決勝戦:坂本 大河(イゼットデルバー) vs. 神原 北斗(リアニメイト)
晴れる屋メディアチーム
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「先攻1ターン目にゲームが決まるコンボ」がある。
言葉だけを見てしまうと面白くないものではないかと疑ってしまうが、レガシー環境においてはさほどめずらしくない。ときには0ターン目に勝敗が決してしまうことすらあるのだから。
そして誰もが、このコンボを通すまい、もしくは通したところで勝たせまいと策を練る。思考を紡ぎ、アンフェアにフェアの強さを見せようと対抗手段を叩きつける。そんなせめぎあいがもっとも楽しいと思えるのが、レガシー環境の醍醐味だろう。
今回の『第13期関西帝王戦レガシー』では、75人の猛者達との死闘を潜り抜け、フェアとアンフェアの代名詞とも呼べる2つのデッキと、その名高い使い手が決勝に残った。
坂本 大河が使用するのは「イゼットデルバー」。
もはやフェアデッキを通り越し、レガシー環境の代名詞ともいえるアーキタイプ。優れたクリーチャーと打ち消し呪文、火力で並大抵の相手は叩き伏せられる。
近頃は《狂乱の呪詛》が新規加入するなど、常に進化を続けているデッキでもある。
神原 北斗が使用するのは「リアニメイト」。
こちらも説明不要、墓地に落とした強力なクリーチャーをリアニメイト呪文で釣り上げるコンボデッキの筆頭だ。だが、このリストにはリアニメイトデッキを長く使い続ける神原独自の調整が施されている。
公平か、不公平か。戦いにおいて、そこは重要ではない。大事なのはどちらが勝者となり――『帝王』の冠を被るか、なのだ。
スイスラウンド1位の坂本の先攻、双方ノーマリガンでゲーム開始。
坂本は早速《沸騰する小湖》を切って《Volcanic Island》を設置。青マナを捻出してデッキ名ともなっている《秘密を掘り下げる者》を戦場に出してターンエンド。
対する神原の動きだが、なんとドローしてそのままクリンナップ・ステップで《女王スズメバチ》をディスカード。何もしないからこそ妨害されない、ある意味安全な手段だ。墓地に恐ろしいカードが落ちているのを見た以上、坂本も悠長にはしていられない。幸い、アップキープにめくれたデッキトップが《稲妻》だったおかげで、《秘密を掘り下げる者》は早々に変身を遂げた。
再び坂本が《沸騰する小湖》を置いたのち、3/2飛行という、1マナとは思えない性能のクリーチャーの攻撃によって、神原のライフは17点となった。
いまだ土地も出していない神原ではあったが、返ってきたターンで《沼》を置く。そして、彼はまず《血の取引者、ヴィリス》をコストとしたピッチスペル《暴露》を唱えた。
通してしまえばコンボがほぼ確実に通ってしまうこの状況で、坂本は何度も思案を重ねた。そしてその末に、マナを出した状態の《Volcanic Island》を手札に戻して、同じくピッチスペルである《目くらまし》による打ち消しを選択した。
それに対応して、神原は《暗黒の儀式》をキャスト。坂本はフェッチを切って《Volcanic Island》を戦場に出したが、それ以上に打ち消しを重ねず、結果として《目くらまし》の要求コストを支払われてしまう。
だが、坂本はただ無意味に土地を引っ張ってきたわけではない。先ほどのマナと併せて、彼は《暴露》が解決される前に2発の《稲妻》を神原に撃ち込んだ!これにより、神原のライフはたちまち12まで削られる。《暴露》によって《濁浪の執政》は墓地に落ちてしまったが、3点×4回と思えば決して安全圏とはいえないライフである。
――これが「リアニメイト」でなければ、の話だが。
妨害手段のない今、神原はためらいなく《再活性》を唱えた。墓地から戦場に舞い戻るのは、ディスカードされていた《女王スズメバチ》!
