はじめに
こんにちは、Hareruya Prosの佐藤 啓輔です。
チャンピオンズカップ予選サイクル1が終了し、11月に名古屋で行われるチャンピオンズカップファイナルの開催を待つばかりになりました。
しかし、息つく暇もなく新たな予選が全国各地で始まっています。サイクル2で中心となるフォーマットはスタンダードです。
というわけで、今後触れる機会が多いであろうスタンダードのデッキ紹介となります。
スタンダード環境のおさらい
『団結のドミナリア』発売後
デッキ解説に入る前に、現在のスタンダード環境についておさらいしておきましょう。『団結のドミナリア』が加入したことで『ゼンディカーの夜明け』~『フォーゴトン・レルム探訪』がローテーション落ちし、わずか5つのエキスパンションしかない環境となります。
少ないカードプールで最初に頭角を現したのは黒単ミッドレンジと言えるでしょう。
強力な全体除去カードである《食肉鉤虐殺事件》に加えて、『団結のドミナリア』からは《ヴェールのリリアナ》や《黙示録、シェオルドレッド》、 《進化した潜伏工作員》などの新カードが存在感を示し、一躍トップデッキとして認知されるようになりました。
その後も黒いカードを使用したミッドレンジデッキの勢力拡大は止まらず、エスパーやグリクシス、ジャンドと続きます。世はまさに黒系ミッドレンジ時代と言ってもいいでしょう。
しかし、そこに待ったをかけるがごとく、10月10日に禁止改定が発表され、スタンダードにおいて《食肉鉤虐殺事件》が禁止されました。
《食肉鉤虐殺事件》禁止の影響
《食肉鉤虐殺事件》はあらゆる黒系のミッドレンジに採用されていました。その全体除去としての性能は高く、スタンダード環境からクリーチャー主体で攻めるアグロデッキを締め出してしまったほどでした。禁止改定により、今まで使いにくかったアグロデッキが日の目を浴びて、復権する可能性も十分あります。
禁止改定後の大会結果を確認してみると、依然としてミッドレンジデッキは上位に名を連ねていますが、白単アグロや人間アグロなど《食肉鉤虐殺事件》から解放されたデッキも少しづつ活躍し始めている印象です。
10/15(土):Standard Challenge #12485606
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | MTGHolic | ジャンドミッドレンジ |
準優勝 | crK | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | kokoko098 | 5色ドメイン |
トップ4 | Chemist1234 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | guinthos201111 | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | smile_papa4 | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | SeventhProphet | ジョダーレジェンズ |
トップ8 | FerMTG | ジャンドミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
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10/16(日):Standard Challenge #12485617
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | guinthos201111 | ジャンドミッドレンジ |
準優勝 | Yotsugi | 5色ドメイン |
トップ4 | Mogged | ボロスリアニメイト |
トップ4 | Breckoroni | 青単デルバー |
トップ8 | Danielpena397 | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Christianhartz | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | FerMTG | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Cabezadebolo | ジャンドミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
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10/16(日):The Pizza Box Open: Standard
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Gleison Coutinho | グリクシスミッドレンジ |
準優勝 | Freddie Barber | ラクドスミッドレンジ |
トップ4 | Kristien Woodcock | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | Victor Cardarelli | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Larry Cheng | バントミッドレンジ |
トップ8 | Michael Rooks | 白単コントロール |
トップ8 | TingTheTong | 青単デルバー |
トップ8 | Juan Alvarez | 白単ミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
大会情報はこちら
これから開催される世界選手権を控える中で、まだまだスタンダード環境は変化するかと思います。それでも激しく移り変わるメタゲームに逆らい存在感を示し続けるデッキがあります。禁止改定の影響を受けながらも、今なお有力デッキの一角に数えられるエスパーミッドレンジです。
今回はエスパーミッドレンジの特徴や採用カード、主要なデッキに対する簡単なゲームプランなどを解説していきます。
エスパーミッドレンジとは?
