採用したバージョンになっており、新環境を代表するコントロールの形として要注目です。
《力線の束縛》は準優勝のDomain Zooにも採用されており、現環境の必須除去として定着しています。
デッキ紹介
Azorius Control
カードパワーで勝る多色コントロールは苦手なマッチアップでしたが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の退場によって新環境のコントロールデッキとして復権の兆しを見せています。
Azorius Controlは現環境で数少ない「相棒」を活用できるデッキです。《孤児護り、カヒーラ》によって《孤独》のピッチコストを確実に手に入れることができるため、このデッキを使うならぜひ採用したい「相棒」です。
苦手なマッチアップの減少に加えて、新環境ではIzzet RagavanやHammer Time、「続唱」デッキなど有利なマッチアップが多いこともこのデッキを選択する理由になります。
☆注目ポイント
「続唱」デッキとのマッチアップで有利を取るためにメインから《虚空の杯》が採用されています。X=0や1で設置することで環境のさまざまなアーキタイプをシャットアウトすることが可能です。《時を解す者、テフェリー》も同様で、このデッキには相手の行動を著しく制限させるカードが多数搭載されています。
《孤独》や《虹色の終焉》など強力な除去を擁するデッキですが、それらに加えて《力線の束縛》という優秀な除去が加わりました。マナベースに若干の負担がかかりますが、このカードのために《ゼイゴスのトライオーム》や《繁殖池》を増やす価値はあります。また、捻出できる色マナの種類を増やすことで《虹色の終焉》で追放できるパーマネントの範囲も広がります。
サイドに採用されているカードについても解説していきます。《神聖なる月光》は最近見かけるようになったカードで、《封じ込める僧侶》と異なりトークンも追放することができるため、Living EndやCreativity ComboだけでなくCascade Crashにも有効です。
《緻密》は主に多色コントロール対策として旧環境から採用されていましたが、新環境でも《魂の洞窟》からプレイされる《原始のタイタン》などを対策できるので引き続き採用することを推奨します。
総括
先週末のイベントで上位に残ったのは、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の禁止による恩恵を受けたIzzet RagavanやGolgari Yawgmoth、Rakdos Midrange、Azorius Controlなど多色コントロールを苦手としていたアーキタイプが中心でした。
「続唱」デッキやCreativity Comboも新環境では健在ですが、これらのデッキが得意としていた多色コントロールが衰退したこととIzzet Ragavanなどが増加したこと、Azorius Controlの復権によって立ち位置は若干悪くなった印象です。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》はカードの強さだけでなくテーブルトップイベントでの問題もあり、今回の変更には筆者も賛成です。《夢の巣のルールス》に続いて禁止ということで、「相棒」メカニズムそのものが強すぎたことを改めて認識させられる結果となりました。
USA Modern Express vol.84は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!