ジャッジと一緒にルールを学ぼう! ~誘発型能力(後編)~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさんこんにちは、晴れる屋メディアチーム所属・認定レベル1ジャッジの島田と申します。

ジャッジと一緒にルールを学ぼう!』では、ゲームでよく使われているカードや、ジャッジをしていてよく聞かれるルール”のみ”に焦点を絞り、回ごとのテーマに合わせて例を挙げ・極力わかりやすく説明していきます。

この記事が少しでもみなさまのルール理解に繋がり、ひいてはマジックの楽しさを増すことに繋がれば幸いです。

※2022/11/21時点のマジック総合ルールに基づいています。
※文章の都合上、表現を簡略化・省略している場合があります。ご了承ください。
※本記事は複数のジャッジが監修していますが、誤りや疑問点を見つけましたらお問い合わせページにてご指摘ください。

前回のおさらい

総合ルールより引用

603.1. 誘発型能力は誘発条件と効果を持ち、「[誘発条件またはイベント]とき/たび/時に, [効果] [指示(ある場合)]/When/Whenever/At [Trigger condition or event], [effect]. [Instructions (if any).]」という書式で書かれている。

前回の記事では「誘発型能力」がどんな能力なのか&誘発するときとスタックに積まれるとき、それぞれの特徴・特殊な誘発型能力について説明しました。

今回は、さらなる特殊な誘発型能力について説明していきます。

続・特殊な誘発型能力たち

前回紹介した「『場合』の誘発型能力」「行動を選べる誘発型能力」に続き、今回は以下の誘発型能力について説明します。漢字ばっかりですね。

・「領域変更誘発」

・「遅延誘発型能力」

・「状況誘発型能力」

・「再帰誘発型能力」

一番身近な「領域変更誘発」

「領域変更誘発」とは、文字通り領域(「戦場」「ライブラリー」「手札」など)が変わることで誘発するタイプの誘発型能力です。

税血の収穫者濁浪の執政

・「《税血の収穫者》が戦場に出たとき、血・トークン1つを生成する。」

・「インスタントやソーサリーであるカード1枚があなたの墓地を離れるたび、《濁浪の執政》の上に+1/+1カウンター1個を置く。」

《税血の収穫者》は自身が「どこか」→「戦場」に移動したとき、《濁浪の執政》はインスタントやソーサリーが「墓地」→「どこか」に移動したときに能力が誘発します。

とても一般的な能力ですが、実は特徴が多いです。以下に例を挙げながら説明します。

1. 「戦場に出たときの能力」は、パーマネントを戦場に出すイベントが起こるたび、今出たものも含むすべてのパーマネントが、条件に合った「戦場に出たとき」の誘発条件をチェックする。

サリアの副官サリアの副官

例:《サリアの副官》《集合した中隊》で2体同時に戦場に出した。「パーマネントを戦場に出すイベント」が2回起こるので、それぞれの《サリアの副官》がお互いの「自分が戦場に出たとき、他の人間に+1/+/1カウンターを置く」「他の人間が戦場に出るたび、自分に+1/+/1カウンターを置く」を誘発させる。結果、2体の《サリアの副官》は両方3/3になる。

2. パーマネントの特性を変える継続的効果は、パーマネントが戦場に出る瞬間に適用され、そのパーマネントが本来の特性で戦場に出ることはない。

激しい叱責死の飢えのタイタン、クロクサ

例1:《激しい叱責》がある状態で《死の飢えのタイタン、クロクサ》を出した。《クロクサ》《激しい叱責》の効果で出る瞬間に能力を失うので、「戦場に出たとき」の能力は誘発しない。

イリーシア木立のドライアド溶鉄の尖峰、ヴァラクート

例2:《イリーシア木立のドライアド》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と5枚の《山》がある状態で《森》を出した。《森》《ドライアド》の効果で出る瞬間に《山》にもなるので、《ヴァラクート》の能力が誘発する。

歓迎する吸血鬼婚礼の発表

例3:《歓迎する吸血鬼》《婚礼の祭典》がある状態で2/2の侍・トークンを出した。侍・トークンは出る瞬間に+1/+1されて3/3になるので、《歓迎する吸血鬼》の能力は誘発しない。