突如として窮地に立たされた坂本。イゼットデルバーは、蜂の軍勢を追い払うのに多ければ5枚のカードを消費させられる可能性があるのだ。そうなればもう、相手のライフを削るどころの話ではない。
再びターンが返ってきた神原は、ここから攻勢に打って出る。少し考えたのち、彼は《女王スズメバチ》と2体のトークンで攻撃し、残るトークンには巣を守らせる選択をした。
坂本はこの攻撃をスルー。計4点のダメージを受けて残りライフは14。スズメバチの群れはたしかにプレッシャーをかけるが、決して個々の攻撃力は高くないために、どうしても複数回の攻撃が必要となってしまう。
《Badlands》を置いてターンエンドした神原。コンボを許したとはいえまだ死には至っていない坂本は、引き込んだ《思案》でさらにライブラリーを掘り進める。それから《Volcanic Island》を手札から置くと、引き込んだ《秘密を掘り下げる者》を唱えた。まだ飛行能力は持っていないが、変身すれば戦力として期待できる。
ターンを受け取った神原は、今度は女王と1体のトークンで攻撃。これも先ほど同様に坂本はスルーし、ライフは11点となる。双方攻めあぐねる、難しい展開が続く。
一方、坂本はデッキトップの《紅蓮破》を見せて《秘密を掘り下げる者》を変身させた。さらに不要牌を入れ替えるべくフェッチを切り、《Volcanic Island》を戦場に持ってくる。そしてドローした坂本が盤面に繰り出したのは、イゼットデルバーというデッキを一段階強化した立役者にしてフィニッシャー、《濁浪の執政》!
坂本はこのドラゴンを盾兼プレッシャーとして立ててターンエンド。接死のブロッカーがいるとはいえ、神原にとっては無視できない戦力だ。だが、逆にいえば接死で確実に1対1の交換ができるということでもある。
神原は次のターン、《女王スズメバチ》単体で攻撃。これも坂本は通し、残りライフは8点。双方綱渡り的な状況が続く中、ターンを得た坂本は《思案》を唱える。その中から引いた《思案》をさらに唱え、坂本はライブラリーを積極的に掘り進めてゆく。そうして彼が手札に加え入れたのは、2枚目の《濁浪の執政》だった。
ここから坂本は、大いに悩むことになる。デルバーで攻撃するべきか否か、と。何度も計算を重ね、悩みに悩みぬいた末に、坂本は1体のデルバーで攻撃。当然トークンにブロックされる結果となったが、彼もこの未来は予測しているはずだ。問題は、この攻撃によって導き出される結果に、想定外の要素が挟まる事態が起きた場合だ。
もっとも、攻めあぐねていてもどうしようもないのも事実だ。坂本は《蒸気孔》から2マナで《濁浪の執政》を唱え、盤面には2体のドラゴンが並ぶ。全軍の一斉攻撃でも坂本のライフを削り切れない現状は、神原にとってもどかしい。反面、毎ターン着実に2点のライフを奪われる坂本も、いつ首が落ちるか分からない。
《女王スズメバチ》の攻撃でライフが4点となった坂本は、《濁浪の執政》と変身した《秘密を掘り下げる者》、どちらも攻撃させないままターンエンド。リアニメイト呪文や大型クリーチャーを引けない神原も、《女王スズメバチ》単体で殴るのみ。これで坂本のライフは2。単調に見えて、その実まったく気の抜けないゲームが続く。
坂本が引いた《不毛の大地》で《Badlands》を破壊してターンエンドを宣言すると、またも神原が《女王スズメバチ》で攻撃。これまた悩んだ末に、坂本はデルバーでブロック。かくして、女王は再び墓へと戻っていった。
――戻っていった、はずだった。
神原は「待ってました」と言わんばかりに、手札から《水蓮の花びら》→《暗黒の儀式》と立て続けに唱える。そして最後に唱えたのは、もう一度スズメバチの軍勢を盤面へと引き戻す《動く死体》!