はじめにエスパーミッドレンジがどのようなデッキか確認していきましょう。
エスパーミッドレンジは白青黒の優秀なカードのみを選りすぐった攻撃的な中速デッキ。低マナ域から高マナ域にいたるまで相手へプレッシャーをかけられるカードが多数採用されており、それらを除去や打ち消し呪文でバックアップしながら戦うデッキです。
3色の利点を活かし、メインボードとサイドボードにさまざまな役割のカードを採用できます。白は置物破壊や全体除去など盤面干渉を、青はカードアドバンテージや打ち消しを担当します。黒はクリーチャーやプレインズウォーカーの除去、手札破壊によるゲームコントロールを担当するなど、各色の得意分野からカードをチョイスすることで隙のない対応が可能となっています。
仮にアグロが多いようなら全体除去を検討し、ミッドレンジやコントロールが多ければアドバンテージ獲得手段を増量するなど構築はメタゲームに合わせて変幻自在なのです。3色故の柔軟性からチューニング次第で極端に不利となるデッキが存在しないのも強みといえるでしょう。
それでは、採用されているカードを見ていきましょう。
メインボード
エスパーミッドレンジで採用されているカードを紹介します。
《しつこい負け犬》
黒系ミッドレンジでお馴染みのカードであり、もちろんエスパーミッドレンジにも採用されています。2マナ3/2のスタッツに加えて、「奇襲」によりカードと打点の両方を稼いでくれるナイスなカードです。後述する《勢団の銀行破り》に単身で搭乗可能な点もポイントです。序盤のプレッシャーとしては文句のつけようのない1枚でしょう。
《敬虔な新米、デニック》
エスパーカラーだからこそ採用できるクリーチャーです。エスパーミッドレンジは《コイロスの洞窟》などのダメージランドや、《しつこい負け犬》の「奇襲」でライフを消耗しやすく、絆魂によるライフゲインは五臓六腑に染みわたります。2/3というスタッツも大きなポイントであり、打点こそ《しつこい負け犬》に劣るものの、限定的ではありますがいくつかメリットがあります。
タフネス3の意味するところは、《税血の収穫者》単体では除去できず、《鏡割りの寓話》のゴブリントークンを受け止められるということです。これが《しつこい負け犬》だった場合、皆さんも経験があるかと思いますが、除去されてから《墓地の侵入者》や《死体鑑定士》で美味しく処理されてしまいます。
仮に序盤に《策謀の予見者、ラフィーン》とセットで揃えば、《しつこい負け犬》などのパワー3のクリーチャーに対しても攻撃へと向かえます。「謀議」で+1/+1カウンターを1つ載せれば、相打つ心配はありません。《しつこい負け犬》では同様な展開でも、タフネスが3のため相打ってしまいます。
さらに注目するべきは、「墓地にあるすべてのカードは呪文や能力の対象にならない」の一文です。一見地味に見えますが、《死体鑑定士》や《墓地の侵入者》からこちらの《しつこい負け犬》などを守り、《報復招来》のようなカードを封じてしまいます。
覚えておきたいのは《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の正確なテキストです。実は《見捨てられたぬかるみ、竹沼》は対象を取っていないため、自分が《敬虔な新米、デニック》をコントロールしていても「魂力」でクリーチャーやプレインズウォーカーを回収できるのです。
《策謀の予見者、ラフィーン》
エスパーミッドレンジを代表するクリーチャーであり、ローテーション前も活躍していましたが、カードプールの狭い今のスタンダードではひときわ強い存在感を放っています。3マナながら高タフネスと「護法」による除去耐性に加えて、攻撃へ向かうたびに「謀議」が誘発します。
戦線を強化しながら手札を循環できることが嬉しく、使いまわせる《しつこい負け犬》や《敬虔な新米、デニック》との相性も抜群。2マナ域展開からの3ターン目着地し、即「謀議」を狙いたいですね。