3. 「戦場を離れたときに誘発する能力」は、指定されたパーマネントが戦場を離れたときに誘発する。カードが戦場を離れたときに何かしようとする能力は、そのカードが最初に行った領域だけをチェックする。

・「戦場を離れたときに誘発する能力」
・「カードが墓地を離れたときに誘発する能力」
・「すべてのプレイヤーから見えるものが、手札やライブラリーに移動したときに誘発する能力」

これらの能力は、能力が誘発するかを決めるときに、そのイベントの直前の状態をチェックする。

食肉鉤虐殺事件忘却石

例1:《食肉鉤虐殺事件》とクリーチャー2体をコントロールしている状態で《忘却石》を起動して、それら3枚を破壊した。3枚は同時に墓地に行くが、クリーチャーが死亡する直前には《食肉鉤虐殺事件》があるので、《食肉鉤虐殺事件》の能力は2回誘発する。

激しい叱責ワームとぐろエンジン

例2:《激しい叱責》がある状態で《ワームとぐろエンジン》が死亡した。《ワームとぐろエンジン》が死亡する直前には《激しい叱責》で能力が失われているので、トークンは出ない。

ゲラルフの伝書使幻影の像

例3:《ゲラルフの伝書使》のコピーになった《幻影の像》が死亡した。《幻影の像》は死亡する直前には《ゲラルフの伝書使》なので「不死」が誘発する。このとき「戦場に戻す」能力は最初に行った領域(=墓地)だけをチェックするので、能力が解決する前に墓地の《幻影の像》《大祖始の遺産》で追放するとそれは戦場に戻らない。

4. カードが特定の領域に「いずこかから」置かれたことで誘発する能力は、それが戦場から移動したとしても、戦場を離れたときの能力としては扱わない。なので、イベントの直前ではなく直後の状態をチェックする。

引き裂かれし永劫、エムラクール謙虚

例:《引き裂かれし永劫、エムラクール》が戦場から墓地に置かれたときに誘発した能力は「戦場を離れたときの能力」ではないので、墓地に落ちてから《エムラクール》の状態をチェックする。なので《謙虚》で能力を失った状態で墓地に置かれても、墓地に落ちて能力を取り戻した《エムラクール》はライブラリーに戻る。

5. 「○○は××状態で戦場に出る」「○○が戦場に出るに際し、××する」「○○は××として戦場に出る」という能力は誘発型能力ではない。

倦怠の宝珠戦墓のグール

例:《倦怠の宝珠》がある状態の《戦墓のグール》はタップ状態で出る。


以上が「領域変更誘発」の特徴です。特に「戦場に出たときの能力」と「戦場を離れたときの能力」は特徴が重要です。

ルール文章がややこしいですが、例に挙げたものだけでも覚えておくと役に立つと思います。

忘れると大変「遅延誘発型能力」

「遅延誘発型能力」とは、それが作られたときより後になってから誘発する能力です。

鏡割りのキキジキミシュラのガラクタ

・「(T):あなたがコントロールする、伝説でないクリーチャー1体を対象とする。それが速攻を持つことを除き、それのコピーであるトークンを1体生成する。次の終了ステップの開始時に、それを生け贄に捧げる。」

・「(T), 《ミシュラのガラクタ》を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーの一番上のカードを見る。次のターンのアップキープの開始時に、カードを1枚引く。」

これらの能力は、まず解決するときに最初の効果を起こします(《鏡割りのキキジキ》ならトークンを出す)。その後、指定されたタイミングが来たら、今度はそちらの能力が誘発します(トークンを生け贄に捧げる)。

このタイムラグによって、遅延誘発型能力は以下のような特徴を持ちます。

1. 作られてからタイミングが来て誘発するまでは、その能力はどこにも存在しない。作られるより前に誘発するタイミングが過ぎていたら、誘発するのは次のタイミング。

騙し討ち

例:終了ステップに《騙し討ち》を起動した。「次の終了ステップの開始時」はもう過ぎているので、出したクリーチャーを生け贄に捧げるのは、その次の終了ステップの開始時。

