はじめに
みなさんこんにちは。
最近はテーブルトップのイベントも充実しており活気を取り戻しつつありますが、みなさんはモダンを楽しんでいますか?
さて、今回の連載では『Magic 30 Championship』と『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Magic 30 Championship
『団結のドミナリア』からの新カードで強化されたマーフォーク
2022年10月30日
- 1位 Merfolk
- 2位 4C Creativity
- 3位 4C Creativity
- 4位 Merfolk
- 5位 Rhinos
- 6位 Izzet Breach
- 7位 4C Control
- 8位 Izzet Breach
先月にアメリカ・ラスベガスで開催されたMagic 30の目玉イベントの一つ、Magic 30 Championshipが開催されました。予選ラウンドはモダンで行われ、プレイオフに進出を果たしたプレイヤーにはBetaドラフトの参加権が与えられました。
今大会の上位は、現環境のトップメタの一角であるCreativityやBreachといったデッキが中心でしたが、そのなかでも一番印象に残ったのがプレオオフに2名送り込んだMerfolkでした。
Merfolkは『団結のドミナリア』から登場した《ヴォーデイリアの呪詛抑え》を得て強化されたことで話題でしたが、大きな大会で結果を残したのは今回が初めてでした。
デッキ紹介
Merfolk
『団結のドミナリア』から《ヴォーデイリアの呪詛抑え》が加入して強化され、復権を果たしたMerfolk。
入賞したNikachuはMerfolkのエキスパートで、同デッキについての情報を発信しています。
《ヴォーデイリアの呪詛抑え》のほかにも、《海と空のシヴィエルン》《激浪の形成師》《緻密》といった『モダンホライゾン2』からの新戦力に恵まれているので、今後も人気が出そうなデッキです。
☆注目ポイント
《ヴォーデイリアの呪詛抑え》は瞬速持ちのロードというだけでも十分に強力ですが、もっとも注目すべきポイントは、Merfolkクリーチャーをソフトカウンターに変換するところです。
《不屈の独創力》コンボや「続唱」デッキに強く、《霊気の薬瓶》にカウンターが2個乗っているだけでもコンボやコントロールデッキにとっては脅威となります。《呪い捕らえ》と合わせてメインからの妨害要素が多くなったため、コンボデッキともかなりいい勝負ができるようになりました。
Merfolkの弱点として、ロードが不在の状態ではクリーチャー単体のサイズや性能で劣ることが挙げられます。《海と空のシヴィエルン》は全体強化能力こそないものの、タフネスが4なので《稲妻》1枚で除去されず、ほかのMerfolkクリーチャーに除去耐性を与えるため、先ほどの《ヴォーデイリアの呪詛抑え》と組み合わさると相手は除去が使いにくくなります。
サイドボードにフルに採用されている《広がりゆく海》は、《ウルザの物語》など相手のマナ基盤を攻めるだけでなく、《アトランティスの王》の「島渡り」によってブロッカーを無視して攻撃が通るようになります。
《虚空の杯》と《否定の力》のおかげで「続唱」デッキとの相性もかなり改善されました。メインにも2枚採用されている《緻密》は、MerfolkではないもののコントロールやAmulet Titanなど多くのマッチアップで妨害兼クロックとして使えます。
Modern Challenge 11/5
コンボデッキが強い環境
2022年11月5日
- 1位 Tron
- 2位 Tron
- 3位 4C Midrange
- 4位 4C Creativity
- 5位 4C Cascade
- 6位 Goblins
- 7位 Jund Sacrifice
- 8位 Urza
トップ8のデッキリストはこちら
今大会は4C Creativityや4C Cascadeなどコンボデッキが中心でした。
優勝を収めたのは伝統的な緑単トロンで、準優勝もトロン(プリズンバージョン)というトロンデッキのワンツーフィニッシュとなりました。
デッキ紹介
4C Creativity
今大会のスイスラウンドを首位で通過したのは、現環境のトップメタの一角でありMagic 30のイベントでも結果を残していた4C Creativityでした。
《ドワーフの鉱山》から出るトークンを《不屈の独創力》によって《残虐の執政官》に変身させるのが、このデッキの主な勝ち手段になります。「山のタイプを持つ土地」と「それらをサーチできるフェッチランドのみ」でマナ基盤が構築されており、フェッチランドを再利用できる《レンと六番》のおかげで、安定して4ターン目に《ドワーフの鉱山》によってトークンを生成することができます。
コンボデッキですが、《レンと六番》《稲妻》《火/氷》など序盤を凌ぐ手段も豊富なので、ミッドレンジとしても振舞うことができるところがこのデッキの特徴です。相手が《レンと六番》や《鏡割りの寓話》の対処にリソースを費やしたところに《不屈の独創力》コンボを決めることもできます。
☆注目ポイント
メインからフル搭載された《プリズマリの命令》は3マナと少し重くなりますが、キーカードを探したり《不屈の独創力》のためのトークン生成手段、アーティファクト対策、除去など非常にフレキシブルなスペルになります。特にメインからアーティファクトに触れるのは、人気デッキであるHammer Timeとのマッチアップで有利になるという利点があります。
《不屈の独創力》コンボは《鏡割りの寓話》をもっとも強く使えるデッキです。トークンを生成する第Ⅰ章 、手札入れ替えの第Ⅱ章、《残虐の執政官》のコピーを生成できる第Ⅲ章とすべての能力がこのデッキにマッチしています。特に第Ⅱ章の能力はコンボデッキにとって重宝します。