《黙示録、シェオルドレッド》との相性はとてもいいのですが、相手のコントロール下でいる場合は注意が必要です。《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」は強制誘発のため、攻撃クリーチャー数次第ではライフを大幅に減らしかねません。お互いの戦場にいる場合はプラマイゼロですが、アクティブプレイヤーからスタックに乗るため、先にライフを損失してしまいます。ライフが0にならないよう攻撃クリーチャーの数を調節する必要があります。
禁止改定の影響で、対アグロ用の《切り崩し》の増加が想定されるため、運用する際は頭に入れておきましょう。
《黙示録、シェオルドレッド》
最近のセットで収録が続いている法務官の新しい姿。以前は7マナでしたが今回は4マナと比較的軽くなっていますが、その性能は今のスタンダード環境のクリーチャーの中でも最強ともいえます。
マジックでは逃れられない「カードを引く」ことを誘発条件としてダメージとライフゲインに変換するため、維持しているだけで相手を絞り、自分を潤します。このクリーチャーへの対処手段を探そうと《勢団の銀行破り》や《鏡割りの寓話》の「カードを引く」とそれもダメージとなってかえってくるためとても凶悪です。先に触れた《策謀の予見者、ラフィーン》との相性はいうまでもありません。
どのデッキもこのクリーチャーを除去できるかどうかを基準にして除去呪文を選択しているといえます。相手にも使用される場面は多く、対処は必須のため、除去の打ちどころは計画的に。
《夜明けの空、猗旺》
前環境では《消失の詩句》などの追放除去の影響で、中々活躍する機会のなかったドラゴンがついに羽ばたく機会を得ました。他のドラゴンと比べて重要なのは警戒がついていることでしょう。厄介な《放浪皇》で除去される心配がなく、相手が4マナ立てていても安心して攻撃へ向かえます。
たとえ除去されたとしても、死亡時の誘発型能力により何かしらのパーマネントに変換される可能性は高く、ボード上で損をしにくいカードです。このクリーチャーを意識してか追放除去の《魂転移》が採用されることもあり、過信は禁物ですが、マナコストに見合った活躍は期待できます。
インスタントタイミングで追放されることはほぼありませんが、《天上都市、大田原》や《ローナの渦》にはご注意を。
次は除去呪文について紹介します。先ほども触れましたが、《黙示録、シェオルドレッド》を対処可能かどうかがひとつの選択基準になります。アグロ系デッキに対しどのくらいガードを上げるか(下げるか)はメタゲームを分析して検討する必要があります。
《切り崩し》
禁止改定前はサイドボードに落としていたカードですが、アグロデッキの増加を見越してメインボードへと移行。序盤のクリーチャーをテンポよく除去できる頼もしいカードです。ミラーマッチでも後手で2マナクリーチャーや《策謀の予見者、ラフィーン》を対処できる貴重なカードです。
《邪悪を打ち砕く》
《邪悪を打ち砕く》はかなり限定的なカードですが、《黙示録、シェオルドレッド》を対処可能。メインターゲットのせいでクリーチャー除去の観点では対象の狭いカードですが、もうひとつのモードを忘れてはいけません。環境には《婚礼の発表》や《鏡割りの寓話》が蔓延っていることもあり、無駄になりにくい1枚となっています。
《冥府の掌握》
2点失うものの、何でも除去できる万能カード。現環境では2点のライフは思ったよりも痛く、あまり枚数を採用したくはありませんが、ほかに良い除去がない台所事情も相まって採用に至っています。今後に期待したいところですね。
《かき消し》
打ち消し呪文を採用できるのはエスパーやグリクシスなどの青を含むミッドレンジのメリットです。《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》など戦場に出ることさえ許したくないカードが多く、着地前に対処できる打ち消しは重宝されます。
ミッドレンジデッキはもちろんアグロデッキにしても序盤に余剰マナを用意することは難しく、無駄になりにくいカードです。エスパーミッドレンジは《婚礼の発表》がある分グリクシスミッドレンジより「犠牲」コストを支払いやすくなります。