2. 一度作られたら、作った発生源がいなくなったり能力を失っても誘発する。

鏡割りのキキジキ

例:《鏡割りのキキジキ》でコピートークンを生成した。そのターン中に《鏡割りのキキジキ》を除去しても、コピーを生け贄に捧げる能力は誘発する。

3. 「このターンの間」のように期限が区切られていない場合は、次に誘発する条件が満たされたときに1回だけ誘発する。もし条件が複数回同時に満たされたら、どれで誘発するかを遅延誘発型能力のコントローラーが選ぶ。

人知を超えるもの、ウギン選定された行進

例:《人知を超えるもの、ウギン》《選定された行進》をコントロールしていて、《人知を超えるもの、ウギン》の[+1]能力を起動してトークンを2体出した。この2体が同時に死亡したとき、どちらの死亡で《人知を超えるもの、ウギン》の手札に加える能力が誘発するかは能力のコントローラーが選ぶ。

4. 何かに影響する効果は、途中でそれの特性が変わった場合でもそのまま影響する。一方、それの領域が変わった場合には影響しない。

騙し討ちファイレクシアの変形者大焼炉

例1:《騙し討ち》《ファイレクシアの変形者》を出し、《大焼炉》のコピーにした。《ファイレクシアの変形者》はクリーチャーではなくなるが、ターン終了時に生け贄に捧げる必要がある。

御霊の復讐オルゾヴァの幽霊議員

例2:《御霊の復讐》《オルゾヴァの幽霊議員》を戦場に戻して、その後《オルゾヴァの幽霊議員》の能力で自身を追放した。ターン終了時に戻ってくる《オルゾヴァの幽霊議員》《御霊の復讐》で追放されない。

5. 遅延型誘発能力は、作った発生源のコントローラーが途中で変わる場合がある。遅延型誘発能力のコントローラーが誰になるかは、何がその遅延誘発型能力を作ったかで決め方が変わる。

騙し討ち

起動or誘発型能力の場合(《騙し討ち》など):作る能力の解決時のコントローラー。(《騙し討ち》起動後、《騙し討ち》のコントロールが相手に移っても起動した人がコントローラーになります)

常在型能力による置換効果の場合:置換効果を適用した時点でのそれのコントローラー。

プレイヤーに何かをさせて、そうしたとき遅延誘発型能力を作る常在型能力の場合:その処理が行われた時点のそれのコントローラー。


ミシュラのガラクタ

カードのルールとは別に、遅延誘発型能力の大きな問題といえば忘れやすいこと。特に戦場に何かが残らない《ミシュラのガラクタ》などは大変忘れやすいです。使うときは目印などを用意して、なるべく気づきやすくしましょう。

とっても繊細「状況誘発型能力」

「状況誘発型能力」とは、「何かが起こったとき」や「どこかのステップが来たとき」ではなく「特定の状況になったとき」に誘発する能力です。

皇帝クロコダイル暗黒の深部

・「あなたが他のクリーチャーをコントロールしていないとき、《皇帝クロコダイル》を生け贄に捧げる。」

・「《暗黒の深部》の上に氷カウンターがないとき、これを生け贄に捧げる。そうしたなら、「マリット・レイジ」という名前で飛行と破壊不能を持つ黒の20/20の伝説のアバター・クリーチャー・トークンを1体生成する。」

特定の状況になったときに誘発するのは第2回で紹介した「状況起因処理」に似ていますが、状況誘発型能力は隙間なく状況をチェックし続けます。

皇帝クロコダイル儚い存在

例えば《皇帝クロコダイル》の場合、他のクリーチャーが《儚い存在》で追放されて一瞬いなくなっただけでも能力が誘発します。ここが状況起因処理(呪文の解決中にはチェックしない)との違いです。また《皇帝クロコダイル》は「場合」ではないので、一度誘発すると解決前にクリーチャーがいても生け贄に捧げられてしまいます。繊細ですね。

しかし本当にずっとチェックし続けるとすると、能力が一度誘発したあとも永久にチェック→誘発を繰り返してゲームが先に進まなくなってしまいます。それは困りますよね。なので、一度その能力が解決されるか、打ち消しなどでスタックから取り除かれるまでは再び誘発しないようになっています。

