はじめに
みなさんこんにちは。
禁止改定から2週間以上が経ち、アメリカでは先週末に大規模なテーブルトップイベントであるNRG Series $10,000 Trial – Newark, Ohio (Team Constructed)が開催されました。このイベントはパイオニア、モダン、レガシーのチーム戦で、解説付きの配信もされています。
そして、我々レガシープレイヤーには大変うれしいニュースがありました。日本とアメリカでEternal Weekendが開催されることになりました。MOでも開催される予定なので、レガシー的に充実した月になりそうです。
さて、今回の連載ではNRG Series $10,000 Trialの入賞デッキを見ていきたいと思います。
NRG Series $10,000 Trial – Newark, Ohio (Team Constructed)
レガシーでも活躍する相棒
2022年10月22日
- 1位 Doomsday
- 2位 Elves
- 3位 4C Control
- 4位 Grixis Doomsday
- 5位 4C Control
- 6位 Doomsday
- 7位 Mono Red Painter
- 8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストはこちら
先週末にアメリカ・オハイオ州で開催されたチーム戦のイベント。チーム戦らしくMOよりも多種多用なアーキタイプが勝ち残っていました。今大会の結果で印象的だったのは、プレイオフにIzzet Delverが不在だったことです。
Elves、Death and Taxes、4C ControlなどDelverに強いデッキを選択したチームが多く、Delverはトップ16まで見渡すと多数確認できました。
デッキ紹介
4C Control
モダンでは禁止になった《空を放浪するもの、ヨーリオン》ですが、レガシーでは健在です。《レンと六番》が禁止などモダンとはカードプールや環境が違うため、デッキの構成もモダンの多色コントロールとは大きく異なります。
レガシーでも《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にした80枚デッキが主流になっています。《不毛の大地》など特殊地形を咎めるカードが多いレガシーでは、多色コントロールは見た目以上にリスクが大きい戦略になりますが、氷雪基本地形や《豊かな成長》を利用することでマナ基盤の安定を図っています。また、ドロースペルや除去なども豊富なのでデッキの安定性を損なうことなく80枚デッキを組むことができます。
Delverを含めた環境のフェアデッキに強く、話題の新カードである《時を超えた英雄、ミンスクとブー》によってさらに強化されたことでMOのイベントでも結果を残し続けています。
☆注目ポイント
《表現の反復》はフォーマット全体で見ても最高のアドバンテージ源のひとつです。4色デッキなので序盤に安定してプレイはできませんが、このスペルはマナに余裕ができる中盤以降にプレイすることで強さを発揮します。序盤でのプレイを想定されていないこともあり、Izzetとは異なり3枚の採用になっています。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は、あの《精神を刻む者、ジェイス》を超えるコントロールの新たなフィニッシャーとして定着しています。
ETB誘発時に《稲妻》などで除去されてしまうリスクはあるものの、生き残れば毎ターントークンを生成することが可能です。《紅蓮破》に引っかからない点がこのプレインズウォーカーの強みであり、[+1]能力でトークンを強化、[-2]能力でカードアドバンテージを稼ぐことができるため、除去されずにターンを迎えることができれば勝利に近づきます。
メインから採用されている《激しい叱責》は、キャントリップ付きなので腐りにくく《ウルザの物語》や《タッサの神託者》、Death and Taxesとのマッチアップなどさまざまな場面で使えるほか、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の効果を無効化して場に残すという使い方もできます。
Elves
Elvesはレガシーを代表する部族ベースのクリーチャーコンボデッキで、《アロサウルス飼い》《飢餓の潮流、グリスト》《忍耐》といったパワーカードによる底上げもあり、現在でも第一線で活躍しているアーキタイプのひとつです。
最近は《悪魔の職工》を加えることで安定性が増し、除去によってエルフクリーチャーを失ってもリカバリーが効きやすくなりました。
《悪魔の職工》の能力によって《忍耐》《敵対工作員》《溜め込み屋のアウフ》といったクリーチャーを状況に応じてサーチでき、緑ベースのミッドレンジであるMaverickとElvesをハイブリットさせたような構成になっています。
☆注目ポイント
このバージョンの最大の特徴は、Elvesのドローエンジンでコンボ始動のキーカードだった《垣間見る自然》が抜け、《悪魔の職工》が採用されているところです。
《飢餓の潮流、グリスト》《忍耐》《敵対工作員》《溜め込み屋のアウフ》《疫病を仕組むもの》といったクリーチャーを状況に応じてサーチする動きは、コンボデッキというよりはコンボによるフィニッシュ手段を搭載したミッドレンジです。
《疫病を仕組むもの》は同型やDeath and Taxes、Izzet Delverなど多くのマッチアップで有効です。Izzet Delverとのマッチアップは、《秘密を掘り下げる者》と《ドラゴンの怒りの媒介者》の2種類のクリーチャーを無力化する《疫病を仕組むもの》と、「探査」「昂揚」を効率的に妨害できる《忍耐》によってゲームを有利に進めることができます。