青を含むミッドレンジ対決では《かき消し》の存在により、序盤の展開に神経をつかわねばなりません。こちらが先手で3マナアクションをプレイしたところ《かき消し》をもらい、逆に《鏡割りの寓話》が着地してマウントを取られてしまうといった展開があり得ます。使用する立場とされる立場の両方で、うまく付き合う必要があるカードなのです。
《婚礼の発表》
盤面構築にもアドバンテージ源にもなる現在のスタンダードでは《鏡割りの寓話》と並んで双璧を成すエンチャント。グリクシスミッドレンジなどは着地後に触る手段がほぼないため、白を含まないデッキに対しては安全に着地させることを意識します。
ミラーマッチでは《邪悪を打ち砕く》がありますが、対処されなければ一方的にパーマネント数とクリーチャーのサイズで差がつくことからポイントのひとつと言ってよいでしょう。
《勢団の銀行破り》
アドバンテージ源となるアーティファクトであり、個人的に好きなカードです。アドバンテージの取り合いになりやすいミッドレンジミラーでは複数枚欲しくなりますが、反面アグロデッキに対してはカードを引いてるだけでは解決にならず、盤面を対処できずにかさばってしまうことを懸念して、枚数は抑えられています。
今はジャンドミッドレンジを上位でよく見かけるため、《豪火を放て》には注意しましょう。状況にもよりますが、余剰マナのない状態でプレイしてしまうと、カードを引けないまま破壊されて一方的に損をしてしまう可能性があります。
《漆月魁渡》
忍者トークンは《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》と相性が良いものの、基本的にはアドバンテージ源として運用します。エスパーミッドレンジで必ず採用されているわけではありませんが、攻めているときの追加のプレッシャーで1枚のみ採用。
《放浪皇》
現スタンダードではもっとも使われているお馴染みのプレインズウォーカー。除去能力を持ちながら、瞬速により隙なくプレイできる強力な1枚。それゆえにを含む4マナを立ているとバレやすいのが玉に瑕といったところでしょうか。
マナベース
《連門の小道》などがローテーション落ちしましたが、エスパーカラーはダメージランド2種が使えるため、既存の土地を組み合わせることで強固なマナベースが築けます。2ターン目の展開を意識したいので、スロウランドが重なるリスクを十分に考慮してマナベースを構築しましょう。
さらに《英雄の公有地》も採用されています。一見すると無色マナしか出なそうな土地ですが、伝説のパーマネントが多く採用されているエスパーでは、ほとんど好きな色マナの出る土地として気にせず運用が可能です。伝説のパーマネントが出てしまえば2色にも3色土地にもなってくれるのですから。
ゲーム後半には伝説のクリーチャーを守れるのも見逃せません。クリーチャー化土地がローテーション落ちしたため、このようにマナ基盤を整えながら、ゲームへ干渉できる能力を持つ土地は貴重な存在なのです。
サイドボード
メインボードと被るカードは紹介を割愛しています。
《危難の道》
《切り崩し》とセットで使用する対アグロデッキ用の除去であり、《食肉鉤虐殺事件》の代役となります。通常時はマナコスト2以下のクリーチャーのみが対処範囲になりますが、「切除」コストを支払うことですべてのクリーチャーを巻き込める柔軟なカードです。ほかの全体除去枠としては《集団失踪》も候補であり、環境次第で目にする機会が増えると考えています。
《告別》
ラクドスサクリファイスのように置物を並べるデッキへの対策カードとなります。また、勢力を拡大しているジャンドミッドレンジやドメインミッドレンジはあまりプレインズウォーカーが採用されておらず、《告別》1枚ですべて対処可能です。こちらの《婚礼の発表》やプレインズウォーカーを残しつつ、相手には最大限の被害を与えられるように運用しましょう。
《魂転移》