総勢7体の蜂の群れに対し、坂本は《思案》で対策を探したが、ここで投了した。
坂本 0-1 神原
先攻は再び坂本。
坂本はダブルマリガン、神原はノーマリガンで2ゲーム目が始まった。
サイド後のゲームを落としたくない坂本は《汚染された三角州》→《Volcanic Island》→《思案》と動いて1ドロー。マリガンした分の手札を、1枚であるが補充してゆく。神原はというと、1ゲーム目のようにディスカードは選ばず、《虹色の眺望》を置いてターンエンド。
返しのターン、坂本はさらに《思案》を唱えると、《沸騰する小湖》を設置してターンを渡す。神原も《血染めのぬかるみ》を置くのみと、にらみ合いが続く。
その間に手札を整えるべく、坂本が《沸騰する小湖》から《Volcanic Island》を持ってくると、《表現の反復》を唱えた。ライブラリーの下に戻したのは《ドラゴンの怒りの媒介者》、追放してプレイしたのは《沸騰する小湖》、そして手札に加えたのは《外科的摘出》!
さて、ここでコンボの前準備を目論む神原は、《虹色の眺望》を切って《沼》を置いた後、エンドフェイズ終了前に《納墓》をキャスト。『モダンホライゾン2』からの(比較的)ニューフェイス、《残虐の執政官》を墓地に置く。
しかし、神原は返しのターンでは何もしなかった。タイミングをうかがっているのか、坂本の手札から嫌な予感を感じ取ったのか、素直にターンを渡した。
ここを好機と見たか、坂本は《濁浪の執政》を唱える。ひとまず壁にも打点にもなりうるクリーチャーを設置した坂本は、ここでターンエンド。
ドラゴンの出現を見て、相対する神原も動く。《水蓮の花びら》を置いてから、《沼》から出した黒マナで《暗黒の儀式》を唱える。もちろん後続のリアニメイト呪文に繋げるためだが、そうはさせないと坂本が《外科的摘出》を手札から繰り出した。
これにより、手札・墓地・デッキ内のすべての《残虐の執政官》が追放されただけでなく、神原は手札の公開も余儀なくされた。コンボも、いったん中止せざるを得ない。
しかし、神原は二の矢を手札に用意していた。《暗黒の儀式》で増えたマナのうち2マナを使い、彼は手札の《集団的蛮行》を唱える。もちろん「増呪」をフル活用して《グリセルブランド》と《女王スズメバチ》を捨てるのも忘れない。
これに対し、坂本は《渦まく知識》で対抗策を探すが、最終的に呪文を通す。神原は2点ドレイン、《濁浪の執政》に-2/-2修正、《意志の力》のディスカードを行った後、手札に残っていた《暗黒の儀式》から《死体発掘》を唱えた!
そして盤面に君臨したのは、恐るべき四悪魔の一角《グリセルブランド》!
早速7点のライフを支払って7枚のカードをドローした神原だが、なおも攻勢の手を緩めない。《暴露》で坂本の手札の《渦まく知識》を取り除き、《再活性》で《女王スズメバチ》をも釣り上げたのだ!
神原のライフは風前の灯火だが、触れれば死ぬ蜂×5に加え、アタック・ブロックどちらでも7点のライフを得る悪魔は、勝敗を決するには十分すぎる脅威である。
ターンをもらった坂本はフェッチランドを置くのみに留まる。そこを狙い、神原は《グリセルブランド》と《女王スズメバチ》、1体の昆虫・トークンで攻撃。坂本は《濁浪の執政》で《グリセルブランド》をブロックして、ダメージが通る前に《紅蓮破》で自らのドラゴンを破壊した。
それでも反撃の兆しを逃さない坂本は、ターン終了前にフェッチランドを起動し、《神秘の聖域》で《渦まく知識》をライブラリーの上へと戻す。
次ターン、《渦まく知識》を唱えフェッチランドでまたもシャッフルし、《ミシュラのガラクタ》によるドローまでして抵抗を試みた坂本だったが、ついに投了を選んだ。
坂本 0-2 神原
『第13期関西帝王戦レガシー』優勝は神原 北斗!おめでとう!