サイドボードは《夏の帳》や《思考囲い》など苦手なコンボデッキ対策用にスペースの多くが割かれています。《殺し》や《叫び大口》は追加の《濁浪の執政》対策、《掘り返し》は相性の悪いマッチアップであるDoomsdayコンボ対策です。
Death and Taxes
レガシーで《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用しているデッキは、多色コントロールデッキだけではありません。ETB能力を持つクリーチャーの多いDeath and Taxesとも相性のいい「相棒」になります。
このデッキには《石鍛冶の神秘家》や《護衛募集員》といった複数のサーチカードが含まれているので、デッキを80枚にするデメリットはそれほど大きくなく、より多くのサーチ先を用意することができるようになるため、メインからさまざまなデッキや状況に対応できるようになりました。
環境最高の除去である《剣を鍬に》に加えて《孤独》もあり、《濁浪の執政》に対する解答を複数用意できるところもこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
《変位エルドラージ》はあまり見かけないクリーチャーですが、ETB能力を持つクリーチャーが多いため決まればかなりのアドバンテージを稼ぐことができます。特に《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使いまわす動きは強力です。また、相手のクリーチャーも対象に取れるため《濁浪の執政》の+1/+1カウンターをリセットすることもできます。
Mono Red Stompyや8 Castなどが散見される現環境では置物対策が必須となります。《解呪》効果を持つ《聖戦士の奇襲兵》は、ETB能力持ちのクリーチャーを無力化する《倦怠の宝珠》も対策できるので便利です。
《救出専門家》は《護衛募集員》でサーチすることができ、《石鍛冶の神秘家》などをリアニメイトすることができます。《変位エルドラージ》や《ちらつき鬼火》といったカードと相性が良く、戻したクリーチャーを解放しつつ墓地からさらに別のクリーチャーをリアニメイトすることができます。
Dimir Shadow
土地破壊で相手のマナを縛りつつクロックをカウンターでサポートしていくDelverのようなデッキですが、《死の影》を活かすために可能な限りライフを支払えるように、レガシーではめずらしくショックランドが採用されています。
Dimir Shadowというアーキタイプは過去のレガシーでも存在しましたが、多くのバージョンはDelver系のバリエーションでした。《濁浪の執政》という環境最高クラスのフィニッシャーが登場したことで、最近はメインのハンデスを多めに搭載して相手を妨害しつつ墓地を肥やし、《死の影》や《濁浪の執政》を《頑固な否認》など低マナのカウンターでバックアップして数ターンで決着をつけるという戦略にシフトしています。
ハンデスやカウンターのおかげでIzzet Delverよりもコンボデッキに強い一方で、ゲームを決める手段が《死の影》や《濁浪の執政》と少数精鋭なため、Death and TaxesやJeskai Controlなど《剣を鍬に》を使うデッキは苦手です。
☆注目ポイント
このデッキでは《殺し》のようにライフを支払うカードもプラスに働きます。《殺し》は《死の影》を強化しつつ相手の《濁浪の執政》を除去することが可能です。0マナでプレイすることができるので、盤面への干渉と脅威の展開を両立できテンポアドバンテージを得られます。
《頑固な否認》はコストが軽く、《死の影》や《濁浪の執政》といった大型のクリーチャーを《剣を鍬に》などから数ターン守る手段として最も適したカウンターの1枚です。
青黒は置物対策に貧しい色ですが、《厚かましい借り手》の登場によってメインからも《虚空の杯》や《罠の橋》を対策できるようになりました。《激しい叱責》は《死の影》をライフトータルに関係なく13/13にしたり、《孤独》や《ウルザの物語》の構築物・トークンを対策したりと多くのマッチアップで活躍します。
サイドにはクリーチャー以外の追加の勝ち手段として《狡猾の宮廷》が採用されています。多色コントロールなど除去を多用する遅いデッキとのマッチアップで有効です。
《火薬樽》は主に《虚空の杯》対策になりますが、《霊気の薬瓶》や《ルーンの母》などをまとめて流せるので、Death and Taxesにも効果があります。
Izzet Delverだけでなく、最近はMono Red Stompyや多色コントロールが使う《時を超えた英雄、ミンスクとブー》など赤い脅威が散見されるため、ほかの青いデッキと同様に《水流破》も2枚採用されています。
総括
禁止改定では変更なしだったこともあり、Izzet Delverは依然としてもっともポピュラーなアーキタイプです。
テーブルトップで開催されたNRG Seriesのプレイオフには、なんとIzzet Delverが不在という結果になりましたが、MOのLegacy Challengeでは常に安定した結果を残し続けているため、フォーマットの柱的な存在であることに変わりはないようです。
次に何か変更が加えられるとすれば、Eternal Weekend後になると考えられるので結果に要注目です。
USA Legacy Express vol.207は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!