現スタンダードでは数少ない追放除去です。《夜明けの空、猗旺》や《魅せられた花婿、エドガー》など、死亡時の誘発型能力を持つクリーチャーを後腐れなく対処する追加除去です。基本的には除去モードで使用しますが、《勢団の銀行破り》と《婚礼の発表》を採用しているため、除去と回収の両取りも十分可能です。
《忘却の儀式》
パーマネント1つを犠牲にするものの、範囲が広く、さらに追放してくれます。《婚礼の発表》の人間トークンが一番手頃なコストですが、《しつこい負け犬》や《敬虔な新米、デニック》など再利用できるカードも多く、運用にはあまり困りません。「フラッシュバック」付きであるのも偉い。
《軽蔑的な一撃》/《否認》
僕も認識したのはつい最近ですが、「スケールが大きい」というワードを耳にしませんか?「スケール」とはマナ総量をさし、「スケールが大きい」とは読んで字のごとく相手よりも一段も二段もマナ総量が上のカードを使い、それによって生じるカードパワーの差を利用して優位に立つことです。
「スケールの大きさ」を活かした例としては、モダンの緑トロンが該当します。相手が4マナくらいまでのカードをプレイする中で、《ウルザの塔》を揃えて《解放された者、カーン》や《精霊龍、ウギン》などの7マナ以上のカードをプレイすることで相手を圧倒します。「スケールの大きい」カードは当然強いのです。
スタンダードでもミッドレンジ対決を「スケールの大きさ」を利用して制するデッキが存在します。キーとなるカードはジャンドミッドレンジなどで使用される《産業のタイタン》。サイズにプラスして、状況に応じて2種類のアドバンテージを得られる非常に強力なクリーチャーです。
しかし、「スケールの大きな」カードにも弱点はあり、マナコストの重さから打ち消し呪文に極端に弱いのです。マナコストが重ければ1ターンにワンアクションしかできず、それを2マナで対処されてしまうとマナ効率的に非常に損なトレードとなってしまいます。禁止改定後は、《神の乱》を軸としたドメインミッドレンジも増えており、そちらにも有効なカードとなります。
前置きが長くなりましたが、今回採用している《軽蔑的な一撃》はまさにスケールの大きさで上回るデッキに対して効果的な1枚です。メインボードの《かき消し》でも十分ささると思いますが、追加枠となりますね。青を含まないデッキはスケールの大きさで圧倒されがちですが、打ち消し呪文を採用することで怯えずに安心して戦えます。
《眼識の収集》
《勢団の銀行破り》と同じく、追加のアドバンテージ枠。こちらは青を含むミッドレンジミラーを見越したカードとなります。打ち消し呪文の構え合いになる展開が多く、構えた分のマナを無駄にしないよう、インスタントタイミングで使用可能なアドバンテージ源を採用しています。ただし、アドバンテージ源といっても「フラッシュバック」込みのカウントですし、効果も相手のライブラリートップ次第となるので過信は禁物です。
《不笑のソリン》
追加のプレインズウォーカー枠です。青を含まないデッキに対しては、盤面に着地はできるので定着するように運用します。また、こちらが使用する《告別》では流れないパーマネントなので、合わせてサイドインしたいところです。
《未認可霊柩車》
メインボードの《敬虔な新米、デニック》の追加枠であり、グリクシスミッドレンジに対して《死体鑑定士》や《しつこい負け犬》といったアドバンテージ源を潰す働きを期待しています。ほかにも《ウィンドグレイスの魂》や《ギックスの残虐》、《報復招来》など墓地を利用するカード全般に対するアンチカードになります。
《魅せられた花婿、エドガー》
今のスタンダードでは《邪悪を打ち砕く》や《絶望招来》が広く採用されており、エンチャントは割れやすくなっています。その反面、アーティファクトは触りにくく、「変身」後の《エドガー・マルコフの棺》は定着しやすくなっています。《放浪皇》へのケアは忘れずに。
以上、エスパーミッドレンジで採用されているカード紹介です。ほかにも採用候補はたくさんあるため、上記の構築に縛られず、メタゲームに合わせていろいろ試すことをおすすめします。
