Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2022/10/21)
不動のデルバー
みなさん、お久しぶりです!前回の記事では『モダンホライゾン2』参入によってスニーク・ショーの立ち位置がどう変化したのかを分析しましたが、あれから1年以上が経過しました。
今年の1月に《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止されるなど、前回の記事からレガシーは何度か環境の変化を迎えています。少なくともスニーク・ショーにとっては残念なことに、《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止されてもなおイゼットデルバーはメタゲーム内で支配的な立ち位置にあり、Magic Onlineのプレミアイベントでは20%を超える圧倒的人気を誇っています。
《紅蓮破》の隆盛
イゼットは強力な脅威とパーミッションを擁し、それを《表現の反復》でサポートすることで中盤戦以降にリソースを回復できるようになっており、ほかのデッキの追随を許しません。
イゼットデルバーの支配が変わらず続いていることから、赤マナにアクセスできるデッキがメインデッキに《紅蓮破》系を採用し始めており、これは通常レガシー環境が歪んできている兆候と言えます。イゼットの一般的なリストを見ても、《濁浪の執政》を対処できるようにと少なくとも《紅蓮破》が2枚は入っています。
脅威の変化
かつては《秘密を掘り下げる者》の枠に《帳簿裂き》が採用されていました。《帳簿裂き》は《稲妻》で除去されづらく、《濁浪の執政》の「探査」コストを溜め、《ドラゴンの怒りの媒介者》⇒2ターン目《帳簿裂き》(+《ミシュラのガラクタ》)⇒3ターン目《表現の反復》などに代表される圧倒的な初動を可能にする追加の脅威でした。
しかし最近は、《秘密を掘り下げる者》に回帰しているリストがほとんどであり、より攻撃的な初動が切れるように、あるいはマナカーブを低くすることで《表現の反復》をより効果的に使えるようにデザインされています。
デルバーを打倒するには
コントロール
イゼットデルバーに対抗するなら、4色/5色ヨーリオン、ジェスカイコントロール、バントコントロールといった《剣を鍬に》と《虹色の終焉》を4枚ずつ入れた除去満載のコントロールがベストです。私自身もそういったコントロールを幅広く使いましたが、コンボやプリズン/マナ否定系のデッキは苦戦するものの、イゼットには明確に有利であり、プレミアイベントには良い選択になりやすいデッキです。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》がMagic Online環境に追加され、コントロールデッキは速攻でゲームを決めるフィニッシャーでありながらコントロールミラーで《紅蓮破》に当たらないカードアドバンテージ源を獲得しています。
もっとも、イゼットデルバー戦だけを見れば《不毛の大地》《目くらまし》を乗り越えて4マナのパーマネントを着地させるのは困難であり、着地させたとしてもブー・トークン生成の効果にスタックで《稲妻》を打たれると綺麗に対処されてしまうため、対イゼットで《時を超えた英雄、ミンスクとブー》はほとんど役立ちません。
ただし、イゼットデルバーに有利だと言っても、コントロールが極端に有利というわけではありません。ロケットスタートを《目くらまし》でバックアップされればコントロールでも巻き返すのは不可能ですし、中盤~終盤戦までもつれ込んでも《表現の反復》によってコントロールがリソース負けすることすらあり得ます。《濁浪の執政》はワンパンチでゲームを終わらせることもあり、《表現の反復》をもってすればピッチコストの損失をカバーしながら《意志の力》でこのドラゴンを守ることもできます。
とはいえ、《敏捷なマングース》や《真の名の宿敵》を脅威に据えていたかつてデルバー/テンポデッキと違い、今のイゼットデルバーの脅威はたいていの除去で1対1交換できるものばかりであり、コントロールが除去で劣勢を返しやすくなっています(《濁浪の執政》は《虹色の終焉》が当たりませんが)。
サイド後にコントロールが《花の絨毯》を複数枚入れれば、これ以上ないというほどイゼットに対して有利になると思っています。イゼット側もコントロール対策としてサイド後から《狂乱の呪詛》《狡猾の宮廷》《覆いを割く者、ナーセット》、そして(基本土地が1~2枚しかない4色/5色型に対して)《発展の代価》を入れてきます。ただ、どれもコントロールが大量にサイドインする《紅蓮破》《水流破》に綺麗に解答されてしまうものばかりです。
土地単/赤単プリズン
かつて対デルバー戦略として位置してきたデッキ、たとえば土地単や赤単プリズンは今やあまり通用しないと私は思っています。そう考える大きな要因は、こういったデッキのほとんどの除去をかわし、速攻でゲームを終わらせてしまう《濁浪の執政》にあります。
《虚空の杯》は(X=1で置いても「探査」コストを溜めるために1マナのインスタント/ソーサリーを唱えることはできるため)《表現の反復》から《濁浪の執政》という動きを止められず、脅威を完全にシャットアウトするには《虚空の杯》+《血染めの月》系のカードの2枚が必要になります。