《火/氷》はTemur Cascadeなどにも採用されているスペルで、《敏捷なこそ泥、ラガバン》など序盤のクロックを処理したり、ドローを進めつつ相手がカウンターなど妨害の為にアンタップしている土地をタップしたりとフレキシブルなスペルです。
《残虐の執政官》を出す手段は《不屈の独創力》だけではありません。《プリズマリの命令》や《イゼットの魔除け》で墓地に落とした《残虐の執政官》を《頑強》でリアニメイトするルートもあるため安定性が向上しています。特に除去が豊富なデッキに対して有効なプランとなります。
Modern Challenge 11/6
決勝はHammer TimeとIzzet Ragavan
2022年11月6日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Rakdos Evoke
- 4位 Merfolk
- 5位 Living End
- 6位 Izzet Ragavan
- 7位 Mono Red Saga
- 8位 Tron
トップ8のデッキリストはこちら
今大会で優勝したのはHammer Timeでした。優勝者のHappySandwichは、禁止改定以前の環境から一貫してHammer Timeで結果を残し続けているプレイヤーです。
Izzet Ragavanが2名入賞し、内1人は準優勝しています。また、Magic 30のイベントでも活躍していたMerfolkも、スイスラウンド首位という好成績を収めていました。
デッキ紹介
Izzet Ragavan
禁止改定後の環境でも安定した成績を残し続けているIzzet Ragavan。環境に応じてカスタマイズが効くデッキで、カードチョイスは旧環境と比べると異なる点がいくつか見られます。
禁止改定前の環境では、ミラーマッチやコントロールに対抗するために《ドラゴンの怒りの媒介者》が抜けて、《大魔導師の魔除け》や《帳簿裂き》を搭載したミッドレンジ寄りの構成が主流でした。
しかし、禁止改定の影響で多色コントロールが減少傾向にあり、コンボデッキが多い現環境になったため《ドラゴンの怒りの媒介者》が再び採用されるようになったのです。
また『団結のドミナリア』から登場した《力線の束縛》の影響で、以前に比べて《濁浪の執政》の信頼性が落ちたため枚数が減らされています。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》は1マナと軽く、メインから《呪文貫き》を3枚、サイドにも《狼狽の嵐》が3枚と軽量カウンターが多めに取られているため、コンボデッキに対して有利です。多色コントロールの衰退で《忍耐》が減ったことも、このカードの採用を後押ししています。
モダンの多くのデッキは特殊地形に依存しており、最近は《力線の束縛》を使ったデッキも多いので《血染めの月》は脅威となります。「諜報」や「謀議」によって墓地に落とせるので手札で腐るリスクも低めです。
サイドに採用されている《激情》は、各種クリーチャーデッキに対して有力なスイーパーとして機能します。Hammer Timeに対しては、置物も流せる《仕組まれた爆薬》のほうがスイーパーとしては使いやすくなりますが、《真髄の針》で対策されてしまうため的を絞られないように散らしておくことも重要になります。
Rakdos Evoke
このデッキの理想的な動きは、1ターン目から《悲嘆》を「想起」でプレイし、それを《不死なる悪意》などの「不死」系スペルで復活させて相手の手札を破壊することです。相手はゲームプランを大きく狂わされたうえに、1ターン目から威迫持ちの4/3と対峙することになります。
現環境の多くのデッキに刺さる《血染めの月》もメインから搭載されているため、嵌ればどんな相手にも勝つことができます。
「想起」クリーチャー+「不死」系スペルが上手く決まらなかったとしても、優秀な除去やハンデスに加えて《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ダウスィーの虚空歩き》《鏡割りの寓話》といった単体でも強力なカードがそろっているため、ミッドレンジとしても優秀です。
☆注目ポイント
《歴戦の紅蓮術士》は手札に余った「不死」系スペルなどを有効牌に変換しつつ、クロックを増強することができます。《鏡割りの寓話》のⅡ章の能力でも同様のことが可能で、カードアドバンテージも稼げるためフェアデッキとしても十分な強さを発揮することができます。Ⅲ章の能力によって《悲嘆》や《激情》をコピーし始めれば勝利は目前です。
《ダウスィーの虚空歩き》はメインから無理なく運用できる墓地対策で、このクリーチャーのおかげでLiving EndやYawgmothといった墓地を使うデッキ相手に有利にゲームを進めることができます。ハンデスを多用するこのデッキでは《ダウスィーの虚空歩き》の能力を活かしやすく、「不死」系スペルともシナジーがあります。
総括
禁止改定後も序盤から《巨像の鎚》を装備させたクリーチャーが殴ってきたり、4ターン目から《残虐の執政官》が出てきたりとアンフェアな戦略が活躍しています。
その一方で、Izzet RagavanのようなフェアデッキやRakdos Evoke、Tron、Breach、Merfolkなどさまざまなアーキタイプも上位で見られます。これからどうなるか『兄弟戦争』後の環境が楽しみですね。
USA Modern Express vol.85は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!