ほかのミッドレンジデッキと比較した際の強み
それぞれのミッドレンジデッキに強みがありますが、エスパーミッドレンジの魅力を簡単に紹介します。
《策謀の予見者、ラフィーン》を軸としたブン回り
2ターン目クリーチャー展開からの3ターン目《策謀の予見者、ラフィーン》は攻撃と戦線の強化を同時におこなえる、ほかのデッキにない強みと言えます。相手に妨害がなければそのままゲームの流れを持っていき、押し切れる可能性すらあります。1つのパターンとして、アグロに対しては《敬虔な新米、デニック》が成長するだけでとても優位に立ち回れます。
《婚礼の発表》
環境の双璧の片割れ、《婚礼の発表》が採用されています。カード紹介でも触れましたが、《婚礼の発表》は3マナとは思えぬほど強力なカード。カードパワーもさることながら、表面も裏面も攻撃的なエスパーミッドレンジの戦略に合致しています。定着すればリターンは絶大なのです。
打ち消し呪文
打ち消し呪文があることで、着地を許したくないパーマネントに対処できたり、自軍を守ったりできます。ときにはインスタントや瞬速を抱えてコントロールデッキのように振舞えたりと、ゲームプランに幅を持たせてくれます。《産業のタイタン》や《神の乱》などを採用したスケールが大きいデッキに対しても有効です。
サイドボーディングとゲームプラン
依然としてミッドレンジデッキの勢力が強いため、各種ミッドレンジとアグロ系に対するサイドボーディングの一例を簡単なゲームプランと合わせて紹介します。
対ミラーマッチ
お互いに打ち消しを擁するため、構え合いの展開になることが想定されます。先手は2マナからクリーチャーを展開し、《策謀の予見者、ラフィーン》や《黙示録、シェオルドレッド》で常にプレッシャーをかけてビートダウン完遂を目指します。
逆に後手は相手の攻勢をさばく受けの展開を想定します。
対 ミラーマッチ(先手)
先手で攻めるプランを完遂するため、リアクションスペルである打ち消し呪文は少し減らします。
対 ミラーマッチ(後手)
後手は受けるプランのため、クリーチャーを少し減らして長期戦を見据えたサイドボーディングを行います。賞味期限の短い《切り崩し》ですが、後手時は相手の2マナ生物や《策謀の予見者、ラフィーン》に対処するために残します。《夜明けの空、猗旺》は除去されても仕事をするクリーチャーですが、大振りアクションゆえに打ち消しに引っ掛かりやすく減らしています。
対グリクシスミッドレンジ
基本的な考え方はエスパーミラーと似ています。グリクシス側には着地した《婚礼の発表》への対処が難しいため、打ち消しをかいくぐり安全に着地させることがポイントとなるマッチアップです。《敬虔な新米、デニック》や《未認可霊柩車》を活用して《死体鑑定士》になるべく仕事をさせないことも意識しましょう。
対 グリクシスミッドレンジ(先手)
対 グリクシスミッドレンジ(後手)
すでに解説した通り、《未認可霊柩車》は《しつこい負け犬》に加えて《死体鑑定士》を牽制するためINします。対エスパーほど《邪悪を打ち砕く》が有効ではないので減らしますが、《穢れたもの、ソルカナー》を確認した際は増量も視野にいれます。
エスパーミッドレンジと違い、《放浪皇》による裏目がないため《魅せられた花婿、エドガー》をINします。
対ジャンドミッドレンジ
禁止改定後に勢力を拡大しているデッキであり、相手は打ち消しがないため脅威の叩きつけ合いになると想定されます。《豪火を放て》の採用率が上がっているのでクリティカルに刺さらないように気をつけましょう。
打ち消されるリスクはありませんが、《魂転移》や《羅利骨灰》などの追放除去が採用されているため《夜明けの空、猗旺》や《魅せられた花婿、エドガー》が着地したからといって安心はできません。
対 ジャンドミッドレンジ(先手)
打ち消しやアドバンテージを取れるカードをINします。ジャンド側に採用されているカードはさまざまですが、《絶望招来》や《産業のタイタン》、《作業場の戦長》、《ギックスの残虐》など重めのカードがよく採用されているため、それらに対応できる《軽蔑的な一撃》と《否認》を入れます。