8 Cast
8 Castは1ゲーム目こそ有利がつくかもしれませんが、サイド後は《溶融》を乗り越えなくてはならず、《ウルザの物語》によるロケットスタートをしても《濁浪の執政》には互角のスピード勝負をされかねません。
デプス
このデルバー偏重のメタゲームで青を含まずとも良い選択肢になり得るのはセレズニア/ナヤデプスです。コントロールデッキと同じ除去一式を採用、サイド後には《紅蓮破》系を投入でき、《エルフの開墾者》《聖遺の騎士》《マリット・レイジトークン》といった脅威でイゼット側の脅威と渡り合うことができます。
デス&タックス
イゼットを意識するならデス&タックスも良い選択肢で、4枚積みの《孤独》は《剣を鍬に》に加えて《濁浪の執政》への解答になります。
スニーク・ショーの行方
さて、ここからはスニーク・ショー、そしてイゼットデルバーとアンチイゼットデルバーデッキが中心のメタゲームでのスニーク・ショーの立ち位置について話していきましょう。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》がMagic Onlineに実装されておらず、《秘密を掘り下げる者》の枠に《帳簿裂き》が採用されていたころ、スニーク・ショーは非常に良い立ち位置にあると感じていました。実際、Magic Onlineのチャレンジで何度かトップ8に入賞しており、イゼットデルバーに対して高い勝率でした。
イゼットデルバーは《帳簿裂き》を採用したことで《目くらまし》への耐性を大きく低下させていました。《帳簿裂き》でタップアウトしてくれれば、スニーク・ショーは2~3ターン目に相手の《目くらまし》をケアするマナを用意しながら動いたり、相手の《意志の力》にはこちらの《目くらまし》を当てたりと、コンボを狙う最高のタイミングになっていたのです。《帳簿裂き》型だと相手は《紅蓮破》を構えることも難しくなります。
また、当時はまだ《時を超えた英雄、ミンスクとブー》がMagic Onlineに存在しなかったため、《水流破》はサイドボードの定番ではありませんでした。
しかし時は過ぎ、スニーク・ショーへの風向きは厳しくなっています。青系のデッキはこぞってサイドボードに1~2枚《水流破》系を採用し、マナアドバンテージを得ながら《騙し討ち》に対応できるようになっており、イゼットデルバーはそのデッキ名に相応しいクリーチャーへと立ち返っています。スニーク・ショーがコンボを決める隙は減り、メインデッキから《紅蓮破》系を入れる形も流行している現状です。《防御の光網》は《紅蓮破》《水流破》のどちらに対しても良い解答になっており、私自身最近のリストでは4枚目すら入れたサイドにしていました。
コントロールデッキとの相性は相変わらず総じて良好で、エルフや赤単プリズンといった使用率の高いデッキ群とも有利に戦えますが、プレミアイベントにスニーク・ショーを持ち込むことにこれほどためらったことはなかなかありません。
とはいえ、スニーク・ショーは能動的かつパワーあるデッキであり、調子の良い日ならどんなフィールドでも楽々と勝てる力があります。可能性のありそうな新しい構成をいまだに摸索していますが、デルバーとの相性を考えるなら実績ある《目くらまし》型が依然としてベストであり、この過酷なメタゲームのなかでもスニーク・ショーを使いたい人にはおすすめできる構成です。もしあなたがその1人であれば、これからご紹介するサイドボードガイドが役に立つかもしれません。
デッキリスト&サイドボードガイド
イゼットデルバー
vs. イゼットデルバー(先攻)
vs. イゼットデルバー(後攻)
《秘密を掘り下げる者》なしの構成なら、先手のときも《紅蓮破》《赤霊破》もサイドインします。
赤単プリズン
vs. 赤単プリズン
自分が後手で、相手が《三なる宝球》を使ってこないとわかっているときは《全知》が選択肢になります。追加で《定業》か《目くらまし》をサイドアウトしましょう。
4色コントロール
vs. 4色コントロール
ここでいう4色コントロールは、Magic OnlineプレイヤーであるAnzidの構成を指しています。
ジェスカイコントロール
vs. ジェスカイコントロール
エルフ(《エルフの開墾者》型)
vs. エルフ(先攻)
vs. エルフ(後攻)
ラクドスリアニメイト
vs. ラクドスリアニメイト(先攻)
vs. ラクドスリアニメイト(後攻)
ドゥームズデイ
vs. ドゥームズデイ
8 Cast
vs. 8 Cast(先攻)
vs. 8 Cast(後攻)
後手時に相手が《船殻破り》《覆いを割く者、ナーセット》を使っていると把握している場合は《目くらまし》ではなく《定業》をサイドアウトする、もしくはその2種から少しずつサイドアウトしましょう。
ナヤデプス
vs. ナヤデプス(先攻)
vs. ナヤデプス(後攻)
デス&タックス
vs. デス&タックス(先攻)
vs. デス&タックス(後攻)
ミラー
vs. ミラー
ストーム
ANT
vs. ANT
TES
vs. TES(先攻)
vs. TES(後攻)
今回の記事はいかがったでしょうか。みなさんにとって何か発見があれば幸いです。こうしてまた執筆の機会を与えてくれた晴れる屋には感謝します。
ではまた次回お会いしましょう!
ヨナタン・アンゲレスク(Twitter)