暗黒の深部もみ消し

逆に言えば、打ち消してスタックから取り除かれても、状況が変わっていない場合はまたすぐに誘発します。カウンターがなくなった《暗黒の深部》の誘発を《もみ消し》ても、またすぐに誘発してほとんど効果がないので要注意です。

意外と新しい「再帰誘発型能力」

「再帰誘発型能力」とは、まず呪文や能力の解決によってプレイヤーに何かの処理をさせ、その処理をしたりしなかったりしたことで新たに能力が誘発する、という形の能力です。

常夜会一家の介入者飢餓の潮流、グリスト

・「《常夜会一家の介入者》が戦場に出たとき、これは謀議する。これによりこれが謀議したとき、呪文最大1つを対象とする。それをオーナーの手札に戻す。」

・「-2:あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。それを破壊する。」

再帰誘発型能力は遅延誘発型能力と似ていて、最初の効果(《飢餓の潮流、グリスト》 ならクリーチャーを生け贄に捧げる)と、次の効果(クリーチャーやプレインズウォーカーを破壊する)が分かれています。

再帰誘発型能力の特徴は、タイムラグなしでその能力の解決中すぐに条件を満たしたかチェックすることです。《飢餓の潮流、グリスト》であれば、[-2]能力を解決するとき生け贄にするかしないかを選び、生け贄にしたらすぐ破壊する効果が誘発します。しなかったら何も誘発しません。

「能力が誘発する」という工程を挟むので、相手は《飢餓の潮流、グリスト》の能力が使われたときにまず対応でき、さらに生け贄に捧げて能力が誘発したときにもう一度対応のチャンスがあります。相手からすると親切な能力かもしれません。

富の爆発

もし1つの呪文や能力が解決するときに再帰誘発型能力が誘発する条件が複数回満たされたら、それらは1回ごとに1つ誘発します(「《富の爆発》で複数人がカードを引く」などで起こります)。

血に飢えた敵対者

しかし、《血に飢えた敵対者》のように「コストを望む回数支払ってもよく、1回以上支払ったときに能力が誘発する」という形の能力は、何回分コストを支払っても能力の誘発は1回だけです。

再帰誘発型能力は、初登場が『アモンケット』(2017年4月発売)と新しめの能力なのですが、もうバリエーションがあるのは恐ろ…面白いですね。

問題

ここまでの説明を踏まえて、問題です。

問1

波乱の悪魔魔女のかまど

あなたは《波乱の悪魔》《魔女のかまど》で生け贄に捧げた。生け贄にした《波乱の悪魔》の1点ダメージを与える能力は誘発するか?

問2

敬虔な新米、デニック勢団の銀行破り冥府の掌握

あなたは《敬虔な心霊、デニック》《勢団の銀行破り》に「搭乗」して、《銀行破り》で攻撃した。相手は《冥府の掌握》で《銀行破り》を破壊した。あなたは《敬虔な心霊、デニック》で「調査」できるか?

問3

空を放浪するもの、ヨーリオン即時却下

あなたは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を戦場に出し、《創造の座、オムナス》《発現する浅瀬》《レンと六番》を追放した。あなたの終了ステップの開始時に誘発した《空を放浪するもの、ヨーリオン》の戻ってくる能力を、相手に《即時却下》で打ち消された。追放したカードはどうなるか?

問4

王家の跡継ぎ

あなたは忠誠度8の《王家の跡継ぎ》をコントロールしていて、[-8]能力を起動した。《王家の跡継ぎ》が墓地に置かれ、カードを4枚引いたあとに「あなたの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与える」能力は誘発するか?

おわりに

第4回「誘発型能力(後編)」はいかがでしたでしょうか。前回から間が空いてしまい失礼しました。また今回は元のルールの量が多かったため、省略した部分がかなり多いです。

「長い」「短い」「次はいつ?」「こんな状況になったらどうなるの?」など、ご意見・ご要望がありましたらぜひお問い合わせページ晴れる屋メディアのTwitterまでご連絡ください。

また晴れる屋Discordのルール質問チャンネルでは、いつでもみなさまからのルール質問をお待ちしております。

それでは、次回の記事でお会いしましょう。

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