対 ジャンドミッドレンジ(後手)
後手では押されてるときの逆転要素として《告別》をIN。こちらのプレインズウォーカーやエンチャントが残る状況で唱えることを目指しましょう。
対黒単ミッドレンジ
禁止改定後は元気のない印象ですが、こちらについても触れておきます。おおむね4枚採用されている《絶望招来》の存在は常に頭に入れてゲームを進めます。こちらはエンチャントもプレインズウォーカーも多用するデッキのため、綺麗にもらわないように注意。
《墓地の侵入者》は厄介ではありますが、《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》ほどではないため、2ターン目は打ち消しを構えずに思い切って動いてもかまいません。
対 黒単ミッドレンジ(先手)
対 黒単ミッドレンジ(後手)
ジャンドミッドレンジ同様にアドバンテージを取れるカード中心にINします。
対ドメインミッドレンジ
最近見かけるようになったデッキであり、まだまだ発展途上のアーキタイプという印象です。使用者によって採用されているカードに細かな違いはありますが、基本は《神の乱》や《群れの渡り》などスケールの大きいカードをフィニッシュ手段に据えています。すべての色を使用できるメリットを活かして、さまざまなカードを駆使してゲームを展開します。
上記は採用率の高いカード群です。
対 ドメインミッドレンジ(先手)
大振りなアクションが多いデッキのため、先手時はクロックを用意して要所を打ち消し呪文でしのぎながらライフを詰めていくプランを取ります。
対 ドメインミッドレンジ(後手)
後手時は長期戦を見据えます。《神の乱》と《力線の束縛》は必ずと言っていいほど採用されているため、後手時はエンチャント除去として《邪悪を打ち砕く》をすべて残します。
対アグロ全般
特定のアーキタイプというわけではなく、アグロ系デッキ全般に対するサイドボードの一例となります。
対 アグロ全般
相手の採用しているカードにもよりますが、サンプルのリストでは先手と後手で大きくサイドボーデイングは変わらないかと思います。除去として機能するカードはなるべくINします。
《魅せられた花婿、エドガー》は十分なサイズと、仮に対処されたとしてもトークン製造機として戦場へ残ります。しかもこのトークンが絆魂付きのため、アグロデッキにとっては悪夢と言うほかありません。
一見すると《不笑のソリン》はそこまで有効に見えないかもしれませんが、絆魂付きのトークンを無視できず、本体が戦闘ダメージで対処されようものなら、その分ライフを守ることになります。総じてよく働くと考えています。
《邪悪を打ち砕く》はアグロ相手には除去としての働きを期待できないためOUTします。
《漆月魁渡》はアグロデッキには大したプレッシャーにならず、盤面も支えられないためOUT。《勢団の銀行破り》も同様で起動に費やすターンを確保できず基本はOUTしますが、先手であれば多少余裕も生まれる可能性があり、息切れ防止に少量残すのも一考です。
以上、簡単ではありますが、主要デッキに対するゲームプランとサイドボーディングになります。毎度のことながら今回紹介したのはほんの一例にすぎません。相手のゲームプラン、サイドボードプラン、採用しているカードによってゲーム展開は流動的に変化するため、練習中に採用しているカードも含めて自分なりに調整する必要があります。
ミッドレンジミラーのポイント
簡単になりますが、最後にミッドレンジ同士のマッチアップのコツを書いて終わりたいと思います。
現スタンダードでは黒を基調としたデッキが多く、否が応でもミッドレンジミラーが発生してしまいます。厄介なことにミッドレンジミラーは要点が掴みにくく、敗因がよくわからないままに試行回数だけが増えてしまう傾向にあります。アドバンテージ面での負け、ゲームプランやサイドボーディグの誤りによる負けなど敗因はさまざまです。より細かく分析し、何が敗因だったかを振りかえりながらポイントを押さえていかなければなりません。
事前にある程度ゲームプランを練っておくことこそできるものの、メインボード戦では取れるゲームプランに限りがあります。デッキのチューニング次第ではありますが、ミラーマッチではほとんど差がつくことはありません。
そこで、ミッドレンジミラーを制するためにサイドボードでゲームプランに変化を加えることを考えてみましょう。
アドバンテージ源を増やす/潰す
カードの交換を繰り返すことで長期戦を見据えたプランを考えてみましょう。リソースには限りがあるため、いずれカード交換ができなくなりゲームが傾いていきます。
そこで、アドバンテージ獲得手段を増やして相手とリソース差をつけ、カード交換で優位に立つ展開を目指します。プレインズウォーカーも忠誠度能力を使用すればアドバンテージを獲得できます。そのため、プレインズウォーカーを安全に着地させることもアドバンテージ源へ繋がります。
逆に相手のアドバンテージ獲得手段を潰すこともゲームプランとしてありです。《勢団の銀行破り》やプレインズウォーカーなどは早期に対処できれば相手をリソース不足へと追い込めます。
デッキ全体を重くする
スケールについては先述した通りですが、マナコストの重いカードは1枚で大きくゲームへ影響します。ミラーマッチで効果の薄い軽いカードを重いカードへと入れ替えます。もちろん、単純に重いカードを増やすだけではデッキ全体のバランスが悪くなってしまいますし、打ち消し呪文の有無によっても有効なゲームプランかどうかも変わってきます。
デッキ全体を軽量化する
アドバンテージの確保手段を増やしたり、デッキを重くするのとは逆に、軽量化を図り短期決戦による挿し切りを目指すのも手です。対処の難しいパワーカードも唱えられなければ脅威ではありません。除去呪文を減らして《勢団の銀行破り》で長期戦に備えていたら、逆にクリーチャーを増やされて押し切られてしまうといったサイドボードのミスマッチは往々にしてあり得ます。
また、軽いカード同士を組み合わせることで1ターン中に複数回のアクションが取れたり、展開しながら除去や打ち消しを構えるようなテンポアドバンテージへつなげることも可能になります。デッキ公開性やカードプールにも左右されると思いますが、時にはこのようなゲームプランもありえると覚えておくとよいでしょう。
ここではゲームプランに変化をつけることを中心に紹介してきました。本稿を読んだあとは、いろいろ試行錯誤して経験値を蓄積をしていきましょう。ミッドレンジマッチを繰り返していくことで、対戦中に不足していたのはリソースなのか、ライフなのか、そもそも適正なゲームプランなのかを見極めていきます。その中で勝因と敗因を分析することで、取るべきゲームプランが少しづつでも見えてくるかと思います。
当然ながら相手もゲームプランで差をつけてくることが予想されます。最新デッキリストを確認して採用されているカードのトレンド追ったり、カードプールを把握して取り得るゲームプランに予測をつけておくなど、対戦前のインプットも大切になってきます。現在はかなり情報を収集しやすいため、参考にするソースや大会、週初めや大会前後などチェックする時期を決めておくことで、知識のアップデートを図っていきましょう。
おわりに
今回は禁止改定後も有力デッキの1つに数えられるエスパーミッドレンジをご紹介しました。現在実施中のチャンピオンズカップ予選やスタンダードイベントに参加する際の参考になれば幸いです。
禁止改定から日は浅いものの、早くも新しいデッキが出現し始めており、環境変化を追いつつ調整していきたいですね。今月末には世界選手権が控えているため、どのようなデッキが持ち込まれるか要注目です!
ご質問やご意見がありましたら、TwitterなどへDMをいただければお答えします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。それではまた!